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4thSEASON
夢歌う日々
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(1)
「じゃあ、皆のみ物もったか~」
皆がそれぞれドリンクの缶を持っている。
「それじゃ、今日もお疲れ!盛り上がっていこう」
渡辺君が言うと皆歓声を上げる。
「肉ジャンジャン食えよ~!あと肉だけじゃないからなぁ!」
美嘉さんはそう言いながらビールを飲みながら焼きそばを焼いている。
「冬夜君は食べ過ぎ注意だからね!」
「片桐先輩わかってますよね!」
愛莉と佐倉さんに監視されていて焼きそばを取りに行くのも一苦労。
「大変だな冬夜も」
佐(たすく)がそう言って笑ってる。
「佐もだからね、他人事みたいに言わないの!飲み過ぎに注意して」
「そう固い事言わずにお前も少しは飲めよ。誕生日は過ぎてるんだろ?」
そう言って佐倉さんに酎ハイを進める佐。
そうか、その手があったか。
「愛莉、この焼きそば美味しいよ。ほれあ~ん……」
ぽかっ
「その手に乗らないんだから!……でも流石美嘉さんだね。凄くおいしい」
食べるんだったら、叩くなよ。
「冬夜。もう諦めろ。食う事諦めて飲むんだ!」
渡辺君が缶ビールを手にやってくる。
「飲んでるよ」
自分が手にしている酎ハイを見せる。
「お前ビールはダメなのか?」
「あんまり好きじゃないかな?苦いし」
「そうか、こののど越しの良さがわからんときたか。じゃあ酎ハイでも良いから飲め」
「渡辺先輩駄目です!お酒もほどほどにしてもらわないと」
「たった3日の宴会だ、佐倉も硬い事言うな」
「あ、渡辺先輩聞きたい事があるんすけど」
晴斗が近づいてきた。
「どうした?晴斗」
「このグループって入会自由でしたっけ?」
「いや、適当だけど選んだ人だけ誘ってるけど。どうかしたのか?新しく入れたい奴でもいるのか?」
「そうじゃないんすけど。ダチが不思議な事言ってて」
「不思議な事?」
「お前縁結びのサークルに入ったって聞いたけど、全然顔出してないじゃん?って……」
「どういう意味だ?」
「何でもそのダチも縁結びのサークルに入ってて彼女出来たっていってるんすよ」
「……それは別のサークルじゃないか?」
サークルは作るのは自由だと聞いてた。
「まあ、そう考えるのが普通ですよね。さーせん」
「いや、いいよ。貴重な情報ありがとう」
「役に立てたのかどうかわからないっすけど。じゃあ、またっす」
そう言って晴斗は白鳥さんのもとにもどった。
「どう思う?冬夜?」
「どうって?」
「うちを騙ったサークルが現れたことについてだよ」
「放っておけばいいんじゃない?」
別にうちのグループの活動に支障があるわけでもないし。
「だといいんだけどな……」
渡辺君は何を心配しているんだろう?
「なんだなんだ?折角の時間にしけた面しやがって」
カンナと誠が来た。
誠たちに晴斗から聞いた話を話す。
「うちらに対抗が出来たって事か?」
カンナが聞くと渡辺君が頷いた。
「俺はそう捕らえている」
「そんなの無視しとけばいいじゃん!うちらに関係ねーし」
カンナもそう言っている。
その通りだと思う。
「渡辺君の考えすぎだよ。何かして来たら対策すればいい」
「……、晴斗!ちょっと来てくれないか?」
「なんすか?」
「そのサークルの名前聞いたか?」
「聞いてるっす……確か『EGOIST(エゴイスト)』っていってたっす」
「わかったありがとう」
渡辺君がそう言うとまた晴斗は白鳥さんのところに向かった。
「亜依さん!ちょっと来てくれないか?」
「どしたの?」
亜依さんがやってきた。
「エゴイストってインカレサークルの事について調べて欲しいんだけど」
「あ、それなら調べるまでもないわ。私のキャンパスの知り合いに入ってた人いるから」
「どういうサークルなんだ?」
「そうね……」
亜依さんから話を聞いた。
(2)
「桐谷さん」
穂乃果と歩いていると同じゼミの子に呼び止められた。
「どうしたの?」
「いや、桐谷さんと同じサークルに入ったはずなのに全然顔見ないからさ、不思議に思って」
サークル?
