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5thSEASON
答えはいつも風の中
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(1)
「うぅ……」
私は朝から困っていた。
いつもなら日課の為に起きる時間。
しかし冬夜君にもう日課は必要ない。
冬夜君は今私に抱きついて眠っている。
冬夜君の衝撃の発言から何日か経った。
その晩の祝勝会には出席を余儀なくされたものの、やはり冬夜君を引き止める者は少なくなかった。
仲間からも止められたらしい。
しかし冬夜君は一度口にしたことは中々曲げない。
記者会見の前、決勝戦の前夜に冬夜君は監督に直訴したらしい。
当然監督も引き止めた。
だけど冬夜君の決意は固かった。
条件が条件だけに「出来るならやってみろ」と言ったらしい。
だけど冬夜君は見事にやってのけた。
部屋に飾ってある金メダルは偽物なんかじゃない。
五輪の閉会式までは冬夜君は東京に滞在した。
私達も滞在を認められた。
その間に冬夜君と渋谷でデートしたりした。
ふざけて買ったサングラスをしてまるで有名人のように変装する私達。
閉会式の余韻に浸れば冬夜君を引き止められる、そんな思惑もあったんだろう。
でも冬夜君の意思は変わらなかった。
地元に帰ると、沢山のマスコミが押しかけて来た。
また、「やめないで」と涙するファンもたくさんいた。
地元の知事から凱旋パレードの誘いもあったけど冬夜君は断った。
県民栄誉賞と市民栄誉賞の授与は受けた。
異例のスピードだった。
「そんなもの欲しくてやったわけじゃないんだけどな」
冬夜君は照れくさそうに言った。
冬夜君はそれだけ凄いことをしたんだよ。
そして約束通り冬夜君は家に帰ると麻耶さんやりえちゃんのご馳走を食べ満足して風呂に入って寝ようとしていた。
うぅ……
ぽかっ
「冬夜君帰ってきたら甘えさせてくれるって言ったもん!」
「そうだったね、おいで愛莉」
そうして今に至る。
怒涛の日々を過ごしようやく家に辿り着き休んでいる亭主を起こしていいものかどうか?
私は悩んでいた。
しかし悩んでいる時間が長すぎたようだ。
麻耶さんが部屋にくる。
「冬夜!いつまで寝てるの!?いい加減に起きなさい」
「麻耶さん今日は駄目!ゆっくり寝させてあげて」
「あ、そうか」
「もう、遅いよ……」
冬夜君が起きた。
「おはよう愛莉」
「おはよう」
麻耶さんはため息を吐く。
「朝ごはん出来てるから顔洗ってきなさい」
そう言って部屋を出る。
「行こっか?」
「そうだね」
私達は部屋を出るとダイニングに向かう。
ダイニングには冬夜君の両親が座っていた。
普通に会話して食事をしてる。
私達もその中に混ざった。
リビングにあるテレビは未だ収まらない冬夜君の行動を報じている。
無理もない、日本バスケ史上初の快挙なのだから。
その立役者の冬夜君が即時引退を表明する。
大事にならないはずがない。
その本人は今眠そうにパンをかじりながらテレビを見てるわけだけど。
「いい?冬夜。あなたは自分の意思でバスケを辞めると言ったの。それは母さんも認めます」
「うん」
どうしたんだろ?麻耶さん。
「でもこれからはただの学生だと思ったら大きな間違いですからね」
「え?」
ほえ?
「愛莉ちゃんを預かってる身なの!しっかり愛莉ちゃんの面倒を見なさい。今までみたいにバスケがあるからとかは通用しませんからね」
「わかった……」
麻耶さんはこれからは私が必要以上に家事しないように以前のように相手してあげなさいと言う。
それは嬉しい事だった。
朝食を食べ終わると冬夜君はマグカップを持って部屋に戻る。
私もそれについていった。
部屋に戻るといつもの位置に私は座ると冬夜君は私の肩に手をやる。
「母さんの言う事ももっともだな。今まで愛莉を蔑ろにしてきたもんな。ごめんね愛莉」
「……きっちり約束守ったんだから凄いよ。私も嬉しかった」
「残りの大学生活は愛莉とがんばろうな」
「うん」
「じゃ、早速今日どこに行こうか?久々にドライブでも行くか?」
「それは嬉しいんだけど遠慮しとく~」
「なんで?」
「今夜渡辺班で祝勝会だよ?」
冬夜君スマホ見てないの?
