優等生と劣等生

和希

文字の大きさ
278 / 442
4thSEASON

暴露

しおりを挟む
(1)

「かんぱ~い」

今夜は男女バスケ部の祝勝会という名の合コン。
皆思い思いの相手と飲んで食べて喋ってる。
僕は佐(たすく)と佐倉さんと愛莉の4人で食べてる。
当然佐倉さんと愛莉から食べる量を制限されているわけだけど。
隙を見ては大量にとって愛莉と佐倉さんから怒られる。

「お前マジか!?」

ビールを飲みながら佐が驚いてた。

何がマジかって?
愛莉と同居生活をしていた事。
あの晩のうちに誠に任せたこと。
それは各々のスキャンダルな話題をネットに書き込むこと。
正確なソース入りで。
同時にマスコミにも垂れ流した。
その事を知った佐が聞いてきたので「うん」と答えた結果だった。
未婚の男女が同居生活。
マスコミには格好の餌だろう。
さっそく食いついて来てる。
家の周りに張り込むカメラマン。
堂々と家を出る僕と愛莉。
愛莉は最初戸惑っていたが今はカメラに向かってピースサインを送るほどの余裕がある。

「そんなこと知られたら日本代表どころじゃなくなりますよ!」

佐倉さんはそう言う。

「でも、婚約者と同居していて何が悪いの?って言われた時は嬉しかったよ~」
「遠坂先輩そう言う問題じゃありません!」

美嘉さんの親の事情から皆が同棲・結婚してることまでありとあらゆる情報を垂れ流した。
隠してる事はもうないぞと言わんばかりに。
地元銀行の株をTOBした酒井コーポレーションが酒井君の会社ということまで垂れ流した。

「何考えてるんですか!?自滅する気ですか!?」

佐倉さんは激怒する。
宥めるのも一苦労だ。

「まあ、冬夜が決めたことなら構わないと思うぜ。どうせ何か企んでるんだろ?」

佐がそう言う。

「企んでるって程の事でもないけどね」

僕もハイボールをのむ。

「っていうと?」
「こっちのウィークポイントと思われてる事を逆手にとって曝け出しただけさ」
「そんなことして何の得があるんだ?」
「相手にプレッシャーかける事が出来る。こっちはもう出すことないぞ?後はそっちのネタをばらすだけだぞって」
「てことは、取引に応じないって事か?」
「ちょっと違うかな?相手はまだ何か隠し持ってるらしいから、それを引きずり出そうとしてるだけだよ。交渉ネタが他にないんだから」

誠は絶対に身元バレてないって断言してたから多分大丈夫だろうしね。

「……その釈明を明日するってわけか?」
「そうだね」
「先輩約束覚えてますよね?『ユニバーシアード・五輪で一位になれなかったらバスケ続ける』って……」
「知ってるよ、だから敢えてこちらから正しい情報を流した。変に曲解されるよりはましだろ?」

愛莉と僕の仲を知って、それがスキャンダルだと思うマスコミはそうはいないだろう。
事実そう言うファンレターが増えたらしい「頑張ってください」とか「夢叶うと良いですね」とか。
ネットの誹謗中傷はそれをネタに楽しんでる連中のする事だから特に気にする必要はない。
あまりにもひどい奴は誠の報復が待ってるだけだ。

「両親の了解を得てるのか?」
「得てるもなにももう新婚だとおもってるらしいよ」

佐の質問に僕が答えた。

「お前たちくらい開き直られたらマスコミもつまんねーだろうな」
「そうみたいだね」

実際すぐにカメラマンはいなくなったし。

「で、次は相手の暴露か?」
「その前に皆の身の潔白の証明だよ。相手の暴露にはリスクがあるからね。こっちがやってる事を相手に知られてしまう」
「相手の事まではどこまで知ってるんだ?」
「仲間が調べてくれたおかげで組織の大まかな形は見えてきたよ。それをちらつかせるだけで相手はぐらつくさ」
「揺するつもりか?」
「そういうのが得意な仲間もいるからね」
「よくそこまで考えたもんだ」

