優等生と劣等生

和希

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4thSEASON

世界に眩しい明日を

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(1)

「冬夜君おはよう。朝だよ!!」

朝から愛莉と攻防を繰り広げていた。

布団を引きはがそうとする愛莉と布団にしがみ付く僕。
目は醒めている、だけどもう少し眠っていたい。
このままだと布団が引き裂かれるまで攻防が続きそうだ。
布団が引き裂かれたら愛莉との仲も引き裂かれそうで怖い。
かといってもう少し眠っていたい。
どうしたものか?
僕は抵抗を止める。

「きゃっ」

僕が布団を話したことによって愛莉は姿勢をくずして床に尻もちをつく。

「うぅ……朝からひどいよ。冬夜君」

そんな愛莉の可愛い抗議をよそに僕は布団ごと愛莉を抱きしめると床に押し倒す。

「ちょっと、今日も日課あるんだよ!?それに床はごつごつして痛いし冷たいからいや!」
「じゃあベッドならいいんだね?」
「え?あ、そういう意味じゃなくて……」

何か言おうとしている愛莉を無視してベッドに運ぶ。

「これで何の問題もないね。愛しているよ愛莉」
「ありがとう私も愛してるよ……ってそうじゃなくて!」

尚も抗議を続ける愛莉の口を口で塞ぐ。
やがて抵抗していた愛莉も、抵抗をやめ僕を受け入れる。

「うぅ……日課終わらせてからだっていいじゃない」

愛莉の最後の抵抗も聞かなかったことにする。
そして僕は愛莉に抱き着いたまま寝る。

「うぅ……冬夜君の嘘つき!」」

ぽかっ

「私とするときは気持ち込めてくれるって言ったよ!」

そんなやりとりをしているとジョギングの時間が無くなってしまった。
この日はジョギングは無しになったけど、愛莉の機嫌もあまりよくなかった。
朝食を食べた後愛莉はマグカップを持ってきてから二人でテレビを見ている。
機嫌は思ったより悪くない?
現に愛莉は僕に体を密着させている。
試しに愛の腰に手を回せば愛莉はさらに密着させてくる。
こういうときは下手に愛莉に聞くより愛莉の心を覗いた方が早い。
ちょっとご機嫌斜めだけど何かを待ち望んでいるような、そこにはまぶしい光が差し込んでいる。
ああ、そういうことか。
愛莉の意図を察した僕はとりあえずコーヒーを飲むと愛莉のマグカップももって部屋を出る。
寂しそうない愛莉の表情。
間違いなさそうだ。
部屋に戻ると一人で拗ねてる愛莉がいる。
そんな愛莉の隣に座ると愛莉の肩を抱き寄せる。
いつもの愛莉が戻ってきた。
僕の腕にしがみ付く愛莉。
愛莉の頭を撫でてやりそして口づけを交わす。
愛莉の全身の力が抜け僕の体に身を預ける。

「だめだよ~。こういう時間はやることやってからじゃないとだめっ!」

そう言って愛莉は笑う。
愛莉の機嫌は良いみたいだ。
愛莉をお姫様抱っこしてベッドに寝せる。
愛莉は上身を起こし自分で服を脱いでる。
そんな愛莉を見ていると愛莉は「ぼーっと見てないで冬夜君も脱がないと」という。
「わかったよ」といって服を脱ごうとしたときにテレビの声が聞こえた。

「地元証券破綻」

やっぱりこの日を狙って来たか。
証券取引が休みに入ったタイミングを狙っての発表。
だが、それは前日に計画破綻の噂が流れていた為、さほどの影響は無いかのように見えた。
が、やはり地元企業とはいえ証券会社は証券会社。破綻すればそれなりの影響も出る。
昨日の乱高下の影響もあってやはり、破産した人、膨大な負債を抱え線路に身を投じる者。様々な影響を受けていた。
地元銀行以外の銀行もそれなりのダメージがあったらしい。
地元銀行に影響が無かったのは太陽の騎士団の計画通りに事が進んだからだろう。
人々が夢見ていたクリスマスイブは、絶望の一色に包まれた。
そんなニュースを見ながらやはり太陽の騎士団は放っておけないと考えていた。
だけど今一番考えないといけないことはそんなことじゃなかった。