冬夜君はスマホを見て今更気が付いたようだ。
「じゃあ、せめて昼ごはんくらい食べに行こうか」
「私のお願い聞いてもらえませんか?」
「なんでもいいよ」
「今日は夕方出かけるまで家でのんびりしよう?私も家事しないって約束するから」
「愛莉が守ってくれるならそれでいいよ」
わ~い。
早速麻耶さんに伝える。
「お昼までゆっくりしててね」
「は~い」
部屋に戻ると冬夜君は……寝てた。
うぅ……。
ぽかっ
「どうしたの愛莉?」
「構ってくれないの?」
「あ、そういう意味だったのか」
拗ねてやるぞ!
「うぅ……」
「愛莉何かしたいことあるか?」
そう言われるとやることが無い。
お部屋でやる事か。
「テレビでも見よう?」
私がそう提案すると冬夜君はテレビをつけた。
時間的にまずかったみたいだ。
未だに引きずってるバスケの話題で盛り上がってた。
と、なるとやることは……。
「冬夜君あのゲームやって!」
「あのゲーム?」
「ジャムがどばーってでるやつ」
「そんなのでいいのか?愛莉がやったほうが楽しいんじゃないのか?」
「私あれ難しいもん」
「簡単なモードでやればいいじゃないか?それに他のゲームだって……」
「ストーリーが気になるの!」
「わかったよ」
冬夜君はソフトをゲーム機に入れるとゲームを始める。
ちょっときつい残虐なシーンもあるけどしっかり見ていた。
夢中になってる時間は経つのも早い。
「冬夜、愛莉ちゃん。ご飯よ」
もうお昼だ。
私達は昼食を食べると再び部屋に戻って続きをする。
ゲームをクリアする頃にはちょうどいい時間になっていて、出かける準備をする。
私が仕度を終えると冬夜君と部屋を出る。
部屋にはきらりと輝く金メダルと日本代表チームの記念写真が飾られてあった。
(2)
記者会見が終わったあと大変だった。
祝勝会では引き止めようとする仲間たちとスカウトしようとするプロのクラブ関係者たち。
BリーグもNBAも関係なく来ていた。
愛莉と渋谷と原宿等でデートして閉会式の日まで待つ。
閉会式にはぜひ出て欲しいと言われたから。
本当は翌日には帰りたかったんだけど。
閉会式では歓声に包まれていた。
地元で凱旋パレードをしたいと言われたけど断った。
県民栄誉賞と市民栄誉賞は受け取ったけど。
そして家に帰ると親’sが手厚くもてなしてくれる。
その日は疲れて寝ようとしたら愛莉に小突かれた。
機嫌を損ねると後が大変だから、愛莉を愛でていた。
そして次の日。
今日は渡辺班で祝勝会をやると聞いた。
今愛莉とバスで街に向かっている。
駅前につくと、皆が待っていた。
店はホテルの地下にあるパーティホール。
皆が集まると渡辺君の挨拶が始まる。
「今日は冬夜の祝勝会だ。皆盛大に祝ってやろう。乾杯!」
そして宴が始まった。
僕の席には愛莉、渡辺夫妻、佐(たすく)、佐倉さん。多田夫妻、ちぃちゃん、高槻君がいる。
皆が楽しんでる途中で、何かイベントがあるらしい。
僕がステージに上がると愛莉が花束を贈呈してくれた。
「2年間お疲れ様でした」
愛莉が言う。
「ありがとう。でもまだ早いんじゃないか?」
まだリーグ戦あるだろ?
「ああ、リーグ戦の話なんだけどな……」
佐が立ち上がる。佐倉さんも立っている。愛莉の表情が暗い。なにかあったのか?
「監督はリーグ戦では片桐先輩を使わないと言ってます」
え?
(3)
「佐君シューティングガードだったそうだね?」
東山監督が言う。
「ええ、そうでしたけど」
「今後リーグ戦までに片桐君の動きを勉強してください。戦術はそのまま使いたい」
「だけど、冬夜がいるから……」
俺はどこにでも入れるようにした方がいいんじゃないのか?
