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4thSEASON
賢者も忌避する伝言の真意を
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(1)
「冬夜君おはよう!朝だよ~」
冬夜君の返事が無い。
そっか、今日は土曜日か。
私はキッチンに行くと朝食の準備を始める。
準備が終わる頃には麻耶さん達が起きてくる。
3人でご飯を食べる。
その時に麻耶さんが言った。
「冬夜がいない間くらい家に帰ってあげたら?」
私至らないところあったかな?
「私いたら迷惑ですか……?」
「そうじゃないのよ。ただ冬夜の居ない時くらい梨衣さんに元気な姿見せてあげてもいいんじゃないと思って」
「きっと今帰ったら怒られます『亭主のいない間に家を出るなんて勝手な真似は許しませ~ん』って」
「それはそうだけど……じゃあ、おばさんと約束して。年末年始くらいは冬夜を連れて挨拶に行ってあげて」
それはきっと冬夜君も考えてくれてるはず。
「は~い」
でも最近パパさんにはよく会ってる。
良い事なのか悪い事なのか分からないけど。
りえちゃん元気なのかな~?
片付けは麻耶さんに任せて私は一人でカフェオレをもって冬夜君の部屋に戻る。
テレビをつけると、週末の番組をやってる。
それをみながら、ノートPCでSNSのチェックなんかをやってる。
するとメッセージがはいってくる。
「今みんな何してる?」
亜依からだ。
「暇してる~」
「バイトの準備~」
「これから仕事~」
「家事の真っ最中よ」
皆大変なんだね。
それでも午後には皆暇が出来るらしい。
「じゃあ、午後に青い鳥に集合しない?」
集合?
「公生が言ってたでしょ?あの別荘はもう安全と思うのは危険かもしれないって」
言ってたね
「別の別荘探しておいたわ。そこなら絶対に破られない自信がある。バンカーバスターでも持ってこない限り破壊も不可能よ」
そんなの一個人が持ってたら十分問題になると思うけど。
「そこに皆で行くの?」
「そのつもり。下見だけでもして判断を仰ぎたいから」
晶が言う。
「さーせん!俺午後からバイトなんで!」
晴斗君が言う。
「僕は言った方が良さそうだね。エンペラー達にも会っておきたいし」
公生君が言う。
話しあった結果。私と恵美、晶、渡辺君、誠君、公生君、奈留ちゃん、酒井君が行くことになった。
「それだけいれば大丈夫だろう」
渡辺君が言う。
「愛莉ちゃんの家には新條をよこすわ。私達は公生達を迎えに行くから」
恵美が言う。
「じゃあ、13時に青い鳥集合な」
そう言うと皆了解した。
「今日と明日で最後だっけ?リーグ戦」
「うん、上手くいけば明日が昇格戦だって言ってた」
「上手くいくと良いわね」
「うん」
そんな感じでのどかな午前中を過ごして、お昼ご飯を作って食べて片づけていたら新條さんが迎えに来てくれたので「行ってきます」と言って家を出た。
青い鳥に集まると皆で軽く段取りする。
別荘地はやはり別府にあるらしい。
移動時間を長くするわけには行かない。その間に襲撃されたら意味がない。
そして強固な建物でなければならない。
そんな立地条件を満たす別荘を買い取ったらしい。
使わなかったらどうするつもりなんだろう?
青い鳥から別荘までは渡辺君の車で移動することになった。
美嘉さんがいないからとはいえ他の男の人の助手席に乗るのはなんか気が引ける。
美嘉さんに申し訳ない気がして。
「どうした?隣が冬夜じゃないと不安かい?」
渡辺君が話しかかけてくる。
「そういうわけじゃないんだけど、美嘉さんに悪いかなって気がして」
「ちゃんと美嘉には言ってあるよ。『妙な真似すんじゃねーぞ』って言われたけどな」
渡辺君はそう言って笑う。
「男の人って助手席に女性を乗せる事って何も感じないですか?」
「正確には彼女以外の誰が乗っていても特別意識しないかな?話し相手くらいにはなってくれるだろうから隣の方が便利だろ?」
なるほど~。
「女性は意識するのかい?」
「好きでもない人に手を握られたりしたらどうしよう?とか考えるかな」
「なるほどな……。俺も馬鹿じゃない。もうちゃんと妻もいる。他の女性に手出すような真似はせんよ」
渡辺君はそう言って笑う。
渡辺君は誠実な人だ。だから渡辺君の隣ならと思って座った。
でもその事を冬夜君が知ったらどう思うだろう?
いまさらながら不安に思った。
でも冬夜君も神奈を助手席に乗せて車運転してた。
私の考えすぎなのかな?
「良いんじゃないか?2人はまだ未婚なんだ。そのくらいの気づかいはお互い必要だと思うよ」
そっか~。
その時、恵美からスマホの着信が鳴った。
「もしもし、恵美?」
「愛莉ちゃん、予定変更よ。皇帝たちの居る別荘に向かって。緊急事態が起こった」
緊急事態?
渡辺君にその事を繋げる。
渡辺君は分かったという。
私達は別荘に着くとその凄惨な光景に息を飲んでいた。
消防隊が必死に消火活動にあたる。
別荘の持ち主である晶は警察と消防士の人に事情聴取を受ける。
怪我人はいない。
空き家だったという。
程なくして一台のパトカーが着た。
パパさんだ。
別府の警察の人と口論してる。
最終的には「この件は私が一任されている」という名目でパパさんの指揮の下で捜索が行われた。
パパさんは私達に聞く。
「……ここに皇帝たちをかくまっていたのかい?」
「はい、ここも危険だと思って今日新しい場所に移そうと思っていた矢先でした」
「……そうか、何かの交渉につかわれるかもしれんな。何が事件に進展があったのかい?」
「敵の本体が分かりました」
「その話、私の家で聞けないか?盗聴の類は無い」
「分かりました今夜伺います」
パパさんと恵美さんと晶さんがそんな話をしている。
酒井君は現場の周りを見て回ってる。
警察の人に止められたけど「彼らは特別だ、好きにさせてやってくれ」とパパさんが言うと別府の警察は「何か問題が起こったら地元署の責任ですからね」と言った。
「善君何かあったの?」
晶さんが聞くと「来ちゃいけない!」と怒鳴る。
そう言われて引き下がる私達じゃない。
けど、引き下がったほうが良かったと後で後悔した。
焼死体が転がっていた。
喉に込み上げてくるものを必死に我慢する。
「これ、検死は警察が?」
「ま、そうなるわね」
「さっき警察は『被害者0、空き家だった』といいましたね?」
「あっ……」
晶さんは気づいたようだ。私ももちろん気づいた。
周りには似たような焼死体がいくつか転がっている。
それだけ派手に燃えたんだろう?