佐が飲み物をおかわりする。僕もおかわりした。

「遠坂先輩は平気なんですか?」
「うちもどうぞ情報を広めてください。いっその事既成事実にしちゃってくださいって感じの親だから」

愛莉はオレンジ色の飲み物を飲みながら答える。

「冬夜の家の話っすか!?ネットで見た時は驚いたっす!」

蒼汰がやってきた。

「お前村川の相手しなくていいのか?」
「女性同志で盛り上がってつまんないからこっちきたんです。ところで佐はなんもないんすか?」
「まあ、普通だと思うぞ?せいぜい桜子の寝相が思ったより悪いくらいだ」
「佐!またそういうことを!!」

佐と佐倉さんの仲はそういう関係なんだろう。
あまり深入りしないことにした。

「あ、そうだ!今日は2次会カラオケっすからね!二人共きてくださいよ!」
「わーったよ」
「分かった」

そしてその晩朝まで騒いでいた。



「冬夜君もうお昼だよ~」

愛莉に起こされ目が覚める。

「……風呂入ってくる」
「は~い」

シャワーを浴びて気分をはっきりさせる。
シャワーから出ると愛莉が昼ごはんを作ってくれていた。

雑炊だった。

「昨日飲んだから消化にいい物をと思って~」
「ありがとう」
「いえいえ」

昼ごはんを食べると夕方まで時間を潰す。
勉強しないとな。
愛莉と向かい合って勉強をする。

「冬夜君、私思ったんだけどさ?」
「どうしたの?」
「もし冬夜君が代表に選考されなかったとして、そんな選手と取引するプロチームあるのかなって思ったんだよね」
「まあ少なからずあるんじゃないのか?」
「冬夜君そこまで考えてあの行動に出たんじゃないかって」
「そんな事言ってたら就職先だって決まらなくなっちゃうぞ」
「それもそっか」

そう言って愛莉は笑う。
勉強を終えると愛莉とゲームして時間を潰す。
そして出かける時間になると着替えて準備する。
さて、どうなるか楽しみだ。

(2)

「御手洗!今日もばっちり決めて来いよ!」
「分かりましたデスク!」

そう言って会社を出発して取材場所に向かう。
今回の宴の場所はこちらから指定させてもらった。
彼等には思う存分喋ってもらう。
事前に流れている噂を洗っていく作業。
彼等はどんな反応を示すのだろう?

店に着くとまずは打ち合わせ。
前回と同じように放送禁止用語は喋らない様にしてくれればあとは自由に喋って良い。
そう伝えてあった。
前よりも人数が増えてる。
あの片桐冬夜選手も今回は加わっていた。
高視聴率を取れる。デスクも私もそう確信していた。
なんせ彼と遠坂さんのスキャンダルもあるのだから……。

「片桐選手ですね。はじめまして。御手洗といいます。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。お手柔らかに」

好感の持てる選手だ。

「そろそろ本番入ります!」

私は店を出る。
カメラのまえでさっと髪を整える。

「スタート!!」
「皆さん今晩は、前回に引き続き今日もユニティの活動内容を実況したいと思います」

店に入るとカメラに気づいた皆が盛り上がっている。

「今日は前回のメンバーよりさらに増えてあの片桐冬夜選手も参加しています。片桐選手こんばんは」
「こんばんは」
「今日は片桐選手達の祝勝会という事も聞いてますけど」
「はい、ありがたいことです」
「他にもバスケ関係の人いるって聞いたけど」
「佐と佐倉さんでしょ。お~い」

奥に隠れていた。二人がこっちを見て手を振る。

「ひょっとしてお二人も交際を」
「ああ」
「はい」

ちょっと恥ずかしそうに言ってる二人、他のカップルとはちょっと違うようだ。

「今回は皆さんに聞いてみたい事をまとめてきました!皆答えてもらって良いかな?」
「いいぞ~」

美嘉さんがそう言うと皆盛り上がっていた。

「じゃあ、まずは……丹下夫妻からです。お二人は歳の差婚でさらにいとこ婚だという事ですが?」
「そのとおりだけど?」
「……はい」

こちらの二人も照れくさそうに言っている。反応が若干悪い。

「旦那さんは大学の教授だという事ですが職場の地位的にまずいと思ったことは無いんですか?」
「海未に人生を全部くれてやるっていったからクビになったら他の職探すよ」

そういってビールを飲む丹下先生。
海未ちゃんは下を向いている。恥ずかしいのだろうか?