「リーグ戦に片桐君は起用しません」
「え?」
「え?」
俺と桜子は絶句した。
どうして、急にまた……。
「片桐君は言いました。『バスケットボールは引退します』と……」
そう言った以上、公式試合では使えない。そう監督は言う。
「だけど片桐先輩は『リーグ戦を最後の公式戦にする』って……」
「周りはそうは見てくれませんよ。また彼を公式試合に出したら彼が復帰したと騒ぎ立てるでしょう。そうなった時に困るのは彼だ」
「ですが……」
「非情な判断に思うかもしれませんが彼の為です。もう大人だ、自分の発言に責任を取ってもらいます。それに……」
「それに?」
桜子が聞き返した。
「片桐君あっての地元大の強さだと思われるのは皆さん悔しくないですか?皆さんだけでも十分勝ち上がっていける実力を持っている」
監督に反論する者はいなかった。
「1部の女王に張り合える力をもっているんです。3部なんかでくすぶってるチームじゃないはずです。それにどのみち彼は来年からいなくなるのですよ?」
「そうっすね……」
蒼汰が言う。
「他の3年以下の人にも言えます。次は自分たちに番なんだと思いなさい。プレッシャーをかけるようですが」
「私もそう思います。1年の高槻君もレギュラーに入ってるんです。もっと皆さん欲を出してください」
桜子が言う。
冬夜無しでも強い地元大。それを証明する必要がある。それには各々が欲を出していかないと駄目だ。練習でレギュラーに楽させてるようでは試合に勝てない。
戦力的には手痛いダメージだが、いつまでも冬夜に頼っていられない。それを自覚する必要がある。
そうして急遽新チーム体制に入るのを余儀なくされた。
(4)
佐達の話を聞いて納得していた。
僕がいたら、チームメイトが自然と楽をしてしまう。
そんなチームではダメだ。また4部に降格してしまう。
「わかった。そういうことなら、後は任せたよ」
「ああ、ちゃんときっちり勝ってきてやらぁ」
佐と握手する。
「本当は先輩にはずっと続けていて欲しいんだけど……約束ですもんね……」
「泣くな桜子!」
「佐倉さんがいなかったら今の僕はいなかったよ。ありがとう」
「そんな優しい言葉かけないでください!」
僕は佐倉さんと握手する。
「片桐先輩たった10分だけだったけど一緒にプレイ出来て良かったです」
「これからバスケ部を盛り上げてね。きっと部員増えるから」
「はい」
僕は高槻君と握手した。
「ちぃちゃんもバスケ覚えて間もないけど翔の事支えてやって」
「今、佐倉先輩に教わってます」
「佐倉さんが卒業した後バスケ部を支えるのはちぃちゃんだよ」
「……はい」
僕はちぃちゃんと握手した。
僕は皆に向かって言う。
「今すごくすっきりした気分だ。気持ちよく辞めることが出来て良かった。今日来てくれたみんなにもお世話になりました。本当にありがとう」
そう言って皆に向かって礼をする。
「この馬鹿!せっかくの祝勝会をしらけさせるな!」
カンナが言う。
「少なくともここに集まった皆を感動させてくれたのはお前だ冬夜。感謝を言うのは俺達の方だよ」
渡辺君が言う。
「神奈の言う通り今日は祝勝会なんだ!ぱーっとやろうぜぱーっと!」
美嘉さんが言う。
僕達は席に戻る。
「飲めよ冬夜」
「そうだぞ、今日は朝まで帰さないからな」
誠と渡辺君が言う。
「わかってるよ」
僕が答える。
ひたすら食べまくる。
解放感と同時に来る脱力感。
僕の役割は終わったんだ。
あとは次の世代に任せよう。
木元先輩も同じ気持ちだったんだろうか?
あの日コートにお礼した時から、もうあのコートに立つことは無い。そう予見していたんだろうか僕は?
