優等生と劣等生

和希

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4thSEASON

冷たい夜に暖かい火を灯す夜を

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(1)

朝、庭で自然体の構えで立つ僕。
目の前には木と藁で出来た人形のような物が立ってある。
目を閉じる。
朝独特の音が響く。
ちなみに冬空に道着は寒い。
呼吸を整える。
そしてふとした瞬間、僕は手に持った刀で人形を斬る。
寸断され転げ落ちようとする人形に第2撃、左手で持った柄でそれを叩きつける。
一連の動作が終ると刀を鞘に納める。
するとパチパチと長い白髪の老人が拍手する。
この人こそ、夢想流古武術の師範・葛飾彦左衛門だった。
冬休みに入って僕達は護身術を学ぶために葛飾師範のもとに泊まり込みで訓練を受けていた。

「まさか、短期間でここまで会得するとはのぅ……お主に教えることはもうない。後は実戦を積むのみじゃな」
「実戦で使う事が無い事を祈りますけどね」
「しかしお主特有の『身体能力』『読みの早さ』は剣術と相性がよかったようじゃのう。お主の熱心な訓練の賜物でもあるが」
「誰かを守るために強くなりたい、そう思ったら必死になってました」
「間違えるなよ、お主一人が犠牲になったところで確実に不幸にな者がいる。生きようとする意志が何よりも強い。それを決して忘れてはならんぞ」
「はい」
「冬夜君ご飯できたよ~お師匠さんも早く~」

愛莉がやってきた。

「あの子を守りたいのじゃろ?」
「……はい」

僕が師範に答えると師範はわらって「じゃあ飯にするかのぉ」と笑う。
朝ごはんを食べると皆の稽古が始まる。
僕は石原君と実戦形式の稽古。
石原君は強い。
2,3日稽古しただけの僕では彼の攻撃を躱すのがやっとだ。
きっと今まで死線を潜り抜けてきたのだろう。

「片桐君はすごいです、2,3日でここまで強くなるなんて」
「君の武器は拳銃だろ?手加減してもらってるようなもんだよ。それでこの有様じゃ僕もまだまだだよ」
「片桐くん相手に銃で仕留めようするのは無理ですよ、きっと躱してしまう。そのくらいの技術身につけてることくらい分かります」

石原君はそう謙遜する。

「みんな集まってちょうだい」

恵美さんが言うと皆集まる。

「これは?」

僕が聞くと恵美さんが答えた。

「皆の衣装よ?女性陣で考えて作ったの」

一瞬嫌な予感が過ったのは気のせいだろうか?」

「お、俺達は私服でいいっすよ?」
「良いから一度試着してみなさいな」

皆更衣室に行って着替える。

武器とセットで用意されていた。

晴斗は光学迷彩服の上に迷彩模様のパンツとバンダナ。
僕は袴と班着、浅葱色のだんだら模様の入った羽織り……これって新選組?

「女性陣のリストバンドと同じ様式になってるから。肌身放さずつけてなさいな。それと片桐君の注文通りの武器にしておいたわよ」

恵美さんは僕に一振りの刀を渡す。
僕は鞘から抜いてその刃を確認する。
峰と刃が逆さになってる逆刃刀。
パクリと言われるかもしれないけど、やはり人を殺すのは恋愛小説には似合わない。
ありがとうと言うと刀を腰に掛ける

「下につけてあるスーツは一時的に身体能力を飛躍的に向上させるわ。スイッチ一つで稼働できる。でも連続使用時間はやっぱり20分が限界。そしてクールタイムは最低5分は必要よ」

晴斗の恰好は凄い。
銃等ははないがありとあらゆる武器を背中に背負っている。
動きづらくないのか?
渡辺君のは黒いスーツにマントをつけてある。
ちなみに空を飛ぶとかそう言う芸能は無い。
防弾、筋力強化、そしてステルス迷彩。
渡辺君は古武術を選択した。素早く動くというのにはちょっとイメージが湧かない体形だけど。

「衣装も問題ないみたいだし練習に戻ってちょうだい」

リストのボタンを押すと衣裳は収納される。
どういう仕組みなのかは僕にもわからない。
素粒子を利用したものらしいのだが……。
あまり深く考えない方がいいのだろう。

(2)