ぽかっ

「今日の冬夜君酷いよ。その気にさせておいてまたお預けですか?本気で泣いちゃうよ?」
「あ、ごめんごめん」

愛莉に謝ってテレビを消すとベッドに入る。

「今日午後から美容室予約してあるから冬夜君も付き合ってよ」
「また行くの?なんで?」
「今日は真鍋夫妻の結婚式だよ?」
「あ、そうか……」

すっかり忘れた。

「本当に夢中になると何もかも忘れちゃうんだから……そのくらい私にも夢中になってよ……あっ」

何時だって愛莉には夢中だよ。
愛莉との時間を作り出すと着替えて出かける準備をする。

「冬夜君は青と赤のワンピースどっちがいいと思う?」

愛莉が衣装合わせしながら聞いてくる。
ちなみに僕はいつものスーツを着ている。

「どっちでもいいよ」は絶対に禁句。ひらめきでもいいから自分の好きな方を選んでやる。
「赤かな~」
「冬夜君なら絶対そうだと思った。じゃあ、こっちにするね」

そう言って愛莉は着替えだす。

メイクとかは美容室でしてもらうらしい。
お昼ご飯を外で食べて、予約の時間に美容室に行くと僕も髪形を整えてもらう。
それから家に帰って、結婚式場まで親に送ってもらい。皆と話をする。
公生達や亀梨君達も来ていた。

「俺たちまで呼ばれていいんですか?」

亀梨君達が言う。

「もう俺達は一緒の仲間だ。一緒に仲間を祝ってやるのも大事だぞ」と渡辺君がいう。
「ありがとうございます」

亀梨君は頭を下げる。

「折角の祝いの席だ。間違ってもそんな真似はよせよ!」

美嘉さんが言う。
愛莉はユニティの皆と話している。
渡辺君と誠と公生の4人で話をする。

「やっぱり予定通りでしたね」

多分朝のニュースの事だろう?

「なに、明日は祝勝会も兼ねてお祝いだ。予定通りならな」

渡辺君がそう言って笑う。

「隠者は入院したらしいね」

公生が言う。でも……。

「今は、そんな場合じゃないだろ?」

僕が言うと3人は僕を見る。

「渡辺君も言ってたろ?今日は仲間の門出のお祝いをする日だ。しけた話はまたにしよう」

そう、今は仲間の眩しい明日に祝福をする日。
太陽が夜に遊びに訪れる日。
終わりの無いよう戦いも今宵は休戦の証の炎を灯そう。

(2)

「社長、おめでとうございます」

友坂さんがそう言わってくれた。

「ありがとう。次は友坂さんの番よ」
「私は一生独身ですよ。相手がいないし」
「そうかしら?」

隣で挙手してる子がいるわよ?

「ところで今日はあの子たちは呼ばなくて良かったのですか?」

あの子たちとはユニティのメンバーだろう。

「いいのよ、あの子たちは明日お祝いしてくれるらしいから」

私はそう返す。

「今日は身内で盛り上がってくれって渡辺先輩が……」

拓海がそう言うと友坂さんは納得したようだ。
今日の2次会は私の身内とユニティ以外の拓海の身内で集まっていた。
とはいえ、同じ会社でバイトしている新名さんや丹下夫妻は来ている。

「聡美、おめでとう」

修司君がそう祝福してくれた。

「次はあなた達の番ね」

そう言うと修司君は隣に立っている可愛らしいお嫁さんと照れくさそうにしていた。

「ユニティは結婚ラッシュだな。こんなに頻繁に招待されるとは思わなかったよ」
「そうね、椎名君達もそろそろなんでしょう?」
「新名さんが卒業したら考えますよ」
「ちょっと椎名さん!!」

