優等生と劣等生

和希

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5thSEASON

風の行方

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(1)

「冬夜君朝だよ~。ご飯の時間だよ~」

愛莉の元気な声で目を覚ます。
決してご飯に反応してるわけじゃない。
朝の日課が無くなったからじゃない。
愛莉の機嫌を損ねたくないから。
ここ一週間愛莉の機嫌は良い。
このまま後期をむかえたい。
僕達の学生生活もあと半年となった。
この家での生活もあと半年となる。
やっぱり決断してよかった。
あれから愛莉の機嫌がいい。

「ほら~起きたらさっさと顔洗ってこないと」
「わかったよ」

愛莉と朝の挨拶を交わすと愛莉は上機嫌になる。

「冬夜君はいつも優しいね」

愛莉が抱きついてくる。
そんな愛莉を引き離すのは心苦しいが仕方ない。
ご飯が待っている。

「愛莉、そろそろ行こう?」
「うぅ……」

愛莉が寂しそうだ。
そんな時の対処法も心得てある。

「朝食終わったら二人でのんびりしよう。出かけるのは夕方からだし」
「……うん♪」

ほら良くなった。
顔を洗って朝食を済ませるとコーヒーを持って部屋に戻る。
愛莉も一緒に戻ってくる。
愛莉と朝の番組を見ながらのんびりと午前を過ごす。
その間にスマホだのノートPCだの弄ってるけど。
愛莉はそれを覗いてる。
今更隠すこともないので見せてやってるけど。
それで愛莉の機嫌が良くなるなら安いものだ。
お昼になると昼食を取る。
その後午後の番組を見てると眠くなる。
どうでもいい話題をどうでもいいコメンテーターがコメントするニュース。
珍しく最近バスケの話題が多い。
今年のアジア選手権は駄目だったらしい。
優勝は中国。
3Pシューターの不在が挙げられているが、遠回しに僕の勝手な引退を問題視してるコメンテーターが多い。
どうでもいいけどね。
愛莉の勧めもあって今週中旬に東京に行ってきた。
テレビのロケだ。
僕が毎週見てるテレビ番組。
お酒入ってたから収録内容よく覚えてなかった。
昨夜その番組をみて愕然とした。

「片桐選手に直して欲しい癖!」

愛莉や聖人に聞いていたらしい。
愛莉の顔を見た。愛莉は「えへへ~」と笑って誤魔化す。

「大食い癖がある」だの「朝から甘えてくる」だの言いたい放題。
それに対して僕も「そんなに食べてない」だの「彼女の機嫌を損ねたくないから仕方なくやってる」だの言いたい放題。
愛莉の笑みが消えた。愛莉の怒りゲージが頂点に達する寸前だ。

「自分の彼女に対して不満は無いの?」

鋭い突っ込みが入る。

「ご機嫌とらないとすぐ拗ねるんですよ」

ああ、やらかしたね。

「冬夜君はそんな風に考えてたんだ~?」

愛莉の笑みが怖い。

「ほら、お酒入ってたし……」
「お酒入ると本音が出るって言うよね?本音でトークって言ってるし」

番組はまだ終わらない。

「じゃあ、引退も彼女の影響?」

そんなこと聞かれてたね。

「愛莉今夜はもう寝よう」
「……無駄だよ。ちゃんと録画してるもん」

そしてその録画を今見てる。

「引退って言うよりバスケを強要されたって感じですね。仕方ないからやるか。みたいな」

あのとき芸人さんから思いっきりどつかれた記憶がよみがえった。
そして今愛莉から思いっきりどつかれた。

ぽかっ

「冬夜君はそんな風に思っていたの!?」

昨夜は機嫌を直してもらうのに必死だったね。
今もそれを見てややご立腹。

「うぅ……」

愛莉が唸ってる。
こういう時はチャンネルを変える。

「あ、まだ見てるのに」
「ここで僕のコーナーは終わりだったろ?」
「でも~……」
「愛莉昨夜も言ったけど、お酒入ってたんだ。ごめん、謝るよ」
「そうじゃないの!」

え?

