優等生と劣等生

和希

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4thSEASON

白い恋

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(1)

「冬夜君おはよう~」

12月に入っても愛莉の声は元気で一年中元気な愛莉の声を聞けるのは良い事だと思う。

「おはよう愛莉」

髪を撫でて、優しく言ってやると愛莉は喜んで抱き着いてくる。

「日課行かないとな」

雪は降らないとはいえ12月、コートを着て準備をする。
日課を済ますと僕はシャワーを浴びて朝食をとる。
朝食をすませるとコーヒーを入れて部屋に持って上がる。
半月もすれば世間の噂は他に流れていくもので、やれフィギュアスケートどうとか年末に向けたイベントの情報でネットもテレビも溢れかえっていた。
僕らユニティもクリスマスイブには真鍋夫妻の結婚式、25日は誕生日会年末には忘年会と大忙しの月だ。
そういうイベントで忙しいのが最近は羨ましく思う。
物騒な暮らしをしてきたから。
愛莉が戻ってくると着替えてから化粧を始める。
愛莉を見て想う。
最近ずっとしてなかったな。
愛莉はやっぱり寂しかったんだろうか?

「どうしたの?冬夜君?」

不思議そうに僕を見る。
試してみるか。
愛莉を手招きする。

「お化粧終わったらいくね」

そう言って化粧を続ける。
愛莉の化粧を待ってる間にテレビを見ている。
一部の報道では未だにアーバニティの事を追及している。
とはいえ、母体の須藤グループを潰したわけではないのでそれなりに圧力がかかっているらしく、紅会のことについては一切触れなかった。
化粧を終えた愛莉が隣に座る。

「カフェオレ冷めちゃうよ」

そう言うと愛莉はカフェオレを飲みだす。
カフェオレを飲み干すと愛莉は僕の腕に抱きつく。

「で、な~に?」
「あ、いや。最近朝いちゃついてなかったなと思って」
「気にかけてくれてたんだ」

さっき気づいたとは言わなかった。

「まあね」
「わ~い、でも今日はいいんだよ?後で思いっきり甘えるんだから」
「なんで?」

愛莉の顔が険しくなる。

「気づいてないの~?今日は冬夜君の誕生日だよ!」
「ああ……」
「お泊りの準備しておいてね」
「てことはいつものコースか?」
「うん。あ、でも……」

愛莉が落ち込んでいる。

「どうしたの?」
「プレゼント見ても落ち込まないでね?」
「なんで?」
「それは秘密だよ」

愛莉からのプレゼントで落ち込んだ試しなんて一度もないけどな。

「楽しみにしておくよ」
「本当に?」
「当たり前だろ」
「わ~い」

喜んでる愛莉の姿をみてるとこっちまで嬉しくなる。
学校に行く時間まで愛莉とじゃれ合う。
じゃれ合ってると悪戯もしたくなるもので。

「そろそろ学校に行く時間だよ~」

愛莉が立ち上がった瞬間を逃さない。
素早焼く愛莉のスカートの中に顔を突っ込み愛莉がバランス崩して倒れてもいい様に腰に手を回す。

「きゃっ!」

愛莉は手でスカートを押さえると割座でその場に座り込む。
僕の顔は愛莉の太ももで挟まれる。
今日は赤だった。
愛莉が黒いスカートを履いてる時は大体黒か赤が多い。
まあ。着替える時に見てるんだけどね。
なんかやってみたくならない?
彼女がスカートを履いていたらめくってみたり覗き込んで見たり。