「私サークルなんて入ってないけど」
渡辺班はサークルじゃない。
「え?縁結びのサークルに入っているって聞いたけど」
「私達はただのグループだから」
「ああ、やっぱり違ったのね。危ない所だったわ」
「いや、あのね……」
エゴイストという名のサークルが突然メンバーを募集しだした。
そのグループは噂の縁結びのサークルらしいと聞いた。
是非入りたいと喜んで応募した。
しかし実態はただ週末に飲み会をしてるだけ。
会費がやたらと高い。そして……やりたい放題のサークルらしい。
「クラブとか貸し切ってね。で、いきなり男が胸とか揉んできてさ。キモいからすぐ辞めてきた」
「うん、私たちのグループじゃないね。それ」
「そうだね、どこからそんな情報入ってきたの?」
穂乃果が聞いた。
「え?地元大のあっちのキャンパスのサークル紹介に書いてるよ」
私と穂乃果は検索する。
縁結びのサークル・エゴイスト。
活動内容とかは知り合いが言っていた内容とは全然違う。
「もう辞めたんだよね?私達、メンバー募集とかしてないから私達とは違うと他の人にも教えてあげて」
「そりゃ、当たり前よ。あんなサークル危なすぎるわ。それで確認したかっただけ。でさ、私も入れてくれないそのグループに」
「悪いけど今はこれ以上増やすつもりないから」
「がーん。そうなの?」
「うん、行こ?穂乃果」
「うん」
(3)
「と、いうわけなんだが……」
1次会が終わり、片づけてお風呂入って2次会やってる時に渡辺君が亜依さんから聞いた情報を話した。
「私達のグループを騙ってるって事か?」
「まあ、そうなるな」
「許せねーなそいつら!」
美嘉さんが怒ってる。
「皆はどうしたらいいと思う?」
「潰すに決まってるだろ!」
美嘉さんが提案する。
皆も酔いもあるのだろう。美嘉さんに賛同する。
「徹底的に懲らしめる必要があるわね」
「そうね、どう凝らしめてやろうかしら?」
恵美さんと晶さんが言う。
「まずは正体を探るところからじゃない?」
「どうやって探るの?」
「潜入捜査なんてどうだ?オープンで募集してるんだろ?」
「そんなのだめ!もしもの事があったらどうするの!?」
女性陣が盛り上がってる。
「渡辺君はどう思っているの?」
僕は渡辺君に聞いてみた?
「どうと言われてもなあ、俺も判断しかねるんだ。冬夜、お前はどう思ってるんだ?」
渡辺君に質問された。
僕は迷うことなく渡辺君に返した。
「放っておけばいいんでない?」
すると案の定女性陣のやり玉にあげられる。
「トーヤ!渡辺班のイメージに傷つけられてるんだぞ!」
「とーや!お前それでも男か!私たち利用されてるんだぞ」
「そもそも、イメージって何?利用ってどういう意味?」
僕が返答した。
「片桐君話聞いてた?」
恵美さんが言う。
「聞いてるよ。どうして皆そんなに怒ってるのかわかんないんだけど」
「トーヤ……本気で言ってるのか?」
カンナが凄む。
「本気で知りたい。そもそも僕たちはただのグループだよ。イメージも何も他人が勝手に作り上げただけだろ?」
「他人で作り上げただけかもしれない。でもそのイメージを悪用してるのを見過ごすつもり?被害にあってる人もいるんだよ。入会費払うなんて言語道断だわ」
恵美さんが言うと僕は返す。
「じゃあ、どう対抗するのさ?僕たちは関係ありませんって名乗るの?馬鹿馬鹿しいと思わない?勝手にやらせておけばいいよ。第一どっちが本物って実証できるの?」
「やられっぱなしで悔しいと思わない?私たちはそんなつもりで集まったわけじゃない」
「そうだよ?」
「だったら……」
「俺も片桐に同感だな」
檜山先輩が言う。
「好きにさせときゃいいだろ?一々相手のレベルに合わせて張り合う必要ねーよ」
「男の人はいいですね~。春樹も片桐先輩も女性の気持ち無視してませんか~?損するのは女性だけ。だから自分たちには関係ない?……少しは想像力働かせなさいよ」
咲良さんが言う。
そう言われてみるとそうだね。内容聞いた限りだと損するのは女性だけだね。
「俺も晴斗を通じて聞いてみたんだがな。まさに損するのは女性だけの乱交パーティらしいんだ。しかも高い入会費払わせられて」
「……あんまり言っちゃいけないと思って黙ってたっすけど女性に盛ったりするらしいっす」
「トーヤ!これ聞いて何とも思わないのかよ!ただ幸せになりたい女から金巻きあげて体傷つけられて何とも思わないのかよ!世の中の女が皆愛莉みたいに幸せだと思うな!幸せに憧れてる女性だって大勢いるんだぞ」
「その女性を全員収容するなんて渡辺班には無理だろ?」
「冬夜。それは俺でも無理だと分かる。でも、俺達には全く無関係だってわけにはいかないだろ」
カンナと渡辺君が言う。
檜山先輩は「自業自得だろ」と一蹴するけど。
「で……策は考えてるの?」と僕は言った。
「それは……」
皆黙ってしまった。
「やれやれ……」
困ったときは皆僕に頼るんだな。
「渡辺君、そこまで事が大きくなったなら策は一つしかないよ」
「ってことは何か対抗策があるのか?」
渡辺君が聞いてくる。
皆も僕に注目する。
「まあ、僕達にまったく責任がないとは言えないからね。気休め程度の策なら」
「どういう策なの?」
愛莉が聞いてくる。
「……だれかwebサイトの作成とかに詳しい人いない?」
