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5thSEASON
闇夜に浮かべた神の月
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(1)
「冬夜君おはよう。朝だよ~」
愛莉に定刻に起こされる。
今日は家には僕と愛莉の二人だけ。
両親は実家に帰ってる。
愛莉の両親は海外で年を越すらしい。
今日は大晦日。
愛莉は朝から掃除だと張り切っている。
取りあえず朝食を食べると何をやったらいいか聞く。
大体毎年同じ事なんだけど。
水回り、換気扇、戸などを掃除して洗車。
愛莉は家中に掃除機をかけて通路を綺麗に拭いていく。
次いでだから庭の手入れもお願いと言われて手入れしていく。
お昼ご飯はインスタントラーメンにしてもらえた。
ちゃんと卵を入れてある。
掃除が済むと愛莉と買い物。
御節と餅としめ縄を買う。
御節はお店のを注文してあった。
どうせ食べるのは僕と愛莉だけだし。
愛莉は「お嫁さんの手作りより出来合いの方がいいの?」というので「愛莉も出来合いのを詰めてるだけだろ?」と言ったら「うぅ」と唸りながらも渋々承知した。
しめ縄を玄関に取り付ける間に愛莉は着替えて準備を始める。
飾り終えると僕も着替えて準備を始める。
準備が終ると家を出てバス停に向かう。
バスに乗って街に向かうと愛莉と街を散策する。
時間を潰すと1次会の店に向かう。
1次会は居酒屋。
晴斗達は相変わらず早かった。
どうせ宴が始まったら席なんてどうにでもなるので晴斗達の隣に座って話をしてた。
渡辺君達が来ると次々とやってくる。
最後に来たのは如月君と朝倉さんだった。
今日は50人を超える大所帯。
知らない人もいる。
「じゃあ、今年最後の宴会だ、皆楽しんでくれ」
渡辺君が言うと宴の始まり。
一週間後には新年会だけどね。
皆と話をしながら食べて飲んでをしていると渡辺君達から呼ばれた。
席を移動すると僕より年上の人がいた。
「冬夜、こちらが恵美さんの従姉の林田英恵さんとその夫の雄平さん。そして森重清太さんとその妻奈未さんだ」
「初めまして、片桐冬夜です」
「初めまして林田英恵です。君が片桐冬夜君ね……へえ」
英恵さんは品定めするように僕を見ている。
僕も英恵さんの目を見ていた。
「私を見て目をそらさないどころか私を見返すとは……なるほどね。噂通りの人物ね」
英恵さんはそう言って笑った。
「初めまして森重です。秘書の林田からは話を聞いてます」
森重清太さんもまた、噂通りの真っ直ぐな目をしていた。
森重さんの話に聞き入っていた。
現状の県政の在り方、市政の現状、企業と癒着した政治を変えていかなければならない。地元ならではの資源の有効活用。地元の世界に向けてのアピール。
一方で地場企業の支援、労働環境の正常化。これからの高齢化社会、障碍者が働ける地盤作り。などなど彼の理想を聞いていた。
授業で聴くような話で退屈な内容だったが彼はそれをかみ砕いて分かりやすくイメージしやすいように説明していく。
なるほど、彼の人気の秘訣はこのトーク力か。
彼は色んな居酒屋に赴いては若者に政治というものを解説し、そして自分の考えを強く訴えていた。
その努力が実って今の浮動票の獲得につながっているのだろう?