木元先輩に挨拶に行くがてら聞いてみた。
「多分冬夜のそれに比べたら小さなものだけど同じ気持ちだったと思うよ」
木元先輩はそう言った。
一通り回って自分の席に戻ると愛莉が小皿に山盛りに継いでいた。
「今日は特別だよ~。飲み物もとってきてあげたよ~」
「ありがとう」
「ううん、冬夜君ちゃんと約束果たしたんだもん。凄いよ。誰にも文句は言わせない」
「ありがとう」
「お疲れ様でした……」
愛莉の目が潤んでる。
愛莉の頭を撫でてやる。
「もう一つの約束も守ってね」
「え?」
「来年だよ?」
あ……。
「そうだな」
「遠坂先輩泣いてないで盛り上がるっす!今日はめでたい日なんだから!自分もあの試合超感動したっす」
晴斗が言う。
歓喜の裏側で誰かが泣く運命。
その涙がどんなものか知るすべは無く。
答えはいつも風の中
もう昨日に手を振ろう。
旅立ちの時は今。
(5)
2次会はいつものカラオケ屋。
女性陣を筆頭に皆歌って飲んで騒いでる。
僕は誠と二人で飲んでた。
「もし、お前がサッカーを選んでいたら」
誠が言い出した。
「……サッカーを選んでいたらお前のゴールはW杯だったのか?」
「そうかもね」
「運命って恐ろしいな。どんなことが起こるか分からない」
「そうだな」
「俺が中学の時お前に『ちょっとダンクやってみ?』って言わなかったら今は無かったわけだしな」
まあ、そうなるね。
「なあ?冬夜?」
「どうした誠?」
「こっからは中学の時からのダチとして腹を割って話そう」
「ああ」
「実際どうなんだ?バスケを辞めるって言った時って。もう大学で試合が出来ないって聞いた時って」
「さっき言った通りだよ。後悔なんてない。すごくさっぱりしてるんだ」
やることはやりつくしたしね。
「まあ、冬夜の場合はそうだろうな。五輪金メダルってゴールまで見てきたんだから。……もう一ついいか?」
「なんだ?」
「世界の頂点を2度見てきたときの感想を聞きたい」
「お、面白そうだな?それは俺も興味あるぞ」
「自分もめっちゃ聞きたいっす」
渡辺君と晴斗が加わってきた。
「そうだね……」
「ああ!またトーヤ誠とろくでもない話してるだろ!」
カンナが言う。
「誠君冬夜に変な事吹き込まないでっていつも言ってるでしょ!!」
愛莉が抗議する。
「ご、誤解だ!俺は今トーヤと凄く真面目に話をだな……」
「お前の真面目な話なんてろくなことが無い!却下だ!」
ご愁傷様。
「大体主賓のとーやがそんなところでまたしけた面して話してるのが気に入らねーんだよ!愛莉ほらマイク!」
「そうだよ冬夜君、冬夜君が盛り上がらないと意味が無いんだから……一緒に歌おう?」
愛莉がマイクを差し出す。
「わかったよ……何歌うの?」
「デュエット曲」
「わかったよ」
愛莉が端末を操作する。
タイトルが出て来る。
さぁ、旅立ちのときは今。
風をよんででかい帆を立てよう。
これから新しい航海がはじまる。
どこへ行くのかは分からない。
答えはいつも風の中。
(6)
帰りのタクシーの中。
朝陽がまぶしい。
今日も暑い一日になりそうだ。
冬夜君は私の膝の上で眠っている。
冬夜君は今日はずっと盛り上がっていた。
本当に気分がよかったんだろうな。
後悔の無い人生なんてない。
それでも人は人生という航海にでる。
それでも冬夜君は一つ目的を達成してみせた。
次の目標は何なんだろう?
それを知るのは冬夜君だけ。
冬夜君もまだ答えを知らないのかもしれない。
答えはいつも風の中。
家に着くと冬夜君を起こす。
「冬夜君ついたよ~」
「あ、寝てた?ごめん……」
精算を済ませてタクシーを降りると家に入る。
麻耶さんは冬夜君のパパさんの出勤の仕度をしていた。
「ちゃんと財布は持ちましたか?」
「大丈夫だよ……あれ?ポケットにない」
「もう!だから昨日言ったでしょズボン洗うからポケットから出しておいてって」
「あ、そうだったな」
「どこにやったかな」
「世話が焼けるんだから」
本当の主婦って大変なんだなぁ。
そんな光景を見ながら私達は冬夜君の部屋に行く。
冬夜君は着替えずにベッドに横になる。
「だめ、ちゃんとシャワー浴びて着替えて寝て」
「シャワーなら後ででも良いだろ」
「だめ!ちゃんと綺麗になってからにして。出来ないなら手伝ってあげるから」