結局練習に赴いたのは渡辺君と片桐君と晴斗だけだった。
他の皆はバイトだのなんだのと理由をつけて行かなかった。
練習の様子は風見から聞いている。
やはり片桐君の成長が著しいらしい。
晴斗もそれなりに成長しているとか。
そんな話を善君としていた。

「片桐君はやはりやりさえすれば何でもできるようだね」

善君はそういう。

「あなただって短期間で死神と呼ばれるようにまでなったじゃない。自信もちなさいな」
「死神ってあだ名は些か不満がありますけどね」

カランカラン。
ドアベルが鳴る。
木元夫妻がやって来たらしい。
善君がテーブル席に案内する。

「今夜は彼らは出席できそうなのかい?」

木元先輩が聞いてきた。

「……片桐君は奥義まで会得したそうですよ」
「それはすごいな!」

木元先輩が驚いている。
穂乃果が何か言いたげだ。

「どうしたの穂乃果?」
「いえ、何でもありません」

明かに不満気な穂乃果の表情。
その後も、次々とユニティの面々が集まりワイワイと騒いでいる。
今日の忘年会についてみたい。

「酒井君、私ちょっと休憩室行っても良いかな?」
「ああ、いいよ。これなら僕一人で十分だし」
「ごめんね」

そう言って、休憩室に向かう穂乃果。

「穂乃果どうしたの?」

私は善君に聞いていた。

「それがここ3日ずっとああなんだよ」
「俺に対してもなんか冷たいって言うか。なんか機嫌悪いんですよね」

中島君に対してもそうらしい。
と、なると原因は中島君?

「あなたなにやったの?」
「何もやっていですよ!ちゃんとデートだってしてるし……」
「皆呑気なものですね!」

戻ってきた穂乃果が叫んでいた。
その一言で皆が静まり返る。

「バイトがあるから、サークルがあるから……皆理由をつけて。でも青い鳥には来る余裕あるんですね!?」

青い鳥に来るなっていうのは私が言うのもどうかと言うけど店員として問題ないのかしら?

「どうしたんだ穂乃果、急に騒ぎ出して」
「だってそうじゃないですか!片桐君だって!バスケ部あるのに一生懸命対抗手段を得ようとしているんですよ!皆何考えてるんですか!?自分の彼女くらい守りたいって思わないんですか!?」
「亜依はほら変身あるから……」
「桐谷君は彼女に護られてるだけで平気なんですか!?そんな自分を情けないと思わないんですか!?」
「相手は銃持ってるんだぜ!防弾チョッキ着て盾になるくらいしか出来る事無いよ」
「本当に今の隆司君にそれが出来るの!?何の心構えも無くてそれが出来るの?私は絶対できないと思う」
「一ノ瀬さんの言いたい事は分かった、分かったから落ち着こう!」

多田君が必死に宥める。

「本当に分かってるんですか?女性が自分で身を守ろうとしてるのに彼氏は何もしてくれない。しかもこれからさらに危険が待ち構えている。なのに何の対応策も取ろうとしないなんて信じられない!」
「俺はほら……冬夜に頼まれた情報収集があるから」
「誠はちゃんと守ってくれる。そこだけは信じている。他の皆だっていざとなったら動くよ。穂乃果も落ち着け。な?」

多田君と神奈が懸命にフォローする。

「バイトしてるだって……。晴斗ですら必死に白鳥さんを守ろうと懸命に特訓してるのにおかしいよ!」
「……マスターには僕から言っておくから今日はもうお帰り。一ノ瀬さん」
「酒井君まで!!私の気持ちを分かってくれない!晶さんはいいですね。酒井君みたいな人が主人で」
「中島君、一ノ瀬さんを送ってあげて」
「あ、ああ。帰ろうか。穂乃果」
「一人で帰ります!」
「一人だと危ないだろ?送るよ」
「危険な目にあったら隆司君いたって意味ないでしょ!」