「うぅ……困った旦那様ですね」
「今日はプリズムレッドなわけね?」
「馬鹿!!」

ぽかっ

「そういうのは帰ってから!」
「わかった」

そんな馬鹿な理由で肝心なニュースを逃していた。

「じゃ、行ってくる」
「あ、ああ。行ってらっしゃい」
「?」

母さんの様子がおかしい。

「なんかあったの?」

母さんに聞いてみる。

「別に何も無いわよ。ただ気を落してるんじゃないかと思って」
「どうして?」
「ほえ?」

愛莉にもわからないみたいだ。

「知らないならいいのよ。じゃあ、気をつけてね」

そう言って僕達を送り出した。

「麻耶さん何があったんだろ?」

愛莉が車の中でずっと考えこんでスマホを弄ってる。

「あっ!」

愛莉が声を上げる。

「どうした?」
「う、ううん。なんでもない」

何か隠してる。そんな笑顔だった。
朝の母さんの話題と関係してる。
スマホを見て気づく。朝から母さんの様子が変。もうすぐ年末……か。

「そっか、バスケ日本代表に呼ばれなかったか」

完全に山勘だった。

「うん、残念だってね……ってなんでそれを?……ってあっ!」

うまい具合に愛莉は引っかかってくれる。
まあ、あれだけ騒ぎを起こしたんだ。仕方ないだろう。
ほとぼりが冷めるまで代表入りは無理かな?
そんな覚悟はできてた。
できてたとはいえ、やっぱりショックなものはショックだ。
ただ愛莉の前でそんな姿をさらしたくない。

「しょうがないよ。気にしないで」

愛莉の頭を撫でてやる。

「冬夜君無理してる?」
「無理してないよ?」
「だといいんだけど……」

駐車場に着くと車を出る。
腕を組んで愛莉と歩く。
道行く人々が僕達を指差して噂している。
多分僕達が付き合ってるからとかじゃない。
バスケの件か、ユニティの噂の件だろう。
そんな事は気にも止めず教室に向かう。
教室でもひそひそと噂する人達。
愛莉もいつもと変わりないように見えた。
が、やっぱり愛莉も思うところがあるようで。
机の下で僕の手を握っている。

「大丈夫だよ」

と愛莉の手を握り返してやる。
そして授業が始まった。
2限目の授業が終わると学食に皆集まる。
皆が集まる前にスマホでニュースを見る。

片桐選手日本代表入らず。

そんなニュースがあった。
記事を読むと事件に巻き込まれているから他の選手を巻き込むわけにはいかないという協会の判断との事。
なら騒ぎが済んだ事が分かればまた呼ばれるって事だろう?
現に聖人や和人からメッセージが着てる。

五輪までには絶対片付けておけ!

五輪は冬夜の力絶対必要だから。

それぞれに返事を返していると皆がきた。

「冬夜、すまん!」

渡辺君が頭を下げる。

「気にしてないからいいよ、テレビで言ったろ?ユニティとバスケ。とるとしたらユニティだって」
「しかし……」

僕のスマホが鳴る。
スタッフさんからだ。
皆からちょっと離れたところで電話をとる。

「はい、もしもし」
「記事見た?今大丈夫?」
「大丈夫です、記事はさっき見ました」
「監督もスタッフも君の復帰を目指して尽力してる。自棄にならないようにしてくれ」
「わかってます。大丈夫です」
「五輪で勝つには君の力は必要不可欠だ。君の椅子はちゃんと用意しておくから!」
「はい」
「じゃあ、また」
「わざわざありがとうございます」
「いや、落ち着いていて安心したよ。じゃあまたね」

それで電話は終わった。
皆の下に戻ると皆が聞いてきた

「どうだった?」
「ああ、代表のスタッフさんからだった。『五輪の椅子は用意しておく』ってさ」
「そうか、よかったな」と神奈が言う。
「冬夜、約束の件なら気にしなくていいぞ。お前はもう一度世界の頂点を見てきたんだ。誰も文句は言わんよ、万が一代表落ちしても……」

渡辺君が言うと僕が首を振る。

「条件を決めたのは僕だからね。僕の気が済まないよ」
「そんないい方しないでください!私どう声かけたら分からなくなるじゃないですか!」

佐倉さんが言う。

「桜子が何言ったって変わらねーよ。こいつはいつも自分の意思を貫いてきてるんだから」と、佐(たすく)が言う。

「こんな時にこんな話題を持ち出すのは気が引けるんだけど……」

恵美さんが資料を持ってやってきた。
もう出来たんだ?