「じゃあ、手伝ってもらうかな」
冬夜君はそう言って笑っていた。
冬夜君の着替えとタオルを用意すると冬夜君に渡す。
二人で一緒にお風呂に入ってそして戻ってきて眠る。
冬夜君はすぐに眠りについた。
「冬夜君お疲れ様」
そんな冬夜君の寝顔はとてもきれいな笑顔だった。
「うぅ……」
私は朝から困っていた。
いつもなら日課の為に起きる時間。
しかし冬夜君にもう日課は必要ない。
冬夜君は今私に抱きついて眠っている。
冬夜君の衝撃の発言から何日か経った。
その晩の祝勝会には出席を余儀なくされたものの、やはり冬夜君を引き止める者は少なくなかった。
仲間からも止められたらしい。
しかし冬夜君は一度口にしたことは中々曲げない。
記者会見の前、決勝戦の前夜に冬夜君は監督に直訴したらしい。
当然監督も引き止めた。
だけど冬夜君の決意は固かった。
条件が条件だけに「出来るならやってみろ」と言ったらしい。
だけど冬夜君は見事にやってのけた。
部屋に飾ってある金メダルは偽物なんかじゃない。
五輪の閉会式までは冬夜君は東京に滞在した。
私達も滞在を認められた。
その間に冬夜君と渋谷でデートしたりした。
ふざけて買ったサングラスをしてまるで有名人のように変装する私達。
閉会式の余韻に浸れば冬夜君を引き止められる、そんな思惑もあったんだろう。
でも冬夜君の意思は変わらなかった。
地元に帰ると、沢山のマスコミが押しかけて来た。
また、「やめないで」と涙するファンもたくさんいた。
地元の知事から凱旋パレードの誘いもあったけど冬夜君は断った。
県民栄誉賞と市民栄誉賞の授与は受けた。
異例のスピードだった。
「そんなもの欲しくてやったわけじゃないんだけどな」
冬夜君は照れくさそうに言った。
冬夜君はそれだけ凄いことをしたんだよ。
そして約束通り冬夜君は家に帰ると麻耶さんやりえちゃんのご馳走を食べ満足して風呂に入って寝ようとしていた。
うぅ……
ぽかっ
「冬夜君帰ってきたら甘えさせてくれるって言ったもん!」
「そうだったね、おいで愛莉」
そうして今に至る。
怒涛の日々を過ごしようやく家に辿り着き休んでいる亭主を起こしていいものかどうか?
私は悩んでいた。
しかし悩んでいる時間が長すぎたようだ。
麻耶さんが部屋にくる。
「冬夜!いつまで寝てるの!?いい加減に起きなさい」
「麻耶さん今日は駄目!ゆっくり寝させてあげて」
「あ、そうか」
「もう、遅いよ……」
冬夜君が起きた。
「おはよう愛莉」
「おはよう」
麻耶さんはため息を吐く。
「朝ごはん出来てるから顔洗ってきなさい」
そう言って部屋を出る。
「行こっか?」
「そうだね」
私達は部屋を出るとダイニングに向かう。
ダイニングには冬夜君の両親が座っていた。
普通に会話して食事をしてる。
私達もその中に混ざった。
リビングにあるテレビは未だ収まらない冬夜君の行動を報じている。
無理もない、日本バスケ史上初の快挙なのだから。
その立役者の冬夜君が即時引退を表明する。
大事にならないはずがない。
その本人は今眠そうにパンをかじりながらテレビを見てるわけだけど。
「いい?冬夜。あなたは自分の意思でバスケを辞めると言ったの。それは母さんも認めます」
「うん」
どうしたんだろ?麻耶さん。
「でもこれからはただの学生だと思ったら大きな間違いですからね」
「え?」
ほえ?
「愛莉ちゃんを預かってる身なの!しっかり愛莉ちゃんの面倒を見なさい。今までみたいにバスケがあるからとかは通用しませんからね」
「わかった……」
麻耶さんはこれからは私が必要以上に家事しないように以前のように相手してあげなさいと言う。
それは嬉しい事だった。
朝食を食べ終わると冬夜君はマグカップを持って部屋に戻る。
私もそれについていった。
部屋に戻るといつもの位置に私は座ると冬夜君は私の肩に手をやる。
「母さんの言う事ももっともだな。今まで愛莉を蔑ろにしてきたもんな。ごめんね愛莉」
「……きっちり約束守ったんだから凄いよ。私も嬉しかった」
「残りの大学生活は愛莉とがんばろうな」
「うん」
「じゃ、早速今日どこに行こうか?久々にドライブでも行くか?」
「それは嬉しいんだけど遠慮しとく~」
「なんで?」
「今夜渡辺班で祝勝会だよ?」
冬夜君スマホ見てないの?