そう言うと穂乃果は一人で帰っていった。
もちろんその後を中島君が追いかける。

「穂乃果がああいいだすのも無理ないよ。男性陣はだらしなさすぎだよ?自分たちは狙われないから他人事だとのほほんとしてる。そう思われても無理が無い」

亜依がそう言う。

「僕達の分も変身スーツつくってくれたらいいじゃないか?」
「今行ってる三人の分は出来たって恵美が言ってる」

今入ってる三人は片桐君、晴斗、渡辺君の三人。
渡辺君は美嘉さんが無茶をやらないようにと自分が強くなる術を覚えることを選択したらしい。

「僕だってサークルに、バイトに勉強で大変なんだよ」
「三人だって同じだろうが」

今度は桐谷夫妻の痴話喧嘩がはじまった。
渡辺君も片桐君も不在となると止めるものがいない。
多田君と神奈が宥めるのに必死になるくらいだ。

「あなたはどう思ってるの?私の事守ってくれないの?」
「俺は仕事あるから無理だよ。でも花菜の事は命に代えても守るから」
「でもあなたが仕事をしてる間私は一人ボッチなんですよ」
「それは……」
「花菜の周りにはSPつけてるから心配しないで」

そう言って私は花菜を落ち着かせる。
しかし相手はSPよりも強いプロの傭兵だと聞いた。
誰が狙われるか分からない。
その事は誰もが分かってる。
分かってるから不安になる。
不安だから自分のパートナーを疑ってしまう。
この人に頼っていて大丈夫なのだろうか?って。

「皆さん落ち着てい下さ~い。これじゃ相手の思うつぼですよ~。こういう時に団結するのがユニティでしょ~?」

咲良が言う。

「ユニティの男は頼りなさそうだけどいざという時は誰よりも彼女の事を思ってくれる。私の旦那もバイト忙しいから構ってくれないけどいつも安否確認のメッセージを送ってくれてる。もっと信用してあげようよ」

咲が言う。
でも、今のうちにうちも対抗手段を講じておく必要はあるか……。
それは今夜の忘年会で相談すればいい。
片桐君は時間はまだ稼げるはずと言っているのだから。

(3)

情けないと思った。
自分の彼女が狙われてるのに、何とも思ってないの?
自分が狙われた事無いから分かってもらえない?
初めて狙われた時のことを思うと身がすくむ。
私はあれから、恵美さんの勧めで護身術を習ってる。
それでも相手が銃では意味が無い。
付け焼刃の護身術なんてプロ相手にどこまで通用するか分からない。
それは隆司君も同じだろう。
私がさせようとしてる事は隆司君を犠牲にさせたいだけ?
でも彼氏に護られたい。
女性なら誰もが思う事。
無理だと分かっていても努力くらいしてくれたっていいじゃない。
家に着くと階段を上がって玄関のドアを開ける。
ギシギシっと床が軋む音。
またつけられた?
反射的に足が出る。
先手必勝。

「うわっ危ない!」

そう言ってケリを躱し足を受け止めたのは隆司君だった。

「どうして隆司君が?」
「とりあえず中に入れてくれないか?ここだと危ないだろ?」

私は部屋に隆司君を入れる。
テーブルの前に隆司君を座らせると私はコーヒーを入れて、隆司君にだす。

「で、なんでここに来たの?」
「心配だったからに決まってるだろ?」
「ごめん……」
「皆穂乃果の事を心配してるよ」
「うん」
「穂乃果が最初の犠牲者だもんな、二度目が無いとは限らないもんな。皆分かってるよ」

隆司君の話を聞いてる間に落ち着きを取り戻す。
そして自分がやったことはただ皆にあたっていただけだと気づいた。
皆に謝らなきゃ……。
スマホを操作してメッセージを送る。

「ごめんなさい、さっきは言い過ぎました。ちょっとかッとして」
「皆分かってるから大丈夫よ。気にしないで」

晶さんが言ってくれる。
だめだな私……しっかりしないと。
落ち込む私を慰めてくれるのは隆司君。

「俺もどんなことがあっても同じ目に合わせやしない。目に届く範囲にいる限り絶対に守る。今回の件が終わった後もずっと……」
「ありがとう、でも無理はしないで」
「穂乃果を悲しませるようなことはしないよ」

胸に縋って泣く私を黙って受け止めてくれる隆司君。
どうか今の平穏がいつまでも続きますように。
無理だと分かっていてもそう願わずにいられなかった。
いつまで戦い続けるのだろう?途中下車は許されない。でも行きつくところはどこなの?
そんな事を考えながら私達は忘年会までの時間を共に過ごした。

