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5thSEASON
愛のこもれび
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(1)
「冬夜君おはよう。朝食の時間だよ?」
「おはよう愛莉」
誠が帰ってきてから一夜が明けた。
誠はその足で両親に頭を下げ僕達やちぃちゃんの口添えもあり、そしてお金を返したことで解決した。
誠はその日寮を出て家に帰ったらしい。
気まずい空気がまだ残っているけど多分二人は大丈夫だろう。
あとは、揺すったグループをどうするかだ。
それも恵美さんの調査が入った以上ただじゃ置かないだろう。
僕が誠にしてやれることはやった。
あとは誠とカンナが解決していく問題だ。
僕が今やらなきゃいけないのは愛莉の相手をしてやること。
「冬夜君ご飯冷めちゃうよ!」
「ああ、今行くよ」
愛莉とダイニングに行ってご飯を食べる。
ご飯を食べると支度をしてコーヒーを持って部屋に戻る。
愛莉と二人並んでコーヒーを飲む。
愛莉は昨日からニットワンピを着ている。
そんな恰好で体育座りして両手でカフェオレを口にしてる愛莉を見てると愛でたくもなる。
袖から柚木だけを出して両手でマグカップを持って飲んでいる姿。
そしてミニスカートから見える愛莉の太もも。
劣情を催さない僕を褒めて欲しい。
とはいえやっぱり愛莉は可愛い。
そんな愛莉の肩を抱く。
「困った旦那様ですね。朝から甘えん坊なんだから」
「愛莉が可愛くて仕方ないんだからしょうがないだろ?」
「……えへへ~」
愛莉は嬉しそに笑ってる。
「誠君達大丈夫かな?」
「昨夜和解したんだし大丈夫だろ?」
「だといいんだけど……」
「何か心配事でもあるの?」
「う~ん冬夜君にはわかってもらえないかな~」
「?」
「誠君下村さんって人に気があるんじゃないかって不安感じない?」
「顔も見たくないって人にその気になるわけないだろ?」
「でも、一度は一緒に子供育てようって言った人だよ?」
愛莉は誠が心変わりしてるんじゃないか?そういう心配をしているらしい。
一方で一度は別れを言った誠が神奈とより戻せるのか?そういう心配があったらしい。
「それは無いから大丈夫」
僕は言う。
「どうしてそう言えるの?」
愛莉が聞く。
「愛莉が言っただろ?大事なものを失って……身も心もボロボロで……けれどそれでも決して捨てる事が出来ない想いがあるなら、誰が何と言おうとそれだけが誠の唯一の真実だって」
「うん」
「一生をカンナに賭して残りの人生を完遂することが償いだって」
「うん」
「誠の心には届いたよ。しっかりと」
「そうなの?」
僕は笑って頷いた。
愛莉は回答に満足したようだ。
「冬夜君が言うなら大丈夫だね」
「そうだね、そろそろ準備しよう?時間だよ」
「は~い」
愛莉はマグカップを持って部屋を出た。僕も着替える。
愛莉は部屋に戻ってくると着替えて化粧を始める。
そんな愛莉を見ながらテレビを見ていた。
愛莉から漂ってくるほのかな香り……。
ああ、早速使ってくれてるんだね。
化粧が終えた頃を見計らって愛莉に後ろから抱きつく。
「あ、だめだったら~化粧終えたばかりなんだよ~」
「ありがとう、香水似合ってるよ」
「えへへ~」
愛莉を解放すると愛莉を連れて家を出る。
そして学校に向かった。
(2)
朝起きると誠がいない。
まさかまた家出か!?
寝室を出ると誠がキッチンに立っていた。
黙々と朝食を作っている。
誠は私にきがついたのか「おはよう」と一言言った。
「おはよう。何してるんだ?」
「朝食作ってる」
そんなの見ればわかるよ。
なんでそんなことしてるんだ?
「ちょうど今出来たところだ。座れよ」
誠の表情が暗い。
誠の左手の薬指には指輪がもどっている。
離婚届はシュレッダーにかけた。
朝食を食べる。
会話がない。気まずい空気が流れている。
どうにかしないと。テレビをつけた。朝の定番番組が流れている。
誠はだまったままだ。
私が話かけても「うん」とか「ああ」とかしか答えない。
朝食を終えると誠が食器を洗い始める。
「神奈そろそろ学校行く準備しなくていいのか?」
「ああ、そうだな」
私は支度をする。
誠は食器洗いが終ると、寝室に戻って準備を始める。
その間も無言だった。
何を考えているのか分からない。
まだ思い詰めてるのか?
何がお前をそこまで責める?
反省するのは悪い事じゃないが、いつまでも引きずってるのは反省じゃないぞ?
準備を終えると誠は「じゃあ、朝練があるから」と家を出ていく。
そんな誠を私は抱きとめていた。
だが誠は言う。
「今はそんな気分じゃないんだ……神奈に申し訳ない気持ちで、どうしたら神奈に償えるか?その事で一杯で」
「それなら昨夜愛莉が答えを出してくれただろ?」
「残りの人生全部を神奈にくれてやれって事だろ?わかってるからこうやって」
「全然わかってないじゃないかこの馬鹿!」
私は誠に怒鳴りつけていた。
誠には私の言葉は響いてくれないのか?