彼の政治活動のボランティアを買って出る人も少なくないという。
時間が経つのを忘れるほどの話術に引き込まれていた。
しかしいい話ばかりではない。
やはり、彼の政治活動を妨害する者がいるという。
その者の名は太陽の騎士団。
彼等の擁立する衛藤信一郎を勝たせるために、もっと言えば森重さんの立候補を止めさせるようにありとあらゆる妨害工作を企ているらしい。
彼の本来の職業であるホテルの営業妨害、娘の栞里ちゃんを誘拐しようとしたりありとあらゆる妨害工作に出るのだという。
森重さんは僕達の若い力を借りたいという。
「どうだ、冬夜?」
「片桐君、力になれないかしら?」
渡辺君と、恵美さんが聞いてきた。
僕は一息入れて答えた。
「残念ながら僕達は力になることは出来ません」
二人が落胆する。
森重さんはじっと僕を見つめる。
「私が間違っていると?」
「そうではありません、森重さんの考え方は立派だ、理想が高い。あなたが市長になればきっといい市政になるでしょう。いや、市政ではとどまらない県政、やがては国政に辿り着くでしょう」
「じゃあ、なんで断るんだ冬夜」
渡辺君が言う。
「あなたの考えは純粋だ。汚れのない澄みきったものだ。一方僕達の力はイリーガルなものだ、あなたの足かせになってしまう恐れもある」
「なるほど、君も理想を唱えるものなんだね。汚れのないクリーンな政治を」
「それを実現できるのはあなただ。その為の支援なら惜しみません。応援してますよ」
「分かった!」
渡辺君が立ち上がる。
「俺達は陰ながら森重さんを応援しよう!皆ちゃんと投票に行くんだぞ!」
渡辺君が言うと盛り上がった。
森重さんは僕の手を強く握る
その時だった。
パリン
外で何かが爆発する音が聞こえる。
僕は店の入り口に向かった。
紙切れが落ちている。
それを拾うと文章が書かれてあった。
手を引け、さもなくば安全は保障しない。
こっちの手は読まれているという事か。
「冬夜、どうした?」
「どうやら向こうから尻尾を出したみたいだよ」
渡辺君に紙切れを見せる。
「これは……」
美嘉さんもそれを見る。
「とーやこれは渡辺班に対する挑戦状だぞ!」
美嘉さんは言う。
状況が変わったようだ。
「恵美さん、森重さん達のSPは?」
「父さんが選りすぐりのエリートをつけている。問題ないわ」
「今日のところは帰ってもらおう。すぐに送迎の手配を」
「分かった」
恵美さんが電話している。
「すまない、君達の貴重な3か月を不意にしてしまいそうだ」
「投票日までには片を付けますよ」
「て、事は冬夜……」
「なんらかの手を打たなきゃいけないだろうね」
僕はそう答えた。
「いいじゃねーか、ここらで太陽の騎士団の息の根止めてやろうぜ!」
美嘉さんが叫ぶ。
だけど僕は言う。
「駄目だ!迂闊に手を出していい相手じゃない!」
「じゃあ、やられっぱなしでいろってのか。先手必勝だ。乗り込んで袋にしてやろうぜ!」
「それだと森重さんにもダメージが出る。それは致命傷になる」
「じゃあどうしろって言うんだトーヤ!」
「それはこれから考えるよ。とにかく軽率な行動は取らないでくれ」
カンナが言うと僕が答える。
「また、俺達危険な目にあうんですか?」
真鍋君が言う。
「それはないと思う。それについてはもうデッキは構築済みだ」
「どういう意味ですか?」
真鍋君が聞く。
「敵対組織の構成は分かっている。それをマスコミに売り飛ばす」
誘拐や人質事件なんてことになったら衛藤信一郎自身が傷を負う。
その傷が致命傷になるかは分からないが。
「それより森重さんの家族が最重要だ。絶対に守らないと」
「問題ないわ、徹底的に警護してる」
恵美さんが言う。
「君は正義感溢れる立派な大人だね。選挙が終わったらまた酒を酌み交わそう」
森重さんが言う。
そうして森重さんが帰っていった。
林田さんも帰りに着く。
「林田さんも気を付けて」
「大丈夫家族を守るくらいの鍛錬はしてるよ」
「私も昔取った杵柄ってね。心配いらないよ。片桐冬夜か……立派な大人になるね。お姉さんが保証する」
「どうも……」
「それじゃまた、子供も預けてるしね」
そう言って林田夫妻も帰っていった。
「冬夜これからどうする?」
「売られた喧嘩は買う。やられたらやり返す!それが渡辺班だろうが!」
渡辺君と美嘉さんが言う。
「みんな忘れている。今の渡辺班にはUSEと言う急所がある」
ALICEの名前を陥れるようなことは出来ない!
「私の存在が足かせになるなら私渡辺班を抜けます」
「だめだ、そんな事をしても変わらない。彼等の事だ。USEが渡辺班の活動だって事くらいすぐに嗅ぎつける」
「でしたらUSEを抜けます。借りた治療費は必ずお返しするので」
「そんなの認めない。大丈夫冬夜君はもう次の手を考えてる。これまで通りでいいんだよ。困ってる人を放っておけないグループなの」
愛莉が言う。
しかし対抗手段を見いだせずにいた。
「しけた話はこれくらいにしようぜ!これからカウントダウンライブだろ?