「それなら俺の専攻科目だけど?」
誠が名乗り上げた。
「誠、サイトを立ち上げて欲しいんだ。渡辺班の活動内容とかを公開したサイト」
僕が言うと皆が騒ぐ。
「冬夜君、それってつまり……」
「自分で否定しておいてなんだけど一番手っ取り早い策だと思う」
「正体を明かすわけ?」
「うん、ただしメンバーは募集してないと添えてね」
手っ取り早く、そして効果がすぐに出る方法。
もちろん更なる被害が増える可能性もある。
例えば第3のサークルが出てきたりとか乱立する可能性だって否定できない。
しかし現段階でやれる事と言ったらそれくらいだ。
「冬夜、本当にそれでいいのか?今まで隠密にやってきたことがすべて台無しだぞ?」
「もう噂が一人歩きしてるならしょうがないよ」
「精々派手な物作らせてもらうぜ」
「誠!真面目に作れよ!いかがわしいサイトなんか作ったら承知しないからな!」
カンナが言うと皆が笑う。
「でもそれだと『渡辺班』だとちょっと名前に問題あるわね」
亜依さんが言う。
すると愛莉が言った。
「Unity(ユニティ)なんてどう?」
「ゆにてぃ?」
美嘉さんが聞く。
「『団結』って意味なんだけど。このグループにふさわしいかなと思って」
「いいねそれ!」
亜依さんが言うと皆賛同した。
皆が渡辺君を見る。
渡辺君はうなずいた。
「じゃあ、ここに新グループ「ユニティ」の発足を宣言する!発足を祝って乾杯!」
渡辺君が言うと皆から歓声が沸き上がる。
「おっしゃあ!燃えてきた!やっぱり渡辺班はこうでないとな!」
美嘉さんのテンションが上がってる。いつもこうだと困るんだけどね。
「で、活動内容はどうするんだ?」
誠が聞いてきた。
「ありのままでいいんだよ。皆で集まって騒いでるだけ」
僕が答えた。
「胡散臭い言葉は使うなよ。幸せをもたらすとか、縁結びのサークルだとか」
「冬夜それだと意味がないんじゃ……」
「逆だよ。そんな言葉を入れたら逆に同じような手口のサイトが増えるだけ。単なるグループの活動日誌でいい」
「冬夜君、それでみんなに伝わるの?」
愛莉が聞いてきた。
「そこは亜依さんと晴斗、他の皆の出番だよ」
「どういう意味?」
亜依さんが聞いてきた。
「友達や知り合いに触れ回るだけでいい。私達のグループはユニティだって。エゴイストなんかじゃないって」
「それだけでいいの?」
「噂を流せばいいだけさ。それでエゴイストが何か対応してきたら応ずればいい」
「分かった、ユニティで活動内容は騒いでるだけだな。皆顔写真とか載せても大丈夫か?」
誠が聞いてきた。
「メンバー紹介とかはいらないからな?違う問題が出てくる」
「と、いうと」
「例えば僕が参加してるとわかったらマスコミが群がってくる」
「それって逆に私たちが片桐君に負担をかけてるってこと?」
亜依さんが聞いてきた。
「そういうわけじゃないよ。本当は大々的にした方がいいかもしれないんだけどね」
「まあ、冬夜には目的があるしな。それを邪魔するような真似はよしたほうがいい」
渡辺君がそう言ってくれた。
「まあ、冬夜は極力写さないようにする」
誠が言う。
「あとはロゴとかだな。誰かデザインしてくれる人いないか?」
「私やります~。そういうの得意だし~」
咲良さんが名乗りを上げた。
「じゃ、サイトのデザインもイメージ書いてくれないか?」
「分かりました~。できるだけカッコいいのが良いですよね~」
「……俺も協力するよ。咲良だと可愛いだけになりそうだしな」
「……春樹だけだと味気ない物になりそうだけど」
檜山先輩も乗り気になったようだ。
「ついでに、エゴイストの方も調べておくね。オープンにしてるならすぐに足がつくわ。実態晒してマスコミにリークしてやればいいでしょう」
「私も被害にあった人から聞き込みしとくわ。そっちの方が早いだろうし」
恵美さんと亜依さんが話しあう。
その日はユニティの今後について明け方近くまで語り明かした。
(4)
皆が盛り上がってる中私は晴斗を呼び出した。
星が綺麗な庭。
この場所の事は恵美さんに聞いていた。
「綺麗ね」
私は星空を見上げて言う。
「そうっすね」
「ねえ?どう思う?」
「何がっすか?」
「ユニティについて」
「そうっすね、皆アゲアゲでしたね」
「あなたもそうなの?」
「気分は盛り上がってますよ」
「じゃあ、今でも大丈夫ね?」
私はそう言って目を閉じる。
「どうしたんすか?」
彼には私の気持ちが伝わらなかったらしい。
「あなた、根は真面目なのね」
「へ?」
「もっとへらへらした、私の最も嫌いな人種だと思ってた」
「俺なんかへまやったっすか?」
晴斗は本当に気づいていないらしい。
「今やってるわ。現在進行形で」
「さーせんっす。俺肝心なところでよくミスやらかして」
「今夜は月が綺麗」
「?」
「月も星も空も綺麗。そして私は月夜に照らされて庭に立って目を閉じてあなたを待ってる」
そう言って再び目を閉じる。
もうわかるでしょ?
お願い気づいて。
願望。
夢は夢のまま、想い出は想い出のままがいいと思ってた。
でも願いは実現させなきゃ、想い出は形に残さなきゃ。
でも彼の口からでたことは……。
「マジさーせんっす!」
また気づいてくれなかったの?
失望
これも恋の一種なんだろうか?
悲しい。
私が失態を犯したの?
積極的すぎてひいた?