「お前が私に対して反省してるのはわかってる。私もお前の事がまだ許せてるわけじゃない。でもこんな生活を続けたくて言ったわけじゃない」
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
「お前の気持ちが本物なのは分かってる。でもやり方は間違ってる。お前のやりかたは私から逃げてるだけど。もっと私を見て欲しい」
私の気持ちに気づいて欲しい。そう訴えていた。
「もう次は無い、そう考えると怖いんだ。神奈を失うことが怖いんだ」
「……私はお前が無実なんだって知った時泣いた。お前を信じていいんだって泣いてた。私は誠を信じてる。誠は私を信じてくれないのか?」
いつだって、どんな時だって、もうダメだ全てお終いだってなってた時も、何だった?誰だった?そんなんでも何とかもう一度って思って進めたのは誠を信じてるから誠に信じられてるから。
ただ一人誠の為ならなんだってできる気がする。
今だってそんなに自信は無い、踏み出せない事だってある。もし間違っていたり繰り返したらどうしようって思う時もある。
選ばないだけなら不安は無い。だけど変わることもない。
誠と一緒に変わっていこう。二人でもう一度歩きなおそう。
また明日って笑顔で言える誠がいてくれるだけで嬉しいんだ。
誠だって自分で自分の事を疑ったら月も太陽も輝けない。
伸ばしたその手の先にある光の向こうに願ってる未来があるから。
今も聴こえてる、感じてる。泣いたままの誠が伝わってくる。
届いてるから、響いてるから私はありのままの誠の悔いを抱きしめてみせる。
だからそんなに自分を責めるな、ありのままの誠でいてくれ。
私は思いの限りを誠に訴えた。
「自分をそんなに責めるな、お前の気持ちは十分伝わったから。それだけで十分だ。お前がいてくれる。それだけで十分だ」
「もう行くよ……」
「誠!」
伝わらないのか?私の安っぽい言葉じゃ誠に響いてくれないのか?
「遅れるから、続きはまた帰ってからな?神奈も気をつけてな、事故とか気をつけろよ」
そう言って誠は出ていった。
だけど最後に誠は笑ってくれた。
それだけが私にとって救いだった。
(3)
それから10日が過ぎた。
昼休みになると学食に皆が集まる。
恵美さんがテーブルの上に写真を並べる。
それらは皆お金を巻き上げられてる写真だった。
「動画も必要ならみせるけど?」
恵美さんはそう言てタブレットを用意する。
「そこまでしなくても十分だよ。もう現場を押さえる準備は出来てるんでしょ?」
僕が聞くと恵美さんは答えた。
「片桐君は何でもお見通しね。ええ、大丈夫。今日の15時私立大の第2体育館裏で行われるみたい」
ちょっと遠いな。
「向かうのは私と咲良と亜依と誠君と神奈でいいわね」
「私もいく!」
愛莉が言い出した。
「そんな人許せない!絶対許さない!」
愛莉はかなり怒っているようだ。
と、なると僕も行く必要があるか……。
「美嘉さんは仕事があるから無理って言ってた」
恵美さんが言うと渡辺君も申し訳なさそうに言った。
「俺も仕事があるんだ。すまない。冬夜が行ってくれないか?」
「わかった」
「他に行きたい人は?この際大勢で言って袋叩きにしてやりましょう」
「私もいきたんだけどバイトあるから」
咲さんが言う。
「まあ今日いきなりじゃ無理よね」
恵美さんが言う。
「これだけ人数がいれば十分でしょ」
僕が言う。
「絶対許さねえ。誠をあんな目に合わせた連中徹底的にお礼しなきゃな」
神奈はそう言いながら誠にメッセージを送っている。
まあ、被害者だしね。
「誠君はあれからどうなの?」
愛莉がが聞いてた。
「普通だよ。ちょっと最初はぎくしゃくしてたけど。あ、でも前より優しくなったかな。家事もしてくれるようになったし」
「よかったね~」
「トーヤには感謝してるよ。今回は本当に助けられた」
神奈が言う。これで誠に貸しは作ったかな?
じゃあ、授業が終わったら皆で行きましょうか。
授業が終わると私立大に向かった。
車を駐車場に止めると大学に入る。
知らない大学に入るのは初めてだ。
「冬夜」
誠が来た。
「咲良さんと瑛大が見張ってる。もう取引は始まってる」
誠が言う。
「皆急ぎましょう」
恵美さんが言うと誠に案内されて取引場所に向かった。
咲良さんと桐谷君が物陰に隠れて見張ってる。
「あれが、下村さん」
誠が言った。
黒髪のロングヘアーでガムを膨らませながら、デニムのパンツをはいて。カーデガンを羽織っている。
そして取り巻きらしいギャル風の女性が男を取り囲んでいる。
今回の被害者か。
「なんだこのはした金は!全然足りねーじゃねーか!?」
「残りの金は分割して払います!バイトして払うんで今日はこれで許してください」
「親に頼めばそのくらい払ってくれるだろ!お前んち金持ちなんだろ?」
「母さんに知られたら怒られる!」
「有栖だって時間がねえーんだよ。中絶できなくなってからじゃ遅いんだぞ!」
「その時は一緒に子供育てるから」
「お前みたいなやつと一緒になるのは嫌だって言ってるんだよ。分かれよそのくらい!」
「じゃあ、どうすれば」
「親にばれるとまずいならやることはひとつしかねーだろ?」
「なんですかそれは?」
「サラ金で借りてこい!200万くらいすぐ貸してくれるよ」
「ちょっと金額増えてないですか?」
「利息がついたんだよ!」
「そんな……」
その間下村さんは何もいわない。ただガムを噛んでいるだけ。
あとから深雪さんが来た。
「病院良いの?」
「ちょっと休み貰って来た。私からも言いたい事あるし」
そうして深雪さんも様子を見てる。
「じゃあ、今からすぐに借りに行くぞ!」
「割のいいバイト探してやるよ!」
「どんな仕事ですか?」
「借金の取り立てだよ」
「そんなの無理です」
「何でも無理無理ってそんなの通じると思ってるのかこらぁ!」
「ひぃっ」
半分暴力団みたいな言い草だ。
ぞろぞろとこっちにやってくる。
僕達が彼女たちの前に立ちふさがる。
「なんだおまえら!?」
ギャル風の女が言った。
「あ、多田先輩!」
下村さんが気づいたようだ。
「多田?ああ、金持ってきたのか?」
ギャル風の女が言う。
「用意する必要のないもの持ってくるはずないだろ!」
神奈が言った。
「他人の旦那捕まえて良くも好き放題やってくれたな……お前ら覚悟はできてるんだろうな?」
「お前が多田の嫁か?ばらしたのか?こいつにこの有栖は……」
「薬盛ってホテルに連れ込んだんだろうが。ネタは上がってんだよ!」
「どこにそんな証拠があるんだよ」
「それはこっちの台詞ね?あなたが妊娠してるって証拠はあるの?」
恵美さんが言う。
「なんだと!?」
「ネタは上がってるって言っただろ!?少なくとも20日間で15人の男の子供を孕んでる。大したたまだな?」
神奈が言う。
「女性と言う弱者の立場を利用しての脅迫……同じ女性として許せない!」
愛莉が言う
「ちょっとひどい話ですね~。……あんた達みたいなのがいるから泣き寝入りしなきゃいけない女性もでるのよ」
咲良さんが言う。
「私達に手を出したのが運の尽きね。覚悟してもらうわよ」
亜依さんが言う。
だが、相手には余裕があるみたいだ。
そら、手札を見せて見ろ。
彼女たちは一枚の写真を出した。
それは誠と下村さんが裸で寝ている写真。
「これ週刊誌にばらまいたらスキャンダルだよな?嫁さんだってだまってないんじゃないのか?」
誠は俯いている。
自分のしでかしたことに後悔してるのか?