パパさんに建物の中を覗いて良いか確認する。
パパさんは別府の警察の人に指示すると、「勝手に色々弄らないでくださいよ」という。
私達は別荘の中に入る。
酒井君は壁を必死に捜査する。
そしてピタッと動きを止める。
「やっぱりあった……」
そこにあったのは焦げた丸太の壁に刻まれた銃痕。
そして壁に大きくあけられた穴。
床の一部が爆発したのか大きな穴をあけて屋根を吹き飛ばしていた。
「間違いないですね。これは死神の仕業です」
酒井君が断言する。
「やはりか……」
渡辺君の表情が険しい。
「4人の安否は?」
晶が聞く。
「4人は無事でしょう。彼等の任務は4人の奪還だったはずだから」
「そうとは言い切れないんじゃない?まとめて始末するって可能性も」
「それはないです」
酒井君が言い切る
「どうしてそう言い切れるの?」
晶が聞く。
「小屋の周りに会った焼死体。焼死が原因だと思わせておいて実は違います。皆喉を刃物で切られてる形跡がある。プロの犯行でしょう。そしてそんなプロがわざわざ出向いてくる理由を考えたら4人は連れ去られた可能性の方が高い」
「じゃあ、小屋を爆破したのは?」
「恐らく証拠隠蔽でしょう。今夜あたりなにかしら接触してくるかもしれません」
「証拠隠滅は既にはかってる?」
「ええ、少なくとも別府の警察は買収済みらしいですね」
晶と酒井君が話しあってると「いい加減に出てこい。どうせ何も見つからない!」と別府の警察の人が言う。
「遠坂警視のお願いしてもらえませんか?現場の写真が欲しい」
「そんな事許可できるわけないだろ!!」
「……いや、許可してやれ」
「遠坂警視!?相手は素人ですよ!?」
「……責任は私が取る」
「わかりました。問題になったらしりませんからね!?」
「と、いうわけだ。好きなだけ取ってくれ」
「どうもすいません」
パパさんと酒井君が話しをすると、パパさんは指揮にもどった。
酒井君が何枚かの写真を撮る。
恵美も写真を撮り始める。
しばらくすると「もういいだろ!?」とさっきの刑事さんが言ってきた。
「あ、すいません。そろそろ出ますね」
酒井君がにっこり笑って私達はその場を後にする。
「今日誰が、遠坂さんの家に行くかだな?」
恵美と晶と酒井君は来るとして……。
「渡辺君も来た方がいいんじゃないかな?今後のユニティの活動も関わってくるし」
「じゃあ、俺も行かせてもらうかな。他の皆は独自に動いてくれ。ただし軽率な行動は控えてくれ。相手も本気らしい」
渡辺君が言うと皆が頷いた。
「また新しい死神が登場したようだね」
公生君が言う。
「どうしてそう言い切れるの?」
「皆が言ってた死神どのタイプにも当てはまらないからだよ。一人は隠密行動が得意な特殊部隊のエキスパート、もう一人は強力な銃火器を扱う者って事くらいは分かる」
私が聞くと公生君がそう答えた。
「危険な奴には変わりなさそうだな」
誠君が言う。
「ここは受け手に回るしかないでしょうね。4人の人命を優先するなら」
奈留ちゃんが言う。
「誠今撮った画像から手がかり掴めそうか?」
渡辺君が言うと、「俺は鑑識じゃないですよ」と誠君が言う。
「皆一度帰らない?」
恵美が言う。
「え、でもまだ何の手掛かりも」
「ただの火災事故なのでしょ?問題ないわ。後は警察と消防署に任せましょう」
え?さっき火災事故なんかじゃないって……。
「これ以上警察に疑われると面倒だし。警戒されるのも厄介。あとでこっそりうちの鑑識をよこすからその時間をつくってやりたい。その為には私達は一旦離れる必要がある」
恵美が私に耳打ちする。
恵美の家って何やってるの?
とりあえず恵美の話に乗ることにした。
「ボヤだとは残念だったね!また皆で遊びに来たかったのに。火災保険とかっておりるの?」
「大丈夫だと思うわよ。また新しい別荘に作り替えるわ」
そう言って私達は青い鳥に戻る。
「敵はしてやったと思ってるだろうな……」
渡辺君が言う。
「そうとも限らないんじゃないですか?」
酒井君が言う。
「まだ、こちらの能力を過小評価してる節がる。あまりにも事後処理がずさんだ。ただの脅しとも受け取れます」
証拠を残し過ぎだ。逆に考えればそこまでしないといけない何かがあるんだろうという。
「それはなんだ?」
渡辺君が聞くと酒井君が答える。
「僕は片桐くんじゃないので何とも言えませんが。おそらく例のゾンネンリッターに触れたことでしょうね」
「馬鹿な!?俺は痕跡を残してないぞ!」
誠君が叫ぶ。
「でも誰かがパスワードを解除して入ったという痕跡は残るでしょ?身元は分からないにしても」
「それで思いついたのが俺達ってわけだな?」
渡辺君が言うと酒井君が頷く。
「コピーしたという痕跡も残ってるでしょうから、そこらへんは分からないけど」
僕もプロじゃないですからねと自嘲気味に笑う。
「指紋が無くても銃を撃てば火薬のにおいが残るようなもんだと思ってます。そんな事をするのはユニティしかいない」
「なるほど、痕跡を残してなくても何かがあれば俺達の仕業……そう疑われてるわけか」
誠君が納得する。
「相手も一筋縄じゃいかない相手みたいだぞ、誠君」
渡辺君が言うと誠くんはうなずく。
「大丈夫前のようなへまはしない。逆にこっちが炙り出してやる。その魔術師ってやつを」
「意気込むのは良いが、やり過ぎるなよ」
渡辺君が釘をさす。
「とりあえず、今夜遠坂警視と話しあってからだな」
渡辺君が言うと皆うなずいた。
こういう時冬夜君がいてくれたら心強いのに。
でも明日までだ。
明日まで頑張って持ちこたえよう。
そしたら冬夜君がきっと反撃の糸口をみつけてくれるから。
(2)
「エリス、そっちの状況は?」
「いつでもOKよヴァイパー」
「じゃ、任務開始とする」
光学迷彩に身を包んだ俺はそっと相手に忍び寄り背後に回って腕を掴むと首を切る。
姿の見えない俺に半狂乱の敵は銃を撃ちまくるが沈黙させていく。
別荘の周りにいる相手を粗方片付けると、そっと玄関に忍び寄る。
そして扉をコンコンとノックする。
反応はない。
仕方ないのでプラスチック爆弾を張ってドアを爆破する、
爆破したのを確認すると中に突撃して護衛兵を狙撃する。
「こちらヴァイパー、屋内クリア」
「こちらエリス了解。スタンバイOK」
光学迷彩を解除すると生き残ってる4人に命じる。
「俺達が何者かわかっているな?」
「ここで殺すつもりか?」
「そうしてもいいんだが、上のご意向があってだな。ついて来てほしい。もちろん拒否は許されない」
4人は大人しく、屋内からでてくる。
歯向かえば殺す。
そう脅していた。
全員が建屋から離れたのを確認するとエリスに伝える。
「エリス、いつでもいける」
「了解」
崖の上に上っていたエリスはランスのようなものを構える。
ランスのようなものは先端から柄の辺りまで間に隙間があり、そのランス全体に稲光が発せられる。
バシュッ!
