優等生と劣等生

和希

文字の大きさ
279 / 442
4thSEASON

君がいるから

しおりを挟む
(1)

「じゃあ二人の幸せを祈って乾杯」
「かんぱ~い」

今日は西松夫妻の結婚式・披露宴の日だった。
式は恙なく行われ、今は二次会の会場に来ていた。
ブーケトスは美嘉さんが受け取った。
二次会は渡辺班だけでなく、西松夫妻の友人も呼ばれ西松夫妻は皆の挨拶の対応に追われていた。
冬夜君は2人のお祝いに来たのかご馳走を食べに来ただけなのか分からない始末。

ぽかっ

「愛莉もこれ食べてごらんよ、キャビアだよ。ほれあ~ん……」

ぱくっ

「美味しい」
「だろ?」

ってそうじゃなくてさあ……。

「冬夜君私達も挨拶に行こ?」
「披露宴の時にしたからいいだろ」
「だめ!行くの!」
「皆で行ったら二人共疲れちゃうよ」
「うぅ……」
「行ってあげたら次の3次会で食べたいだけ食べて良いから」

……ってそんな手通じるわけないか?

「急ごう愛莉。時間になっちゃう」

うぅ……喜んでいいのやら。

「おめでとうございます西松君、深雪先輩」
「おめでとうございます」
「二人共ありがとう」
「君たちの結婚式にも招待してもらいたいんだが……」
「別にいいですよ」
「そうか、迷惑かけたから無理だから祝電だけにしておこうとおもったんだが」
「何言ってるんですか?今はユニティの仲間ですよ」
「そう言ってもらえると助かるよ」

あれ?なんかおかしいよねこの会話。

「で、二人の挙式はいつごろの予定なの?」
「まだ決めてないです。大学卒業してからかな」

冬夜君が気分良さそうに喋っているのはお酒のせい?それとも3次会で食べられるから?

「冬夜君言ってる意味わかってる?」
「ん?だから愛莉との式いつするかって話だろ?」

そうだけど……。

「とーや!ついにその気になったか?」

美嘉さんが突っ込みを入れる。

「なにが?」

駄目だ、この人気づいてない。

「だから、愛莉と結婚する気になったってことだろ!?」
「する気になるも何も最初からその気だよ?」
「愛莉ちゃんいつプロポーズ受けたの!?」

恵美から言われた。

「まだだよ……」

私がそう言うと場が静まり返る。

「え!?片桐君愛莉と結婚する気なんでしょ!?」
「その気だよ~」

冬夜君の思考は食べることに夢中のようだ。
でも待てよ……今なら言ってくれるかも。

「冬夜君結婚してくれるの~?」
「当たり前だろ~?」
「じゃあいつプロポーズしてくれるの~?」
「へ……あ……」

気づかれたか。
でも冬夜君の気分は昂っていたらしい、多分食べ物のせいで。

「2年後のクリスマスイブに指輪プレゼントする予定だよ」

やばい、私泣きそうだよ。
本当にその気なんだ。

「おい、この馬鹿!今言ってる事ちゃんと覚えてるんだろうな」
「当たり前だろ~愛莉にいつプロポーズするかって話だろ」
「それって今言ってるのと同じじゃねーか!」

神奈が突っ込む。けど冬夜君は本当に浮かれているらしい。

「それもそうだな。愛莉2年後にはプロポーズするけど指輪受け取ってくれる?」

卑怯だよ冬夜君。そんな予約するなんて……。

「愛莉今がチャンスだぞ既成事実にしてしまえ!」

神奈の言う通りだ。

「……はい。ちゃんと待ってるね」

私がそう言うと皆が盛り上がる。

「こりゃ3次会はとーやと愛莉のお祝いも兼ねてだな!」
「愛莉やったな!でももうひと押ししておいた方がいいぞ」
「愛莉ちゃん録音しとくから、ちゃんと聞いておきなさい」