(4)

「じゃ、お世話になりました」
「また時間が出来たらいつでもきなさい」
「また稽古つけて欲しいっす!」
「うむ、いい返事じゃ。お前はまだ伸びしろがある。いつでも来なさい」
「それじゃまた」
「お主は少し痩せろ!」
「それまた手厳しいお言葉」

渡辺君は頭を掻いていた。

「じゃあまた元気でな」

そう言って僕達は久しぶりに山を下りた。

「冬夜君怪我とかしてない?」
「大丈夫だよ。忘年会終って愛莉を甘えさせるくらいは体力の越してるよ」
「うぅ……甘えたいのは冬夜君でしょ!」
「まあね」
「でも今夜無理だよ?」
「なんで?」
「朝まで騒ぐんでしょ?」
「そうだったね」

久しぶりに食い物らしい食い物が食える!?
毎日豆腐や山菜だけじゃパワーが出ないよ。
街の集合場所に着くと皆待っていた。

「じゃ、今年最後の宴会だけど、皆盛り上がろう!」

渡辺君が言うと乾杯して、宴の始まり。
とにかく食いまくった。

「俺達が山に籠ってる間に何か変わったことは?」

渡辺君が聞く。

「特に何も無いわ。やはり須藤グループがもみ消しに躍起になってるみたい」
「そうか……皆身の回りに異常は?」
「特に何もなかったです」

酒井君が言う。

「となるともみ消しにと嵐が過ぎるのを待っているということか」
「じっと耐える時期なんでしょうね。向こうも」
「冬夜君ならどうする?」

愛莉が聞いてくる。

「そうだね、やっぱり耐え凌ぐしかないだろうね。周囲の警戒を解かないと話にならない」

僕が言うと恵美さんが言う。

「片桐君の言う通りよ、相手は身内の国会議員の不正疑惑まで持ち出して注意をそらそうとしている、まさに身を切り売りしている状態よ」
「私もそう思うわ、高橋憲伸は日増しに焦りを見せてる。尻に火がついたって感じね」
「先手必勝。相手が崩れたところをさらに押してやればいい。分は私達にある」

深雪さんと白鳥さんがそう言う。

「で、こちらの軍師さんは何を企んでいるんだい?」

佐(たすく)が聞いてきた。

「別に何もしないけど?」

僕が言うと皆が僕を見る。

「こんなチャンスを見逃すわけ?相手が体勢整えちゃうわよ?」
「こっちもチャンスだろ?今のうちに準備が出来る」
「相手の攻撃待ちってわけ。また付け狙われる日が来るわよ」
「そうだろうね」

恵美さんと亜依さんが言うのを適当に受け流す。

「片桐君、山に籠って頭ボケたとかないでしょうね!」

亜依さんが詰め寄る。

「違うよ、ちゃんと考えてるよ。だから誠に調べさせてるんだろ?動き出すときはこちらにも情報が届くよ」
「動いてからじゃ遅いじゃない!」
「僕が思うに反撃に転じる時は3パターンあると思うんだよね」
「ほう、面白いな。聞かせろよ冬夜」
「まずはいつも使ってる後の先、先に手札を使わせて後から仕掛けるやり方」

渡辺君が頷いてる。

「次に先の先。相手が仕掛ける前に仕掛けるやり方。最後は対の先。相手の動きをあらかじめ予測して負けないように行動して一瞬でも早く先にしかけるやり方」

僕は桐谷君を見る。

「桐谷君ならゲームやってるから分かると思うけど。逆突ってわかるよね?」
「ああ、それならわかるぜ。相手の突撃タイミングを盗んで逆にこっちから仕掛けて出鼻をくじくやり方だろ?」