高速で放たれた弾丸は壁を突き破り爆散する。
炎上する別荘を後に俺は4人をワゴン車に乗せる。
エリスを助手席に乗せると俺は車を出す。
「俺達をどこに連れて行くつもりだ」
皇帝が言う。
「お前たちの態度次第で楽園になるか地獄になるか分からんところだ」
どっちにしても死ぬことに変わりはないがな。
皇帝たちの顔は青ざめる。
「しかし、あの程度の護衛に私達を向けた理由がわからないわ」
「ミスは許されない。そういうことだったんだろう?」
「今回のクライアントも余程切羽詰まってるのね。そろそろ潮時かしら?」
「かもな」
俺達は決まった主を持たない。
金のあるところに集まる集団。
アズライールも、サリエルも例外ではない。
唯一主がいるとしたらそれは俺だろう。
車を止めると皇帝たちに歩けと言った。
しばらくあると小屋がある。
その中に入るように指示すると、皇帝たちは中に入る。
「通信手段を封じる必要があったのでは?」
エリスが聞く。
「ここは圏外だ。傍受はできんよ。それに……」
「それに?」
「それでも辿り着いた相手なら俺達もやり甲斐があるだろ?」
「なるほど、楽しみね」
エリスが笑う。
その時無線がなる。
「どうした?」
「電話が出来る場所まで下りてこいとの事です」
「わかった」
この場はエリスに任せると俺は山を下りる。
すると電話が鳴る。
「首尾はどうだ?」
「順調だ。俺が出るまでもなかったかもしれん」
「まあ、念には念を入れておいただけだよ。そして君にもう一つ任務を与えたい」
「何でも引き受けよう」
「女を一人攫って欲しい」
「そんな簡単なミッションで良いのか?」
「簡単に行けばいいがな?」
「分かった、でそいつはどこにいる?」
「それは……」
電話を終えると俺はエリスに無線で伝える。
「ここはお前ひとりにまかせてもいいか?念のためスティールレディも向かわせるが」
「私一人でも問題ない」
「……スティールレディを向かわせる」
「登ってこれるの?彼女に」
「そのくらいしてもらわないと困る」
「それもそうね。じゃあ、二人でここは任せてもらうわ」
「頼む」
「そちらもお気をつけてヴァイパー」
「ああ」
俺は電話を切ると電話をしていた間に着いた迎えの車に乗る。
俺がたかだか女子大生一人を誘拐するために使わされるとはな……。
落ちぶれたものだ。
まあ、どんなミッションでも金になるならやってやるさ。
ただし、落ちぶれた組織に用はない。
この組織はもうだめだ。俺はそう直感していた。
次の宿主を探しておくか。
(3)
「こんな時期に帰ってくるとは珍しい事もあるのね?そちら……咲良さんだったしら?」
「ど、どうもお久しぶりです」
俺の家に初めてくる咲良は緊張していた。
「主人が待っているわ。さあ、上がって」
母さんはそう言って父さんの部屋に通してくれた。
父さんの部屋に入ると父さんは奥にある机の椅子に座って待っていた。
「2人とも来たみたいだな。ささ、そちらにかけて」
俺達がソファに座ると母さんと父さんもソファに座った。
使用人がお茶を持ってくると退室する。
父さんが話だした。
「2人でくるという事は……もう相手の親に話を通しているのか?」
言うと思った……。
「春樹も銀行を継いでくれるというし言う事無いわね……父さん」
母さんも俺が結婚の報告に来たと思ってるようだ。
「もう日取りは考えてあるのか?」
父さんが言うと俺が返した。
「残念だが、今日はそういう話じゃないんだ」
父さんの眉がピクリと動く。
「今日はという事はその予定はいれてるんだね?」
母さんが話を勧める。
「どういう用件で二人でここに?二人でないといけない理由が他にあるのか?」
「彼女はユニティのメンバーだから。じゃ、分かってもらえないか?」
「そういう話か……。母さん席を外してくれないか?」
「……わかったわ」
母さんが退室するのを見ると俺は単刀直入に父さんに聞いていた。
「太陽の騎士団……そう言えば分かってもらえるか?」
「ユニティはそこに辿り着いてしまったか……」
父さんは深くため息を吐く。そして話し出した。
「おまえは株式会社についてどのくらい知ってる?」
「人並み程度には知ってる」
こう見えて国際経営学部出身だ。
「俺の肩書は代表取締役会長。だが、その下に代表取締役頭取という者がいる。取締役会で運営をするわけだが、残念ながら会長が100%の株を持っているわけではない現状、俺一人の意志で銀行を動かすことは出来ない。さらに、太陽の騎士団に加盟したのは前会長の意向によるものだ。その前会長の息のかかった取締役は山ほどいる。俺にはどうすることもできない」
言いたい事は分かった。
要するに太陽の騎士団に入っているのは、父さんの意思じゃない別の何かが動いているという事か。
「春樹、馬鹿な真似はよせ。お前も来年から行員なんだ。今取締役会を刺激したら父さんでは庇いきれなくなる」
「太陽の騎士団とはどんな存在なんだ?」
「お前も経営学部出身なら経済欄くらい見ているだろ。金と政治の密着。そういうことだ」
行政上知り得た情報を高い金で買い取り甘い汁を吸う。そんなところか。
くだらねえ。やはり反吐が出る世界だった。
かといって今更逃げるわけにもいかない。
俺たちなりのやり方で反抗してみせる。
「もう一つ聞いてもいいか?」
「ああ、いくらでも聞いてくれ」
それでお前の馬鹿な真似を止められるなら。と付け加えてきた。
「白鳥カンパニーはどれだけ関与してる?」
「白鳥カンパニーは太陽の騎士団には関与していない。むしろ握りつぶされようとしていた新進企業だ」
地元という土地柄。新参者、よそ者をうけつけない。
そういう老害が実験を握っているのだという。
「分かった、ありがとう。今日はこの辺で帰るよ。また新年にでも挨拶に来る」
「そうしてやってくれ。母さんも心配症でな」
俺達は家を出ると車を出す。
「難しい問題ですね~」
咲良がため息を吐く。
俺は黙って聞いていた。
「春樹はいいんですか~?このまま行けば春樹が路頭に迷ってしまいますよ~?」
「保険はユニティがかけてくれてる」
「え?」
咲良が聞き返す。
「忘れたのか?地元銀行の株の40%は酒井コーポレーションが持っている事」
「あ~!」
咲良は理解したようだ。
少なくとも父さんの会長辞任は否決してくれるだろう。
せいぜい、頭取のクビを切られる程度で済むはず。
今日家にわざわざ出向いたのは父さんを問い詰める事じゃない。
ユニティはここまで知っている。今から難を逃れる準備をしておけ。
その事を知らせる為に来たまでだ。
「咲良、何か食いたいものないか?」
「え?」
「せっかく二人きりで出かけたんだ。最近デートらしい事する暇なかったしな」
「春樹が好きなものでいいですよ~」
「わかった」
車を地元にむけて走らせる。
ヘッドライトとテールランプが流れる中俺達も混ざって夜の明かりの街に入っていった。
(4)
「太陽の騎士団……」
父さんはそう掠れた声で言っていた。
疑心暗鬼
疑うならまず身内から。
そう思った私は実家に帰って父さんに聞いてみた。
「その言葉をどこで……聞いたところで無駄か」
「……ご想像の通りです」
父さんはしばらく考えた末、金庫から書類を取り出した。
それをコピーすると私に書類を渡す。
それは、父さんの子会社が受注に失敗した公共事業、土地の買収その他諸々が政治的圧力によるものだと裏付ける決定的証拠だった。
「春奈、それをみたらわかると思うが奴らはトライデントだ。重なった3本の矢が折りづらいように簡単には崩せない」
「……と、いうことは、それ以上の力を加えるか一本ずつへし折っていくしかないってことね?」
ユニティなら迷わず前者を選ぶでしょうけど。
「そう言える強さを身につけたんだね」
父さんは笑っている。
「その書類は太陽の騎士団と戦う際の重要な足掛かりになるはずだ。信用できる人に渡しておきなさい」
「わかりました」
「今日は晴斗という男はきてないのか?」
「晴斗は今日はバイト」
「そうか、大変なんだな。皆」
「父さんは晴斗との仲は認めてくれたの?」
「そういう約束だしな」
「じゃあ、もう一度お願いするわ。晴斗との仲を認めて欲しい。約束とかじゃなくて一人の親として」
「春奈にそこまで言わせる男なんだ。信じてるよ」
「……ありがとう」
私は書類を鞄に入れて。部屋を出ようと戸を開けた時だった。
通路で悲鳴が鳴ってる。
「今部屋を出ないで。危険です……ぐぁっ!」
「春奈!!」
父さんの制止を振り切り私は戸を開ける。
一人のひょろ長い男がこっちを向いている。
「レッツプレイ!モジュレーション!!」
私は手首に着けてあるリストバンドのスイッチを押すと変身する。
リストバンドから放たれた光が体に密着しスーツと変化する。
黄色のスーツが。腰帯のように巻かれたリボン。腰回りにあるミニスカートのような物。無駄なデザインが多かったけど。可愛い。
何か掛け声を入れた方がいいのだろうか?
勝手に命名するのも悪い気がする。
今度皆で相談しよう。
そんな事を考えている間に敵は襲い掛かってくる。
接近戦が得意なようだ。
私もどっちかと言うと接近戦が得意。
二本のナイフで切りかかってくる。
バク転をして回避をしつつ、両足を蹴り上げ相手の肘をける。
精々両肘を砕く程度だと思っていた。
しかし私の鋭い蹴りはそれだけでは物足りなかったようだ。
前腕部を完全に引きちぎり男は悲鳴を上げて後ろに飛びのく。
だが男は苦痛に顔をゆがめるというよりは快楽に溺れて浸っているという表情だった。
痛くない?