冬夜君はスマホを見て今更気が付いたようだ。
「じゃあ、せめて昼ごはんくらい食べに行こうか」
「私のお願い聞いてもらえませんか?」
「なんでもいいよ」
「今日は夕方出かけるまで家でのんびりしよう?私も家事しないって約束するから」
「愛莉が守ってくれるならそれでいいよ」
わ~い。
早速麻耶さんに伝える。
「お昼までゆっくりしててね」
「は~い」
部屋に戻ると冬夜君は……寝てた。
うぅ……。
ぽかっ
「どうしたの愛莉?」
「構ってくれないの?」
「あ、そういう意味だったのか」
拗ねてやるぞ!
「うぅ……」
「愛莉何かしたいことあるか?」
そう言われるとやることが無い。
お部屋でやる事か。
「テレビでも見よう?」
私がそう提案すると冬夜君はテレビをつけた。
時間的にまずかったみたいだ。
未だに引きずってるバスケの話題で盛り上がってた。
と、なるとやることは……。
「冬夜君あのゲームやって!」
「あのゲーム?」
「ジャムがどばーってでるやつ」
「そんなのでいいのか?愛莉がやったほうが楽しいんじゃないのか?」
「私あれ難しいもん」
「簡単なモードでやればいいじゃないか?それに他のゲームだって……」
「ストーリーが気になるの!」
「わかったよ」
冬夜君はソフトをゲーム機に入れるとゲームを始める。
ちょっときつい残虐なシーンもあるけどしっかり見ていた。
夢中になってる時間は経つのも早い。
「冬夜、愛莉ちゃん。ご飯よ」
もうお昼だ。
私達は昼食を食べると再び部屋に戻って続きをする。
ゲームをクリアする頃にはちょうどいい時間になっていて、出かける準備をする。
私が仕度を終えると冬夜君と部屋を出る。
部屋にはきらりと輝く金メダルと日本代表チームの記念写真が飾られてあった。
(2)
記者会見が終わったあと大変だった。
祝勝会では引き止めようとする仲間たちとスカウトしようとするプロのクラブ関係者たち。
BリーグもNBAも関係なく来ていた。
愛莉と渋谷と原宿等でデートして閉会式の日まで待つ。
閉会式にはぜひ出て欲しいと言われたから。
本当は翌日には帰りたかったんだけど。
閉会式では歓声に包まれていた。
地元で凱旋パレードをしたいと言われたけど断った。
県民栄誉賞と市民栄誉賞は受け取ったけど。
そして家に帰ると親’sが手厚くもてなしてくれる。
その日は疲れて寝ようとしたら愛莉に小突かれた。
機嫌を損ねると後が大変だから、愛莉を愛でていた。
そして次の日。
今日は渡辺班で祝勝会をやると聞いた。
今愛莉とバスで街に向かっている。
駅前につくと、皆が待っていた。
店はホテルの地下にあるパーティホール。
皆が集まると渡辺君の挨拶が始まる。
「今日は冬夜の祝勝会だ。皆盛大に祝ってやろう。乾杯!」
そして宴が始まった。
僕の席には愛莉、渡辺夫妻、佐(たすく)、佐倉さん。多田夫妻、ちぃちゃん、高槻君がいる。
皆が楽しんでる途中で、何かイベントがあるらしい。
僕がステージに上がると愛莉が花束を贈呈してくれた。
「2年間お疲れ様でした」
愛莉が言う。
「ありがとう。でもまだ早いんじゃないか?」
まだリーグ戦あるだろ?
「ああ、リーグ戦の話なんだけどな……」
佐が立ち上がる。佐倉さんも立っている。愛莉の表情が暗い。なにかあったのか?
「監督はリーグ戦では片桐先輩を使わないと言ってます」
え?
(3)
「佐君シューティングガードだったそうだね?」
東山監督が言う。
「ええ、そうでしたけど」
「今後リーグ戦までに片桐君の動きを勉強してください。戦術はそのまま使いたい」
「だけど、冬夜がいるから……」
俺はどこにでも入れるようにした方がいいんじゃないのか?