神奈は怒りで全身を震わせている。
最初からそれが目的だったんだろう?
「そんな事だろうと思ったよ」
僕が言った。
皆の注目が集まる。
「言ったろ?ネタは上がってるって?恵美さん」
僕が言うと恵美さんがタブレットを操作し始めた。
それにはしっかり、彼女が誠が飲んでいたビールに何かを入れてる画像が映ってる。
誠は当事者で冷静じゃない。
だから公生に頼んだ。
繰り返し言うけど誠の意識ははっきりしていた。
薬を盛られるまでは。
だから店を特定するまでもなかった。
あとは言うまでもないね。
「この動画送り付けてもいいよ?薬事法違反、暴行罪、傷害罪、強制わいせつ罪。セットでプレゼントしてあげる」
「そんなの証拠にならねーよ」
「証拠になるのかどうかは警察が判断することだろ?」
「言っとくけど私のパパさん警察官なんだから」
愛莉が言った。
「その写真に意味は無いよ。見た感じ誰かに撮ってもらってる写真だ。それは眠ってる誠と下村さんともう一人第3者がいたことを意味する」
「ちなみに~さっきのやり取り全部撮影済みですよ~。……恐喝罪も熨斗つけてプレゼントしてあげるわ」
咲良さんが言う。
「まだ足りないようなら今すぐ引きずってでも病院来てもらって検査してあげるわよ。あんた達のしてることは女性の地位を落しめる侮辱行為以外の何物でもないわ。同じ女性として見過ごせない」
「言っとくけど君たちが思ってるほど誠にダメージは無いよ?さっきも言ったけど第3者がいることが明白じゃないか。誰かに嵌められたって誰でも分かる」
「なんだと!?」
「誠の証言はとった。そっちは証言できるの?薬飲ませておいて誠に強姦されましたって」
「写真が効果ないかどうかは試せばわかる。その覚悟はできてるのね?」
下村さんが口を開いた。
誠は口を閉ざしている。
そんな誠を見てフッと笑った。
「やっぱり君達は頭が悪いね。そんなに刑務所に行きたいの?君達のやってる事は恐喝だよ?しかもでっち上げのでたらめの証拠を作り上げて」
「話にならないわね。私はこの写真を週刊誌に送る」
「ご自由に。100歩譲ってもそれだけでは慰謝料は請求できない。どう見ても和姦だ。強姦罪は成立しない……それに」
「それに?」
「こっちが手札を切ればそっちのその写真の事実は180度変わる!何なら他の被害者の声も聞かせようか?」
「てめぇ調子に乗ってんじゃねーぞ!」
女性が僕につかみかかろうとするが愛莉とカンナが女性の肩を掴んだ。
「暴行罪の現行犯で逮捕されたいか?それも面倒だ。今の私の虫の居所は非常に悪い。このまま叩きのめしてやる」
「私も神奈に同感。冬夜君には指一本触れさせないよ。私も今すっごいイライラしてるんだから!」
カンナと愛莉はやる気のようだ。
下村さんがガムを吐き捨てる。
何人かの女性集団が集まってきた。
「こいつら一応格闘嗜んでるから」
下村さんの口調が変わった。
僕は余裕の笑みを浮かべる。
「桐谷君はさがってて」
女性達が襲い掛かる。
だが、女性達には誤算があった。
銃を持った男相手に立ち回った愛莉たちに嗜んだ程度の武術が通じるわけがない。
そして今日の女性陣は皆機嫌が悪かった。
怪我人を作り出すだけに終わった。
下村さんを残して皆倒れる。
「女性だから~お腹と顔だけは傷つけないであげましたよ~。……感謝しなさい」
咲良さんが言う。
「さてと……この下村って女はこの程度じゃすませねーよな」
神奈が言う。
「神奈に同感……骨の一本や二本覚悟してもらわないと気がすまない」
亜依さんが言う。
「くそっ!」
下村さんがスマホを地面にたたきつける。
僕はそれを拾うと中身を確認する。
写真があった。やはりスマホで撮っていたか。
僕はその写真を全部削除する。
そしてそのスマホを誠に渡す。
「ここからは誠の出番だぞ?」
「?」
誠は分かっていないらしい。
「誠の得意分野だろ?」
「あ、なるほど」
誠は早速持っていたノートPCをスマホに接続して操作を始める。
僕達のやることはまだある。
「そういうわけで、こそこそ隠れてないで出てきたらどう?薄汚い気配くらい僕でも読めるよ」
男共がぞろぞろ出てきた。
カメラを持っているもの、金属バットを持ってる物、色々いる。
裏を返せばその程度の小者しかいない。
男が合図する。全員襲い掛かる。
やはり小者だった。
倒れた男の山が出来る。
男のカメラを回収する。
そこにも画像があった。これが多分本命だろう。
躊躇わずに削除する。
余裕を見せていた下村さんの影は無く、ただ怯えている女性が屈みこんでいた。
「これで君の手札は全部刈り取った。チェックメイトだ」
僕は女性を見下ろして宣言する。
「折角うまくいってたのに」
「君、素人だね。今回は見逃してあげる。二度とこんな馬鹿な真似はしない方がいい」
「ちょっと何言ってんだトーヤ!?」
「逃がすってわけ!?絶対にだめ!」
「冬夜君何考えてるの!?」
カンナと亜依さんと愛莉が言う。
「君、可愛いね」
ぽかっ
「冬夜君お嫁さんの前でまたナンパ!?」