恵美が言うのでもう一度確認した。

「冬夜君2年後のクリスマスイブにプロポーズしてくれるんだよね?」
「そうだよ♪」
「入籍はいつするの?」
「2月15日。愛莉との記念日」
「式はいつ挙げる?」
「愛莉はいつ挙げたい?」
「いつでもいいよ♪」
「じゃあ、プロポーズOKしてくれたら、すぐ式場の手配するよ」
「式場は海辺のレストランだよ?」
「中学生の頃から言ってたもんな」
「うん♪」

覚えててくれたんだね。
恵美を見る。

「ばっちり取れたわよ。あとで送るわね」

その後も冬夜君は気分よく食べてた。
今度から冬夜君にはこの手を使おうっと。
その後3次会に行った。
西松夫妻はお疲れみたいで帰ったけど、私と冬夜君のお祝いの席にしてくれた。

「冬夜2月15日ならいつでいいんだろ?来年でもしとけ?」

神奈が言うと。

「プロポーズしてから入籍が普通だろ?」
「じゃあ、今プロポーズしろよ」
「プロポーズする日は決めてるって言っただろ?」
「お前さっきの愛莉の言葉聞いてなかったのか?」
「何を?」
「恵美……さっきの音声データ」

恵美が再生する。
冬夜君は「あっ!」と声をあげて頭を抱える。
皆はニヤニヤ笑ってる。

「もう逃げ場は無いわよ。片桐君?」

恵美の言葉に返事がない冬夜君。
自分が何を言ったのか今頃理解したようだ。

恵美が何かを察したのが再びICレコーダーを準備する。

「もうこうなったら何時言っても一緒か……愛莉結婚しよう」

ばこっ!

「片桐先輩最低!酔った勢いでプロポーズなんて信じられない!」

佐倉さん、冬夜君は酔ってなんかいないよ。お酒に酔ってないのは間違いない。冬夜君は食べ放題で浮かれてるだけ。

「私はいいよ。冬夜君のプロポーズ。嬉しいよ」
「遠坂先輩次の日絶対覚えてないですよ!」
「佐倉さん大丈夫ちゃんと録音したから。覚えてないとは言わせない」

恵美がそう言う……でもね。

「……だから冬夜君が好きにしても良いよ。2年後って言うなら待つから。私はいつでも準備して待ってる」
「愛莉こういうのは勢いが大事だぞ!2年も待ってたらこいつまた難癖付けるかもしれない!」

美嘉さんが言う。

「でも冬夜君が結婚したいって気持ちは本物みたいだから」
「当たり前だろ?愛莉以外のお嫁さんなんて考えられないよ」
「うん、じゃあ結婚しようね」
「ああ、約束だ」

そう言うと冬夜君は再び食べ物に食いつく。
その晩は皆飲んで歌って大騒ぎの楽しい宴。
宴は夜明けまで続いた。

(2)

「冬夜君もうお昼だよ~お昼ご飯できたよ~」

あ、もうそんな時間か。
起きるとダイニングに行く。
おお、豚骨ラーメンじゃないか!
有難くいただく。

「ご馳走様」
「お粗末様です」

愛莉の機嫌がいい。
何か昨夜いいことあったのかな?
昼食を食べると部屋で勉強。
鼻歌交じりに勉強している愛莉。
やっぱり何かあったのかな?

「なあ?愛莉?」
「な~に」
「昨夜なにかあった?」
「え?」

愛莉の表情が陰る。

「覚えてないの……?」
「え……あ……うん……」

やっちゃったかな。地雷踏み抜いたかな?
不穏な空気が流れるかと思いきや……。

「やっぱり昨日録音しておいて正解だったね♪」

そんなに機嫌悪くないらしい。そんなにいいことあったのだろうか?
スマホを取り操作し「この紋所が目に入らぬかぁ!」といわんばかりに突きつける。
昨夜録音したものらしい。
僕と愛莉の会話。だが、普通ではない。
え?僕やっちゃった?いや、完全にやらかしてるだろう。
思い出せ、昨日2次会に行って愛莉に「挨拶したら3次会食べ放題」って言われて……あ、思い出した。
どうしよう、今更なかったことにしてなんていったらそれこそバッドエンド確定じゃないか。言っちゃったものは仕方ない……か?