桐谷君は得意気に話す。

「今回狙ってるのはそれ。その為にはまず相手の突撃タイミングを知りたい。攻撃手段を知りたい」
「それで俺に動き探らせているのか?」

誠が言うと僕が頷く。

「先の先ってわけにはいかないの?今が正にそのチャンスだと思うけど」
「桐谷君、逆突が失敗する例を挙げて見て」

亜依さんが言うと僕は桐谷君に聞いてみた。

「それは相手が準備中でこっちを警戒してる時。こっちの防衛体制が出来てないのに無理に突っ込んで返り討ちに会う時とか?」

僕はそれを聞くと皆に聞いた。

「今の僕達に足りないものって何だと思う?」

皆が悩み始めた。愛莉も頭を悩ませている。

「手札……相手を崩す切り札は使ってしまった。優位に見えて実は優位じゃない」

白鳥さんがいうと僕は頷く。

「なるほどね、審判の日で手札は全部使ってしまった。攻撃する手札をドローする必要があるわけだね」

公生が言う。

「敵をガチンコで崩すなら相手の3倍以上の攻撃力が必要、少しでも足りなかったら相手に反撃する機会を与えかねない」

奈留が言う。
攻撃力はあるけどね。色んな意味で。

「片桐さんは、どんな攻め札を欲しているの?」

白鳥さんが聞いてきた。

「攻める材料があればそれを有効な札にするのが僕の役割だと思ってる」
「つまり情報が欲しい。そういうことですね?」

白鳥さんが言うと僕はうなずく。

「相手の手の内が見えない以上、うかつに攻め込んだらこっちがやられる。相手の攻めに備えてこっちもカードを作り出す。その上で相手のタイミングを計る。今できる最善の策だよ」
「冬夜がそう言うならそうなんだろうな」

渡辺君は理解してくれたようだ。

「でもね、片桐君。女性陣の気持ちも分かって欲しいの」

晶さんが今日あった出来事を話す。
なるほどね……。
そう言う不安がある人はいるか……。
次に狙われるのが自分だったらどうしよう?
そんな不安があっても仕方ないかもしれない。
でも自分のパートナーが無謀に飛び出すのも避けたい。

「それはもう恵美さんと晶さんのSPを信用するしかないね」
「任せて、選りすぐりのプロを注文したわ」
「私も持ってる情報から最高の兵隊を準備した」

二人はそう言う。

「話はまとまったかな……」

渡辺君が言う。

「じゃあ、しけた話はこのくらいにして盛り上がろう!」

皆はそれぞれ騒ぎ出す。
そんな中公生が聞いてくる。

「片桐君は攻め札が欲しいと言っていたけど本当は違うんじゃない?」
「……良く気づいたね」
「こう見えても頭は働くんだ」
「そうか……実は動く口実が欲しいんだ」
「そんな事だろうと思ったよ。やられたらやり返すのユニティじゃ先に仕掛ける理由がないからね」
「そういう事」
「でも本当はそんな理由ほしくないんじゃない?」
「まあね」

何も無いなら何もないのが一番いい。
だけどそれは許してくれないだろう。
それだけの相手に喧嘩を買ったのは十分理解してる。
でも皆の結束を考えるとこちらから攻めるというのはやりづらい。士気の低下にもつながりかねない行動は取りたくない。
現に守ってる間も分裂しかけたんだから。

「でも放っておくわけにもいかないよね?多分鍵は高橋忍にあると思う」
「高橋忍?」
「奈留が失脚した今高橋グループの次期総帥になるだろう人物。この男を洗えば何か出て来るかもしれない」
「わかった、それ誠にも伝えて」
「OK」

そう言って公生は誠の席に行った。

「奈留ごめんね。また公生を巻き込んでる」
「いえ、もとはと言えば私達が皆さんを巻き込んだ事だから」
「しけた話は終わりだって言っただろうが!」

カンナがやってきた。

「全く男共はどいつもこいつもしけた話ばかりしやがって!年末なんだから盛り上がろうぜ!」

とか言って新年会も準備してるんだろ?

「奈留。公生とはうまくやってるか」
「多分上手くやれてると思います」
「多分てなんだよ。もっと具体的に……そうだな、キスくらいはしたのか?」
「それ答える必要あるんですか?」
「なんだよまだかよ、やっぱりお子様なんだな」
「子供扱いしないで!そのくらいしてます!……あっ」