「恋人と行きたかった場所覚えてるっすか?」
「ええ」
言われたところは全部覚えてる。
ちゃんと心のシャッターで捕らえてる。
「そのなかで春奈が彼氏と行きたかった場所と行った場所覚えてるっすか?」
「覚えてる」
あのテレビ塔の展望台ね。
「彼女と初めてのキスはそこでって決めてあるっす。春奈にとってファーストキス思い出の場所でしたいっす」
そんな舞台を用意してあるのね。
「私の初めてのキスを貴方が演出してくれるのね?」
「演出ってそんな大げさなものじゃないけど」
「私の記念日は明後日ね」
「え?」
「帰りに寄りましょう?」
「……わかったっす」
「あなたの希望をのむ代わりに私の願いを一つだけ叶えて」
「いいっすよ。何っすかそれは?」
私は彼のもとに駆け寄ると、彼に身を預ける。
彼は私を受け止めてくれる。
彼の鼓動が聞こえる。とても早い。
私の鼓動も早かった。
2人の体温を確認し合うと、私と晴斗は目を合わせる。
このムードで耐えろなんて……。
「晴斗もも意外と意地が悪いのね」
「え?」
「戻りましょう、晴斗身体が冷えてる」
私はそう言って笑う。
「了解っす」
晴斗はそう言うと私の手を取って歩き出す。
彼の手は汗ばんでない。
もう自然と手を取り合って歩ける仲になっていた。
(5)
翌日の朝。
朝食を食べると、皆自由行動になっていた。
誠と咲良さんと檜山先輩は3人でwebデザインの打ち合わせをしている。
桐谷夫妻、中島君、一ノ瀬さんは買い出しに、女性陣は昼ごはんのメニューの打ち合わせ。
足りない食材をメッセージで桐谷君たちに送っている。
他のカップルはドライブにでかけたり、散歩をしていたり。
僕と佐、愛莉と佐倉さん、木元夫妻は体育館にいた。
連休に入ってまでバスケとは我ながら変わったな。
変わらざるを得ないんだけど。
佐倉さんは僕達の指導。
愛莉と花菜さんは何か話していた。
「冬夜、お前大丈夫か?」
佐が話しかけてきた。
「何が?」
「3週目が李相佰杯。翌週に春季大会だろ?体調的にうまくできるのかと思ってな?」
「佐が休ませてくれるか?」
「そんなつもり毛頭ねーだろ?」
「なんとかなるよ」
「怪我には気をつけろよ。お前にとって今年から勝負の年なんだ」
「わかってるよ」
「2人とも熱心だね」
木元先輩が言った。
「先輩も社会人バスケやってるんじゃないですか?」
「熱心にはやってないね。交流会みたいな感じかな?その後の飲み会がメインだ」
それで妻と喧嘩になったけどねと笑ってた。
「でも純粋にバスケを楽しめてる。勝ち負けにこだわらないバスケってのも楽しいよ」
「先輩余計な事言わないで!この二人はまだ勝ち負けにこだわってもらわないと困るんです」
佐倉さんが木元先輩を窘める。
「ごめんごめん」と笑ってかわす木元先輩。
愛莉がスマホを見る。
「買い出し組が帰って来たって~」
愛莉が言うと練習は終わりにする。
「もうそろそろ肉も飽きてきたよな」
「そうかな?」
佐が料理に不満を示す。
「佐、嫌なら自分で作ってもいいんですよ」
「そうだよ~男性陣の要望に応えて作ってるつもりなんだから」
「そうは言うけど3日連続でBBQとかきついぜ!」
「お昼は変えてあるよ?」
「今日のお昼は何なんだ?」
「ラーメンと炒飯と餃子」
それはいいことだ。
「冬夜君おかわりは無しだからね!」
「片桐先輩はいい加減に学習してください!」
食堂に向かうと女性陣は忙しなく動いている。
美嘉さんが中華鍋を必死に振っている。
海未さんと未来さん、白鳥さんは餃子を包んでいた。
愛莉とカンナが懇切丁寧に教えている。
「男共暇してるなら!テーブル拭くとかなんかしろ!」
美嘉さんに言われて慌ててテーブルを拭いたりする。
テーブルに料理が並べられると頂きます。
ラーメンが上手い。特にスープが。
市販のラーメンのスープじゃない。
「お前らが盛り上がってる間仕込んでたからな」
美嘉さんがそう言う。
午後は視聴覚室で映画鑑賞。
ゾンビ映画のパロディみたいな映画だった。
愛莉は当然の様に退室する。
僕もついて行った。
「やっぱりあの手はだめ~」
愛莉は僕に泣きつく。
愛莉の頭を優しく撫でてやる。
「せっかくだしちょっと散歩でもしよっか?」
「うん」
そうして僕たちは庭を散策する。
「明日には帰っちゃうんだね」
「今夜も騒ぐんだろうな?」
「帰ったら……色々始まるね」
「そうだね」
檜山先輩の件、白鳥さんの件、そしてエゴイストの件に僕のバスケの件。
「冬夜君頑張ってね」
「ああ、ちゃんと見ててくれよ」
「え?でもテレビじゃやらないって」