「愛莉、今から宝石屋さん行こうか?」
「ほえ?」
「婚約指輪買いに行こう?」

そんな事言ってる時点でプロポーズしてるようなもんじゃないか?

「え?いいの……」
「うん」
「わ~いって言いたいんだけど……」

え?断るの?僕やっちゃった?同居までしてるのにやらかすのか僕は。

「あのねえ~どうして録音したと思う?」
「証拠にとったんじゃないのか?

そう言ってるぞ。

「それはそうなんだけど、記念にとっておきたかったから。私嬉しかったよ。冬夜君にその気あるんだって」
「それは前から時期が来たら結婚するって愛莉に言ってきた……あっ」
「でしょ?私の返事聞いてなかったでしょ~?」
「今聞かせてくれるの?」
「さっきの音声の中で言ったよ」
「いつでも待ってるって言ってたね?」
「うん」

愛莉はにっこり微笑む。

「だからいつでもいいんだよ?冬夜君が2年後って言うなら2年待つよ。実際は今だって結婚生活してるようなもんだし」

そう言われたらそうだよな。

「でも入籍の日は薄々気づいてたけどまさかプロポーズの日までねえ……」
「何かの記念になる日が良いかなと思ったらクリスマスが近いかなと思って」
「そっかぁ~じゃあ挙式の日も決めてるの?」
「うん、予約がとれたらだけど……」
「いつなの?」
「……10月5日」
「え?」
「愛莉の誕生日にと思ってるけど」

愛莉は僕に抱き着く。

「私今すっごい幸せだよ~♪」
「それってさ、OKしてくれたってこと?」
「……口やかましいお嫁さんでよければ……」
「……ありがとう」
「それを言うなら私の方だよ?」

そうして休日の幸せな午後をすごした。

(3)

「自宅謹慎……ですか?」
「当校としてもね、未成年の子と入籍するような者を教授なんてことが知れて放っておくことは出来んのだよ」
「当面処分が決まるまでは自宅謹慎しててくれたまえ」
「……わかりました」

いまさらな理由だ。
ユニティの言っていたゴッドの圧力だろう。
準備室に戻ると塑像していた海未にその事を伝える。

「修ちゃんクビになっちゃうの?」
「わからない、その可能性はある」
「私がユニティに誘ったから?私修ちゃんに迷惑かけた?」

俺は海未の顔を両手でつかむ。

「海未、ユニティがなかったら俺と海未は結ばれなかった。ユニティは立派なご利益のあるグループだよ」
「でも……」
「心配いらない、こう見えて講師に来て欲しいとか助手に欲しいとか色々働き口はあるんだ。論文を出版してもいい。海未を食わせるくらいはできる」
「……うん」

海未と荷物をまとめていると真鍋と竹本がやってきた。

「先生!謹慎処分て本当ですか!?」
「ああ……本当に圧力がかかったみたいだな」
「先生!辞めるなんて馬鹿な事したら行けませんよ」

真鍋がスマホを見るように言う。
ユニティからだった。

「教育面から来たのね?大丈夫ルートは割り出せてる。すぐに圧力をかけるわ。心配しないで」

恵美という子のメッセージだった。

「こういう圧力には強いグループだって聞きました。先生諦めないで!」
「……ありがとう」
「修ちゃん大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だよ海未ちゃん」
「よかったね!修ちゃん」
「そうだな」

そう言って海未の頭を撫でる。

「……実はうちにも来たらしいみたいで」
「真鍋にも?」
「聡美から聞いた話なんですけど公共事業関係の仕事全部キャンセルされたらしいです。あとそれ以外でも『未成年をかどわかすような経営者に家は任せられない』って。俺もう成人なんですけどね」

真鍋は笑ってた。

「その事は恵美たちには?」
「言いましたよ。『そんなの余裕よ。公共事業の汚職なんて正に格好の餌だわ。任せておきなさい』って」
「そうか……」
「多分ゴッドってやつの暴走がはじまったんでしょうね?」
「まさに狐のしっぽを掴むチャンスか」
「だと思います」

竹本が何か言いたそうだ。

「先生。うちにも最初誹謗中傷が来ました。きっと海未ちゃんにも来ると思います。守ってやれるのは先生だけです。がんばってください」
「ああ、分かってる」

海未が足を掴んで離さない。
どうかしたのか?