「ち、違うって……可愛いから脅されたんだろ?」
下村さんは黙ってうなずく。
元々大人しい性格だったらしい、それに可愛い。そこに奴らは目をつけたんだろう。
騙して仲間に引き込んでノルマを作って……。何人もの男を騙してきたんだろう。
誠もそんな男の一人だ。
ずるずると引き込まれて足を洗えなくなっていた。
彼女がすべてを話す頃には皆黙ってしまっていた。
「冬夜、捕獲完了だ。サーバー丸ごと乗っ取った。全データ削除してやったぜ!」
「お疲れ誠」
「で、どうするんだ彼女?」
「それは彼女が決めるよ」
下村さんは立ち上がる。
「冬夜君、どうする?なんか彼女も被害者に見えてしまって」
「私……聞かなきゃよかった」
「トーヤに任せるよ、渡辺もお前に任せるって言ってたしな」
「……どうする下村さん?」
「……放っといてくれ!」
下村さんはそう叫んだ。
そして走りだす。
「お前たちみたいなおせっかいで仲良しこよしの連中が一番むかつくんだよ!!気持ち悪い!!」
「なんだと!?」
カンナが言う。
カンナを押さえる。
そして僕は言う。
「君が僕達をどう思おうと勝手だ。君には君の価値観があるんだろう。ただ再び僕達の敵に回るなら次は容赦はしない」
「……精々仲良しこよしで楽しんでろ!……私はもう二度と戻れない」
そう言って彼女は去って行った。
「あれでよかったの冬夜君?」
「さあね……。ただこっちの考えを押し付けるだけも悪いだろ?自分で解決法を見出さなきゃ」
僕はそう言った。
「さて、青い鳥に戻ろうか?お腹もすいたし」
僕が言うとみんなそれぞれ去っていった
「俺部活あるから」
「俺バイト」
「私達もバイトあるから」
「望も帰ってくる頃ね。私も帰らないと」
「私も春樹の夕食準備しなきゃ!」
残ったのは僕と愛莉だけだった。
「せっかくだから晩御飯食べて帰ろうか?」
「うん!」
そして僕達は帰路に就いた。
(4)
部活から帰ると飯食ってバイトだ。
家に帰ると良い匂いが立ち込めてる。
「お帰り誠」
神奈がそう言ってくれた。
「どうした?誠」
俺は涙していた。
まだ帰る場所があったんだって。
神奈を抱きしめていた。
「調理中は止めろって言っただろこの馬鹿」
「今だけ甘えさせてくれ……」
神奈は俺の背中に手を回す。
「ったく、世話の焼ける夫だな。もう二度とするなよ」
「わかってる」
その日はちょっとしたご馳走だった。
「なんか元気づける方法ないかなと思ってな、奮発してみた」
「ありがとう」
「そんなしけた顔して食うな。酒はだめだからジュースで我慢しろな?」
「もう酒は止めるよ」
「え?」
「俺が酒を飲むとろくなことにならない」
「そんな事言ったら私もそうだ、愚痴はいたりガミガミ言ったり……本当は酒のせいだけじゃないんだろ?」
「神奈?」
「酒のせいにして思ってたこと発散したいだけなんだろ?石原が言ってただろ、どうせ飲むなら楽しい酒をって」
そうだな……。
食事が終ると、片づけを手伝った。
そして着替えてバイトに行く。
「じゃあ、行ってくる」
「まっすぐ帰って来いよ。今夜サービスしてやる」
「うぉ!マジか!?」
「……やっぱり変わってないなお前は」
「あ、ごめん」
「そんな誠が好きなんだからいいよ」
「……行ってくる」
神奈はずっと俺を見送っていてくれた。
(5)
ご飯を食べ終えると僕達は家に帰って、お風呂に入って部屋で寛いでいた。
愛莉はドライヤーで髪を乾かしている。
乾かし終えるとキッチンに向かう。
忙しい子だな。
待っていると酎ハイを一缶ずつもってくる。
愛莉は笑っているけど、まだ下村さんのことを引きずっているんだろう。
愛莉の肩を抱く。
「まだ気にしてるの?」
「そりゃ、気になるよ。なんか可哀そうに思えてきて」
本当はもどりたいんじゃないのか?と愛莉は言う。
「そうだろうね?」
「じゃあ、どうして招待してあげなかったの?」
「彼女にその意思がなかったから」
「うぅ……またわかんない事言ってる」
「他人にはそれぞれ正義があって争いがあるのは仕方ないんだ。僕達の正義が彼女を傷つけているかもしれない」
「私達が間違っているって事?」
「人それぞれ価値観があるってことだよ。彼女なりの何か理由があるのかもしれない」
「なるほどね~」
愛莉はそう言いながら帳簿をつけている。
下村さんの道を決めるのは下村さんの意思だ。
それに僕達が色々とやかく言う権利は無い。
僕達僕達の価値観を貫くだけ。
例え誰かの価値観を傷つけることになっても。
もちろん傷つけないのが一番だ。
でも僕達を傷つけようとするなら、僕達にとって敵になるというのなら。
僕は一切の手心を加えるつもりは無い。
本当は手心を加えてるのかもしれないけど。
僕の判断が迷った時にこのグループが壊れるのなら、僕は非情に徹する。
僕は両手を見る。
この手は既に汚れている。
だけどそれでいい。
渡辺君がリーダーだ。渡辺君の代わりに手を染めるのが僕の役割。
愛莉は帳簿をつけ終わったのか、テレビを見て笑っている。