「リーグ戦に片桐君は起用しません」
「え?」
「え?」
俺と桜子は絶句した。
どうして、急にまた……。
「片桐君は言いました。『バスケットボールは引退します』と……」
そう言った以上、公式試合では使えない。そう監督は言う。
「だけど片桐先輩は『リーグ戦を最後の公式戦にする』って……」
「周りはそうは見てくれませんよ。また彼を公式試合に出したら彼が復帰したと騒ぎ立てるでしょう。そうなった時に困るのは彼だ」
「ですが……」
「非情な判断に思うかもしれませんが彼の為です。もう大人だ、自分の発言に責任を取ってもらいます。それに……」
「それに?」
桜子が聞き返した。
「片桐君あっての地元大の強さだと思われるのは皆さん悔しくないですか?皆さんだけでも十分勝ち上がっていける実力を持っている」
監督に反論する者はいなかった。
「1部の女王に張り合える力をもっているんです。3部なんかでくすぶってるチームじゃないはずです。それにどのみち彼は来年からいなくなるのですよ?」
「そうっすね……」
蒼汰が言う。
「他の3年以下の人にも言えます。次は自分たちに番なんだと思いなさい。プレッシャーをかけるようですが」
「私もそう思います。1年の高槻君もレギュラーに入ってるんです。もっと皆さん欲を出してください」
桜子が言う。
冬夜無しでも強い地元大。それを証明する必要がある。それには各々が欲を出していかないと駄目だ。練習でレギュラーに楽させてるようでは試合に勝てない。
戦力的には手痛いダメージだが、いつまでも冬夜に頼っていられない。それを自覚する必要がある。
そうして急遽新チーム体制に入るのを余儀なくされた。
(4)
佐達の話を聞いて納得していた。
僕がいたら、チームメイトが自然と楽をしてしまう。
そんなチームではダメだ。また4部に降格してしまう。
「わかった。そういうことなら、後は任せたよ」
「ああ、ちゃんときっちり勝ってきてやらぁ」
佐と握手する。
「本当は先輩にはずっと続けていて欲しいんだけど……約束ですもんね……」
「泣くな桜子!」
「佐倉さんがいなかったら今の僕はいなかったよ。ありがとう」
「そんな優しい言葉かけないでください!」
僕は佐倉さんと握手する。
「片桐先輩たった10分だけだったけど一緒にプレイ出来て良かったです」
「これからバスケ部を盛り上げてね。きっと部員増えるから」
「はい」
僕は高槻君と握手した。
「ちぃちゃんもバスケ覚えて間もないけど翔の事支えてやって」
「今、佐倉先輩に教わってます」
「佐倉さんが卒業した後バスケ部を支えるのはちぃちゃんだよ」
「……はい」
僕はちぃちゃんと握手した。
僕は皆に向かって言う。
「今すごくすっきりした気分だ。気持ちよく辞めることが出来て良かった。今日来てくれたみんなにもお世話になりました。本当にありがとう」
そう言って皆に向かって礼をする。
「この馬鹿!せっかくの祝勝会をしらけさせるな!」
カンナが言う。
「少なくともここに集まった皆を感動させてくれたのはお前だ冬夜。感謝を言うのは俺達の方だよ」
渡辺君が言う。
「神奈の言う通り今日は祝勝会なんだ!ぱーっとやろうぜぱーっと!」
美嘉さんが言う。
僕達は席に戻る。
「飲めよ冬夜」
「そうだぞ、今日は朝まで帰さないからな」
誠と渡辺君が言う。
「わかってるよ」
僕が答える。
ひたすら食べまくる。
解放感と同時に来る脱力感。
僕の役割は終わったんだ。
あとは次の世代に任せよう。
木元先輩も同じ気持ちだったんだろうか?
あの日コートにお礼した時から、もうあのコートに立つことは無い。そう予見していたんだろうか僕は?