「修ちゃん大きくて抱きしめてあげられないから……」

なるほどな。
俺は海未をだっこしてやる。

「これならどうだ」
「修ちゃん私の事子供扱いしてる」

海未はむくれていた。
なるほど、最近なんか機嫌悪いなと思ったらそう言う事か。
海未も大人になってるんだな。
俺も年を取るわけだ。
年を取ると弱気になる。
前を向いてひた走る若者において行かれてしまう。
じゃあ、どうすればいい?
ゆっくり後を追いかけて転んでいたら起こしてやればいい。
それが大人の役割だ。
自分がいつか疲れて動けなくなる時まで、ずっと見守ってやればいい。
その時が役割を終えた時だ。
そんな時が海未にも来るんだろうか?

「修ちゃん準備出来たよ」
「ああ、行こうか?」

俺は部屋を後にした。
戻れるかもしれない。
そうかもしれないけど。
戻る気は無かった。
海未の画家としての才能を生かせる環境を作ることに全力を傾けようと思う。
もちろん、講演とかしてお金を稼ぎながら。
必要とあればどこかで務めるのも悪くないかもしれない。
だけどできるだけ海未の側にいてやろう。
そう考えていた。

(4)

その日は遅くなった。
急いで帰るが後ろの車両に異変を感じた。
車間距離を開けているわけでもなく、詰めているわけでもなく一定の距離を空けて追いかけてくる。
気のせいかもしれない。
最初はそう思った。
だけどこちらがウィンカーを出すとギリギリで同じ方向にウィンカーを出す。
偶然?
そう考えるのは今の状況を考えると危険だ。
誠にハンズフリーで誠に電話をかける。

「お、どうした神奈」
「……つけられてる」
「やっぱり、来たか」
「なあ、私どうすればいい?」
「落ち着け、予定通り行動すればいい」
「わかった。」

落ち着け私。
ふとルームミラーを見る。後をつけてる車の後ろにワゴンが追走してる。
私はあらかじめ決められていた通りに家の駐車場に車を止める。
すると、後ろを付けていた車から、スタンガンらしきものを持った男二人が接近してきた。
私は足が震える。
その場から逃げなきゃ。だけど足が震えて動けない。
男二人が私を取り押さえようとしたとき3人組の男が2人組の付きまとっていた男を拘束する。

「お前ら何の用だ!?」

2人組の男は黒のパーカーを着ていた。

3人組の男は皆スーツを着ていた。胸の筋肉があつい。
胸だけじゃない。全身を筋肉で包まれているような体格だった。
髪は金髪だった。
3人組の男は言った。

「お前たちの行動は全部ドライブレコーダーに記録してある。証拠を提出すれば警察に身柄を拘束されるだろう」

2人組の男達は黙っている。

「誰に頼まれてやった?」

3人組の男は聞いた。しかし答えない。

「……ゴッドに頼まれた。違うか?」

2人組の男は体をびくつかせた。

「何も言わないなら仕方ない。警察に突き出すまでだ」
「警察に突き出しても無駄だ。俺たちはすぐに釈放される!」

2人組の男がやっと口を開いた。

「無駄かどうかは突き出してみたらすぐわかることだ」
「頼む!見逃してくれ。粛正されてしまう」
「粛正とはなんだ?」
「3人のボーンの話は知ってんだろ?」
「私刑に会うという事か?」
「そうだ」
「お前たちに命じたのはゴッドという男で間違いないな?」
「ああ、そうだ」