恥ずかしそうにしている新名さん。
2次会が終ると私達は家に帰る。
家に帰るとスーツを脱ぎ捨て、ベッドにダイブする拓海。

「……洗濯物を脱ぎっぱなしにするのはやめてちょうだい」
「あ、ああごめん。つい気が緩んでしまって」

慌ててスーツを仕舞う拓海。

「寝るんだったら先にお風呂に入ってちょうだい」

そう言って私は着替えると机の前に座り作業を始める。
そんな私のマウスを操作する手の上に拓海は手を重ねる。

「今日はオフだっていったろ?」
「でも、年末年始は新婚旅行だし早めに片付けておきたい作業が」
「明日から俺も手伝うから」
「あなたも自分の片付けなきゃいけない作業あるでしょ?」
「それなら、昨日までに粗方片付けた。年末まで余裕があります」
「随分早いのね?」
「椎名さんも気づかってくれたみたいで、仕事の量調整してくれたみたいです」
「なるほどね」
「どうせ明日からまた眠らない日々が続くんでしょう?今日くらい休みましょう」

そう言って拓海は私のパソコンをシャットダウンする。
私は観念した。
シャワーを浴びると、シャンパンを飲む。
そしてベッドに2人で入り初夜を過ごした。

(3)

今西松医院は物騒な患者を抱えていた。
高橋憲伸、今度は本物の憲伸だ。
その事はユニティには連絡した。
片桐君は「分かった」との一言だけ。
当然どこも悪くなく担当医は私に回ってきた。
いつも通り健康面を一日一回様子見に行くだけの仕事。
固執の扉には面会謝絶の札が。
扉を開けると大声で怒鳴っている憲伸が。

「あまり興奮するとお体に触りますよ?」と看護師が言う。
「どこかお体の悪い所とかありませんか?」
「虫の居所が悪いくらいだ」

影武者だった憲伸とは随分違うイメージだ。

「では、何かあったらいつでも呼び出してください」
「お前!……ちょっと残れ」

私に声をかけてきた。
看護師に先に戻るように言うと憲伸の話を聞くことに。

「……儂は、ずっとこのままか?」
「容体はどこも悪くありません。退院したければいつでも……」
「そういうことを言ってるのではない!」

憲伸は怒鳴った。

「お前もユニティのメンバーなのだろう?儂の言う事の意味くらいわかっているだろう?」

ああ、そういう意味ね。
そういう意味でも答えは変わらないわ。

「容体はどこも悪くありません、他の患者さんに病室を分けてあげたいくらい」

ちょっとだけ嫌味を混ぜてやった。

「儂とて居場所があるならすぐにでも退院したいわい!」
「居場所ならいくらでもあるでしょう?」

刑務所の中とか。

「これで褒章を受ける目も潰れたわ!貴様らもこのままタダで済むと思うなよ?」

憲伸は私を睨みつける。
世間ではどう思われているかしらないけど、私に言わせればちょっと健康体の唯の老人。
歯牙にかけるほどでもない。

「あなたが私達をどう思っていようと勝手だけど……私にとって貴方は担当された患者、それ以上でもそれ以下でもない」
「こんな老いぼれが粋がっても話にならんといいたいのか?」
「私、仕事に私情を挟むのはあまり好きでないの」

仕事に支障をきたすから。

「そうね、あなたが仮にもし病に倒れたらその治療に専念するでしょうね。それが私の今の使命だから」

どんな時でも忘れてはいけないプライド。

「ふん、お前以外の誰かに担当を変えてもらうだけじゃ!」
「……言いたい事はそれだけ?私もそんなに暇じゃないので」
「憎たらしい……さっさと失せろ!」

ああ、いう憎まれ口を言ってるうちはまだ大丈夫だろう?
私は退室した。

「あの、あなたが高橋憲伸の担当医ですか?」

記者と刑事っぽいのに捕まった。

「そうですけど何か?」
「面会謝絶とされていますけど、実はどこも悪くないと聞いていますが」
「高橋憲伸は親族以外の誰とも面会を許されておりません」
「ですからそれは何故です?」
「それにお応えする義務はありません。会見でお話した通りです」
「あなた本当は知っているのでしょう!?高橋憲伸はどこも悪くないって事を!?」
「いい加減いしなさい!」