そうやって引っかかってしまうところがお年頃なんだろうなあ。

「ふむふむ、キスはしたと……それってただのキスか?」
「そんなわけないよ、今の子は私達の頃よりきっと進んでるんだよ~」

愛莉も食いついた。
そうなると女性陣は一斉に食いつく。

「ねえねえ、どんな感じだった?」とか「その先は言ったのか?」とか……。

顔を赤くして俯いたままの奈留。
それだけでもう肯定してるも当然だぞ。

「へえ、新名さんでも気になるんだ。この前は『痛いからいや~』って叫んでたのに」

椎名さんが言うと新名さんまで顔を赤くする始末。

「そこは椎名さんがちゃんとしてあげないと」
「もう一度やったら慣れると思ったんだけど、なかなか恐怖心を拭えなくてね。意外と恥ずかしがり屋さんなんだなって」

誠と椎名さんが話している。
それを聞いていた公生がまた悪戯をする。

「奈留も痛かったの?」
「公生の馬鹿!子供扱いしないで!!あのくらいなんてことない!……あっ!」

奈留は口を押えるがもう遅い。

「14歳でもうやっちゃったの!?早くない!?」
「私達の時だって小学生の時に済ませたやついたじゃないか?」
「公生君は上手にしてくれた?」

愛莉、また近所のおばちゃんになってるぞ。
奈留は固く口を閉ざして何も言わない。

「今更隠す事じゃないだろ?」
「公生は黙って!」

僕のテーブルに押しかける女性陣。
そして残る丹下夫妻。

「修ちゃんはいつしてくれるの?」
「うん?したいのか?」

海未ちゃんは黙ってうなずく。

「じゃあ今度な?」
「今度なっていつ?」
「海未が卒業したらお祝いにしてあげるよ」
「わかった~」

一報こちらのテーブルは、女性陣による奈留への集中砲火で奈留が涙目になっていた。

「愛莉、そろそろ許してあげたら」
「冬夜君そこにあるテーブルの全部食べてていいよ♪」

やった~追加注文しちゃうぞ~。

「冬夜ちょっとこっち来いよ!」

誠が呼んでる。
なんだろ?
呼ばれてきてみると……お前これ犯罪じゃないか!?」
まあ、今更犯罪という言葉が薄れつつあるこの話だけど。
誠がみてるのは女子中学生という検索ワードでひっかかった動画だった。

「奈留もこんな感じだったのか?」
「いや、奈留はもう少し胸あるかな?」
「冬夜、遠坂さんはどうだった?」
「愛莉の胸は白くて綺麗だったよ」
「神奈は今でもこんな胸だしな」
「お、おい……誠……」
「なんだよ、聞こえてねーよ心配するな」

い、いやそうじゃなくてだな。
誠の背後に忍び寄る巨大な殺気に気づかない誠。
気づいたのはその殺気が動いた時だった。
カンナは誠からスマホを取りあげるとそれを女性陣に見せつける。

「やだ!誠君こんなのが趣味なわけ!?」
「ちょっと、冬夜君に変な知恵つけるの止めて言ったでしょ!」
「公生にも変な事吹き込まないで!」

亜依さんと愛莉と奈留が口々に抗議する。

「このド変態は……」

カンナの気配に今頃気づいた誠は「い、いや冬夜にな……」と、言い訳になってない言い訳をする。ていうか僕のせいなのか!?

「ハハハ、まあ、若いんだし良いじゃないか?」

同い年だよ渡辺君。確かに渡辺君は貫禄あるけどさ。

「お客様そろそろラストオーダーのお時間ですが……」

皆がラストオーダーを取ると、2次会はどこにするって話になる。
奈留にオレンジジュース渡して「おつかれさん……」という。

「遠坂さんってあんな人だったんですね」
「まあ、ああいう面もあるよ」

奈留が若いから可愛がりがいがあるっていうのもあるんだろうけど。

「酔っ払いのいう事なんて適当に流しておけばいいんだよ」と燃料を投下した本人が言う。

「公生が余計な事言うからああなったんでしょ!」
「ああ、ごめん。僕も皆の雰囲気に流されただけだから」
「罰として今日は公生は床で寝るんだからね!」
「僕に風邪を引けというの?」
「一日くらい床で寝てたって風邪ひかないよ」
「てことはいつもは一緒のベッドで寝てるの?」