2人組の口が軽くなる。

「この女性を狙った理由はなんだ?」

スーツの男の質問は冷静だ。

「一番狙いやすかったからだ。そう聞いていた」
「他に狙っているのは誰だ?」
「……渡辺美嘉と桐谷亜依。それに木元花菜だ」
「理由は狙いやすいから、そうだな?」
「ああ、そうだ」

スーツの男の質問は終わった。そして指示が下る。

「お前たちは俺達の車に乗れ。お前たちの車のカギを渡せ」
「俺達をどうする気だ?」
「安全な場所に運んでやる。ゴッドにもばれない」

黒いパーカーの男がカギを渡す。
そして男の車に乗り込む。

「神奈!」

誠がやってきた。

「誠!」

私は誠に抱き着いていた。

「大丈夫だったか?」

誠の声が優しい。

「ああ、大丈夫だ。それより……」
「大丈夫、冬夜の計画通りだ」
「そうか、それは良かった」

スーツの男がやってきた。

「私達はこれからこの男を連れて行きます。不要不急の外出は控えてください」
「わかりました」

誠が答えると5人は去っていった。

「さ、家に帰ろう?」

誠が言う。
私達は家に帰った。
誠がユニティのグループに報告する。

「冬夜の予定通りだ。神奈を狙ってきた」
「大丈夫だった?」
「ああ、護衛の人が助けてくれたよ」
「よかった。何か言ってなかったか?」

私がメッセージを打つ。

「亜依と花菜。それに美嘉も狙われている!気をつけてくれ!」

でもどうして花菜を?それが不思議だった。

「買い物で人ごみに紛れる事が多い。それが狙いだったんだろう?狙いやすいしね」

主婦で外出しないから大丈夫なのでは?と思ったけどトーヤは違うという。

「多分女性なら誰でもいいと思ってる。気をつけて」
「そうでもないみたいだよ」

亜依が言う。

「うちの主人がまだ帰ってこないの?連絡しても返答がないし」
「スマホは持っていたのか、聞いてくれ!」

誠が言うので聞いてみた?

「持ってるはず。どうしよう?瑛大の身に何かあったら……」

誠に伝えると誠はすぐに追跡を始める。

「あれ?街中にいるぞ?」

誠が、意外な一言を言う。

「本当か?」
「ああ、飲み屋のビルの中だ。恵美さんで情報掴んでないか?」
「普通にキャバクラで飲んでるそうよ?仲間と」

あの馬鹿は……。

「すぐに連れて帰るように指示してくれ。ハニートラップの可能性がある」
「分かったわ。引きずってでも連れて帰らせるわ」

トーヤが指示を出すと恵美は答えた。

「ああ、ついでにキャバクラについてる女性の顔を写真に撮っておいてくれないか?」
「ええ?いいけどどうするの?」

誠に言われたようにメッセージを送ると恵美が聞いてきた。

「あいつらのしっぽを捕まえる手掛かりになるかも」
「……分かった。店の名前もチェックしとくわね」
「他の皆は家に帰ってるか?」
「ああ、美嘉も帰ってる」

渡辺がそう言った。
取りあえずは安心だ。
そして証拠固めは順調に進んでいると誠は言う。

「ゴッドはもうお終いだよ」

誠が言う。
これで、エゴイストの件は片が付く。
頭を押さえたんだから。
でも冬夜は言う。

「まだ油断は禁物だよ。ウォーロックの存在を忘れちゃいけない」
「ゴッドを押えたらエゴイストは終わりだろ?」
「そうとは限らないよ」

トーヤのいう事が気になってしょうがなかった。

(5)