異常
男の腕がみるみる再生をしていく。
不死?
この手の相手は頭部を粉砕するしかないと聞いていた。
男の腕の再生が済むまでにケリをつける。
「ぐあっ!」
父さんの悲鳴が聞こえる。
部屋に戻ると父さんが敵の雑魚にやられている。
狙いは父さんの重要書類。
逃がさない。
軽く床をけると弾丸のようにまっすぐ敵に接近する。
驚く敵がスローモーションに見える。
男から書類をとりもどすと肘を相手の鼻っ柱に打ち込む。
鼻骨を粉砕された男は鼻血をまき散らしながら床を転げまわる。
「春奈、後ろ!!」
父さんに言われて背中を見ると腕の再生を終えた男が私に向かってナイフを放り投げる。
榴弾すら弾く装甲がナイフ如きに負けるわけがない。
背中がナイフを弾くと男はにやりと笑う。
「お前も俺の標的だあ」
標的。
それは私も一緒。
お前みたいなやつを野放しにはできない。
一足飛びで男に近づくと胸部を蹴りつける。
男は両腕で防ぐが両腕の骨を砕き胸部の骨までダメージは届く。
倒れる男の頭を手刀で叩きつけ頭部を粉砕しようとする。
閃光。
フラッシュバンを投げられた。
仮面のスキャナーが赤外線モニターに変わる。
男の姿が逃走しているのに気づいた。
父さんの護衛もしなきゃいけないのでここから離れるわけには行かなかった。
それにそろそろ限界時間。
変身を解いて父さんに駆け寄る。
「無事?」
「ああ、それよりさっきのは一体?」
「暴漢用の護身用装備よ」
「そうか、お前も大変なんだな」
「何か盗まれたものは?」
「何もない、お前にまた借りが出来たな」
父さんの言葉を聞きながらユニティに連絡する。
直ぐに応援部隊がかけつけ現場処理にあたってくれた。
太陽の騎士団も大事だけどまずはアーバニティからだ。
片桐さんの言う通りだと思った。
アーバニティ。絶対に許せない存在。絶対に逃さない。
(5)
「……つまり、その太陽の騎士団が真の黒幕というわけだね?」
パパさんに説明する。
「そうです、その情報を手に入れたときから攻撃が激しくなった」
「……、そうなるとこっちもやはり相応の準備が必要か……」
準備ってパパさんに出来ることあるの?
パパさんは懐からいくつものバッジを取り出した。
「これは……?」
渡辺君が聞く?
「……みんなこれからはこれを身に着けて行動してほしい。これは一種のライセンスだよ。私ではない警察庁長官直々の許可証だ」
許可証!?
「君たちが凶悪犯罪に立ち向かう際の面倒事を全部警察庁が負うといったものだよ」
け、警察庁!?
「これを君たちに渡すと同時に君たちは非合法的だが警察庁の一機関になったわけだ」
「パパさんがそんなことして大丈夫なの?」
私は心配した。パパさんに迷惑かけてる?
「大事な一人娘を危険な目に合わせるんだ。私も最大限に応援はするよ。だが、君たちがどんな危険な目にあおうと警察では守り切れないという事も理解してくれ」
「自分の身は自分で守れって事ですね」
渡辺君が言うと頷いた。
「それとこれも非合法的取引だが君たちの銃火器の携帯も許可されてる。でも気をつけて取り扱ってくれ」
「ありがとうございます」
渡辺君が頭を下げる。
「……娘の事よろしく頼む」
「それは私達に任せておいてください。ね?晶」
「そうね、片桐君にも頼まれてるし」
その時スマホが鳴った。
私は部屋の外に出てスマホに出た。
桐谷君からだった。
「亜依の奴そっちにいない?」
「今日は来ないって言ってたけど。バイトじゃないの?」
「それがバイトは既に終わってる時間なのに帰ってないんだ」
「買い物とかしてるんじゃないかな?」
「2時間も前に終わってるんだぜ?いつもなら連絡つくのに今日に限ってつかないんだ」
「誠君には言った?」
「いや、みんなが遠坂さんの家に行ってるって聞いたからまず電話しておこうと思って」
「渡辺君には私から説明するから桐谷君は誠君に連絡を」
「わかったよ」
電話を終えると私は渡辺君にその事を伝える。
渡辺君の表情は一変する。
すぐに亜依の電話に電話する。
「もしもし」
男の声だったみたい。
渡辺君がスピーカーに切り替える。
「誰だお前!?」
「悪魔とでも覚えてもらえたらいいかな?」
「悪魔だと!?」
悪魔……死神の統括者。
「取引をしようじゃないか?君たちの持ってる太陽の騎士団の情報と桐谷亜依の命。悪くないだろ?」
「俺一人の一存で決められるものじゃない!」
「随分冷たい意見だな。それとも侮られてるかな」
その後亜依の悲鳴が聞こえる。
「亜依に何をした!?」
「こっちの本気度を知らせただけだよ?」
「俺達にこんな目を合わせて無事だった組織はないぞ!」
「勇ましいな。だけど俺が聴きたいのはそんな回答じゃない」
再び亜依の悲鳴が聞こえる。
「亜依と話をさせろ!」
「させろだと?……まだ自分たちの立場が理解できてないのかな?」
「ま、まて!!話をさせてください」
「物分かりの良いお子様で助かるよ。ただ、話が出来る状態なのかは保証しない」
「亜依、聞こえるか!?俺だ!?」
「みんな……この取引にのっちゃダメ!きゃあ!!」
「亜依!?」
「取引に応じてくれるかな?」
「……わかった。応じよう」
「では詳しい日時はまた追って連絡する」
電話はそこで終わった。
渡辺君はそのことを桐谷君に伝える。
桐谷君は嘆いていた。
「落ち着け!明日皆で集まろう!緊急招集だ!」
「早速報復に出たか……」
パパさんが言う。
「さて、皆も明日大変なんだろう?気をつけて帰りなさい。愛莉も片桐さん宅に帰るのだろう?」
「うん……」
「じゃあ、また明日」
そう言って皆家に帰っていった。
私も冬夜君の家に帰ると冬夜君に電話をしていた。
直ぐにつながった。
「多分かけてくると思って待ってた」
「ほえ?」
どうやら冬夜君の電話にも悪魔と名乗る男から電話があったらしい。
取引条件は同じ。違うのは話の内容。
その結果相手は焦っていたらしい。
そこに渡辺君が電話したらしい。
タイミングが悪かったのか?
「いや、いいよ。相手が本当に人質を持ってくると言う保証があるならね」
「え?」
「コピーの効くファイル相手に一人しかいない人質を易々と差し出すか?という事」
それじゃ、亜依助からないの?
「相手の様子だと明日以降の取引になりそうだね?」
「そうだね」
「僕から渡辺君に連絡入れとく。僕が帰るまで軽率な行動を取るなって」
「私からも言っとく」
「エンペラーたちも奪われたんだって?」
「うん」
ごめんね、冬夜君がいない時にトラブルばっかり起こして。
「僕でも襲撃は読めなかったよ。気にすることは無い」
「うん」
「渡辺君にも言える事なんだけど立場を間違えちゃだめだよ?」
「え?」
「自分たちが不利的状況に立っているなんて考えちゃだめだ」
「でも亜依が攫われたんだよ?」
まさか冬夜君亜依を見捨てる気なの?
「前にも言ったけどさ、人質は無事だから意味があるんだ。人質を取るって事はそれだけの覚悟が必要だって事」
「うぅ……」
「亜依さんは必ず助けるから心配しないで」
「うん」
「じゃあ、また明日」
「は~い」
大丈夫だよね?
冬夜君が必ず助けるって言った以上助かるよね?