「冬夜君がどんな本音を持ってるのか知りたかっただけ。ちょっと驚いたけどやっぱり不満あったんだなって」
「だから、ごめんって」
「私も冬夜君に愚痴言ったよ?朝起きてくれないとか……私達まだ本音で話せてない。それって夫婦生活始める上で問題じゃない?」

愛莉は言う。
これからは本音で言おう?私も直すから。でも冬夜君の為を思って言いたくないことも言ってるんだから理解して欲しい。私も本当は朝から甘えてくれて嬉しいのと。

「もうバスケは終わったんだ。後期は愛莉に思いっきり構ってやるから」
「それって冬夜君の負担にならない?」
「愛莉に甘えたいのは僕もいっしょだよ」
「わ~い」

昼間っからまさに容赦なくスキンシップを求めてくる愛莉。
その日は出かけるまで愛莉に奉仕していた。

(2)

「瑛大!いい加減起きろ!遅刻するぞ!」
「もうちょっといいだろ?」
「お前のもうちょっとはいつまで続くんだ!?」

躾けていた瑛大の生活リズムは3日間で簡単に崩壊していた。
朝から夕方まで寝てる。
でも今日は昼間のシフトにしてる。
夜から渡辺班の集まりがあるから。
議題は瑛大と多田君の酒癖について。
二人の酒癖は女性陣だけでなくて男性陣にも不評だったようだ。
自分をまきこむな!
皆同じ意見だったようだ。
私達が東京から帰って来た時二人は出迎えてくれた。
多田君は本当に反省していたらしい。
部屋が酷いことになっていたらしいけど。
それに対して瑛大と来たら言いたい放題言ってくれた。
そして三日で崩れた生活リズムは戻るのは遅く……。

「ほら!今日は昼から夕方までバイトだろうか!急がないと!」
「一日くらい休んだって問題ないだろ!?」
「あるに決まってるだろうが馬鹿が!」

何とか瑛大に着替えさせて昼ご飯を食べさせてバイトに送り出す。
次は私の番だ。
本当は私の方が急がないとバイトの勤務先が遠いのに!
急いで仕度してバイトに行く。
機嫌が悪いのを隠して笑顔を作って愛想振りまいて接客業務。
接客だけじゃない、商品の管理等やることは様々だ。
それが終ると家に帰る。
家に帰ると唖然とする。
片付けていたはずの部屋がもう散らかってる。
犯人は言うまでもなく椅子に座ってPCを眺めている瑛大。

「あ、亜依帰って来たの?じゃ、行こうか?」
「行こうかじゃないでしょ馬鹿、少しは片づけるって事を知らないわけ!?」

そこまで言って初めて片付けだす。
片付け方にも問題がある。

「全部燃やそうと思えば燃やせるだろ?」と一緒くたに燃えるゴミに入れようとする瑛大。

「分別の仕方はちゃんと壁に張ってるあるだろうが!」

1から10まで教えないと何もできない。
そうして準備すると急いで電車に乗る。

「あ、亜依じゃん。多分一緒の電車だとは思ってたけど」
「神奈!」

一緒に旦那の行動に不満を持って家出をした相手、神奈。
神奈の旦那・多田君はあの晩反省していたように見えたが、その後どうなんだろう?
神奈に聞いてみた。
料理をするのは良いけど片付けない、脱ぎ散らかす。ごみはそこらへんにポイ捨て。
生活は相変わらずだという。
いっそのこと生活態度も考えて欲しいくらいだ。
そんな事を話しながら私達は駅前の集合場所に向かった。

(3)

遅い!
今日の予定を考えたら、そろそろ帰ってきてもおかしくないはず。
何してるんだ。

ガチャ

帰ってきたようだ。

「遅い!どこ寄り道してたの!?今日は渡辺班の集まりあるって知ってたでしょ!」
「現場のキリが着くまで残業してた」
「今日は用事があるって断れなかったの?」
「言い出しづらかったんだよ」

困惑する悠馬。
頼まれたら断れない。良い所でもあり悪い所でもある悠馬の癖。
こんな生活していたら、将来間違いなくサビ残して過労死だ。

「もう行くよね?じゃ、行こうか?」
「そんな汚れた格好で行くわけ!?少しは身だしなみに気を配りなさい!」
「わかったよ」

そう言うと悠馬はシャワーを浴びる。
その間に悠馬の着替えを用意する。

「着替えここに置いとくから!」
「ありがとう」

悠馬はさっと洗うとシャワーから出てきて体を拭いて着替える。

「これでいいだろ?いい加減でないと電車間に合わないよ?」

悠馬が言うと私達は家をでる。
電車には間に合った。
電車に揺られながらも私達は言い合いを続ける。

「あんた、今の生活続けていたら本当に過労死するわよ。後期始まったらどうするの?」
「さすがにその時はバイト減らすよ。心配しなくていいよ」
「そう言ってクリスマスプレゼントしたいからって去年無理にバイト詰めたの忘れたの?」
「咲を喜ばせたかったから……」
「あんたが倒れて私が悲しむことは想像していなかったわけ?」
「今年は気を付けるよ」
「本当にそうしてちょうだい」