「例の奴?」
「ええ、大体証拠がかたまったから持ってきたんだけど。片桐君首を突っ込んで平気なの?」
「ユニティの名前が出た時点で僕が関わってるってわかるよ」

僕は笑ってそう返した。

「じゃあ、簡単に説明するわね。内部では破綻が決まっていて既にヘッドハンティングやら自分の資産の移動やらはじまってるわ」
「Xデーは12月24日?」

僕が聞くと恵美さんはうなずいた。

「問題は対応策か……。さすがに証券会社を立て直すなんてのは無理だしな」

渡辺君が頭を悩ませる。

「さすがに破綻を止めるのは無理みたいだね……」

僕はそう言いながら、ある人物の名前を探す。
あった。

筆頭株主高橋憲伸。

隠者の尻尾を捕まえた。
恵美さんに資料を返す。

「この資料大切に保管しておいて。誠のサーバー並みにセキュリティ固くして」
「誠君のサーバーマシンもだけどうちの隠し部屋にはどこの国のスパイも侵入できないくらい強固なシステムをつかってるの。問題ないわ」
「冬夜計画を止める方法を思いついたのか?」

渡辺君が言う。

「言ったろ?破綻は止められないと」
「だったら資料持ってても仕方ないだろ?」
「破綻は止められないけど息の根を止める資料にはなる」
「告発しようって言うんだろうけど、無駄だぞ。太陽の騎士団の権力を舐めちゃいけない」

亀梨君が言う。

「前に、咲良さんが言ってた。『地元がダメなら他を使えば良い』って」
「片桐君も知ってると思うけど縦割り構造ってのは他所の管轄には簡単に手が出せないんだ」
「そういう意味じゃない。忘れたの?僕達の後ろには警察庁がついてるって」
「お前まさか!」
「せっかく愛莉パパがくれた権力だ。使わない手は無いよ」
「また、石生副大臣の出番もあるわね」
「彼等の狙いは多分空売りだけじゃない。国税を使った保証金も狙ってる。国が動けば当然……」
「地方行政なんて目じゃないわね……」
「あとは、僕達の行動を気取られないようにするだけ」

僕が言うと、皆が盛り上がる。

「でも、結局被害者は救われないんですね」

石原君が言う。

「今回の場合は被害者にも非が無いとは言えない。基本的に自己責任だから」

渡辺君が言う。

「石原君の心配するようなことはならないよ。基本的に利用者の原資は証券会社の運営金とは別個のものだから」

含み益や含み損の事は自己責任だろうけどね。と付け加えて説明する。
石原君は安心したようだ。

「でも一時的なパニックは免れないでしょうね」

恵美さんが言う。

「その混乱に生じて逃げ出そうって腹積もりなんでしょうけど……」

晶さんが言う。

「そんなこと絶対に許さない!!」

愛莉が言うと3人とも手を重ねる。

「決行日はいつにする?」
「年内はゆっくりしたいね?」

恵美さんが言うと僕が答えた。

「のんびりってあなたね、下手すれば何百人って命がかかってるのよ!」
「そんなのは極一握りだよ。どうしてもっていうなら。12月25日だね」
「後だしするわけ?」
「カウンターには最適なタイミングだと思うけど」

もっと安全に言うならその前に愛莉パパに相談しておけばいい。
そう言ったら皆納得してくれた。
「そういう事ならこのファイルは愛莉ちゃんに預けるわね」

そう言って愛莉にファイルを渡す。
愛莉は大事にバッグにそのファイルをしまう。

「冬夜君、今日お泊りの前にパパさんの所に行こう?」

愛莉はそのファイルを持っているのが不安らしい。

「そうだね」

警察署、あまり出入りしたくないところだけど。

「折角だから皆で行かない?」

恵美さんが言う。

「亜依とかも誘ってみよっか?」

愛莉がそう言いながら皆に連絡する。
行くのは僕と愛莉、神奈、亜依さん、石原夫妻、酒井夫妻、渡辺夫妻、白鳥さん、晴斗の12人。
そろそろ時間だ。
皆荷物をまとめて授業に戻った。

(2)

急に呼び出しを受けた。

16時に地元中央警察署に集合。
また物騒な事がおこっているのだろうか?