「瑛大今日飲みに行かね?」
「あ、無理。嫁が五月蠅いから」

僕はすぐに断った。

「固い事言うなよ。たまには息抜き必要だろ?この人がゴチってくれるって言うからさ」

その人は見たことのない金髪の男だった。
見た目チャラそうなイケメンだった。

「君が桐谷瑛大君?たまにはどうだい?」
「あなたは誰?」
「江藤出夢。良い店知ってるんだ?どうだい?」
「どんな店?」
「可愛い子一杯揃ってるよ」

絶対無理だ。亜依に怒られる。

「無理、ごめん」
「まあ、まずは飯でも食って話そうや」

男がしつこく勧誘する。

「飯くらいなら」

それが間違いの始まりだった。
美味い飯と酒。
すっかり気分を良くした僕は「どう?この後も付き合わない?どうせ朝まで帰れないだろ?」という勧誘に乗ってしまった。
店は高そうな店だった。
飲んでる客も相応の金を持っていそうな客だった。
僕は気分が良かった。
口も軽くなっていた。
話題のユニティのメンバーだと言う事も明かした。

「うそっ。やだめちゃかっこいい!」

女性の注目は僕一人に集まる。
色んな事を聞かれた。
仲間の事、妻の事、学校生活の事。
ありとあらゆる質問に答えた。
するとスーツの男がやってきた。

「桐谷瑛大君ですね。奥さんが心配してます帰りましょう」
「誰だあんた?」
「お嬢様の護衛と言ったら理解してもらえるでしょうか?」

酔いが一気に醒めた。
亜依にばれてる。
こんな事をしてる場合じゃない!

「ぼ、僕先に帰るね」
「待てよ瑛大、お前がいないと盛り上がらないだろ?」

なぜか焦ってる様子のサークル仲間が呼び止める。
しかしこの世に怖いものがあるとしたら亜依だ。

「ご、ごめん。嫁がまってるから」

それでも呼び止めるチャラい男。

「あまり無理強いをしてはいけませんよ。今は江藤さんでいいんでしたっけ?」

今はってどういう意味?まさか偽名?

「うちの情報網をなめちゃいけない。偽名って事くらいすぐにわかりますよ。エゴイストの方ですね?」

僕は背筋が凍る。
罠に嵌められた?

「じゃ、じゃあ帰るから!」

そう言って店を後にした。
車は男の人に代行してもらった。男は2人いた。
車の中で説明を聞く。
愕然とした。
あの店自体がエゴイストのゴッドの息がかかっているという事を聞いた。
家に帰ると案の定怒られた

「この馬鹿!どれだけ心配したと思ってるんだ!」

亜依は泣いていた。

「ごめん、最初は断ったんだけど……」
「軽率な行動は取るなと言われてただろ!それに連絡しても出ないし!攫われたのかと思ったぞ!」
「ごめんなさい」

ひたすら謝るしかなかった。

「私が怖いとか考えてるの?私そんなに信用無い?すっごい不安だったんだぞ」

胸の内を明かす亜依。

「お前が飲んでる間に私の身になにかったら……。そうは考えなかったのか!?」
「……本当にごめん!」

一心に頭を下げて謝る僕。

「男性陣で一番狙われるのは多分瑛大だ。気をつけろ」
「わかったよ」
「でも、片桐君と多田君が言ってた『お蔭で尻尾が掴めた』って……。それに免じて許してやる。次は無いからな」
「分かってるよ」
「……キャバクラの女ってそんなにいいのか?私よりいいのか?私が怖いか?お前二度目だぞ」
「そんな事無いよ。亜依が一番だよ!今回はご飯食べて酒飲んで一瞬気が緩んで……」
「今度から急用が出来たら私に連絡入れろ。てか私の連絡くらいすぐに返事をちょうだい!」
「分かった」

亜依は僕に抱き着く。

「罰だ、今夜くらい優しくしてくれ……」
「わかった」

何度も何度も亜依を傷つけて。
それでも亜依は僕を信じてとまらない。
僕も亜依を止めずに一緒に歩く道を探そう。
永遠に汚れない想いがあるから。
亜依を止めないようにしよう。
亜依は生きてる。
離れていても明日が見えなくても愛は止めない。
雨が降り続いても、闇が深くても朝はくるのだから。

(6)