「海未さんはどう思ってるのかな?そのことについて」
「……主人について行くだけだから」

ヒューヒューと囃し立てる周りの人達。
ディレクターから次の質問に行けと指示が。

「それでは次に酒井夫妻と石原夫妻についですが。酒井君はもうすでに企業の社長だとか?」
「え~、まあ。肩書はそうですね~。事業内容は知らないんですけどね」
「奥さんの両親の会社の子会社だということだそうですが。どんな仕事なんですか?」
「一言で言うなら。商社ね。様々なものを取り扱ってる。食料から株までぎっしりと」
「株と言えば地元銀行の株をTOBしたことで噂になってますが?」

上手くつながった。
しかし彼女はにやり笑った

「ええ、そうよ。彼の初仕事なの」
「グループの中に地元銀行の代表取締役の息子さんがいるそうですが、それと何か関係あるのですか?」
「そうね、跡取り問題で揉めてたから手伝ってあげたの」
「それってインサイダーではないんですか?」
「何も情報は得ていないわ。ただ発言権を得たいから株を買っただけ。それがインサイダーになるの?」
「……株を売却した相手は白鳥カンパニーということですが、そのご令嬢がグループにいるとか」
「私ですけど」
「お名前は?」
「白鳥春奈です」
「白鳥さんと酒井夫妻の関係は」
「グループの仲間です」
「白鳥さんは代表取締役の息子さんとの縁談があったそうですが?」

白鳥さんもくすりと笑う。

「お互い好きな人がいるから破談ですね」
「そんな簡単にうまく破談出来るんですか?」
「させてもらえるのがユニティです」
「それは酒井夫妻が何らかの圧力を加えたという事ですか?株の件といい……」

晶さんが横から口を挟んだ。

「あなた鈍いの?だから株を買ったんじゃない」
「つまり二人の恋を成就するために株の買い占めを行ったと?」
「そうよ」

平然と言ってのける晶さん。

「ご子息のご意見もお伺いしたいんですが」
「俺か?」
「お名前を」
「檜山春樹」
「白鳥さんはああ仰ってますが本当ですか?」
「間違いない」
「それで後を継ぐつもりは」
「親父が倒れて継ぐ気になった。その代わり彼女と結婚させてもらえる予定だ」
「恋愛を成就させる為ならどんな手段も使う。それがユニティの特徴だ」

渡辺君が言う。

「それは危険な行為もですか?」
「危険な行為とは?」
「例えば暴力とか……ほら、前に事件になった暴行事件。アレもユニティの仕業だと言われてますが」
「その後の話を知らないのか?マスコミは?」

え?どういう事?

「俺たちは倒れてる3にを救急車で知り合いの病院に運んで治療までしてやったんだぞ。わざわざ暴行してそこまでするか?」
「知り合いというのは……?」
「私よ」

深雪さんが挙手した。

「私が治療した。それだけじゃない檜山君のお父さんの手術もした。そういうグループがユニティよ」
「……次の質問いいですか?」
「どうぞ」

渡辺君が言う。

「多田神奈さんのお父さんが片桐選手を刺したって事件は本当ですか?」
「あいつはもう父親じゃねーよ!」

神奈さんが反応する。これはスクープになる!

「父親じゃないとは?」
「母さんとは離婚した!今母さんは別に旦那がいる!あいつとは何の関りもねーよ」
「ですが、実の父親には変わりないですよね?彼が片桐選手を刺したことについては何とも思ってないんですか?」
「……トーヤには悪いことしたと思ってる。巻き込んだのは私だし」
「巻き込んだとは?」
「トーヤに護衛をお願いしたのは私なんだ」
「どうして警察に頼まなかったのですか?」
「警察は事が起きてからじゃないと動いてくれないじゃないか!」
「当時あなたは高校生だった、そうですね?」
「そうだけど?」
「ネットでは父親と肉体関係にあったと書いてますが」
「そ、そんな事はない」