愛莉の好きなタレントが出ているからだろう。
愛莉の隣に座る。
「ねえねえ、冬夜君見て面白いんだよ~」
愛莉とその番組を楽しむ。
お互いに肩を抱き寄せながら。
それはまるで愛の木洩れ日のように。
「冬夜君おはよう。朝食の時間だよ?」
「おはよう愛莉」
誠が帰ってきてから一夜が明けた。
誠はその足で両親に頭を下げ僕達やちぃちゃんの口添えもあり、そしてお金を返したことで解決した。
誠はその日寮を出て家に帰ったらしい。
気まずい空気がまだ残っているけど多分二人は大丈夫だろう。
あとは、揺すったグループをどうするかだ。
それも恵美さんの調査が入った以上ただじゃ置かないだろう。
僕が誠にしてやれることはやった。
あとは誠とカンナが解決していく問題だ。
僕が今やらなきゃいけないのは愛莉の相手をしてやること。
「冬夜君ご飯冷めちゃうよ!」
「ああ、今行くよ」
愛莉とダイニングに行ってご飯を食べる。
ご飯を食べると支度をしてコーヒーを持って部屋に戻る。
愛莉と二人並んでコーヒーを飲む。
愛莉は昨日からニットワンピを着ている。
そんな恰好で体育座りして両手でカフェオレを口にしてる愛莉を見てると愛でたくもなる。
袖から柚木だけを出して両手でマグカップを持って飲んでいる姿。
そしてミニスカートから見える愛莉の太もも。
劣情を催さない僕を褒めて欲しい。
とはいえやっぱり愛莉は可愛い。
そんな愛莉の肩を抱く。
「困った旦那様ですね。朝から甘えん坊なんだから」
「愛莉が可愛くて仕方ないんだからしょうがないだろ?」
「……えへへ~」
愛莉は嬉しそに笑ってる。
「誠君達大丈夫かな?」
「昨夜和解したんだし大丈夫だろ?」
「だといいんだけど……」
「何か心配事でもあるの?」
「う~ん冬夜君にはわかってもらえないかな~」
「?」
「誠君下村さんって人に気があるんじゃないかって不安感じない?」
「顔も見たくないって人にその気になるわけないだろ?」
「でも、一度は一緒に子供育てようって言った人だよ?」
愛莉は誠が心変わりしてるんじゃないか?そういう心配をしているらしい。
一方で一度は別れを言った誠が神奈とより戻せるのか?そういう心配があったらしい。
「それは無いから大丈夫」
僕は言う。
「どうしてそう言えるの?」
愛莉が聞く。
「愛莉が言っただろ?大事なものを失って……身も心もボロボロで……けれどそれでも決して捨てる事が出来ない想いがあるなら、誰が何と言おうとそれだけが誠の唯一の真実だって」
「うん」
「一生をカンナに賭して残りの人生を完遂することが償いだって」
「うん」
「誠の心には届いたよ。しっかりと」
「そうなの?」
僕は笑って頷いた。
愛莉は回答に満足したようだ。
「冬夜君が言うなら大丈夫だね」
「そうだね、そろそろ準備しよう?時間だよ」
「は~い」
愛莉はマグカップを持って部屋を出た。僕も着替える。
愛莉は部屋に戻ってくると着替えて化粧を始める。
そんな愛莉を見ながらテレビを見ていた。
愛莉から漂ってくるほのかな香り……。
ああ、早速使ってくれてるんだね。
化粧が終えた頃を見計らって愛莉に後ろから抱きつく。
「あ、だめだったら~化粧終えたばかりなんだよ~」
「ありがとう、香水似合ってるよ」
「えへへ~」
愛莉を解放すると愛莉を連れて家を出る。
そして学校に向かった。
(2)
朝起きると誠がいない。
まさかまた家出か!?
寝室を出ると誠がキッチンに立っていた。
黙々と朝食を作っている。
誠は私にきがついたのか「おはよう」と一言言った。
「おはよう。何してるんだ?」
「朝食作ってる」
そんなの見ればわかるよ。
なんでそんなことしてるんだ?
「ちょうど今出来たところだ。座れよ」
誠の表情が暗い。
誠の左手の薬指には指輪がもどっている。
離婚届はシュレッダーにかけた。
朝食を食べる。
会話がない。気まずい空気が流れている。
どうにかしないと。テレビをつけた。朝の定番番組が流れている。
誠はだまったままだ。
私が話かけても「うん」とか「ああ」とかしか答えない。
朝食を終えると誠が食器を洗い始める。
「神奈そろそろ学校行く準備しなくていいのか?」
「ああ、そうだな」
私は支度をする。
誠は食器洗いが終ると、寝室に戻って準備を始める。
その間も無言だった。
何を考えているのか分からない。
まだ思い詰めてるのか?
何がお前をそこまで責める?
反省するのは悪い事じゃないが、いつまでも引きずってるのは反省じゃないぞ?
準備を終えると誠は「じゃあ、朝練があるから」と家を出ていく。
そんな誠を私は抱きとめていた。
だが誠は言う。
「今はそんな気分じゃないんだ……神奈に申し訳ない気持ちで、どうしたら神奈に償えるか?その事で一杯で」
「それなら昨夜愛莉が答えを出してくれただろ?」
「残りの人生全部を神奈にくれてやれって事だろ?わかってるからこうやって」
「全然わかってないじゃないかこの馬鹿!」
私は誠に怒鳴りつけていた。
誠には私の言葉は響いてくれないのか?