私は怒鳴っていた。

「あなたが何を言おうとここは病院。そして高橋憲伸は患者。そして私は医者。私には医者を守る義務があります!」
「そんなのは詭弁だ。あんたも病院もいくらか金を積まれたんだろ!?この病院の闇を探ることも出来るんだぞ」
「それがあなたの仕事ならご自由に。ただ私は金に目がくらんで自分の責務を放棄するような愚かな人間じゃない。何があろうと責務を全うするだけ」
「俺達が金に群がるハイエナだと言いたいのか?」
「そんな立派なものには見えないわね。さ、もういいでしょう?」
「待ってください、私は警察の者ですが退院日はいつくらいになりそうですか?」
「それも会見で言いました。予断を許さない状況だと説明したはずです」
「私も正義を行使する公僕に過ぎない。だからその責務を全うしたい」

正義?笑わせる。
人にはそれぞれ正義がある。だから争う。
しかしここは病院。
正義も悪も関係ない。苦しむ人を救う場所だ。
そこに私情を挟むべきじゃない。
私のような外科医でもそうでなくても。
自分の指先一つで患者の命を左右するのだから。

「あなたのの責務は理解しました。ですが私は自分の責務を果たすだけです」

そう言って後始末はスタッフに任せて私は診察室に戻る。
定時になれば仕事を終え、家に帰る。
お風呂で疲れを癒して。そして着替える。
啓介の準備が整えばタクシーを使って街まで行く。
啓介も私を気づかってか仕事の内容については触れなくなってきた。
偶にこぼす私の愚痴を聞いてくれる程度だ。
そして今日も愚痴を漏らす。

「深雪も毎日大変だな」

その一言がどれほどの癒しになるだろう。

「まあ、これも仕事だから」

そうただの仕事だ。
淡々とこなすのみ。
与えられた役割をこなすのみ。
その為なら出来る限りの力を尽くす。
それが私たちの戦い。
今宵私達の戦いが終わる。
友達と食べて飲んで歌って踊って祝う。
嫌な事をすべて忘れられる。たった一晩だけのイベント。
その一晩が終ればまた日常の戦いが始まる。

(4)

「じゃあ、皆今夜は騒ぐ前に報告することがある」

渡辺君が言う。

「高橋憲伸の不正がすべて発覚した。これで高橋憲伸は終わりだ」

渡辺君が言うと皆が騒ぐ。

「IRISの情報も開示した。須藤グループも太陽の騎士団もしばらくは動けないだろう!」

渡辺君が言うと、皆がさらに盛り上がる。
僕は渡辺君の話を聞きながら、食べ物を食べていた。

ぽかっ

「まだ乾杯もしてないのにフライングだよ冬夜君」

愛莉に怒られた。

「これで俺達の完全勝利だ!皆騒いでくれ!あと真鍋夫妻結婚おめでとう!何か一言お願いします」

渡辺君が聡美さんにマイクを渡す。

「皆さん、こんな席を作ってくれてありがとう。皆さんも頑張って。それでは、ユニティの未来を祝って乾杯」

宴が始まった。
渡辺君が僕の側に寄ってくる。
どうしたんだろう?

「冬夜、2次会でちょっといいか?」
「へ?いいけど?」

何かあったのか?

「いや、気になることがあってな……」
「気になること?」
「ああ、凄く気になることだ」
「まあ、いいけど?」

それが何かまでは分からなかった。

「公生!お肉ばっかり食べたら駄目!」
「ちゃんとピラフも食べてるよ」
「好き嫌いしたら駄目!」

そういって公生の取り皿に盛る奈留。

ステージがあって、カラオケも用意されてる。

ユニティの「歌姫」カンナが美声を披露する。

負けじと亜依さんや愛莉が曲を入れていく。

「冬夜君も歌おう?」

愛莉が言うとデュエット曲を入れる。
愛莉と歌う歌は大体歌える。
逆を言うと愛莉と歌わない曲はほとんど知らない。
偶にいれると選曲をミスるらしくて皆の不評を食らう。
でも今日は違うみたいだ。