僕は普通に聞いていた。

「そうだけど?ダブルベッド用意してもらったし」
「公生また余計な事言ってる!」
「じゃああれだね、奈留の寝顔はいつでもみれるわけだ」
「まあそうですね」

奈留は何も言わない。

「仲良くていいじゃないか?いいか公生。今のうちにじゃないと楽しめない事だって一杯あるんだ。精一杯楽しんでおけ」
「誠君の言うような趣味は僕には無いから大丈夫」
「後で気づいても遅いんだぜ?ロマンってやつに……」

抗議したのは奈留じゃない。愛莉とカンナだった。

「冬夜君に変な事言うの止めてって言ったでしょ!」
「この馬鹿は性懲りもなく後公生まで変な道に引きずり込む気か」
「へ、変な趣味てなんだよ!俺は男のロマンてやつに……」
「喧しい!!」
「公生君だめだからね、こんな大人になったら」
「片桐君みたいだったらいいの?」
「それは……うぅ……」

悩むような存在なのだろうか?僕は……。

(5)

公生と奈留と見送ると残ったメンバーで2次会のカラオケ会場に。
ちょっと割高だけど30人超を収容できるスペースで飲み放題付のカラオケなんてそんなにない。
皆が歌う事に盛り上がってる最中に愛莉に聞いてみた。

「愛莉」
「どうしたの?」
「さっきの話なんだけどさ?」
「ほえ?」
「僕って悩むような旦那さん?」
「うん、そうだよ~」

そんな笑顔で言わなくても。
落ち込む僕を愛莉は抱きしめる。

「ご飯の事しか考えない、朝は素直に起きてくれない。すぐに甘えたがる困った旦那様だよ~」

反論できないけど甘えたがりなのはお互い様だろ?

「……でもそれでいいの?私の大好きな冬夜君は一人いればいいんだから」
「そういう意味ね」
「うん」

愛莉の頭を撫でてやる。
愛莉はうっとりと僕にしがみ付いてる

「お楽しみの際中悪いんだがちょっといいか?冬夜」

渡辺君だ。
周りを見ると皆こっちを見てる。
愛莉は慌てて僕から離れて俯いてる。
愛莉でも恥ずかしいと思うことあるんだな。
そんな愛莉を心の中で笑ってた。

「冬夜?今良いか?」
「あ、いいよどうしたの?」
「ああ、ちょっと問題が起きてな……」

渡辺君がそう言うと亀梨君達を見る。
そう言う話か。思考を切り替えないとな。

「問題って?」
「実は……」

亀梨君達はアーバニティを作る際にエゴイストで培った人脈を使って作ったらしい。
人が人を呼びそれは巨大な組織になって更なる人脈を形成してるらしい。
そしてその顧客情報は今、須藤グループの手中にあるという。

「俺たちも注意喚起をしてるんだけど、全員にいきわたるかは把握できなくて……あいつらのやり方を考えたらそんな末端の人間を狙う可能性もあると思って」

なるほどね、守備範囲が広くなってしまったって事か。
そこまでは僕達の領域じゃない。警察の領域だ。

「そのこと警察には話したの?」

僕は亀梨君に聞いていた。

「警察には話せないですよ。やり目サークルのメンバーリストなんて……」

確かにね……。

「と、なると手段は一つしかないと思うけど?」

そう言って誠を見る。

「俺の出番ってわけか、特製誠君3号機『まこちゃん』のお披露目ってわけか」

そう言って誠はにやりと笑う。
まこちゃん?
誠は説明する。
まこちゃんとはさらに改良を重ねた誠の特製ウィルスでPCの電源コンセントを抜くか、ノートPC、スマホのバッテリーを抜かない限り待機中でも暗躍する凶悪なウィルスだという。
もちろん市販のウィルス対策ソフトでは検知不可能。見つけて駆除してもストレージ自体を破壊しない限り、一欠けらでも残っていれば増殖するという質の悪い物。
効果は、用途に応じて何種類も用意してあるらしい。
今回の目的はストレージの破壊が目的なのでそれを利用するらしい。もちろん、媒体の情報を抜き取ることも忘れずに。
問題はどこから感染させるかだが、それは問題ないと誠は言って亀梨君のスマホを指す。
亀梨君のスマホにある、アーバニティのサーバーの情報を抜き取りそこから感染させればいいと言う。
アーバニティのサーバーはまだ存在している。サークルもまだ活動中だと亀梨君が確認する。