ヒットしたようだ。

「た、ただ……」
「ただ?」
「ただ父親がロリコンだった。それだけですよ。彼女は被害者だ。それにさっきからあんたのやってることセカンドレイプっていうらしいぜ」

多田誠君がそう言う。
だからそういう言葉は止めてくださいって。

「そう言えば皆さん結婚されてるという事ですが生活費はどうされてるんですか?」
「前にも言ったが皆働いたりバイトしたり苦労してるよ。そうでないのも一部いるが」

渡辺君が言う。

「渡辺君の家は奥さんが働いているとか?」
「コックしてるよ、うちの店に食いにきてくれよな~!」

皆で笑っている。

「美嘉さんの両親別居中だという事ですが……どちらにつくんですか?」
「どちらにもつかねーよ!私についてるのは正志だけだ!」

そう言い放つ美嘉さん。

「そういえば、結婚はされてないけど同居されてるカップルがいるとか?」
「は~い」

遠坂さんが挙手した。この子は危険だそんな感じがする。

「遠坂さんは誰と同棲してるのかな?」
「冬夜君」
「片桐冬夜選手?」
「そうで~す」
「お二人は独立しようとか思わないの?」
「パパさんが大学卒業するまでは学業に励みなさいっていうから独立はしません」
「しかし片桐選手の収入があれば……」
「それは挙式と新婚旅行と新居探すときにつかいます」
「もうご結婚なさる予定ですか?」
「前にも言ったけどプロポーズは受ける予定です」

嬉しそうに、恥ずかしそうに言う遠坂さん。

「てなことを前も聞いたけど片桐選手はどうお考えですか?」
「テレビで言っちゃいましたからね。ちゃんと言わないとと思ってますよ。困ったお嫁さんです」
「えへへ~」

遠坂さんの頭を撫でてる片桐選手。
やっぱりこの子と話していると頭が痛くなる。

「しかし、この事が公になれば彼の代表入りが危うくなる。遠坂さんが足を引っ張っている。そう考えたことは」
「考えました」

少しはまともな思考も出来るようだ。

「じゃあ、なぜこのような真似を?」
「冬夜君言ってくれたから。世界一になりたいというのは僕の我儘だ。だから愛莉の我儘を聞いてあげるって」

世界一!?

「冬夜の夢なんです。ユニバーシアード、東京五輪で金メダルをとってくる。世界の頂点を見てくるって」

渡辺君が言う。
さらりと凄い事を言ってるよ君。

「片桐選手今の事は本当ですか?」
「本気ですよ。でも愛莉の事も本気だから」
「俺たちはやっと本気になった冬夜を目の当たりにしてる。だからそれを邪魔する奴はこっちも本気で排除する」
「邪魔する奴というのは?」

渡辺君にマイクを向ける。

「エゴイストとかいうグループの事です。ネットで検索すれば出てきますよ」
「本気で排除というのは暴力も厭わないという事ですか?」
「相手の出方次第ですね。前にも言ったけどやられたらやり返す。それが俺達の流儀だ」
「良いぞ正志よく言った!」

美嘉さんが叫ぶと皆が歓声を上げる。

「エゴイストについてもっと深く追求しろ」とディレクターの指示が。

「エゴイストについてもう少し詳しく」
「色々な権力を使って色々しかけてくる連中ですよ。俺達には通用しなかったけどな」
「その実態は?」
「最初はただのやり目サークルだと思っていたら色々出てきましたよ。今は言えないけど」

そこを聞きたいんだけどなあ。

「言える範囲でいいので」

渡辺君は片桐選手を見る、片桐選手はうなずく。渡辺君は多田君を見る。多田君はノートPCを持ち出す。

「これ写せますかね?」

カメラをノートPCの画面にアップする。
そこには謎のキーワードが。
ボーン、ウィザード、キング、エンペラー、ナイト、執行者。
そして……

ボーン3人は執行者に執行させた。と……

「ボーンってのが誰かはわかりますよね」

カメラは渡辺君を映す。

「さて、『ウォーロック』さん。こっちの手札は見せたぜ?今度はそっちが手札を見せる番だ」

「カット!!」

ディレクターが驚く。
カメラが止まる。
デスクが渡辺君に近づき胸ぐらをつかむ。

「若造、何を言ったのか分かってるんだろうな?」
「あんたもエゴイストのメンバーかい?おじさん」
「……後悔するなよ。ガキ」
「後悔するのはどっちかな?おっさん」

渡辺君が言うとデスクは踵を返し撤収と命じて去っていった。
これ、生放送なんですけど?私今度こそクビですかね?