「片桐先輩アレを歌ってください」

そう言って真鍋君はアコギを渡す。
アコギを調律して歌い始める。

大きな喜びと少しの寂しさを涙の言葉で綴りたい。
世界に眩しい明日の光を体に浴びて振り返らずにそのまま行けばいい。
風に吹かれても雨に打たれても信じた愛に背を向けるな。

僕が歌い終わると。皆の拍手が沸く。

「ありがとうございます。片桐先輩」
「このくらいお安い御用だよ」

1次会が終ると真鍋夫妻は帰っていった。今日も家で残業らしい。
大変だな新婚生活も。

「でも二人共年越しはハワイでって言ってたよ」

愛莉が言う。
で、2次会のカラオケには公生と奈留は来なかった。
真っ直ぐ家に帰ったのだろう。

皆揃うと渡辺君が言う。

「さっきは祝いの席だったから言わなかったけど一つ気になることがある」
「なんだいそれは?」

酒井君が聞く。

「それは冬夜が知ってる」

へ?

「トーヤ、この期に及んでまだ隠し事してるのか!?」
「冬夜の言っていたことは大体あっていた。もうみんなに隠し事は無しだ」

カンナと誠が言う。

「……まだ終わりじゃない。そんな気がするんだ」
「え?」

愛莉が聞き返す。

「だって、須藤グループだって太陽の騎士団だってパパさんが踏み込んだって言ってたよ?もう私たちの役目は終えたんじゃないの?」
「そう、全部引き出した。藪の中のへびをつついたんだ。何らかの反応があっておかしくない。そんな気がする」

多分報復という名の反応が返ってくる。

「そんなのちょろいぜ!だって今までだってなんとかしてきたろ?なあ?皆!」

美嘉さんが言うと皆が「そうだそうだ」と盛り上がる。
でも……。今度の敵は異質な気がする。

「死神の集団。それは石原君達でもてこずった相手。そんなの相手に僕達ができる?」
「それは……」
「難しいかもしれませんね、僕が言うのもなんですけど化け物ですよあれ」

酒井君が言う。
酒井君に化け物と言わしめる相手を僕達が相手に出来るのだろうか?

「……これは業務上で知り得た情報だからオフレコにしておきたいんだけど」

深雪さんが言う。

「高橋憲伸が言ってたわ。これで終わりだと思うな。って……」

やっぱり切札を持っていたんだ……。

「私達も対抗手段が必要。そういうわけね?」

恵美さんが言う。

「そうだね、対抗する手段が必要かもしれないね」

それも付け焼刃の護身術なんかじゃない、もっと有効的なもの。

「わかったわ、準備はしておく。こっちのSPの練度も上げておくわ」

恵美さんが言う。

「恵美さん言ってる意味分かってる?石原君並の強さを短時間で身につけなきゃいけないんだよ?」
「わかってる、考えていたことはあるの。皆冬休みは時間ある?」

冬休みって2週間しかないんだよ?

「皆に会った装備を用意しておく。冬休みの間に準備する。それなら問題ないでしょ」

相手が冬休みの間に襲撃してこないって保証あるならね?
まあ、相手が警察の対応をしている時間を考えたらそのくらいの時間は準備出来るか?
でもそれだけじゃ不安だ。

「皆で冬休みの間合宿しない!?武術を身につけるのよ!」
「付け焼刃の武道じゃ通用しないよ?」
「武道じゃない、武術よ。実勢に対応する訓練!」

亜依さんが言う。
付け焼刃でも対応する訓練はしておいた方が良いかもな?