私だって気を付けてる。
着ない服・いらないアクセサリをネットオークションに出したり、食費も最低限度にとどめてる。
それが悠馬にとって心配の種らしい。

生活費が足りないんじゃないか?

そうじゃない、分相応の生活を心がけているだけ。
背伸びした生活をしてても疲れるだけ。
そう言ってるのに悠馬は分かってくれない。
電車は駅に着く。
改札口には晴斗と春奈が待っていた。

「おつかれっす!」
「お疲れ様」

二人と挨拶すると集合場所に向かう。
みんな集まっていた。
渡辺先輩が言う。

「じゃ、店に行こうか?」

店はいつもの駅前の焼き鳥屋だった。

(4)

「ああ、今日集まってもらったのは誠君と瑛大の酒癖についてだ」

渡辺君がそう切り出した。

「多田君と桐谷君の問題だけ?他の男には問題ないの?」

恵美さんが反論する。

「不満があるなら今言えばいいじゃねーか!?今回だってそうだがなんで男だけでこそこそやろうとするんだよ!」

美嘉さんがそう言うと女性陣はそうだそうだと騒ぎ立てる。

「そもそも女性陣が女子会始めたのがきっかけだろ?」

檜山先輩が言うと咲良さんが反発する。

「女子会じゃあんな店いったりしません~。論点をすり替えないで下さい~」
「風俗に行かなくても女性陣は不満をいってるじゃねーか?」
「陰口叩かれてニコニコ笑ってるほどお人好しじゃありませんよ~」

僕は話には加わらず焼き鳥を食べていた。
愛莉も取り皿に色々取ってくれる。
そんな僕を恵美さんが見ていた。

「片桐君も他人事だと思ってるだろうけど、昨日の番組見たわよ!言いたい放題言ってくれてるじゃない?」
「そ、それは私も言いたい放題言ったからお互い様って今日昼間お話したんだよ」

愛莉が反論する。

「愛莉ちゃんはそれでいいわけ?そんな事だと同棲生活始めてもあっという間に破局よ」

恵美さんが言うと。愛莉はくすっと笑う。

「大丈夫だよ。冬夜君も貯めてるんだなって安心したくらいだから」
「愛莉ちゃん?」
「完璧な人間なんていないよ。皆それぞれ不満を抱えてる。女性陣はそれを発散させたいから女子会を開いてるんじゃないの?亜依」
「まあ、そうだけど……だからって男性陣はやりすぎなところがあるじゃない。一歩間違えたら浮気だよ!?」
「愛莉ちゃんは片桐君が相手だからそう言えるの。他の女性陣の相手は片桐君みたいな出来た人じゃない。だから不安だし不満なんでしょ?」

亜依さんと恵美さんが言うも、愛莉は笑って言う。

「本当にそうかな~?恵美も咲も晶も……他の皆も不安を感じてる?不満に思ってる?」
「そ、それは……」
「私は悠馬が働き過ぎなのが不安かな?浮気とかは考えたことない」
「善君もそれは言えてるわね。休みなく働いてる。浮気するような甲斐性のある人じゃない」

咲さんと晶さんが言う。
愛莉は続ける。

「結局のところは誠君と桐谷君のノリに流されてるのが問題なんでしょ?だから今日集まったんでしょ?これで本題に入れるね?渡辺君」
「そ、そうだな。遠坂さんの言う通りだ。この二人の酒癖をどうにかしないとまずいと思うんだが、どうすればいい?」