「愛莉はテレビで観るつもりだったの?」
「て、ことは」
「愛莉のチケット手配してある」
「わ~い」
愛莉は僕に抱き着く。
明日の今頃はきっと解散してる。
もっとも晴斗と白鳥さんはデートの実習があるらしいが。
あの二人はそんなことしなくてもいいのに、と思った。
しばらくして視聴覚室に戻ると桐谷君に「2人でどこ行ってたんだよ!」と言われた。
「ちょっと散歩してただけだよ」と答えると、「2人も色々あるんだよ」と亜依さんが言ってくれた。
皆を見て想う。
夢歌う日々はいつまで続くだろう。
あとどれだけ夢を見ていられるだろう。
僕はまず李相佰杯だ。
全力でやろう。
僕の夢を実現するためにも。
「じゃあ、皆のみ物もったか~」
皆がそれぞれドリンクの缶を持っている。
「それじゃ、今日もお疲れ!盛り上がっていこう」
渡辺君が言うと皆歓声を上げる。
「肉ジャンジャン食えよ~!あと肉だけじゃないからなぁ!」
美嘉さんはそう言いながらビールを飲みながら焼きそばを焼いている。
「冬夜君は食べ過ぎ注意だからね!」
「片桐先輩わかってますよね!」
愛莉と佐倉さんに監視されていて焼きそばを取りに行くのも一苦労。
「大変だな冬夜も」
佐(たすく)がそう言って笑ってる。
「佐もだからね、他人事みたいに言わないの!飲み過ぎに注意して」
「そう固い事言わずにお前も少しは飲めよ。誕生日は過ぎてるんだろ?」
そう言って佐倉さんに酎ハイを進める佐。
そうか、その手があったか。
「愛莉、この焼きそば美味しいよ。ほれあ~ん……」
ぽかっ
「その手に乗らないんだから!……でも流石美嘉さんだね。凄くおいしい」
食べるんだったら、叩くなよ。
「冬夜。もう諦めろ。食う事諦めて飲むんだ!」
渡辺君が缶ビールを手にやってくる。
「飲んでるよ」
自分が手にしている酎ハイを見せる。
「お前ビールはダメなのか?」
「あんまり好きじゃないかな?苦いし」
「そうか、こののど越しの良さがわからんときたか。じゃあ酎ハイでも良いから飲め」
「渡辺先輩駄目です!お酒もほどほどにしてもらわないと」
「たった3日の宴会だ、佐倉も硬い事言うな」
「あ、渡辺先輩聞きたい事があるんすけど」
晴斗が近づいてきた。
「どうした?晴斗」
「このグループって入会自由でしたっけ?」
「いや、適当だけど選んだ人だけ誘ってるけど。どうかしたのか?新しく入れたい奴でもいるのか?」
「そうじゃないんすけど。ダチが不思議な事言ってて」
「不思議な事?」
「お前縁結びのサークルに入ったって聞いたけど、全然顔出してないじゃん?って……」
「どういう意味だ?」
「何でもそのダチも縁結びのサークルに入ってて彼女出来たっていってるんすよ」
「……それは別のサークルじゃないか?」
サークルは作るのは自由だと聞いてた。
「まあ、そう考えるのが普通ですよね。さーせん」
「いや、いいよ。貴重な情報ありがとう」
「役に立てたのかどうかわからないっすけど。じゃあ、またっす」
そう言って晴斗は白鳥さんのもとにもどった。
「どう思う?冬夜?」
「どうって?」
「うちを騙ったサークルが現れたことについてだよ」
「放っておけばいいんじゃない?」
別にうちのグループの活動に支障があるわけでもないし。
「だといいんだけどな……」
渡辺君は何を心配しているんだろう?
「なんだなんだ?折角の時間にしけた面しやがって」
カンナと誠が来た。
誠たちに晴斗から聞いた話を話す。
「うちらに対抗が出来たって事か?」
カンナが聞くと渡辺君が頷いた。
「俺はそう捕らえている」
「そんなの無視しとけばいいじゃん!うちらに関係ねーし」
カンナもそう言っている。
その通りだと思う。
「渡辺君の考えすぎだよ。何かして来たら対策すればいい」
「……、晴斗!ちょっと来てくれないか?」
「なんすか?」
「そのサークルの名前聞いたか?」
「聞いてるっす……確か『EGOIST(エゴイスト)』っていってたっす」
「わかったありがとう」
渡辺君がそう言うとまた晴斗は白鳥さんのところに向かった。
「亜依さん!ちょっと来てくれないか?」
「どしたの?」
亜依さんがやってきた。
「エゴイストってインカレサークルの事について調べて欲しいんだけど」
「あ、それなら調べるまでもないわ。私のキャンパスの知り合いに入ってた人いるから」
「どういうサークルなんだ?」
「そうね……」
亜依さんから話を聞いた。
(2)
「桐谷さん」
穂乃果と歩いていると同じゼミの子に呼び止められた。
「どうしたの?」
「いや、桐谷さんと同じサークルに入ったはずなのに全然顔見ないからさ、不思議に思って」
サークル?