期待と不安。

不安は物騒な事が起ころうとしているから。
期待は晴斗に会えるから。
晴斗はバイトで忙しい。
でも私が地元に行くと言ったら「今日は休むっす」と言ってくれた。

歓喜。

晴斗はいつも私の事を思ってくれてる。
15時半ごろには地元中央警察署についていた。
皆を待っていると皆続々と集まってきた。
しかしそれ以前から不審な車両が見受けられる。

偵察?監視?尾行?

多分どれも当たっているのだろう。
片桐さん達が車から降りてきて玄関に向かおうとした時だった。

男たちがぞろぞろと車から降りてくる。
全部で20名ほど。
数はこっちの倍。

「冬夜何人くらいまでいけそうだ?」
「男が5人、愛莉たちは自衛が出来るから一人頭4人てところ?」
「大丈夫です。僕達がいます」
「こういう事だと思いましたよ、とほほ」

石原さんと酒井さんが言う。

でも違うんだよ。今日は特別。

お披露目。
デビュー

違う意味で緊張する。大丈夫練習はしてきた。
私は皆の顔を見る。
皆私の顔を見てうなずく。

「冬夜君これ大事に持ってて」

遠坂さんが片桐さんにバッグを預ける。
私も晴斗に荷物を預ける。

「あなた達何の用?」
「そのファイルを大人しく渡してもらおうか?」
「やっぱりそうなのね?」

恵美が不敵な笑みをこぼす。

「デビュー戦にしてはちょっと物足りないけどあなた達で我慢してあげる」
「なんだと?」
「皆行くよ!」
「おお!」
「レッツプレイ・モジュレーション!」

女性陣が一斉にリストバンドのスイッチを押す。
光があふれて私達の体をスーツが覆う。

遠坂さんが「溢れだす愛の吐息プリズムピンク」
神奈さんは「あふれ出す自然の息吹プリズムグリーン」
恵美さんは「溢れ出す情熱の炎プリズムレッド」
私が「溢れ出す幸運の光プリズムイエロー」
美嘉さんが「溢れ出す蒼き風プリズムブルー」
亜依さんが「溢れ出す温かな光プリズムホワイト」
晶さんが「溢れ出す神秘の光プリズムパープル」

最後に7人で声を合わせる。

「7つの光が導く未来!輝け!プリズムフェイス!」

決まった。
一つの達成感。
男たちは呆気に取られていたがやがて笑い出す。

「何の玩具だそれ!?」
「アニメ飲み過ぎじゃないのか!?」

言いたい放題の男たちを黙らせたのは神奈さんの蹴りだった。
後にあった車まで吹き飛ばされ車をへこませるほどの蹴りを食らった男は気絶する。

「男共は警察署の中にでも隠れてなさい!」
「で、でも」

何か言おうとする石原さんを止めたのは片桐さんだった。

「今の彼女たちの側にいても足手まといになるだけだ、離れよう」
「わかりました。恵美……やりすぎないでね!」

自分の旦那さんに笑顔で手を振る恵美さんの頭を金属バットで殴りつける。
戦車のミサイルを食らっても大丈夫なほどに設計されている装甲に金属バッド程度無意味。
男の両手を握り締めると頭突きを食らわせる恵美さん。
額から血を引き上げ倒れる男。