僕はから揚げを食いながら考えた。
禁酒させたらいいって問題じゃないことは分かる。となると選択肢はそんなにないんだけど。

「冬夜君、今考えたことを皆に伝えて」

愛莉が言う。

「冬夜、何か策があるのか!?」

渡辺君も聞いてきた。
皆の視線が集まる。
僕はハイボールを飲むといった。

「無いね」

愛莉はその答えに気づいていたようで、表情を崩さなかった。

「無いって……じゃあこのまま続けるわけ?」
「亜依さんもカンナも二人に禁酒させたいわけじゃないんだろ?」
「まあ、そうだけど……」
「例えば渡辺班の飲み会に出入り禁止にしたところでこれから社会人になっていくんだ。少なからず飲み会は増えるよ。それは檜山先輩と木元先輩が良く知ってるはず」
「確かに増えるな」
「そこで同じことをやる可能性はあると言いたいんだね?」

檜山先輩と木元先輩が言った。

「トーヤ、また男目線になってるぞ。女性陣は耐えろって言いたいのか?」

カンナが言う。

「行ったこと無いからわかんないけどそういう店に行くなってくらいは思う。現に男子会の幹事は二人にはやらせないって決めてるんだし」

でも愚痴はどうにもならない。じゃあどうすればいいか?

「……愛莉は言ってくれたよ?不満があるなら言ってくれって。でも愛莉だって僕のことを心配して言ってくれてるんだから理解して欲しいって」
「それはわかる。私も悠馬に倒れられたら困るから家計は心配しなくていいから無理するなって言ってるし」

咲さんが言うと皆口々に言いだした。

「要するにどうすればいいんだ?」

美嘉さんがいう。

「頭ごなしに否定するんじゃなくて、自分の思ったことを正直に話して、相手の言い分を聞いてやればいいんじゃない?少なくとも外で不満を漏らさなくてもいいように」

そうすれば今度はきっとただののろけ話になっていくだろうから。

「誠はわかってくれたよ、あれから外で飲む機会も減ったし。愚痴も言わなくなった」

カンナは言う。

「じゃあ、瑛大はどうすればいいわけ?瑛大は全然反省の色が無いよ」

亜依さんが言う。

「それなんだがな……他の皆はどうなんだ?誠はとにかく家事を増やすのが得意なんだ。自分で部屋を片付けようともしない」
「それ瑛大もそうだわ。まったく家事しない」

カンナと亜依さんが言う。

「うちの旦那はちゃんとしてくれるしな~」
「悠馬もしなくていいことまでしてくれる」

美嘉さんと咲さんがいう。

「うちの主人も駄目です。結婚してから全然してくれなくなりました」
「春樹は意外と綺麗好きだから~」

花菜さんと咲良さんが言う。
男性陣は黙ってしまう。
女性陣だけで盛り上がる。
僕と愛莉は笑ってそんな様子を見てる。
そして僕は一言いう。

「そういう話を女子会でしてるわけでしょ?」

女性陣は気づく。

「確かにその通りだね」

亜依さんが言う。

「男性陣はその事に対してどう思ってる?」

僕が聞くと「まあ、反省するところはあるかな……」という。

「今のが女性陣の不満だよ。それを解消してやればいい。女性陣も同じじゃないかな?」
「片桐君はガミガミ言いたくなる女性陣の言い分も分かってよ!」

亜依さんが言う。

「その言い分をぶつけたらいい。女性陣の主張を男性陣に訴えたらいい。衝突することもある。けど愛情って綺麗事だけじゃないでしょ」

女性陣はシーンと静まり返った。

「まあ、渡辺班で二次会行くときは店を選んだ方が良いかもね?お互い監視するのもされるのもいやでしょ?」

僕が言うと公生が言った。

「僕はまだ子供だけど、片桐君の言う事は理解できるよ。要は相手をおもいやれってことでしょ?僕もバレンタインの時にやらかしちゃってね」
「公生!その話はもういい!」
「なんだよ公生、話せよ」

奈留が止めようとするけどカンナが続けさせた。
公生はバレンタインの時に奈留がチョコを用意してくれた事に気づかず「バレンタインで浮かれてくだらない」と言ったらしい。

「だめっすよ、公生。そこは気づいてやらないとっす」

晴斗が言う。

「あとで気づいたよ。飲み会の時もそうだ。飲み会の後いつも奈留泣いてるんだ。『私に不満あるなら言えばいいじゃない』って」
「要は男性陣はもっと女性陣に気づかいをしろってことだな」