どんなに寒い夜でも冬夜君が灯す夜は暖かいものなのだから。
「冬夜君おはよう!朝だよ~」
冬夜君の返事が無い。
そっか、今日は土曜日か。
私はキッチンに行くと朝食の準備を始める。
準備が終わる頃には麻耶さん達が起きてくる。
3人でご飯を食べる。
その時に麻耶さんが言った。
「冬夜がいない間くらい家に帰ってあげたら?」
私至らないところあったかな?
「私いたら迷惑ですか……?」
「そうじゃないのよ。ただ冬夜の居ない時くらい梨衣さんに元気な姿見せてあげてもいいんじゃないと思って」
「きっと今帰ったら怒られます『亭主のいない間に家を出るなんて勝手な真似は許しませ~ん』って」
「それはそうだけど……じゃあ、おばさんと約束して。年末年始くらいは冬夜を連れて挨拶に行ってあげて」
それはきっと冬夜君も考えてくれてるはず。
「は~い」
でも最近パパさんにはよく会ってる。
良い事なのか悪い事なのか分からないけど。
りえちゃん元気なのかな~?
片付けは麻耶さんに任せて私は一人でカフェオレをもって冬夜君の部屋に戻る。
テレビをつけると、週末の番組をやってる。
それをみながら、ノートPCでSNSのチェックなんかをやってる。
するとメッセージがはいってくる。
「今みんな何してる?」
亜依からだ。
「暇してる~」
「バイトの準備~」
「これから仕事~」
「家事の真っ最中よ」
皆大変なんだね。
それでも午後には皆暇が出来るらしい。
「じゃあ、午後に青い鳥に集合しない?」
集合?
「公生が言ってたでしょ?あの別荘はもう安全と思うのは危険かもしれないって」
言ってたね
「別の別荘探しておいたわ。そこなら絶対に破られない自信がある。バンカーバスターでも持ってこない限り破壊も不可能よ」
そんなの一個人が持ってたら十分問題になると思うけど。
「そこに皆で行くの?」
「そのつもり。下見だけでもして判断を仰ぎたいから」
晶が言う。
「さーせん!俺午後からバイトなんで!」
晴斗君が言う。
「僕は言った方が良さそうだね。エンペラー達にも会っておきたいし」
公生君が言う。
話しあった結果。私と恵美、晶、渡辺君、誠君、公生君、奈留ちゃん、酒井君が行くことになった。
「それだけいれば大丈夫だろう」
渡辺君が言う。
「愛莉ちゃんの家には新條をよこすわ。私達は公生達を迎えに行くから」
恵美が言う。
「じゃあ、13時に青い鳥集合な」
そう言うと皆了解した。
「今日と明日で最後だっけ?リーグ戦」
「うん、上手くいけば明日が昇格戦だって言ってた」
「上手くいくと良いわね」
「うん」
そんな感じでのどかな午前中を過ごして、お昼ご飯を作って食べて片づけていたら新條さんが迎えに来てくれたので「行ってきます」と言って家を出た。
青い鳥に集まると皆で軽く段取りする。
別荘地はやはり別府にあるらしい。
移動時間を長くするわけには行かない。その間に襲撃されたら意味がない。
そして強固な建物でなければならない。
そんな立地条件を満たす別荘を買い取ったらしい。
使わなかったらどうするつもりなんだろう?
青い鳥から別荘までは渡辺君の車で移動することになった。
美嘉さんがいないからとはいえ他の男の人の助手席に乗るのはなんか気が引ける。
美嘉さんに申し訳ない気がして。
「どうした?隣が冬夜じゃないと不安かい?」
渡辺君が話しかかけてくる。
「そういうわけじゃないんだけど、美嘉さんに悪いかなって気がして」
「ちゃんと美嘉には言ってあるよ。『妙な真似すんじゃねーぞ』って言われたけどな」
渡辺君はそう言って笑う。
「男の人って助手席に女性を乗せる事って何も感じないですか?」
「正確には彼女以外の誰が乗っていても特別意識しないかな?話し相手くらいにはなってくれるだろうから隣の方が便利だろ?」
なるほど~。
「女性は意識するのかい?」
「好きでもない人に手を握られたりしたらどうしよう?とか考えるかな」
「なるほどな……。俺も馬鹿じゃない。もうちゃんと妻もいる。他の女性に手出すような真似はせんよ」
渡辺君はそう言って笑う。
渡辺君は誠実な人だ。だから渡辺君の隣ならと思って座った。
でもその事を冬夜君が知ったらどう思うだろう?
いまさらながら不安に思った。
でも冬夜君も神奈を助手席に乗せて車運転してた。
私の考えすぎなのかな?
「良いんじゃないか?2人はまだ未婚なんだ。そのくらいの気づかいはお互い必要だと思うよ」
そっか~。
その時、恵美からスマホの着信が鳴った。
「もしもし、恵美?」
「愛莉ちゃん、予定変更よ。皇帝たちの居る別荘に向かって。緊急事態が起こった」
緊急事態?
渡辺君にその事を繋げる。
渡辺君は分かったという。
私達は別荘に着くとその凄惨な光景に息を飲んでいた。
消防隊が必死に消火活動にあたる。
別荘の持ち主である晶は警察と消防士の人に事情聴取を受ける。
怪我人はいない。
空き家だったという。
程なくして一台のパトカーが着た。
パパさんだ。
別府の警察の人と口論してる。
最終的には「この件は私が一任されている」という名目でパパさんの指揮の下で捜索が行われた。
パパさんは私達に聞く。
「……ここに皇帝たちをかくまっていたのかい?」
「はい、ここも危険だと思って今日新しい場所に移そうと思っていた矢先でした」
「……そうか、何かの交渉につかわれるかもしれんな。何が事件に進展があったのかい?」
「敵の本体が分かりました」
「その話、私の家で聞けないか?盗聴の類は無い」
「分かりました今夜伺います」
パパさんと恵美さんと晶さんがそんな話をしている。
酒井君は現場の周りを見て回ってる。
警察の人に止められたけど「彼らは特別だ、好きにさせてやってくれ」とパパさんが言うと別府の警察は「何か問題が起こったら地元署の責任ですからね」と言った。
「善君何かあったの?」
晶さんが聞くと「来ちゃいけない!」と怒鳴る。
そう言われて引き下がる私達じゃない。
けど、引き下がったほうが良かったと後で後悔した。
焼死体が転がっていた。
喉に込み上げてくるものを必死に我慢する。
「これ、検死は警察が?」
「ま、そうなるわね」
「さっき警察は『被害者0、空き家だった』といいましたね?」
「あっ……」
晶さんは気づいたようだ。私ももちろん気づいた。
周りには似たような焼死体がいくつか転がっている。
それだけ派手に燃えたんだろう?