「でもそれって他の人にも迷惑をかけるんじゃないの!?」

恵美さんが言う。

「そこがまこちゃんのお利口なところでね。ストレージの破壊自体はこっちから指示しない限りしないんだ。相手の情報だけを探索して送信してきてあとはGOサインをだすだけ」

誠が言うと亀梨君達4人は驚きのあまり声が出なかった。
無理もない、僕達だって呆然としてるのだから。

「どうする?さっそくやるか?潜伏だけでもさせとくけど」
「待つ理由もないしやってしまおうか?渡辺君に一任するよ」

これをやったら、もうあとには退けない。誠の事だからログを辿られるようなことはしないだろうけど。多分僕達の仕業と感づくだろう。それなりの覚悟が必要になる。

「皆覚悟は出来たか?」
「ここまで来たら途中下車は出来ないっす!」
「毒を食らわば皿までだ!派手に宣戦布告してやろうぜ!」
「と、言うわけだ冬夜。後は時期の問題だ。お前の言う対の先にはならないと思うんだが……」
「桐谷君に聞きなよ。桐谷君ゲームでは優秀な指揮官なんだ。相手が最深部前で突撃準備してる最中にこっちに強キャラがいたらどうする?」
「そんなの冬夜が聞くまでもないだろ!先にかき回すに決まってる。準備される前に突撃できるならした方が良い」
「最後に皆に言う。もう後戻りはできない!それでもいいか!?」

渡辺君が問う。

「上等じゃない!やってやろうじゃないの!精々派手にね!」
「亜依の言う通りだ、遠慮なんかいらねえ。こっちは準備出来てるんだ!やっちまえ」

亜依さんと美嘉さんが盛り上がってる。
渡辺君と僕は皆の顔を見て意志を確認する。
最後に渡辺君は僕を見る。

「……誠始めてくれ」
「オッケー!亀梨君スマホ貸して」

亀梨君からスマホを受け取ると誠はあっという間に作業を終わらせてしまう。

「捕獲完了!必要なデータは全部抜き取った。あとは宣戦布告するだけだ」

皆が僕の顔を見る。
戦いのドラムが鳴るのを待っているという感じだ。
皆お酒のせいでテンションが上がってるだけかもしれない。ならば待つべきか。

「トーヤ焦らすな!それともお前がびびってるのか?」

カンナが言う。

「後で『あの時は酒の勢いで言ってしまいました』とか言っても受け付けないからな!」
「誰もそんな肝っ玉の小さいやついねーよ!さっさとやってしまえ」

美嘉さんが言う。

「ああ、大人の俺がたきつけるのも悪いんだが、やっぱり乗ったものはしょうがない。途中下車は許されないんだろ?」

丹下先生が言う。

「大丈夫だよ、片桐君一人に責任を負わすつもりは無い。皆そう思ってる。君一人で気負う必要は無いよ」

椎名さんが言う。

「ならば先手必勝です。やりましょう。片桐君」

石原君が言う。

「まあ、こうなったらしょうがないですよね。先に仕掛けたのはむこうなんだし。今さら逃がす気もないんでしょ」

酒井君が言う。

「こうなったら倍返しだ!」

桐谷君が言う。

「じゃ、始めようか」

僕が言うと、カンナが文句言う。

「もっとびしっと決めろ!」
「……行くぞ!!」
「了解!……ぽちっとな」

誠が言うとキーを押す。
黒い画面に白い文字がものすごい勢いで流れていく。

「もう引き返せないからな」

誠が振り返って僕を見る。
皆そのつもりは無いらしい。
盛り上がったまま2次会は朝まで続きそして皆帰った。

僕達も代行を呼んで帰ることに。

「また戦いの日々が始まるんだね」

愛莉がふと漏らす。

「後悔してる?」

愛莉は首を振る。

「ううん、全然。こんなに自慢できる旦那様を持てて幸せだなって」

そう言って愛莉は僕に抱き着く。

「冬夜君のパパさんが言ってた通りだね。『どんなに凍える冬の夜にも温かい火を灯す夜』今の冬夜君そのものだよ」
「ありがとう」

愛莉の髪を撫でてやる。
こうして僕達の終わりの見えない戦い第3幕が始まった。
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