渡辺君がまとめる。

「瑛大、お前も少しは嫁さんの気持ち汲んでやれ。好きでガミガミ言ってるわけじゃないんだ。そのくらいの包容力はもて」

渡辺君が言う。

「分かってるけどさ。でも飲み会の時くらい愚痴ったっていいじゃん!」
「思ってる事があるなら今言えば良いじゃないか!」
「本人目の前にして言えない事だってあるだろ!」

瑛大と亜依さんが言い合ってる。
すると愛莉が言う。

「私女子会の時に言ったことがあるんだ『愚痴や不満を言うよりのろけ話の方がきっと素敵な気分になれるよ』って」
「男性がそれやったら気持ち悪いだけですよ!」

真鍋君が言うと皆が笑う。

「ほら、笑った。どうせ飲み会するなら笑っていた方が楽しいって」

愛莉が言う。

「楽しい酒を飲みたいですね」

石原君が言う。

「話はまとまったようだな。男性陣はとりあえずいかがわしい店に行かない。話題に気を付ける。この二点だな。女性陣としてはどうだ?それで納得してくれないか?」

渡辺君が言う。

「まあ、男性陣の言い分もわかったわよ。ため込んでる事があるのはお互い様ってことだよね?」

亜依さんが言う。
不毛な議論を続けるより明るい話題を。
だけど誠は言う。

「でもさ、渡辺班以外での行動はどうするんだ?冬夜の言った通りサークルでの打ち上げとかあるぜ」
「お前はそういうところで嫁の悪口をいうつもりか……誠?言いたい事なら今聞いてやるぞ」
「いや、何でもないです」

誠がそう言うとみんな笑ってた。

(5)

2次会はいつものカラオケ店にした。
男女問わず皆歌い続ける。
大盛り上がりの中僕も食べることに夢中になってた。

「冬夜君も何か歌おうよ。あの歌がいいな」
「ああ、いいよ」

愛莉が端末で曲を入力する。
順番が回ってくると歌う。
北村さんも大分打ちとけたみたいだ、ちょっと歌うのは苦手みたいだけど、気にせずガンガン歌ってる。
あとは栗林君に歌ってもらったり。

「翔ちゃん家に連絡入れないで大丈夫?」
「もう19だよ?いい加減一人で遊びたいときに遊ぶよ。伊織は大丈夫?」
「翔ちゃんと一緒だといったら『はめ外し過ぎるなよ』って言われた」
「そうか、まあカラオケしてるだけなら問題ないんじゃない?」
「そうだね、翔ちゃんは歌わないの?」
「僕あんまり得意じゃないんだ。こういう場で歌うの」
「こういう場だからいいんじゃない。あ、あの曲一緒に歌おう?」
「伊織がそうしたいならそうすればいいよ」
「わ~い」

如月君と朝倉さんもうまくやっているようだ。
ちぃちゃんと翔は……。

「翔!お前らは朝まで俺達と一緒だからな!」
「朝まで歌ってるんですか!?」
「そうだ、そして朝になったら真っ直ぐ家に帰れ」
「用が済んだら帰るよ。兄は何を心配しているの?」
「ちぃの事に決まってるだろ?ちぃも知ってからじゃ遅いんだ!男は夜獣になるんだぞ!」
「ああ、そういうことね。それならもうしたよ」
「はぁ!?」

誠が立ち上がった、少なからず僕も驚いた。
翔の顔を見た感じだとちぃちゃんの言ってる事は本当らしい。

「翔!お前誰に断ってちぃに手を出した!」
「私と翔の問題でしょ!?兄が口を出す事じゃない!」
「だから兄はちぃが彼氏を作るのが不安だったんだ!まさかこんなに早くされるとは……」
「いいじゃないか、ちぃちゃんも大人になったって事だろ。さっきの発言だって以前のちぃちゃんならなかった」
「神奈まで……石原君や渡辺君ならわかってくれるよな」