パパさんに建物の中を覗いて良いか確認する。
パパさんは別府の警察の人に指示すると、「勝手に色々弄らないでくださいよ」という。
私達は別荘の中に入る。
酒井君は壁を必死に捜査する。
そしてピタッと動きを止める。
「やっぱりあった……」
そこにあったのは焦げた丸太の壁に刻まれた銃痕。
そして壁に大きくあけられた穴。
床の一部が爆発したのか大きな穴をあけて屋根を吹き飛ばしていた。
「間違いないですね。これは死神の仕業です」
酒井君が断言する。
「やはりか……」
渡辺君の表情が険しい。
「4人の安否は?」
晶が聞く。
「4人は無事でしょう。彼等の任務は4人の奪還だったはずだから」
「そうとは言い切れないんじゃない?まとめて始末するって可能性も」
「それはないです」
酒井君が言い切る
「どうしてそう言い切れるの?」
晶が聞く。
「小屋の周りに会った焼死体。焼死が原因だと思わせておいて実は違います。皆喉を刃物で切られてる形跡がある。プロの犯行でしょう。そしてそんなプロがわざわざ出向いてくる理由を考えたら4人は連れ去られた可能性の方が高い」
「じゃあ、小屋を爆破したのは?」
「恐らく証拠隠蔽でしょう。今夜あたりなにかしら接触してくるかもしれません」
「証拠隠滅は既にはかってる?」
「ええ、少なくとも別府の警察は買収済みらしいですね」
晶と酒井君が話しあってると「いい加減に出てこい。どうせ何も見つからない!」と別府の警察の人が言う。
「遠坂警視のお願いしてもらえませんか?現場の写真が欲しい」
「そんな事許可できるわけないだろ!!」
「……いや、許可してやれ」
「遠坂警視!?相手は素人ですよ!?」
「……責任は私が取る」
「わかりました。問題になったらしりませんからね!?」
「と、いうわけだ。好きなだけ取ってくれ」
「どうもすいません」
パパさんと酒井君が話しをすると、パパさんは指揮にもどった。
酒井君が何枚かの写真を撮る。
恵美も写真を撮り始める。
しばらくすると「もういいだろ!?」とさっきの刑事さんが言ってきた。
「あ、すいません。そろそろ出ますね」
酒井君がにっこり笑って私達はその場を後にする。
「今日誰が、遠坂さんの家に行くかだな?」
恵美と晶と酒井君は来るとして……。
「渡辺君も来た方がいいんじゃないかな?今後のユニティの活動も関わってくるし」
「じゃあ、俺も行かせてもらうかな。他の皆は独自に動いてくれ。ただし軽率な行動は控えてくれ。相手も本気らしい」
渡辺君が言うと皆が頷いた。
「また新しい死神が登場したようだね」
公生君が言う。
「どうしてそう言い切れるの?」
「皆が言ってた死神どのタイプにも当てはまらないからだよ。一人は隠密行動が得意な特殊部隊のエキスパート、もう一人は強力な銃火器を扱う者って事くらいは分かる」
私が聞くと公生君がそう答えた。
「危険な奴には変わりなさそうだな」
誠君が言う。
「ここは受け手に回るしかないでしょうね。4人の人命を優先するなら」
奈留ちゃんが言う。
「誠今撮った画像から手がかり掴めそうか?」
渡辺君が言うと、「俺は鑑識じゃないですよ」と誠君が言う。
「皆一度帰らない?」
恵美が言う。
「え、でもまだ何の手掛かりも」
「ただの火災事故なのでしょ?問題ないわ。後は警察と消防署に任せましょう」
え?さっき火災事故なんかじゃないって……。
「これ以上警察に疑われると面倒だし。警戒されるのも厄介。あとでこっそりうちの鑑識をよこすからその時間をつくってやりたい。その為には私達は一旦離れる必要がある」
恵美が私に耳打ちする。
恵美の家って何やってるの?
とりあえず恵美の話に乗ることにした。
「ボヤだとは残念だったね!また皆で遊びに来たかったのに。火災保険とかっておりるの?」
「大丈夫だと思うわよ。また新しい別荘に作り替えるわ」
そう言って私達は青い鳥に戻る。
「敵はしてやったと思ってるだろうな……」
渡辺君が言う。
「そうとも限らないんじゃないですか?」
酒井君が言う。
「まだ、こちらの能力を過小評価してる節がる。あまりにも事後処理がずさんだ。ただの脅しとも受け取れます」
証拠を残し過ぎだ。逆に考えればそこまでしないといけない何かがあるんだろうという。
「それはなんだ?」
渡辺君が聞くと酒井君が答える。
「僕は片桐くんじゃないので何とも言えませんが。おそらく例のゾンネンリッターに触れたことでしょうね」
「馬鹿な!?俺は痕跡を残してないぞ!」
誠君が叫ぶ。
「でも誰かがパスワードを解除して入ったという痕跡は残るでしょ?身元は分からないにしても」
「それで思いついたのが俺達ってわけだな?」
渡辺君が言うと酒井君が頷く。
「コピーしたという痕跡も残ってるでしょうから、そこらへんは分からないけど」
僕もプロじゃないですからねと自嘲気味に笑う。
「指紋が無くても銃を撃てば火薬のにおいが残るようなもんだと思ってます。そんな事をするのはユニティしかいない」
「なるほど、痕跡を残してなくても何かがあれば俺達の仕業……そう疑われてるわけか」
誠君が納得する。
「相手も一筋縄じゃいかない相手みたいだぞ、誠君」
渡辺君が言うと誠くんはうなずく。
「大丈夫前のようなへまはしない。逆にこっちが炙り出してやる。その魔術師ってやつを」
「意気込むのは良いが、やり過ぎるなよ」
渡辺君が釘をさす。
「とりあえず、今夜遠坂警視と話しあってからだな」
渡辺君が言うと皆うなずいた。
こういう時冬夜君がいてくれたら心強いのに。
でも明日までだ。
明日まで頑張って持ちこたえよう。
そしたら冬夜君がきっと反撃の糸口をみつけてくれるから。
(2)
「エリス、そっちの状況は?」
「いつでもOKよヴァイパー」
「じゃ、任務開始とする」
光学迷彩に身を包んだ俺はそっと相手に忍び寄り背後に回って腕を掴むと首を切る。
姿の見えない俺に半狂乱の敵は銃を撃ちまくるが沈黙させていく。
別荘の周りにいる相手を粗方片付けると、そっと玄関に忍び寄る。
そして扉をコンコンとノックする。
反応はない。
仕方ないのでプラスチック爆弾を張ってドアを爆破する、
爆破したのを確認すると中に突撃して護衛兵を狙撃する。
「こちらヴァイパー、屋内クリア」
「こちらエリス了解。スタンバイOK」
光学迷彩を解除すると生き残ってる4人に命じる。
「俺達が何者かわかっているな?」
「ここで殺すつもりか?」
「そうしてもいいんだが、上のご意向があってだな。ついて来てほしい。もちろん拒否は許されない」
4人は大人しく、屋内からでてくる。
歯向かえば殺す。
そう脅していた。
全員が建屋から離れたのを確認するとエリスに伝える。
「エリス、いつでもいける」
「了解」
崖の上に上っていたエリスはランスのようなものを構える。
ランスのようなものは先端から柄の辺りまで間に隙間があり、そのランス全体に稲光が発せられる。
バシュッ!