(3)

「予定通りだったな!正志!」

僕達は2次会のカラオケ店に集まっていた。
美嘉さんのテンションが高い。

「でも、まさか本当にテレビ局の関係者がいるとはな。恐れ入ったぞ冬夜」

渡辺君がそう言う。
そう、2度目の取材を受けたのはエゴイストではなくテレビ局に対する挑発の為だった。

「でもなんで気づいたんだ冬夜?」
「ネットの噂や書き込みだけでマスコミが動くわけがない。動くなら全国ネットで動くはずだ。それが地元テレビ局で取材なんておかしいでしょ」
「でも普通気づかないよ」

亜依さんが言う。

「1度目は偶々だと思った。でも2度目の取材が来たときに確信した。タイミング的にもばっちりだったしね」
「でも~それだけネットで注目を集めてるって事も~」
「ユニティだけ集めてる事に違和感を覚えてたんだよ。エゴイストも同じくらい注目集めて良いはずだろ?」

咲良さんの質問に答えた。皆なるほどって納得する。

「で、それを私達に黙っていたのはなんでなのかしら?」

晶さんが聞く。

「それは僕も思ったね?知ってたのは片桐君と渡辺君と誠君だけなのかい?」
「正確に言うと、今回インタビューを受けると思った人には知らせてない。自然体で話して欲しかったから」
「じゃあ、私に生でなら受けてもいいって言ったのは……」

恵美さんが聞いてくる。

「多分答え分かってると思うけど生だと編集利かないでしょ?」
「本当に片桐君の掌の上で踊らされていただけなのね」

恵美さんがため息を吐く。

「これからどうなると思う?」
「TV局は大変だろうね。それこそ特ダネだ」
「私達は?」

愛莉が不安そうに言う。

「相手が新しい手札を切ってくるだろうね。なければ探すかな」
「他人事みたいに言わないでよ、また人さらいしてくるかもしれないんでしょ?」
「それは無いと思う」
「どうして言い切れるの?」
「したくても出来ないよきっと」
「なんで?」
「それは晶さんに聞いた方がいいんじゃないかな?」

愛莉は晶さんに聞く。

「ボーンに引き続きナイトもしくじった。次出てくるとしたら執行者と呼ばれる存在か、ビショップと呼ばれる存在ね?」
「ビショップ……あ!」

愛莉も気づいたようだ、相手の階級制に。

「相手も中堅クラスが出てくるようになったんじゃどうして今回ミスったのかまず調べるでしょ?」
「確かにただのチンピラとかでは相手に出来るもんじゃないね」

恵美さんから救助の一部始終は聞いてあった。
対抗できる存在がいないだろう。

「一人暮らしの子には兵隊を一人つけるわ。念のためもあるから」

晶さんが言う。
生活に支障がない程度にするからと笑って付け加えた。

「じゃあ、今度こそ本格的に反撃開始だな!?」

美嘉さんが言う。

「まだだよ」

僕が答えた。

「まずは相手の手札を確認してからだ。調子に乗ったら逆にやられる」
「俺も冬夜の言う通りだと思う。今日ので相手は大分痛手を被ってるはず。手負いの虎ほど怖い物は無いからな」

渡辺君が言う。
僕が頷くとみんな神妙な顔になった。
一つ気になることがあった。ゴッドという存在についての懐疑性。
本当に重要人物なのか?
それが気がかりだった。何か見落としてないか?そんな不安が残っていた。
敢えて皆には言わなかったけど。

(4)

とあるカラオケ店にて。

「どういう事だウォーロック!」

ゴッドに叱られているウォーロック。
いい気味だ。
キングと俺は少なくともそう思っていた。
意気揚々と交渉に出た挙句交渉は失敗に終わり、挙句こちらの実態の一部をさらす羽目になった。

「ゴッドの手下がミスしたんだろ?手札を取られたんじゃ僕も為す術がないよ」

あっけらかんと答えるウォーロック。

「こっちの手札は全て向こうに奪われた。挙句それを正当化させられた。これじゃどうしようもない」
「良く分かってるじゃないか?ゴッド」
「お前を粛正という方法もあるんだぞ?」
「それは『ゴッドには出来ない』と思うんだけど?」

ゴッドはそう言うと何も言えなくなってしまった。
ゴッドにはできない?ゴッドよりも上の存在の支持を得ているのか?だが、そんな存在聞いたことが無いぞ。

「これからどうする気だウォーロック」
「先ずは新しい手札を集めることだね。その為の交渉手段も奪われたけど」
「また人さらいをするのか?」
「今更人質交換なんて遅いよ。とっくにウィザードは全部喋ってる。危険を冒してまで取り返す価値もない。ユニティだって馬鹿じゃない。同じ過ちを犯すとは思えない」
「じゃあどうする?」
「僕がゴッドならこうするね。相手が手を打ってくるまで今の活動を続ける」
「その活動に支障がでているのですが?」