「私サークルなんて入ってないけど」
渡辺班はサークルじゃない。
「え?縁結びのサークルに入っているって聞いたけど」
「私達はただのグループだから」
「ああ、やっぱり違ったのね。危ない所だったわ」
「いや、あのね……」
エゴイストという名のサークルが突然メンバーを募集しだした。
そのグループは噂の縁結びのサークルらしいと聞いた。
是非入りたいと喜んで応募した。
しかし実態はただ週末に飲み会をしてるだけ。
会費がやたらと高い。そして……やりたい放題のサークルらしい。
「クラブとか貸し切ってね。で、いきなり男が胸とか揉んできてさ。キモいからすぐ辞めてきた」
「うん、私たちのグループじゃないね。それ」
「そうだね、どこからそんな情報入ってきたの?」
穂乃果が聞いた。
「え?地元大のあっちのキャンパスのサークル紹介に書いてるよ」
私と穂乃果は検索する。
縁結びのサークル・エゴイスト。
活動内容とかは知り合いが言っていた内容とは全然違う。
「もう辞めたんだよね?私達、メンバー募集とかしてないから私達とは違うと他の人にも教えてあげて」
「そりゃ、当たり前よ。あんなサークル危なすぎるわ。それで確認したかっただけ。でさ、私も入れてくれないそのグループに」
「悪いけど今はこれ以上増やすつもりないから」
「がーん。そうなの?」
「うん、行こ?穂乃果」
「うん」
(3)
「と、いうわけなんだが……」
1次会が終わり、片づけてお風呂入って2次会やってる時に渡辺君が亜依さんから聞いた情報を話した。
「私達のグループを騙ってるって事か?」
「まあ、そうなるな」
「許せねーなそいつら!」
美嘉さんが怒ってる。
「皆はどうしたらいいと思う?」
「潰すに決まってるだろ!」
美嘉さんが提案する。
皆も酔いもあるのだろう。美嘉さんに賛同する。
「徹底的に懲らしめる必要があるわね」
「そうね、どう凝らしめてやろうかしら?」
恵美さんと晶さんが言う。
「まずは正体を探るところからじゃない?」
「どうやって探るの?」
「潜入捜査なんてどうだ?オープンで募集してるんだろ?」
「そんなのだめ!もしもの事があったらどうするの!?」
女性陣が盛り上がってる。
「渡辺君はどう思っているの?」
僕は渡辺君に聞いてみた?
「どうと言われてもなあ、俺も判断しかねるんだ。冬夜、お前はどう思ってるんだ?」
渡辺君に質問された。
僕は迷うことなく渡辺君に返した。
「放っておけばいいんでない?」
すると案の定女性陣のやり玉にあげられる。
「トーヤ!渡辺班のイメージに傷つけられてるんだぞ!」
「とーや!お前それでも男か!私たち利用されてるんだぞ」
「そもそも、イメージって何?利用ってどういう意味?」
僕が返答した。
「片桐君話聞いてた?」
恵美さんが言う。
「聞いてるよ。どうして皆そんなに怒ってるのかわかんないんだけど」
「トーヤ……本気で言ってるのか?」
カンナが凄む。
「本気で知りたい。そもそも僕たちはただのグループだよ。イメージも何も他人が勝手に作り上げただけだろ?」
「他人で作り上げただけかもしれない。でもそのイメージを悪用してるのを見過ごすつもり?被害にあってる人もいるんだよ。入会費払うなんて言語道断だわ」
恵美さんが言うと僕は返す。
「じゃあ、どう対抗するのさ?僕たちは関係ありませんって名乗るの?馬鹿馬鹿しいと思わない?勝手にやらせておけばいいよ。第一どっちが本物って実証できるの?」
「やられっぱなしで悔しいと思わない?私たちはそんなつもりで集まったわけじゃない」
「そうだよ?」
「だったら……」
「俺も片桐に同感だな」
檜山先輩が言う。
「好きにさせときゃいいだろ?一々相手のレベルに合わせて張り合う必要ねーよ」
「男の人はいいですね~。春樹も片桐先輩も女性の気持ち無視してませんか~?損するのは女性だけ。だから自分たちには関係ない?……少しは想像力働かせなさいよ」
咲良さんが言う。
そう言われてみるとそうだね。内容聞いた限りだと損するのは女性だけだね。
「俺も晴斗を通じて聞いてみたんだがな。まさに損するのは女性だけの乱交パーティらしいんだ。しかも高い入会費払わせられて」
「……あんまり言っちゃいけないと思って黙ってたっすけど女性に盛ったりするらしいっす」
「トーヤ!これ聞いて何とも思わないのかよ!ただ幸せになりたい女から金巻きあげて体傷つけられて何とも思わないのかよ!世の中の女が皆愛莉みたいに幸せだと思うな!幸せに憧れてる女性だって大勢いるんだぞ」
「その女性を全員収容するなんて渡辺班には無理だろ?」
「冬夜。それは俺でも無理だと分かる。でも、俺達には全く無関係だってわけにはいかないだろ」
カンナと渡辺君が言う。
檜山先輩は「自業自得だろ」と一蹴するけど。
「で……策は考えてるの?」と僕は言った。
「それは……」
皆黙ってしまった。
「やれやれ……」
困ったときは皆僕に頼るんだな。
「渡辺君、そこまで事が大きくなったなら策は一つしかないよ」
「ってことは何か対抗策があるのか?」
渡辺君が聞いてくる。
皆も僕に注目する。
「まあ、僕達にまったく責任がないとは言えないからね。気休め程度の策なら」
「どういう策なの?」
愛莉が聞いてくる。
「……だれかwebサイトの作成とかに詳しい人いない?」