「プリズムハートフルブレイク!!」

遠坂さんが名付けたどこかのゲームで見たようなコンボ系の技を決める。
可愛らしい名前とは対照的に一撃が致命傷となりかねない攻撃を加える遠坂さん。

必殺技……かっこいい。
私も何か考えなきゃ

何人かに囲まれた。
これだ……。

「プリズムフォーチュンスプラッシュ!」

回し蹴りでダメージを与えつつ4回転して竜巻を巻き上げ周りの人間を巻き込む。

「そのノリ楽しそう!」

亜依さんも乗り気のようだ。

亜依さんに襲い掛かる相手に対して自分の体を震えさせて衝撃波を発生し一石に吹き飛ばす。

「プリズムボディソニックとでも名付けようかしら」

他の皆も「プリズムフルドライブ」やら「プリズムバーストブレイク」やら必殺技を開発していく。
実験台になった男の群れが山になる頃警察官が署から飛び出してきて男たちを取り押さえる。
私達は変身を解く。
時間は4分53秒。
まだ物足りなかった。
男性陣は呆気に取られている。
一人の若手刑事がやってきた。

「君たちが遠坂警視の言ってた人?こっちにおいで?」

刑事が案内してくれたので私達は3階に向かった。

(3)

会議室で僕たちは愛莉パパと会う。

「……娘から粗方話は聞いてる。早速見せてくれないか?」

僕はファイルを愛莉パパに渡す。

「……なるほど。これは確かに大ディールだな」

皆の表情が明るくなる。
だけど僕はまだ心配があった。

「こんな情報どこから手に入れたんだ」

若手刑事が問い詰める。
それを説明しないといけない。

「出所が分からないと信用できないぞ?君たちの風説の流布だって事も考えられる」
「……取り調べは私が行うと言ったはずだが?」

愛莉パパが新人刑事に言う。

「それはそうですけど」
「これを警察庁に渡せばいいんだね?」

愛莉パパが言う。

「遠坂警視それを信じろと言うんですか!?」

新人刑事が愛莉パパに言う。

「……今、外で暴れてた連中の取り調べを行っている。そいつらに聞けばこのファイルの信憑性も判明するだろう」
「なら後は捜査2課に回せばいいじゃないですか?」
「この子たちの胸のバッヂを見て言ってるのか?」

僕達の胸には愛莉パパからもらった旭日章にJSSと書かれたバッジがあった。

「これって……」
「そういうことだ。俺達が上に通す義務はない。この子たちの判断で動く事が出来る」
「そのファイルは内部告発によるものです。決して偽造なんかじゃない。どの組織に正義感溢れる若手がいる。そうでしょう?」

恵美さんが言うと愛莉パパはにやりと笑った。

「良いだろう。Xデーより早く準備を進めておこう。君たちの予定通りに動くように働きかける」
「ありがとうございます」

皆で立って礼をする。

「じゃあ、私は失礼するよ。これは確かに預かった」

そう言って愛莉パパたちは退室する。

僕達もその後に続いて退室すると警察署を出た。

「これってそんなに効果のあるものだったんですね」

石原君が胸のバッヂを見て言う。

「JSS……ジャパンシークレットサービスと言ったとこからしら。日本も漸く重い腰を上げたのね」

恵美さんが言う

「でもシークレットサービスってボディガードだけじゃないんですか?」
「アメリカのシークレットサービスは特殊でね、例えて言うと凶悪犯罪なんかは逮捕令状なしに逮捕が出来るの」
「なんか僕達巻き込まれてる感すごいんですけど」

酒井君が言う。無理もない。でも……

「途中下車は許されない」

僕が呟く。

「じゃ、私たちは帰るわ。片桐君達は誕生日楽しんでね」
「俺らも折角春奈来たしなんかおいしい物食って帰るっす」
「私はこれからバイトだ!じゃあなトーヤ」

皆それぞれ帰っていった。

「冬夜君私達も行こう?」

愛莉が言う。

「そうだね」

愛莉を乗せホテルに向かう。
こうして愛莉とゆっくり愛を囁いてる時間とさっきのような騒ぎの時間。どっちが現実なのか分からなくなる時がある。
どちらも現実なんだ。
この二面の生活がずっと続くんだろうか?
ユニティの活動はどこまでも広がる。