木元先輩に挨拶に行くがてら聞いてみた。
「多分冬夜のそれに比べたら小さなものだけど同じ気持ちだったと思うよ」
木元先輩はそう言った。
一通り回って自分の席に戻ると愛莉が小皿に山盛りに継いでいた。
「今日は特別だよ~。飲み物もとってきてあげたよ~」
「ありがとう」
「ううん、冬夜君ちゃんと約束果たしたんだもん。凄いよ。誰にも文句は言わせない」
「ありがとう」
「お疲れ様でした……」
愛莉の目が潤んでる。
愛莉の頭を撫でてやる。
「もう一つの約束も守ってね」
「え?」
「来年だよ?」
あ……。
「そうだな」
「遠坂先輩泣いてないで盛り上がるっす!今日はめでたい日なんだから!自分もあの試合超感動したっす」
晴斗が言う。
歓喜の裏側で誰かが泣く運命。
その涙がどんなものか知るすべは無く。
答えはいつも風の中
もう昨日に手を振ろう。
旅立ちの時は今。
(5)
2次会はいつものカラオケ屋。
女性陣を筆頭に皆歌って飲んで騒いでる。
僕は誠と二人で飲んでた。
「もし、お前がサッカーを選んでいたら」
誠が言い出した。
「……サッカーを選んでいたらお前のゴールはW杯だったのか?」
「そうかもね」
「運命って恐ろしいな。どんなことが起こるか分からない」
「そうだな」
「俺が中学の時お前に『ちょっとダンクやってみ?』って言わなかったら今は無かったわけだしな」
まあ、そうなるね。
「なあ?冬夜?」
「どうした誠?」
「こっからは中学の時からのダチとして腹を割って話そう」
「ああ」
「実際どうなんだ?バスケを辞めるって言った時って。もう大学で試合が出来ないって聞いた時って」
「さっき言った通りだよ。後悔なんてない。すごくさっぱりしてるんだ」
やることはやりつくしたしね。
「まあ、冬夜の場合はそうだろうな。五輪金メダルってゴールまで見てきたんだから。……もう一ついいか?」
「なんだ?」
「世界の頂点を2度見てきたときの感想を聞きたい」
「お、面白そうだな?それは俺も興味あるぞ」
「自分もめっちゃ聞きたいっす」
渡辺君と晴斗が加わってきた。
「そうだね……」
「ああ!またトーヤ誠とろくでもない話してるだろ!」
カンナが言う。
「誠君冬夜に変な事吹き込まないでっていつも言ってるでしょ!!」
愛莉が抗議する。
「ご、誤解だ!俺は今トーヤと凄く真面目に話をだな……」
「お前の真面目な話なんてろくなことが無い!却下だ!」
ご愁傷様。
「大体主賓のとーやがそんなところでまたしけた面して話してるのが気に入らねーんだよ!愛莉ほらマイク!」
「そうだよ冬夜君、冬夜君が盛り上がらないと意味が無いんだから……一緒に歌おう?」
愛莉がマイクを差し出す。
「わかったよ……何歌うの?」
「デュエット曲」
「わかったよ」
愛莉が端末を操作する。
タイトルが出て来る。
さぁ、旅立ちのときは今。
風をよんででかい帆を立てよう。
これから新しい航海がはじまる。
どこへ行くのかは分からない。
答えはいつも風の中。
(6)
帰りのタクシーの中。
朝陽がまぶしい。
今日も暑い一日になりそうだ。
冬夜君は私の膝の上で眠っている。
冬夜君は今日はずっと盛り上がっていた。
本当に気分がよかったんだろうな。
後悔の無い人生なんてない。
それでも人は人生という航海にでる。
それでも冬夜君は一つ目的を達成してみせた。
次の目標は何なんだろう?
それを知るのは冬夜君だけ。
冬夜君もまだ答えを知らないのかもしれない。
答えはいつも風の中。
家に着くと冬夜君を起こす。
「冬夜君ついたよ~」
「あ、寝てた?ごめん……」
精算を済ませてタクシーを降りると家に入る。
麻耶さんは冬夜君のパパさんの出勤の仕度をしていた。
「ちゃんと財布は持ちましたか?」
「大丈夫だよ……あれ?ポケットにない」
「もう!だから昨日言ったでしょズボン洗うからポケットから出しておいてって」
「あ、そうだったな」
「どこにやったかな」
「世話が焼けるんだから」
本当の主婦って大変なんだなぁ。
そんな光景を見ながら私達は冬夜君の部屋に行く。
冬夜君は着替えずにベッドに横になる。
「だめ、ちゃんとシャワー浴びて着替えて寝て」
「シャワーなら後ででも良いだろ」
「だめ!ちゃんと綺麗になってからにして。出来ないなら手伝ってあげるから」
「じゃあ、手伝ってもらうかな」
冬夜君はそう言って笑っていた。
冬夜君の着替えとタオルを用意すると冬夜君に渡す。
二人で一緒にお風呂に入ってそして戻ってきて眠る。
冬夜君はすぐに眠りについた。
「冬夜君お疲れ様」
そんな冬夜君の寝顔はとてもきれいな笑顔だった。
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