ポープが口を開いた。

「そうだったね」とウォーロックは笑う。
「奴らの暴露サイトを潰さないと活動に支障が出ている」

俺が言うとウォーロックは言った。

「パッと見たけどかなりのやり手だね。セキュリティホールを見つけるのに時間がかかりそうだ。下手に手を出したらこっちが攻撃を受ける。物理的に破壊するしか手は無いと思うけど?」
「物理的?」
「恐らく恵美の実家にあるサーバーマシンを物理的に破壊するしか手が無いよ。そんなことできる?」
「無理だな」

キングが言う。

「まずはなんでもいい、こっちの手札を作らないと話にならない」

ウォーロックがそう言うと俺を見る。

「その仕事頼める?」
「何か手があるのか?」
「凄く簡単な事だよ、これまで通り相手にプレッシャーをかけ続ける。必ずどこか綻びが出るはずだ」
「と、いうと」
「尾行、調査。それだけでいい。アイツらが一般人であること忘れちゃいけない。必ず油断する。もしくはプレッシャーに負ける」
「ナイトにやらせるのか?」
「ボーンじゃ荷が重いだろうね」
「ボーンは何をさせる?」
「精々匿名掲示板で誹謗中傷をさせる程度でいいよ。身柄を抑えられてもいい。いつも通り粛正すればいいだけだし」
「分かった」
「人間常にプレッシャーを受けていれば必ずつぶれる。それを狙えば良い。難しくはない。それは僕達の得意分野だ」
「話はそれで終わり?」

ポープが言う。

「今日のところはね。次は新しい材料が入ったらまた話し合おう」

ウォーロックがそう言うと二人のキングが部屋を出た。

「エンペラー、君は残って」

ウォーロックが言う。まだ何かあるのか?

「君はどう考える?ユニティのこと」
「素人の割には強力な集団だ」
「その考えをここに置いて行った方が良い」
「なに?」
「あいつらは立派なプロだよ。その道のね」

さっき一般人だと言ったのはお前だぞウォーロック。

「こっちが手札を使い切ったと思うまでは徹底的に防戦に回るつもりだ。今回はイレギュラーだったけど。片桐冬夜に嵌められたと言った方が良いだろう」
「それで?」
「いま一度言うが今は放っておいて本来の業務を全うするんだ。いいね。彼等がちょっかいを出すまで今まで通りでいい!余計なことは考えるな」
「負けを認めろと?」
「勝者は最後に笑っていたものだよ?」
「……わかった」
「ゴッドもわかったね?焦る必要はない。相手はこっちの手札がまだあると思ってる。ブラフだよ。そう思わせておけばいい」
「……俺は俺独自で行動する」
「下手なことしてしっぽ掴まれても僕は責任とらないよ?君自身で責任とるんだね?」
「そんな事分かってる」
「ならいい」

やれやれという仕草を見せるウォーロック。
ゴッドに対してこの態度、やはりウォーロックにはゴッド以上の何かがついてると考えた方が良さそうだ。

(5)

「……と、いうわけだけど」

いつものファミレスに集まる皆。
要するに相手はもう持ち札がないってことだね?

「薄々そんな事だろうと思ってたけどね」

冬夜君はそういう。どこまで把握してるんだろう?

「皆にプレッシャーか……一番の急所は神奈さんだな」

渡辺君が言う。

「何で私なんだよ?」

神奈が言う。

「昔のトラウマを未だに引きずってる。普段はそうやって強がっていてもいざとなったらすくみ上る。24時間監視されることを想像してみ?」
「それは……」

神奈は何か言おうとしたけど黙ってしまった。
女性だもん仕方ないよね。

「男にはわかんないわよ、神奈ちゃんの気持ち」
「俺は分かってるよ。神奈の気持ちくらい」
「お前に分かってもらえてなかったら大問題なんだけどな、誠」

恵美さんと誠君と神奈がそう言う。

「で、どうする?さすがにずっと耐えるのは厳しいと思うが、ウォーロックの言う通り」
「どうもこうもないよ、あとはたたみかけていくだけだよ」

渡辺君の質問に冬夜君が答える。

「具体的には?」
「ゴッドの手札をまず見る。大方予想がつくけどそれを見越して行動する」
「予想ってどんな手段だ?」

渡辺君が言うと冬夜君は丹下先生と聡美さんを見る。

「多分思いっきり脅しをかけられるのは2人だと思う」
「なんでそう思うの?」

聡美さんが言う。

「丹下先生は国公立大学の教授。聡美さんは建築関係の設計会社の社長」
「……つまり国家権力を使ってくるって事?」
「そうだね」
「片桐先輩はどうするつもりなんですか?」
「尻尾を捕まえる」
「どうやって?」
「忘れた?強大な存在ほど敵が多いって」
「それ私がいったやつね?」