(4)

今日は冬夜君の誕生日。
お気に入りのレストランでお気に入りのワインを飲みながら料理を楽しむ。
日常とは違う時間を満喫する。
いつもとは違う衣装でいつもと違う髪形。
冬夜君は似合うよと言ってくれた。
その一言で嬉しいの。
あ、今日は冬夜君の誕生日。
冬夜君を喜ばせなくちゃ。
冬夜君に喜んでもらえるだろうか?
今年のプレゼントは手作りのニット帽。
冬夜君は喜んでくれた。
それが嘘でもいいの。
あなたの笑顔が私にとって最高の見返りだから。
だめだよ冬夜君。
お店の中で帽子被るのはマナー違反だよ。
本当に嬉しいんだね。
ディナーが終ると繁華街に行く。
いつものバーでカクテルを飲む。
お疲れ様。
最近ずっとゆっくりしてなかったもんね。
え?冬夜君もそう思ってたの?
私もだよ。
やっぱりユニティは平和が一番だよね。

「多分つかの間の休息だろうけどね」

そんな事言わないでよ。
ずっとこのままがいいな。
時が止まればいいのに。
私たち二人だけの時間が流れたらいいのに。

「僕達だけ歳を取るの?」

冬夜君はそう言って笑う。
うぅ……冬夜君は意地悪だ。
そんな事言うと拗ねちゃうぞ。
冬夜君は慌てて謝ってくれる。
今日だけは特別だよ。
何でも許してあげるから。
バーを出るとホテルに戻る。
ホテルに戻るとシャワーを浴びて、コンビニで買ってきた酎ハイを飲む。
お酒もいいけど、私にも酔ってよ。
果てしない星の光のように。
胸いっぱいの愛で今冬夜君を包みこもう。。
果てしない星の生命のように挫けそうになってもずっと愛は変わらない。
この今の幸せがいつか雪のようにきえてしまわないように。
愛してるから……抱いていて。
神様どうか見守っていて下さい。
この愛を永遠に大切にしよう
冬夜君の為に生きていくと決めたから。
次の日の朝アラームで目が覚める。
冬夜君は眠っている。
でも冬夜君の大好きな朝ごはんの時間だよ。

「冬夜君モーニングの時間だよ」

冬夜君は素早く起きると着替える。
私はそんな冬夜君に抱き着く。

「もっと甘えていたい」って

でも冬夜君は意地悪で。

「朝食済んでからな!」という。

うぅ……。
朝食が済むと冬夜君は甘えさせてくれる。
チェックアウトの時間ギリギリまで冬夜君に甘える。
そしてチェックアウトが済むと家に帰る。
現実に引き戻される時間。

「今日は帰ったらのんびりしようか?」

本当に?

「愛莉も家事したら駄目だからな」

冬夜君がそうさせてくれるんじゃないの?

「一杯甘えさせてやるから」

わ~い。
しかし現実はいつも残酷で……。
私達が家に帰ると麻耶さん達が置手紙を置いていた。

西松医院。***号室。遠坂さんが重体。

パパさんが!?
私は体が震える。
昨日まであんなに元気だったのに。
震える私に代わって冬夜君が電話をする。

「父さん?僕だけど……うん、わかった」

冬夜君は電話を終えると私に言う。

「愛莉、病院に行こう?大丈夫、重体だけど命に別状はないって」
「パパさん生きてるの?」
「意識も取り戻したみたいだよ……ただ……」

ただ?

「ファイルを奪われたらしい」

それって……。

「間違いないだろうね。太陽の騎士団の連中だ。相手はひき逃げでまだ捕まっていないらしい」
「でもファイル奪われたら……」
「それも問題ないって?奪われたのはコピーしたダミーのファイルだって。本物は警察庁に送付済みらしい」
「それなら安心だね」
「だから病院行こう?詳しい話を聞かせてくれるらしいし」
「うん」

本当に現実は残酷なものだった。
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