「お前が私に対して反省してるのはわかってる。私もお前の事がまだ許せてるわけじゃない。でもこんな生活を続けたくて言ったわけじゃない」
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
「お前の気持ちが本物なのは分かってる。でもやり方は間違ってる。お前のやりかたは私から逃げてるだけど。もっと私を見て欲しい」
私の気持ちに気づいて欲しい。そう訴えていた。
「もう次は無い、そう考えると怖いんだ。神奈を失うことが怖いんだ」
「……私はお前が無実なんだって知った時泣いた。お前を信じていいんだって泣いてた。私は誠を信じてる。誠は私を信じてくれないのか?」
いつだって、どんな時だって、もうダメだ全てお終いだってなってた時も、何だった?誰だった?そんなんでも何とかもう一度って思って進めたのは誠を信じてるから誠に信じられてるから。
ただ一人誠の為ならなんだってできる気がする。
今だってそんなに自信は無い、踏み出せない事だってある。もし間違っていたり繰り返したらどうしようって思う時もある。
選ばないだけなら不安は無い。だけど変わることもない。
誠と一緒に変わっていこう。二人でもう一度歩きなおそう。
また明日って笑顔で言える誠がいてくれるだけで嬉しいんだ。
誠だって自分で自分の事を疑ったら月も太陽も輝けない。
伸ばしたその手の先にある光の向こうに願ってる未来があるから。
今も聴こえてる、感じてる。泣いたままの誠が伝わってくる。
届いてるから、響いてるから私はありのままの誠の悔いを抱きしめてみせる。
だからそんなに自分を責めるな、ありのままの誠でいてくれ。
私は思いの限りを誠に訴えた。
「自分をそんなに責めるな、お前の気持ちは十分伝わったから。それだけで十分だ。お前がいてくれる。それだけで十分だ」
「もう行くよ……」
「誠!」
伝わらないのか?私の安っぽい言葉じゃ誠に響いてくれないのか?
「遅れるから、続きはまた帰ってからな?神奈も気をつけてな、事故とか気をつけろよ」
そう言って誠は出ていった。
だけど最後に誠は笑ってくれた。
それだけが私にとって救いだった。
(3)
それから10日が過ぎた。
昼休みになると学食に皆が集まる。
恵美さんがテーブルの上に写真を並べる。
それらは皆お金を巻き上げられてる写真だった。
「動画も必要ならみせるけど?」
恵美さんはそう言てタブレットを用意する。
「そこまでしなくても十分だよ。もう現場を押さえる準備は出来てるんでしょ?」
僕が聞くと恵美さんは答えた。
「片桐君は何でもお見通しね。ええ、大丈夫。今日の15時私立大の第2体育館裏で行われるみたい」
ちょっと遠いな。
「向かうのは私と咲良と亜依と誠君と神奈でいいわね」
「私もいく!」
愛莉が言い出した。
「そんな人許せない!絶対許さない!」
愛莉はかなり怒っているようだ。
と、なると僕も行く必要があるか……。
「美嘉さんは仕事があるから無理って言ってた」
恵美さんが言うと渡辺君も申し訳なさそうに言った。
「俺も仕事があるんだ。すまない。冬夜が行ってくれないか?」
「わかった」
「他に行きたい人は?この際大勢で言って袋叩きにしてやりましょう」
「私もいきたんだけどバイトあるから」
咲さんが言う。
「まあ今日いきなりじゃ無理よね」
恵美さんが言う。
「これだけ人数がいれば十分でしょ」
僕が言う。
「絶対許さねえ。誠をあんな目に合わせた連中徹底的にお礼しなきゃな」
神奈はそう言いながら誠にメッセージを送っている。
まあ、被害者だしね。
「誠君はあれからどうなの?」
愛莉がが聞いてた。
「普通だよ。ちょっと最初はぎくしゃくしてたけど。あ、でも前より優しくなったかな。家事もしてくれるようになったし」
「よかったね~」
「トーヤには感謝してるよ。今回は本当に助けられた」
神奈が言う。これで誠に貸しは作ったかな?
じゃあ、授業が終わったら皆で行きましょうか。
授業が終わると私立大に向かった。
車を駐車場に止めると大学に入る。
知らない大学に入るのは初めてだ。
「冬夜」
誠が来た。
「咲良さんと瑛大が見張ってる。もう取引は始まってる」
誠が言う。
「皆急ぎましょう」
恵美さんが言うと誠に案内されて取引場所に向かった。
咲良さんと桐谷君が物陰に隠れて見張ってる。
「あれが、下村さん」
誠が言った。
黒髪のロングヘアーでガムを膨らませながら、デニムのパンツをはいて。カーデガンを羽織っている。
そして取り巻きらしいギャル風の女性が男を取り囲んでいる。
今回の被害者か。
「なんだこのはした金は!全然足りねーじゃねーか!?」
「残りの金は分割して払います!バイトして払うんで今日はこれで許してください」
「親に頼めばそのくらい払ってくれるだろ!お前んち金持ちなんだろ?」
「母さんに知られたら怒られる!」
「有栖だって時間がねえーんだよ。中絶できなくなってからじゃ遅いんだぞ!」
「その時は一緒に子供育てるから」
「お前みたいなやつと一緒になるのは嫌だって言ってるんだよ。分かれよそのくらい!」
「じゃあ、どうすれば」
「親にばれるとまずいならやることはひとつしかねーだろ?」
「なんですかそれは?」
「サラ金で借りてこい!200万くらいすぐ貸してくれるよ」
「ちょっと金額増えてないですか?」
「利息がついたんだよ!」
「そんな……」
その間下村さんは何もいわない。ただガムを噛んでいるだけ。
あとから深雪さんが来た。
「病院良いの?」
「ちょっと休み貰って来た。私からも言いたい事あるし」
そうして深雪さんも様子を見てる。
「じゃあ、今からすぐに借りに行くぞ!」
「割のいいバイト探してやるよ!」
「どんな仕事ですか?」
「借金の取り立てだよ」
「そんなの無理です」
「何でも無理無理ってそんなの通じると思ってるのかこらぁ!」
「ひぃっ」
半分暴力団みたいな言い草だ。
ぞろぞろとこっちにやってくる。
僕達が彼女たちの前に立ちふさがる。
「なんだおまえら!?」
ギャル風の女が言った。
「あ、多田先輩!」
下村さんが気づいたようだ。
「多田?ああ、金持ってきたのか?」
ギャル風の女が言う。
「用意する必要のないもの持ってくるはずないだろ!」
神奈が言った。
「他人の旦那捕まえて良くも好き放題やってくれたな……お前ら覚悟はできてるんだろうな?」
「お前が多田の嫁か?ばらしたのか?こいつにこの有栖は……」
「薬盛ってホテルに連れ込んだんだろうが。ネタは上がってんだよ!」
「どこにそんな証拠があるんだよ」
「それはこっちの台詞ね?あなたが妊娠してるって証拠はあるの?」
恵美さんが言う。
「なんだと!?」
「ネタは上がってるって言っただろ!?少なくとも20日間で15人の男の子供を孕んでる。大したたまだな?」
神奈が言う。
「女性と言う弱者の立場を利用しての脅迫……同じ女性として許せない!」
愛莉が言う
「ちょっとひどい話ですね~。……あんた達みたいなのがいるから泣き寝入りしなきゃいけない女性もでるのよ」
咲良さんが言う。
「私達に手を出したのが運の尽きね。覚悟してもらうわよ」
亜依さんが言う。
だが、相手には余裕があるみたいだ。
そら、手札を見せて見ろ。
彼女たちは一枚の写真を出した。
それは誠と下村さんが裸で寝ている写真。
「これ週刊誌にばらまいたらスキャンダルだよな?嫁さんだってだまってないんじゃないのか?」
誠は俯いている。
自分のしでかしたことに後悔してるのか?