「それなら俺の専攻科目だけど?」
誠が名乗り上げた。
「誠、サイトを立ち上げて欲しいんだ。渡辺班の活動内容とかを公開したサイト」
僕が言うと皆が騒ぐ。
「冬夜君、それってつまり……」
「自分で否定しておいてなんだけど一番手っ取り早い策だと思う」
「正体を明かすわけ?」
「うん、ただしメンバーは募集してないと添えてね」
手っ取り早く、そして効果がすぐに出る方法。
もちろん更なる被害が増える可能性もある。
例えば第3のサークルが出てきたりとか乱立する可能性だって否定できない。
しかし現段階でやれる事と言ったらそれくらいだ。
「冬夜、本当にそれでいいのか?今まで隠密にやってきたことがすべて台無しだぞ?」
「もう噂が一人歩きしてるならしょうがないよ」
「精々派手な物作らせてもらうぜ」
「誠!真面目に作れよ!いかがわしいサイトなんか作ったら承知しないからな!」
カンナが言うと皆が笑う。
「でもそれだと『渡辺班』だとちょっと名前に問題あるわね」
亜依さんが言う。
すると愛莉が言った。
「Unity(ユニティ)なんてどう?」
「ゆにてぃ?」
美嘉さんが聞く。
「『団結』って意味なんだけど。このグループにふさわしいかなと思って」
「いいねそれ!」
亜依さんが言うと皆賛同した。
皆が渡辺君を見る。
渡辺君はうなずいた。
「じゃあ、ここに新グループ「ユニティ」の発足を宣言する!発足を祝って乾杯!」
渡辺君が言うと皆から歓声が沸き上がる。
「おっしゃあ!燃えてきた!やっぱり渡辺班はこうでないとな!」
美嘉さんのテンションが上がってる。いつもこうだと困るんだけどね。
「で、活動内容はどうするんだ?」
誠が聞いてきた。
「ありのままでいいんだよ。皆で集まって騒いでるだけ」
僕が答えた。
「胡散臭い言葉は使うなよ。幸せをもたらすとか、縁結びのサークルだとか」
「冬夜それだと意味がないんじゃ……」
「逆だよ。そんな言葉を入れたら逆に同じような手口のサイトが増えるだけ。単なるグループの活動日誌でいい」
「冬夜君、それでみんなに伝わるの?」
愛莉が聞いてきた。
「そこは亜依さんと晴斗、他の皆の出番だよ」
「どういう意味?」
亜依さんが聞いてきた。
「友達や知り合いに触れ回るだけでいい。私達のグループはユニティだって。エゴイストなんかじゃないって」
「それだけでいいの?」
「噂を流せばいいだけさ。それでエゴイストが何か対応してきたら応ずればいい」
「分かった、ユニティで活動内容は騒いでるだけだな。皆顔写真とか載せても大丈夫か?」
誠が聞いてきた。
「メンバー紹介とかはいらないからな?違う問題が出てくる」
「と、いうと」
「例えば僕が参加してるとわかったらマスコミが群がってくる」
「それって逆に私たちが片桐君に負担をかけてるってこと?」
亜依さんが聞いてきた。
「そういうわけじゃないよ。本当は大々的にした方がいいかもしれないんだけどね」
「まあ、冬夜には目的があるしな。それを邪魔するような真似はよしたほうがいい」
渡辺君がそう言ってくれた。
「まあ、冬夜は極力写さないようにする」
誠が言う。
「あとはロゴとかだな。誰かデザインしてくれる人いないか?」
「私やります~。そういうの得意だし~」
咲良さんが名乗りを上げた。
「じゃ、サイトのデザインもイメージ書いてくれないか?」
「分かりました~。できるだけカッコいいのが良いですよね~」
「……俺も協力するよ。咲良だと可愛いだけになりそうだしな」
「……春樹だけだと味気ない物になりそうだけど」
檜山先輩も乗り気になったようだ。
「ついでに、エゴイストの方も調べておくね。オープンにしてるならすぐに足がつくわ。実態晒してマスコミにリークしてやればいいでしょう」
「私も被害にあった人から聞き込みしとくわ。そっちの方が早いだろうし」
恵美さんと亜依さんが話しあう。
その日はユニティの今後について明け方近くまで語り明かした。
(4)
皆が盛り上がってる中私は晴斗を呼び出した。
星が綺麗な庭。
この場所の事は恵美さんに聞いていた。
「綺麗ね」
私は星空を見上げて言う。
「そうっすね」
「ねえ?どう思う?」
「何がっすか?」
「ユニティについて」
「そうっすね、皆アゲアゲでしたね」
「あなたもそうなの?」
「気分は盛り上がってますよ」
「じゃあ、今でも大丈夫ね?」
私はそう言って目を閉じる。
「どうしたんすか?」
彼には私の気持ちが伝わらなかったらしい。
「あなた、根は真面目なのね」
「へ?」
「もっとへらへらした、私の最も嫌いな人種だと思ってた」
「俺なんかへまやったっすか?」
晴斗は本当に気づいていないらしい。
「今やってるわ。現在進行形で」
「さーせんっす。俺肝心なところでよくミスやらかして」
「今夜は月が綺麗」
「?」
「月も星も空も綺麗。そして私は月夜に照らされて庭に立って目を閉じてあなたを待ってる」
そう言って再び目を閉じる。
もうわかるでしょ?
お願い気づいて。
願望。
夢は夢のまま、想い出は想い出のままがいいと思ってた。
でも願いは実現させなきゃ、想い出は形に残さなきゃ。
でも彼の口からでたことは……。
「マジさーせんっす!」
また気づいてくれなかったの?
失望
これも恋の一種なんだろうか?
悲しい。
私が失態を犯したの?
積極的すぎてひいた?