誠は石原君と渡辺君に助けを求めるが……。

「まあ、相応の責任を取れる相手なら良いと思いますけど」
「あんまり兄妹の事に口出ししなかったしな」
「渡辺班には俺の敵しかいないのか!?」

誠が叫んでいる

「俺は分かるぜ誠!俺たち二人はずっと仲間だ!」

桐谷君が誠と肩を組む。

「よし、今日は朝まで飲もう!のんで絆を深めよう!」
「おうよ!」

また始まったか……。

「あの二人だけはどうしようもないな……」

呆れたカンナがこっちにやってきた。

「良いの?誠君一人にしておいて」

愛莉が聞いている。

「今更だ、好きにさせとくさ」
「瑛大も相変わらずだね。また何かしてやらないとだめかもね」

実家に帰るかな?と亜依さんは言う。

「それにしても冬夜もついに同棲の決断したか。まあ、お前たちなら大丈夫なんだろうな」
「片桐君も結婚しちゃえばいいのに……と思ったけど私達が嫌な部分見せすぎたのが原因?結婚に幻滅した」

神奈と亜依さんが言う。

「いや、逆だよ。愛莉に今年プロポーズしようか悩んだくらいだ」

僕が言うと二人が驚く。

「なんでしないの!?」

亜依さんが聞くと愛莉が答えた。

「私が言ったの、焦らなくても冬夜君が納得するまで待つよって」

結婚前提の同棲許してくださいって、冬夜君真面目にパパさんにお願いに行ったんだよって嬉しそうに言った。
その話を聞きつけた美嘉さんが言う。

「それって半分結婚決まったようなもんじゃないか!何で早く言わないんだ!」
「プロポーズしてから言おうと思っただけだよ」
「馬鹿!何度でもそう言う知らせは言うべきだ!皆今日は盛大に祝ってやろうぜ!」

美嘉さんが言うと皆が反応する。

「よし分かった!冬夜!そういう事ならこっちにこい!俺が旦那の先輩としてきっちりアドバイスしてやる!」
「そうだぞ冬夜!こういうことは最初が肝心だ!俺達が助言してやる」

誠と瑛大が言っている。

やれやれと腰を上げると愛莉が腕を掴んだ。
そして叫ぶ

「冬夜君に変な事吹き込むの止めて!どうせろくでもない事なんだから!!」
「遠坂さん、男としてやるべきことってものがあってそれを忠告するだけだから!」
「そうだよ遠坂さん。最初から舐められっぱなしじゃ男の威厳というものを保てない!」
「それが余計なことだって言ってるの!」

愛莉の機嫌が悪いみたいだ。多分無視してから揚げ食べてた方がいいんだろうな。
気づいたら両隣りにいた亜依さんとカンナがいない。

「ほう、アドバイスか?そんなに立派な旦那とは思ってなかった。すまんな。今後気をつけたいから参考に教えてくれないか?」
「最初が肝心ね。随分とご立派じゃない。私にも聞かせてくれない?気を付けるからさ~」

二人は元の席に戻っていたようだ。
その後の事はもう言わなくても分かるよね?

「やっぱりこうなるんだな?あの二人は?」

渡辺君がやってきた。

「渡辺君は何か気を付ける事ってある?」
「そうだな、冬夜が考えてる通りでいいんじゃないか?」
「と、いうと?」
「嫁さんの言う通りにして少しでもストレスを解消してやる。俺達と違って外で発散なんてできなくなるんだから」
「そうだね」
「あとは、絶対ダメだと思ったことは喧嘩してもいいから注意する事。男の威厳なんてものはそうやって作っていくものさ」

渡辺君のいうことをしっかり胸に刻む。
愛莉も美嘉さんに聞いてる。

「愛莉!甘やかすだけじゃ駄目だからな!きっちり言うべきことは言うんだ。そうじゃないと男ってものはどんどん堕落していく」
「うぅ……でも渡辺君は良い旦那さんじゃない?」
「まだ駄目だ!私の事を子供扱いしている。私もまだ駄目な主婦みたいだ」
「そんなことないよ、仕事しながら家事もこなすなんてすごいよ」
「遠坂先輩私にも言わせてください」

咲さんが来た。

「とにかく旦那の体調だけはきっちり見ないと駄目。とくに残業しだしたら気を付けて。余計なサプライズの為に無理するところは多分悠馬と同じだから」
「それは言えてるね……」

他の女性陣も愛莉に色々アドバイスしてるみたいだ。

「まあ、そういうことだ。色々言われるだろうけど余計な反発せずに受け流してやればいい」

渡辺君はそう僕に耳打ちするけど女性陣には聞こえていたらしい。

「ちょっと!?受け流すですって!聞き捨てならないわね!」

恵美さんが言う。

「みんな、旦那の事を思って言ってるのにそれってあんまりじゃないですか~?」

咲良さんが言う。

「まさか望!あなたも同じ事思ってたわけじゃないでしょうね!?」
「そ、そんな事無いよ!ありがたく聞いてるよ」

石原君は目が泳いでる。

「まあ、そういうわけだ。頑張れ」

そう言って逃げ出そうとする渡辺君!