神奈は怒りで全身を震わせている。
最初からそれが目的だったんだろう?
「そんな事だろうと思ったよ」
僕が言った。
皆の注目が集まる。
「言ったろ?ネタは上がってるって?恵美さん」
僕が言うと恵美さんがタブレットを操作し始めた。
それにはしっかり、彼女が誠が飲んでいたビールに何かを入れてる画像が映ってる。
誠は当事者で冷静じゃない。
だから公生に頼んだ。
繰り返し言うけど誠の意識ははっきりしていた。
薬を盛られるまでは。
だから店を特定するまでもなかった。
あとは言うまでもないね。
「この動画送り付けてもいいよ?薬事法違反、暴行罪、傷害罪、強制わいせつ罪。セットでプレゼントしてあげる」
「そんなの証拠にならねーよ」
「証拠になるのかどうかは警察が判断することだろ?」
「言っとくけど私のパパさん警察官なんだから」
愛莉が言った。
「その写真に意味は無いよ。見た感じ誰かに撮ってもらってる写真だ。それは眠ってる誠と下村さんともう一人第3者がいたことを意味する」
「ちなみに~さっきのやり取り全部撮影済みですよ~。……恐喝罪も熨斗つけてプレゼントしてあげるわ」
咲良さんが言う。
「まだ足りないようなら今すぐ引きずってでも病院来てもらって検査してあげるわよ。あんた達のしてることは女性の地位を落しめる侮辱行為以外の何物でもないわ。同じ女性として見過ごせない」
「言っとくけど君たちが思ってるほど誠にダメージは無いよ?さっきも言ったけど第3者がいることが明白じゃないか。誰かに嵌められたって誰でも分かる」
「なんだと!?」
「誠の証言はとった。そっちは証言できるの?薬飲ませておいて誠に強姦されましたって」
「写真が効果ないかどうかは試せばわかる。その覚悟はできてるのね?」
下村さんが口を開いた。
誠は口を閉ざしている。
そんな誠を見てフッと笑った。
「やっぱり君達は頭が悪いね。そんなに刑務所に行きたいの?君達のやってる事は恐喝だよ?しかもでっち上げのでたらめの証拠を作り上げて」
「話にならないわね。私はこの写真を週刊誌に送る」
「ご自由に。100歩譲ってもそれだけでは慰謝料は請求できない。どう見ても和姦だ。強姦罪は成立しない……それに」
「それに?」
「こっちが手札を切ればそっちのその写真の事実は180度変わる!何なら他の被害者の声も聞かせようか?」
「てめぇ調子に乗ってんじゃねーぞ!」
女性が僕につかみかかろうとするが愛莉とカンナが女性の肩を掴んだ。
「暴行罪の現行犯で逮捕されたいか?それも面倒だ。今の私の虫の居所は非常に悪い。このまま叩きのめしてやる」
「私も神奈に同感。冬夜君には指一本触れさせないよ。私も今すっごいイライラしてるんだから!」
カンナと愛莉はやる気のようだ。
下村さんがガムを吐き捨てる。
何人かの女性集団が集まってきた。
「こいつら一応格闘嗜んでるから」
下村さんの口調が変わった。
僕は余裕の笑みを浮かべる。
「桐谷君はさがってて」
女性達が襲い掛かる。
だが、女性達には誤算があった。
銃を持った男相手に立ち回った愛莉たちに嗜んだ程度の武術が通じるわけがない。
そして今日の女性陣は皆機嫌が悪かった。
怪我人を作り出すだけに終わった。
下村さんを残して皆倒れる。
「女性だから~お腹と顔だけは傷つけないであげましたよ~。……感謝しなさい」
咲良さんが言う。
「さてと……この下村って女はこの程度じゃすませねーよな」
神奈が言う。
「神奈に同感……骨の一本や二本覚悟してもらわないと気がすまない」
亜依さんが言う。
「くそっ!」
下村さんがスマホを地面にたたきつける。
僕はそれを拾うと中身を確認する。
写真があった。やはりスマホで撮っていたか。
僕はその写真を全部削除する。
そしてそのスマホを誠に渡す。
「ここからは誠の出番だぞ?」
「?」
誠は分かっていないらしい。
「誠の得意分野だろ?」
「あ、なるほど」
誠は早速持っていたノートPCをスマホに接続して操作を始める。
僕達のやることはまだある。
「そういうわけで、こそこそ隠れてないで出てきたらどう?薄汚い気配くらい僕でも読めるよ」
男共がぞろぞろ出てきた。
カメラを持っているもの、金属バットを持ってる物、色々いる。
裏を返せばその程度の小者しかいない。
男が合図する。全員襲い掛かる。
やはり小者だった。
倒れた男の山が出来る。
男のカメラを回収する。
そこにも画像があった。これが多分本命だろう。
躊躇わずに削除する。
余裕を見せていた下村さんの影は無く、ただ怯えている女性が屈みこんでいた。
「これで君の手札は全部刈り取った。チェックメイトだ」
僕は女性を見下ろして宣言する。
「折角うまくいってたのに」
「君、素人だね。今回は見逃してあげる。二度とこんな馬鹿な真似はしない方がいい」
「ちょっと何言ってんだトーヤ!?」
「逃がすってわけ!?絶対にだめ!」
「冬夜君何考えてるの!?」
カンナと亜依さんと愛莉が言う。
「君、可愛いね」
ぽかっ
「冬夜君お嫁さんの前でまたナンパ!?」
「ち、違うって……可愛いから脅されたんだろ?」
下村さんは黙ってうなずく。
元々大人しい性格だったらしい、それに可愛い。そこに奴らは目をつけたんだろう。