高速で放たれた弾丸は壁を突き破り爆散する。
炎上する別荘を後に俺は4人をワゴン車に乗せる。
エリスを助手席に乗せると俺は車を出す。
「俺達をどこに連れて行くつもりだ」
皇帝が言う。
「お前たちの態度次第で楽園になるか地獄になるか分からんところだ」
どっちにしても死ぬことに変わりはないがな。
皇帝たちの顔は青ざめる。
「しかし、あの程度の護衛に私達を向けた理由がわからないわ」
「ミスは許されない。そういうことだったんだろう?」
「今回のクライアントも余程切羽詰まってるのね。そろそろ潮時かしら?」
「かもな」
俺達は決まった主を持たない。
金のあるところに集まる集団。
アズライールも、サリエルも例外ではない。
唯一主がいるとしたらそれは俺だろう。
車を止めると皇帝たちに歩けと言った。
しばらくあると小屋がある。
その中に入るように指示すると、皇帝たちは中に入る。
「通信手段を封じる必要があったのでは?」
エリスが聞く。
「ここは圏外だ。傍受はできんよ。それに……」
「それに?」
「それでも辿り着いた相手なら俺達もやり甲斐があるだろ?」
「なるほど、楽しみね」
エリスが笑う。
その時無線がなる。
「どうした?」
「電話が出来る場所まで下りてこいとの事です」
「わかった」
この場はエリスに任せると俺は山を下りる。
すると電話が鳴る。
「首尾はどうだ?」
「順調だ。俺が出るまでもなかったかもしれん」
「まあ、念には念を入れておいただけだよ。そして君にもう一つ任務を与えたい」
「何でも引き受けよう」
「女を一人攫って欲しい」
「そんな簡単なミッションで良いのか?」
「簡単に行けばいいがな?」
「分かった、でそいつはどこにいる?」
「それは……」
電話を終えると俺はエリスに無線で伝える。
「ここはお前ひとりにまかせてもいいか?念のためスティールレディも向かわせるが」
「私一人でも問題ない」
「……スティールレディを向かわせる」
「登ってこれるの?彼女に」
「そのくらいしてもらわないと困る」
「それもそうね。じゃあ、二人でここは任せてもらうわ」
「頼む」
「そちらもお気をつけてヴァイパー」
「ああ」
俺は電話を切ると電話をしていた間に着いた迎えの車に乗る。
俺がたかだか女子大生一人を誘拐するために使わされるとはな……。
落ちぶれたものだ。
まあ、どんなミッションでも金になるならやってやるさ。
ただし、落ちぶれた組織に用はない。
この組織はもうだめだ。俺はそう直感していた。
次の宿主を探しておくか。
(3)
「こんな時期に帰ってくるとは珍しい事もあるのね?そちら……咲良さんだったしら?」
「ど、どうもお久しぶりです」
俺の家に初めてくる咲良は緊張していた。
「主人が待っているわ。さあ、上がって」
母さんはそう言って父さんの部屋に通してくれた。
父さんの部屋に入ると父さんは奥にある机の椅子に座って待っていた。
「2人とも来たみたいだな。ささ、そちらにかけて」
俺達がソファに座ると母さんと父さんもソファに座った。
使用人がお茶を持ってくると退室する。
父さんが話だした。
「2人でくるという事は……もう相手の親に話を通しているのか?」
言うと思った……。
「春樹も銀行を継いでくれるというし言う事無いわね……父さん」
母さんも俺が結婚の報告に来たと思ってるようだ。
「もう日取りは考えてあるのか?」
父さんが言うと俺が返した。
「残念だが、今日はそういう話じゃないんだ」
父さんの眉がピクリと動く。
「今日はという事はその予定はいれてるんだね?」
母さんが話を勧める。
「どういう用件で二人でここに?二人でないといけない理由が他にあるのか?」
「彼女はユニティのメンバーだから。じゃ、分かってもらえないか?」
「そういう話か……。母さん席を外してくれないか?」
「……わかったわ」
母さんが退室するのを見ると俺は単刀直入に父さんに聞いていた。
「太陽の騎士団……そう言えば分かってもらえるか?」
「ユニティはそこに辿り着いてしまったか……」
父さんは深くため息を吐く。そして話し出した。
「おまえは株式会社についてどのくらい知ってる?」
「人並み程度には知ってる」
こう見えて国際経営学部出身だ。
「俺の肩書は代表取締役会長。だが、その下に代表取締役頭取という者がいる。取締役会で運営をするわけだが、残念ながら会長が100%の株を持っているわけではない現状、俺一人の意志で銀行を動かすことは出来ない。さらに、太陽の騎士団に加盟したのは前会長の意向によるものだ。その前会長の息のかかった取締役は山ほどいる。俺にはどうすることもできない」
言いたい事は分かった。
要するに太陽の騎士団に入っているのは、父さんの意思じゃない別の何かが動いているという事か。
「春樹、馬鹿な真似はよせ。お前も来年から行員なんだ。今取締役会を刺激したら父さんでは庇いきれなくなる」
「太陽の騎士団とはどんな存在なんだ?」
「お前も経営学部出身なら経済欄くらい見ているだろ。金と政治の密着。そういうことだ」
行政上知り得た情報を高い金で買い取り甘い汁を吸う。そんなところか。
くだらねえ。やはり反吐が出る世界だった。
かといって今更逃げるわけにもいかない。
俺たちなりのやり方で反抗してみせる。
「もう一つ聞いてもいいか?」
「ああ、いくらでも聞いてくれ」
それでお前の馬鹿な真似を止められるなら。と付け加えてきた。
「白鳥カンパニーはどれだけ関与してる?」
「白鳥カンパニーは太陽の騎士団には関与していない。むしろ握りつぶされようとしていた新進企業だ」
地元という土地柄。新参者、よそ者をうけつけない。
そういう老害が実験を握っているのだという。
「分かった、ありがとう。今日はこの辺で帰るよ。また新年にでも挨拶に来る」
「そうしてやってくれ。母さんも心配症でな」
俺達は家を出ると車を出す。
「難しい問題ですね~」
咲良がため息を吐く。
俺は黙って聞いていた。
「春樹はいいんですか~?このまま行けば春樹が路頭に迷ってしまいますよ~?」
「保険はユニティがかけてくれてる」
「え?」
咲良が聞き返す。
「忘れたのか?地元銀行の株の40%は酒井コーポレーションが持っている事」
「あ~!」
咲良は理解したようだ。
少なくとも父さんの会長辞任は否決してくれるだろう。
せいぜい、頭取のクビを切られる程度で済むはず。
今日家にわざわざ出向いたのは父さんを問い詰める事じゃない。
ユニティはここまで知っている。今から難を逃れる準備をしておけ。
その事を知らせる為に来たまでだ。
「咲良、何か食いたいものないか?」
「え?」
「せっかく二人きりで出かけたんだ。最近デートらしい事する暇なかったしな」
「春樹が好きなものでいいですよ~」
「わかった」
車を地元にむけて走らせる。
ヘッドライトとテールランプが流れる中俺達も混ざって夜の明かりの街に入っていった。
(4)
「太陽の騎士団……」
父さんはそう掠れた声で言っていた。
疑心暗鬼
疑うならまず身内から。
そう思った私は実家に帰って父さんに聞いてみた。
「その言葉をどこで……聞いたところで無駄か」
「……ご想像の通りです」
父さんはしばらく考えた末、金庫から書類を取り出した。
それをコピーすると私に書類を渡す。
それは、父さんの子会社が受注に失敗した公共事業、土地の買収その他諸々が政治的圧力によるものだと裏付ける決定的証拠だった。
「春奈、それをみたらわかると思うが奴らはトライデントだ。重なった3本の矢が折りづらいように簡単には崩せない」
「……と、いうことは、それ以上の力を加えるか一本ずつへし折っていくしかないってことね?」
ユニティなら迷わず前者を選ぶでしょうけど。
「そう言える強さを身につけたんだね」
父さんは笑っている。
「その書類は太陽の騎士団と戦う際の重要な足掛かりになるはずだ。信用できる人に渡しておきなさい」
「わかりました」
「今日は晴斗という男はきてないのか?」
「晴斗は今日はバイト」
「そうか、大変なんだな。皆」
「父さんは晴斗との仲は認めてくれたの?」
「そういう約束だしな」
「じゃあ、もう一度お願いするわ。晴斗との仲を認めて欲しい。約束とかじゃなくて一人の親として」
「春奈にそこまで言わせる男なんだ。信じてるよ」
「……ありがとう」
私は書類を鞄に入れて。部屋を出ようと戸を開けた時だった。
通路で悲鳴が鳴ってる。
「今部屋を出ないで。危険です……ぐぁっ!」
「春奈!!」
父さんの制止を振り切り私は戸を開ける。
一人のひょろ長い男がこっちを向いている。
「レッツプレイ!モジュレーション!!」
私は手首に着けてあるリストバンドのスイッチを押すと変身する。
リストバンドから放たれた光が体に密着しスーツと変化する。
黄色のスーツが。腰帯のように巻かれたリボン。腰回りにあるミニスカートのような物。無駄なデザインが多かったけど。可愛い。
何か掛け声を入れた方がいいのだろうか?
勝手に命名するのも悪い気がする。
今度皆で相談しよう。
そんな事を考えている間に敵は襲い掛かってくる。
接近戦が得意なようだ。
私もどっちかと言うと接近戦が得意。
二本のナイフで切りかかってくる。
バク転をして回避をしつつ、両足を蹴り上げ相手の肘をける。
精々両肘を砕く程度だと思っていた。
しかし私の鋭い蹴りはそれだけでは物足りなかったようだ。
前腕部を完全に引きちぎり男は悲鳴を上げて後ろに飛びのく。
だが男は苦痛に顔をゆがめるというよりは快楽に溺れて浸っているという表情だった。
痛くない?