「今日もお疲れ様でした~」

愛莉とドリンクの缶をもって乾杯する。

「神奈は冬夜君の予想通りだったけどまさか桐谷君ねらうなんてね。冬夜君も予想外だったでしょ?」
「まあ、そうだね」

まあ、男で狙われるとしたら桐谷君か酒井君だと思ったけど。

「この後どうするの?」

愛莉が聞いてきた。

「桐谷君のお蔭で、ゴッドの関連企業が分かった。多分大きな前進だと思うよ」
「狐のしっぽを掴んだってやつ?」
「そうだね」

上手い事こっちの手札を増やしてくれた。
それに、聡美さんの件と丹下先生の件もある。
見事な癒着の関係を露呈してくれた。
そのラインはすでに恵美さんが把握してる。
志水さんもすでに圧力をかけてくれてるらしい。
だけどいい事ばかりじゃない。
桐谷君がどこまで喋ったのか分からないけどこっちの情報を流してしまった。
大学生がキャバクラで遊ぶってのも問題かもしれない。
相手に手札を作ったのは間違いない。
それに対してどう切り返すか……?

「お~い、また入ってるよ~」
「ああ、ごめん」

愛莉は僕の腕を組む。

「冬夜君は安心だよね。こんなに可愛いお嫁さんがそばにいるのに自分の世界に入っちゃうんだもん」
「自分で可愛いって言うか普通?」
「あら?冬夜君はお嫁さんの事可愛くないって思ってるわけ?」
「そんなわけないだろ?」
「でしょ♪」

愛莉のご機嫌を取っておくのも大事だよな。
愛莉を一人にするのも危険だ。
護衛はつけてくれてるらしいけど。
それらしい視線にも気づいていたけど狙われてるのも確かなようだ。
護衛に頼らず自分で守りたい。
愛莉を一人にしない様にしないと。
愛莉には何度も危険な目にあわせている。
今度こそ守らなきゃ。

「守ってくれるのもいいけど、冬夜君が怪我するのはいやだよ?」
「ああ、わかってるよ」
「冬夜君は夢があるんだから、こんな事で怪我したら駄目!」
「うん、ありがとう」
「夢か、叶うと良いね」
「叶えてみせるさ」
「私の夢も叶えてね?」
「うん?」
「冬夜君のお嫁さんになること~」

ああ、そうだね。

「半分叶えてるようなものだろ?」
「分かってないな~冬夜君は。やっぱり旦那様とヴァージンロード歩きたいよ」
「……わかったよ」
「じゃ、そろそろ寝よっか。また明日から授業だし」
「そうだな」

愛莉とベッドに入る。

「ねえ冬夜君?」
「どうした?」
「冬夜君は本当に女遊びしないね?」
「する必要ないだろ?」

愛莉がいるんだし。

「ああ、私の事遊び程度の軽い女だと思ってる!?」
「そんなわけないだろ?」

絶対言われると思った。

「息抜き……必要なら私でしてね?」
「そうさせてもらってるよ」
「本当に?」

愛莉を抱きしめる。

「ほらな?」
「うん」

愛莉はそう言うと眠りについた。
その寝顔は取れも穏やかな寝顔だった。
いつでも笑顔の絶えない愛莉。
偶に曇らせることもあるけど。
ずっと僕の事を想ってくれてる。
僕もそれに応えてあげないとな。
僕自身の力はとても弱い物だけど。
それでも目に映る愛莉の笑顔を守れるくらいには強くありたい。
そんな事を考えていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

人質王女の恋

小ろく
恋愛
先の戦争で傷を負った王女ミシェルは顔に大きな痣が残ってしまい、ベールで隠し人目から隠れて過ごしていた。 数年後、隣国の裏切りで亡国の危機が訪れる。 それを救ったのは、今まで国交のなかった強大国ヒューブレイン。 両国の国交正常化まで、ミシェルを人質としてヒューブレインで預かることになる。 聡明で清楚なミシェルに、国王アスランは惹かれていく。ミシェルも誠実で美しいアスランに惹かれていくが、顔の痣がアスランへの想いを止める。 傷を持つ王女と一途な国王の恋の話。

処理中です...