騙して仲間に引き込んでノルマを作って……。何人もの男を騙してきたんだろう。
誠もそんな男の一人だ。
ずるずると引き込まれて足を洗えなくなっていた。
彼女がすべてを話す頃には皆黙ってしまっていた。
「冬夜、捕獲完了だ。サーバー丸ごと乗っ取った。全データ削除してやったぜ!」
「お疲れ誠」
「で、どうするんだ彼女?」
「それは彼女が決めるよ」
下村さんは立ち上がる。
「冬夜君、どうする?なんか彼女も被害者に見えてしまって」
「私……聞かなきゃよかった」
「トーヤに任せるよ、渡辺もお前に任せるって言ってたしな」
「……どうする下村さん?」
「……放っといてくれ!」
下村さんはそう叫んだ。
そして走りだす。
「お前たちみたいなおせっかいで仲良しこよしの連中が一番むかつくんだよ!!気持ち悪い!!」
「なんだと!?」
カンナが言う。
カンナを押さえる。
そして僕は言う。
「君が僕達をどう思おうと勝手だ。君には君の価値観があるんだろう。ただ再び僕達の敵に回るなら次は容赦はしない」
「……精々仲良しこよしで楽しんでろ!……私はもう二度と戻れない」
そう言って彼女は去って行った。
「あれでよかったの冬夜君?」
「さあね……。ただこっちの考えを押し付けるだけも悪いだろ?自分で解決法を見出さなきゃ」
僕はそう言った。
「さて、青い鳥に戻ろうか?お腹もすいたし」
僕が言うとみんなそれぞれ去っていった
「俺部活あるから」
「俺バイト」
「私達もバイトあるから」
「望も帰ってくる頃ね。私も帰らないと」
「私も春樹の夕食準備しなきゃ!」
残ったのは僕と愛莉だけだった。
「せっかくだから晩御飯食べて帰ろうか?」
「うん!」
そして僕達は帰路に就いた。
(4)
部活から帰ると飯食ってバイトだ。
家に帰ると良い匂いが立ち込めてる。
「お帰り誠」
神奈がそう言ってくれた。
「どうした?誠」
俺は涙していた。
まだ帰る場所があったんだって。
神奈を抱きしめていた。
「調理中は止めろって言っただろこの馬鹿」
「今だけ甘えさせてくれ……」
神奈は俺の背中に手を回す。
「ったく、世話の焼ける夫だな。もう二度とするなよ」
「わかってる」
その日はちょっとしたご馳走だった。
「なんか元気づける方法ないかなと思ってな、奮発してみた」
「ありがとう」
「そんなしけた顔して食うな。酒はだめだからジュースで我慢しろな?」
「もう酒は止めるよ」
「え?」
「俺が酒を飲むとろくなことにならない」
「そんな事言ったら私もそうだ、愚痴はいたりガミガミ言ったり……本当は酒のせいだけじゃないんだろ?」
「神奈?」
「酒のせいにして思ってたこと発散したいだけなんだろ?石原が言ってただろ、どうせ飲むなら楽しい酒をって」
そうだな……。
食事が終ると、片づけを手伝った。
そして着替えてバイトに行く。
「じゃあ、行ってくる」
「まっすぐ帰って来いよ。今夜サービスしてやる」
「うぉ!マジか!?」
「……やっぱり変わってないなお前は」
「あ、ごめん」
「そんな誠が好きなんだからいいよ」
「……行ってくる」
神奈はずっと俺を見送っていてくれた。
(5)
ご飯を食べ終えると僕達は家に帰って、お風呂に入って部屋で寛いでいた。
愛莉はドライヤーで髪を乾かしている。
乾かし終えるとキッチンに向かう。
忙しい子だな。
待っていると酎ハイを一缶ずつもってくる。
愛莉は笑っているけど、まだ下村さんのことを引きずっているんだろう。
愛莉の肩を抱く。
「まだ気にしてるの?」
「そりゃ、気になるよ。なんか可哀そうに思えてきて」
本当はもどりたいんじゃないのか?と愛莉は言う。
「そうだろうね?」
「じゃあ、どうして招待してあげなかったの?」
「彼女にその意思がなかったから」
「うぅ……またわかんない事言ってる」
「他人にはそれぞれ正義があって争いがあるのは仕方ないんだ。僕達の正義が彼女を傷つけているかもしれない」
「私達が間違っているって事?」
「人それぞれ価値観があるってことだよ。彼女なりの何か理由があるのかもしれない」
「なるほどね~」
愛莉はそう言いながら帳簿をつけている。
下村さんの道を決めるのは下村さんの意思だ。
それに僕達が色々とやかく言う権利は無い。
僕達僕達の価値観を貫くだけ。
例え誰かの価値観を傷つけることになっても。
もちろん傷つけないのが一番だ。
でも僕達を傷つけようとするなら、僕達にとって敵になるというのなら。
僕は一切の手心を加えるつもりは無い。
本当は手心を加えてるのかもしれないけど。
僕の判断が迷った時にこのグループが壊れるのなら、僕は非情に徹する。
僕は両手を見る。
この手は既に汚れている。
だけどそれでいい。
渡辺君がリーダーだ。渡辺君の代わりに手を染めるのが僕の役割。
愛莉は帳簿をつけ終わったのか、テレビを見て笑っている。
愛莉の好きなタレントが出ているからだろう。
愛莉の隣に座る。
「ねえねえ、冬夜君見て面白いんだよ~」
愛莉とその番組を楽しむ。
お互いに肩を抱き寄せながら。
それはまるで愛の木洩れ日のように。
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