「恋人と行きたかった場所覚えてるっすか?」
「ええ」
言われたところは全部覚えてる。
ちゃんと心のシャッターで捕らえてる。
「そのなかで春奈が彼氏と行きたかった場所と行った場所覚えてるっすか?」
「覚えてる」
あのテレビ塔の展望台ね。
「彼女と初めてのキスはそこでって決めてあるっす。春奈にとってファーストキス思い出の場所でしたいっす」
そんな舞台を用意してあるのね。
「私の初めてのキスを貴方が演出してくれるのね?」
「演出ってそんな大げさなものじゃないけど」
「私の記念日は明後日ね」
「え?」
「帰りに寄りましょう?」
「……わかったっす」
「あなたの希望をのむ代わりに私の願いを一つだけ叶えて」
「いいっすよ。何っすかそれは?」
私は彼のもとに駆け寄ると、彼に身を預ける。
彼は私を受け止めてくれる。
彼の鼓動が聞こえる。とても早い。
私の鼓動も早かった。
2人の体温を確認し合うと、私と晴斗は目を合わせる。
このムードで耐えろなんて……。
「晴斗もも意外と意地が悪いのね」
「え?」
「戻りましょう、晴斗身体が冷えてる」
私はそう言って笑う。
「了解っす」
晴斗はそう言うと私の手を取って歩き出す。
彼の手は汗ばんでない。
もう自然と手を取り合って歩ける仲になっていた。
(5)
翌日の朝。
朝食を食べると、皆自由行動になっていた。
誠と咲良さんと檜山先輩は3人でwebデザインの打ち合わせをしている。
桐谷夫妻、中島君、一ノ瀬さんは買い出しに、女性陣は昼ごはんのメニューの打ち合わせ。
足りない食材をメッセージで桐谷君たちに送っている。
他のカップルはドライブにでかけたり、散歩をしていたり。
僕と佐、愛莉と佐倉さん、木元夫妻は体育館にいた。
連休に入ってまでバスケとは我ながら変わったな。
変わらざるを得ないんだけど。
佐倉さんは僕達の指導。
愛莉と花菜さんは何か話していた。
「冬夜、お前大丈夫か?」
佐が話しかけてきた。
「何が?」
「3週目が李相佰杯。翌週に春季大会だろ?体調的にうまくできるのかと思ってな?」
「佐が休ませてくれるか?」
「そんなつもり毛頭ねーだろ?」
「なんとかなるよ」
「怪我には気をつけろよ。お前にとって今年から勝負の年なんだ」
「わかってるよ」
「2人とも熱心だね」
木元先輩が言った。
「先輩も社会人バスケやってるんじゃないですか?」
「熱心にはやってないね。交流会みたいな感じかな?その後の飲み会がメインだ」
それで妻と喧嘩になったけどねと笑ってた。
「でも純粋にバスケを楽しめてる。勝ち負けにこだわらないバスケってのも楽しいよ」
「先輩余計な事言わないで!この二人はまだ勝ち負けにこだわってもらわないと困るんです」
佐倉さんが木元先輩を窘める。
「ごめんごめん」と笑ってかわす木元先輩。
愛莉がスマホを見る。
「買い出し組が帰って来たって~」
愛莉が言うと練習は終わりにする。
「もうそろそろ肉も飽きてきたよな」
「そうかな?」
佐が料理に不満を示す。
「佐、嫌なら自分で作ってもいいんですよ」
「そうだよ~男性陣の要望に応えて作ってるつもりなんだから」
「そうは言うけど3日連続でBBQとかきついぜ!」
「お昼は変えてあるよ?」
「今日のお昼は何なんだ?」
「ラーメンと炒飯と餃子」
それはいいことだ。
「冬夜君おかわりは無しだからね!」
「片桐先輩はいい加減に学習してください!」
食堂に向かうと女性陣は忙しなく動いている。
美嘉さんが中華鍋を必死に振っている。
海未さんと未来さん、白鳥さんは餃子を包んでいた。
愛莉とカンナが懇切丁寧に教えている。
「男共暇してるなら!テーブル拭くとかなんかしろ!」
美嘉さんに言われて慌ててテーブルを拭いたりする。
テーブルに料理が並べられると頂きます。
ラーメンが上手い。特にスープが。
市販のラーメンのスープじゃない。
「お前らが盛り上がってる間仕込んでたからな」
美嘉さんがそう言う。
午後は視聴覚室で映画鑑賞。
ゾンビ映画のパロディみたいな映画だった。
愛莉は当然の様に退室する。
僕もついて行った。
「やっぱりあの手はだめ~」
愛莉は僕に泣きつく。
愛莉の頭を優しく撫でてやる。
「せっかくだしちょっと散歩でもしよっか?」
「うん」
そうして僕たちは庭を散策する。
「明日には帰っちゃうんだね」
「今夜も騒ぐんだろうな?」
「帰ったら……色々始まるね」
「そうだね」
檜山先輩の件、白鳥さんの件、そしてエゴイストの件に僕のバスケの件。
「冬夜君頑張ってね」
「ああ、ちゃんと見ててくれよ」
「え?でもテレビじゃやらないって」
「愛莉はテレビで観るつもりだったの?」
「て、ことは」
「愛莉のチケット手配してある」
「わ~い」
愛莉は僕に抱き着く。
明日の今頃はきっと解散してる。
もっとも晴斗と白鳥さんはデートの実習があるらしいが。
あの二人はそんなことしなくてもいいのに、と思った。
しばらくして視聴覚室に戻ると桐谷君に「2人でどこ行ってたんだよ!」と言われた。
「ちょっと散歩してただけだよ」と答えると、「2人も色々あるんだよ」と亜依さんが言ってくれた。
皆を見て想う。
夢歌う日々はいつまで続くだろう。
あとどれだけ夢を見ていられるだろう。
僕はまず李相佰杯だ。
全力でやろう。
僕の夢を実現するためにも。
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