「正志お前もそこに座れ!今の言葉は聞き捨てならないぞ!」

逃げ出すのに失敗したらしい。

「かずさん……」
「そんなことあるわけないだろ、ちゃんと言う通りにしてるよ」
「その割には相変わらず帰るの遅い日続きますね」
「そ、それは……それに週1はちゃんと花菜の相手してるだろ?」

北村さんが歌い続ける中、女性陣による指導は朝まで続いた。
でもそれでいいんだろう。
女性陣は家事に仕事に忙しい、男性陣のように帰りに遊んでくる事すら許されない。
すこしでも女性のストレスのはけ口になるのなら、少々やかましい事くらい我慢して聞いてやる。
そして休みの日にはちゃんと相手してやる。
言うは簡単だけど実践するのは難しい。
そんなことくらい僕でも分かる。
今でも愛莉の相手をしてあげられてない。
仕事に就いたら確実に愛莉を一人にさせてしまう。
その事が気がかりだった。
だからちょっとでも愛莉の不安や不満を解消する方法を探してやろう。
多分それが大事な事なんだろう。
風の行方を追いかけるように大変な事だけど。
皆も無意識のうちにそれを実践してるのだろう。
そんな皆を羨ましく思った。
怒られる男性陣を憧憬のように見ていた。
朝になると皆始発で帰ったり車で帰る。
僕達も始発のバスで帰りについた。

「う~ん」

早速愛莉が悩んでるようだ。

「どうしたの?」

愛莉に聞いてみる。

「冬夜君もああなっちゃうのかな~って不安になって」

間違っても誠達みたいにはならないよ。

「誠君達みたいにはならないのは分かってる。でも他の人のように私の事煩わしく思うようになったりするのかなって」
「そうかもね」
「うぅ……」

バスを降りると家に帰る。
家に帰るとさっとシャワーだけ浴びる。
そして愛莉が戻るのを待つ。

「あれ?冬夜君まだ起きてたの?」
「まあね」

愛莉が髪を乾かすのを待つ。
愛莉は髪を乾かし終えると僕の隣に座る。
さてと……。
愛莉の肩に手をやり抱き寄せる。

「どうしたの?眠くないの?」

愛莉が聞いてくるとにこりと笑って答える。

「今から練習しとかないとな。愛莉の不満を解消する練習」
「そう言って冬夜君が甘えたいだけなんでしょう?本当にしょうがないんだから~」
「かもね」
「じゃあね~とりあえずベッドに行こう?」
「わかった」

僕達はベッドに入る。
愛莉は僕にしがみ付いてる。

「冬夜君は私に不満や不安があると思ってるんでしょ?」
「無いとは思ってない」
「私今幸せで胸がいっぱいなんだよ。幸せ過ぎて死んじゃうんじゃないかってくらい」

死なれたら困るぞ愛莉。

「これから冬夜君が私をもっと幸せにしてくれる。そう思うだけで不安や不満なんてもってるわけないでしょ?」
「そうか、そうだってね」
「今もこうやって冬夜君が私を気遣ってくれてる。その気持ちだけで嬉しいの。……でも一つだけ不安かな?」
「何?」
「う~ん、疲れてるのにそうやって無理するところが不安。冬夜君過労死しちゃうよ」
「それは大変だな」
「だから休む時は休もう。起きたら一杯構ってもらうから」
「わかったよ」
「うん、じゃあおやすみ」

そう言って愛莉は眠りについた。
本当に些細な事に喜びを感じる健気な子。
だからこそ気を配ってやらないといけない。
少々の事では自分から訴えてこないから僕が気を使ってやらないと。
初めてであった憧れの君が今隣で寝ていてそして将来を約束し合った。
決して気まぐれな風に流されることのないしっかりと根付いている。
僕も愛莉の中で憧れの君でいられているんだろうか?
そんな事を考えながら眠りについていた。
これからの未来を夢見ながら。
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