晶さんがそう言うと冬夜君は頷いた。

「人間パンをこねると小麦粉が手についたり米を研いだら米が手についたり痕跡が残るよね?」
「それを掴もうってのね?」

恵美が言うと冬夜君は頷いた。

「ウォーロックの言ってる事は正しいんだ。先に動いたら負ける。だったら先に動くのを待つ。それをやられたらこっちは手札を切っていくしかない。けど手札は最後までとっておきたい」
「ゴッドが仕掛けるのを捕まえて一気に引き抜こうってわけか?」
「そうだね、例えば晶さんの家なら大物議員くらいパイプがあるでしょ?」
「いるわよ、たかだか新人の県議員くらい赤子の手をひねる様なものよ」
「その人に証拠を渡してやればいい。それで勝手に自滅する」
「わかったわ」
「あとは、尾行追跡の件だけど……神奈には悪いけど囮になってもらう。狙われるのやっぱりカンナだと思うし」
「私に出来る事あるのか?」
「普段通り行動してくれたらいい。あとは晶さんの兵隊が取り押さえてくれるだろうから。何があっても無茶はするなよ。安心して生活してくれ」
「……わかった」
「尾行しているのを尾行すればいいの?」
「そうだな、それだけじゃ不十分だな。誠?お前金持ってるか?」
「多少なら貯えはあるけどどうするんだ?」
「神奈の車に車載カメラとあと神奈に防犯ブザー買ってやってくれないか?」
「証拠固めするんだな?」
「そそ、こっからはうちが攻める番だ。警察も利用する。隠ぺいしようとしたのならその証拠も押さえてしまおう」
「そういうのなら、私に任せて、そっち関係も強いんだよ」

恵美の家って本当になにしてるの?

「後は従来通りエゴイストのサークルの実態を暴いてやろう。最もそんなに活動できないだろうけど。闇ビジネスってのをおさえるのもいいかもね」
「俺は冬夜の意見に賛成だけど皆はどうだ?」
「ようし!ここからは遠慮なくいくぜ!」

誠君が今まで遠慮していたのかどうかは分からないけどやっと反撃の時が来た。
ここからは手加減しないんだから!

(6)

「また今日も遅くなってしまったな」
「しょうがないよ」
「……」
「どうしたの冬夜君」
「今更こんな事で照れるのもどうかと思うんだけど」

ほえ?

「遅いし一緒にお風呂入っちゃおうか?」
「うん♪」

私と冬夜君は一緒にお風呂に入ってそして部屋に戻ってくるとお酒を少し飲む。
その後深夜番組を見てベッドに入る。

「ねえねえ、冬夜君」
「どうした愛莉?」
「冬夜君はすごいね、勘も冴えてるし次々とアイデアを出していく」

サッカーやバスケやってる時みたい。

「ありがとう」
「今は何を考えてるの?」

なんとなく思い当たることはあるんだけど、あなたの口から聞きたいの。

「そうだなあ、愛莉は気づいてるんじゃないのかい?」
「でも冬夜君の口から聞きたい」
「困ったお嫁さんだな」
「えへへ~」

冬夜君は私に耳打ちする。
私の顔は赤くなり体は火照る。

「どうしたら愛莉と朝まで過ごせるか?」

その方法なら私知ってるよ。
冬夜君に耳打ちする。

「やっぱりそうなるよな」

そう言うと冬夜君は私の背中に手を回す。
片手でかるくつまんでブラを外す。

「そんな技術どこで覚えたの?まさか……」
「違うよ。昔ネットで調べただけだって。」

知ってるよ。ちょっと悪戯したかっただけ。
そうして冬夜君と二人で夜を明かす。
雨上がりの空をみる朝まで。
ユニティのに降り続いた雨もやっと上がろうとしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処理中です...