「丸二週間は無理かもしれないな。皆生活もかかってる」
「そっか、まあ私も無理かもね」
「プリズマスーツがあるじゃない、あれを量産すれば」

晶さんが提案する。あの格好は流石に嫌だぞ。

「後の先が無理なら先の先をか……」

僕は一人呟く。

「先に仕掛けちゃうって事?」
「相手の攻撃が受けきれないならそれもありかなって思った」

愛莉に返す。

「用心してどうにかなる相手じゃなさそうだしな……」

渡辺君が言う。

「に、しても相手の手がかりが掴めないんじゃどうしようもないぜ?」

誠が言う。

「そこで誠や亀梨君の出番だよ」

「へ?」
「俺ですか?」

全く手掛かりがないわけじゃない。「死神」「太陽の騎士団」そして「郷土愛者達」、この3つで手がかりをつかんで欲しいと僕は言う。

「分かった。やれるだけやってみる」
「死神については知ってる事があります」

亀梨君が言う。

「教えてくれないか?知ってる限りでいい?」

渡辺君が聞いていた。

「9人のプロの傭兵集団です。その道のエキスパートと言ってもいい」
「そんなの相手にしようって言うんですか?」

花菜さんが言う。

「中でもヴァイパーは最強だ。過去いくつもの極秘作戦に参加して成功してきたプロ中のプロ……」
「あいつですね……」

石原君は面識があるらしい。
亀梨君にそれぞれの特徴を聞いた。また酒井君や石原君からも体験談を聞いた。

「素人には無理難題よね」

恵美さんが言う。

「付け焼刃の戦闘術じゃ通用しない。そんな相手です」

石原君が言う。

「じゃあ、どうしろって言うんだよ!?」

カンナが叫ぶ。

「だからみんなの前で話してもらったんだ。冬夜は一人で考えようとしていたようだがな。冬夜、これからは隠し事は無しだ。皆の命に係わる問題だ」
「……わかった」

渡辺君の言う通りかもしれない。
確かにここからは皆の危険を伴う事項だ。
でも悪戯に不安をあおりたくなかった。

「ここからは冗談抜きの戦いが待ってるかもしれない。皆気を引き締めて行こう。何、ここを乗り切れば活路が見いだせる。頑張ろう」

渡辺君は言う。
むしろここからが本番な気がする。

「とりあえず私は皆の強化を担当するわ。一日でも参加できる人は参加して。正月に出ろとは言わないから」
「まあ、それならいいですけど……。でも皆バイトとかありますよ」

酒井夫妻が話をしている。
就活もそろそろしないといけないしな。

「出来る人だけでいい。戦闘できる人が一人でも多い方がいいから」

晶さんが言うと恵美さんも言う。

「じゃあ、私は装備担当ね。皆に会った装備を準備しておくわ」
「俺は情報を探ってみる、検索ワードがあるならある程度は絞れる。興毅、その傭兵の名称は」
「『九尾の狐』……」
「OK。俺に任せてくれ!」
「ああ、任せたよ」
「俺は訓練に参加するっす!バイトの合間でよければ!」

晴斗はやる気のようだ。

次々に皆が提案していく。
話も出尽くしたところで、渡辺君が言う。

「じゃあ、そろそろ本題に入ろうか?」
「本題?」

皆が聞き返す。

「まさか、ここまで来て騒ぎもせずに帰ろうとは思って無いよな?」

渡辺君がにやりと笑う。

「そういうことなら、ユニティの十八番だぜ!なあ!皆!!」

美嘉さんが言うと皆が騒ぎ出す。

「じゃあ、私トップバッター!」

亜依さんが端末を手にする。
暗い話ばかりしていても仕方ない。
こんな世界に眩しい明日を。
それを送り届けることが僕の役目……。
美しい世界を見せてあげたい。
涙させるもの、傷つけるものも届かない場所へ連れて行こう。
宴は朝まで続いた。
朝カラオケ店を出ると眩しい光が差し込んでくる。
それはこれから先に待ち受ける暗雲に差し込む光のように感じた。

「帰ろう?」

愛莉が手を取る。
僕達には帰る場所がある。
その場所にいつか帰るために、出来る事を探そう。
とりえあえずは家に帰って今日から始まる日常をどうすごすかだ。
僕達の平穏はまだもう少しだけ続く。
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