異常
男の腕がみるみる再生をしていく。
不死?
この手の相手は頭部を粉砕するしかないと聞いていた。
男の腕の再生が済むまでにケリをつける。
「ぐあっ!」
父さんの悲鳴が聞こえる。
部屋に戻ると父さんが敵の雑魚にやられている。
狙いは父さんの重要書類。
逃がさない。
軽く床をけると弾丸のようにまっすぐ敵に接近する。
驚く敵がスローモーションに見える。
男から書類をとりもどすと肘を相手の鼻っ柱に打ち込む。
鼻骨を粉砕された男は鼻血をまき散らしながら床を転げまわる。
「春奈、後ろ!!」
父さんに言われて背中を見ると腕の再生を終えた男が私に向かってナイフを放り投げる。
榴弾すら弾く装甲がナイフ如きに負けるわけがない。
背中がナイフを弾くと男はにやりと笑う。
「お前も俺の標的だあ」
標的。
それは私も一緒。
お前みたいなやつを野放しにはできない。
一足飛びで男に近づくと胸部を蹴りつける。
男は両腕で防ぐが両腕の骨を砕き胸部の骨までダメージは届く。
倒れる男の頭を手刀で叩きつけ頭部を粉砕しようとする。
閃光。
フラッシュバンを投げられた。
仮面のスキャナーが赤外線モニターに変わる。
男の姿が逃走しているのに気づいた。
父さんの護衛もしなきゃいけないのでここから離れるわけには行かなかった。
それにそろそろ限界時間。
変身を解いて父さんに駆け寄る。
「無事?」
「ああ、それよりさっきのは一体?」
「暴漢用の護身用装備よ」
「そうか、お前も大変なんだな」
「何か盗まれたものは?」
「何もない、お前にまた借りが出来たな」
父さんの言葉を聞きながらユニティに連絡する。
直ぐに応援部隊がかけつけ現場処理にあたってくれた。
太陽の騎士団も大事だけどまずはアーバニティからだ。
片桐さんの言う通りだと思った。
アーバニティ。絶対に許せない存在。絶対に逃さない。
(5)
「……つまり、その太陽の騎士団が真の黒幕というわけだね?」
パパさんに説明する。
「そうです、その情報を手に入れたときから攻撃が激しくなった」
「……、そうなるとこっちもやはり相応の準備が必要か……」
準備ってパパさんに出来ることあるの?
パパさんは懐からいくつものバッジを取り出した。
「これは……?」
渡辺君が聞く?
「……みんなこれからはこれを身に着けて行動してほしい。これは一種のライセンスだよ。私ではない警察庁長官直々の許可証だ」
許可証!?
「君たちが凶悪犯罪に立ち向かう際の面倒事を全部警察庁が負うといったものだよ」
け、警察庁!?
「これを君たちに渡すと同時に君たちは非合法的だが警察庁の一機関になったわけだ」
「パパさんがそんなことして大丈夫なの?」
私は心配した。パパさんに迷惑かけてる?
「大事な一人娘を危険な目に合わせるんだ。私も最大限に応援はするよ。だが、君たちがどんな危険な目にあおうと警察では守り切れないという事も理解してくれ」
「自分の身は自分で守れって事ですね」
渡辺君が言うと頷いた。
「それとこれも非合法的取引だが君たちの銃火器の携帯も許可されてる。でも気をつけて取り扱ってくれ」
「ありがとうございます」
渡辺君が頭を下げる。
「……娘の事よろしく頼む」
「それは私達に任せておいてください。ね?晶」
「そうね、片桐君にも頼まれてるし」
その時スマホが鳴った。
私は部屋の外に出てスマホに出た。
桐谷君からだった。
「亜依の奴そっちにいない?」
「今日は来ないって言ってたけど。バイトじゃないの?」
「それがバイトは既に終わってる時間なのに帰ってないんだ」
「買い物とかしてるんじゃないかな?」
「2時間も前に終わってるんだぜ?いつもなら連絡つくのに今日に限ってつかないんだ」
「誠君には言った?」
「いや、みんなが遠坂さんの家に行ってるって聞いたからまず電話しておこうと思って」
「渡辺君には私から説明するから桐谷君は誠君に連絡を」
「わかったよ」
電話を終えると私は渡辺君にその事を伝える。
渡辺君の表情は一変する。
すぐに亜依の電話に電話する。
「もしもし」
男の声だったみたい。
渡辺君がスピーカーに切り替える。
「誰だお前!?」
「悪魔とでも覚えてもらえたらいいかな?」
「悪魔だと!?」
悪魔……死神の統括者。
「取引をしようじゃないか?君たちの持ってる太陽の騎士団の情報と桐谷亜依の命。悪くないだろ?」
「俺一人の一存で決められるものじゃない!」
「随分冷たい意見だな。それとも侮られてるかな」
その後亜依の悲鳴が聞こえる。
「亜依に何をした!?」
「こっちの本気度を知らせただけだよ?」
「俺達にこんな目を合わせて無事だった組織はないぞ!」
「勇ましいな。だけど俺が聴きたいのはそんな回答じゃない」
再び亜依の悲鳴が聞こえる。
「亜依と話をさせろ!」
「させろだと?……まだ自分たちの立場が理解できてないのかな?」
「ま、まて!!話をさせてください」
「物分かりの良いお子様で助かるよ。ただ、話が出来る状態なのかは保証しない」
「亜依、聞こえるか!?俺だ!?」
「みんな……この取引にのっちゃダメ!きゃあ!!」
「亜依!?」
「取引に応じてくれるかな?」
「……わかった。応じよう」
「では詳しい日時はまた追って連絡する」
電話はそこで終わった。
渡辺君はそのことを桐谷君に伝える。
桐谷君は嘆いていた。
「落ち着け!明日皆で集まろう!緊急招集だ!」
「早速報復に出たか……」
パパさんが言う。
「さて、皆も明日大変なんだろう?気をつけて帰りなさい。愛莉も片桐さん宅に帰るのだろう?」
「うん……」
「じゃあ、また明日」
そう言って皆家に帰っていった。
私も冬夜君の家に帰ると冬夜君に電話をしていた。
直ぐにつながった。
「多分かけてくると思って待ってた」
「ほえ?」
どうやら冬夜君の電話にも悪魔と名乗る男から電話があったらしい。
取引条件は同じ。違うのは話の内容。
その結果相手は焦っていたらしい。
そこに渡辺君が電話したらしい。
タイミングが悪かったのか?
「いや、いいよ。相手が本当に人質を持ってくると言う保証があるならね」
「え?」
「コピーの効くファイル相手に一人しかいない人質を易々と差し出すか?という事」
それじゃ、亜依助からないの?
「相手の様子だと明日以降の取引になりそうだね?」
「そうだね」
「僕から渡辺君に連絡入れとく。僕が帰るまで軽率な行動を取るなって」
「私からも言っとく」
「エンペラーたちも奪われたんだって?」
「うん」
ごめんね、冬夜君がいない時にトラブルばっかり起こして。
「僕でも襲撃は読めなかったよ。気にすることは無い」
「うん」
「渡辺君にも言える事なんだけど立場を間違えちゃだめだよ?」
「え?」
「自分たちが不利的状況に立っているなんて考えちゃだめだ」
「でも亜依が攫われたんだよ?」
まさか冬夜君亜依を見捨てる気なの?
「前にも言ったけどさ、人質は無事だから意味があるんだ。人質を取るって事はそれだけの覚悟が必要だって事」
「うぅ……」
「亜依さんは必ず助けるから心配しないで」
「うん」
「じゃあ、また明日」
「は~い」
大丈夫だよね?
冬夜君が必ず助けるって言った以上助かるよね?
どんなに寒い夜でも冬夜君が灯す夜は暖かいものなのだから。
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