カンナが言う。
もうそんな時間か。
「冬夜、実は動けないでいるんじゃないのか?」
渡辺君が言う。
「まあね、でも警備はついてる。彼等が的を僕達に絞ってくれるなら倍返しで良い。ただ……」
「ただ?」
「人質がだめなら次の手段を打ってくる、そんな予感がするんだ」
その手段は分からずにいた。
何事も無ければいい。
「そろそろラストオーダーの時間です」
店員が言う。
僕達は店を出る。
「まだ予定まで時間があるな」
渡辺君が言う。
「河岸を変えて飲みなおすってのは?」
ぽかっ
「冬夜君は飲み為すじゃなくて食べなおすの間違いでしょ!」
愛莉に嘘は通用しない。
「まあ、もう二時間くらいどこか店を探そうか?」
「私の店がある」
渡辺君が言うとカンナが言う。
カンナは電話している。
空いてるらしい。
カンナのお母さんの店に行くことにした。
(2)
「冬夜君はロックでいいんだよね」
愛莉が酒を注いでくれる。
特に予約はしてなかったけど渡辺班がほぼ占拠していた。
カンナはおばさんの手伝いをしてる。
「冬夜も来年早々新居探しか?」
渡辺君が聞いてきた。
「そうだね、新年会が開けたら探そうと思う」
僕はそう答えた。
「そうか……大変だと思うが頑張れ」
渡辺君はそう言って酒をあおる。
「渡辺君も苦労した?」
「まあな、夫婦とはいえ今まで違う生活を送ってきた二人が一緒に過ごすんだ。生活習慣とか違いがあるからな」
遠坂さんとお前はそれがないか。と渡辺君は笑った。
「冬夜気をつけろよ!女って一緒に暮らすと急にガミガミやかましくなるからな!」
桐谷君は良い加減周囲に気を付けた方がいい。
「誰が急にやかましくなるんだ」
「そりゃ女房に決まってるだろ!って……亜依」
「この二人はこれから新しい生活を始めるんだ!余計な事を吹き込むんじゃない!片桐君も気にしちゃだめだからね!」
だから言わんこっちゃない。
「渡辺君は美嘉さんに不満とか持ったことない?」
愛莉が聞いていた。
「あるよ。けどそういうのも受け止めてやる度量が両方に必要だと俺は思ってる」
嫁の不満くらい黙って受け止めてやれ。渡辺君はそう言う。
嫁の不満か。
「正志は優しいぞ!家事もしてくれるし、休日が合えば遊びに連れて行ってくれるし」
美嘉さんが渡辺君のグラスに酒を注ぎながら言う。
「片桐君はどんな物件がお望みなの?うちで扱ってる物件紹介してあげるけど」
晶さんが言った。
「うちの近くで、2LDKってくらいかな?あと駐車場2台分」
「片桐君なら家買った方が早いんじゃない?」
恵美さんが言う。
「うちの親の家を将来リフォームしようと思ってるから」
「なるほどね、2LDKなのは愛莉ちゃんの希望?」
「うん、結婚したらすぐ子供作るんだ~」
そんな鶏が玉子産むみたいに言われても……。
「どうして実家の近くなの?」
「結構便利なんだ。愛莉も運転できるから買い物は行けるし、青い鳥も近いから愛莉の気晴らしになるだろうし。バスも通ってるし」
「結構愛莉ちゃんの事気遣ってるのね?」
愛莉の生活環境をがらりと変えるのは不安だ。愛莉に余計なストレス抱えさせる。
そんな感じで僕達の新生活の話題を中心に二次会は盛り上がった。
「そろそろ時間だ。行こうか」
渡辺君が言うと皆ライブハウスへと移動した。
(3)
石原君の芸能事務所の地下にあるライブハウス。
30分前に解放された。
50人程度なら悠々と入る大きな会場。
最前列に並ぶ男性陣。
後で飽きれてみてる女性陣。
僕と愛莉と渡辺夫妻と石原夫妻と酒井夫妻、公生と奈留は中間くらいでドリンクを飲みながらゆったりとしていた。
5分前になるとALICEが入ってきて、MCを始める。
阻止て1分前になると、カウントダウンが始まる。
3,2,1……。
「皆ハッピーニューイヤー!」
彼女の掛け声とともにライブが始まる。
今回の曲目は12曲。
途中MCを挟みながら2時間ちょっとのライブ。
皆が熱狂していた。
今回はラブソングやバラードも混ざっている。
そして最後の歌を歌うと「ありがとう」と言ってステージを下りる有栖。
アンコールの声が聞こえる。
ALICEは再びステージに上がりアンコール曲2曲を歌う。
深く礼をするとステージを下りて行った。
ライブハウスを出ると有栖さんと秋吉君を待つ。
二人が出て来ると、渡辺君が「打ち上げはカラオケだな」と言う。
もっとも他に選択肢がない時間帯だけど。
カラオケでは皆盛り上がっていた。
僕たちは聞き専にまわっていたけど。
有栖さんもさすがに疲れていたらしい。
一緒に話をして休んでいた。
「大丈夫?」
僕が有栖さんにきいていた。
「はい、大丈夫です。テンション上がっちゃって」
「明後日には本番です。明日はゆっくり休んで」
「明日は圭太さんが初詣に連れて行ってくれるんじゃないの?」
「……どこに行きたいですか?」
二人は仲良く話をしている。
「明後日の本番って?」
「日曜日が初ライブなんです。週末しかライブできないけど」
春休みになったら九州各地でライブをするらしい。
彼女なら九州どころか国内、いや、国外へと飛び出す日が来るだろう。
彼女の足かせにならないように渡辺班も慎重に行動する必要がある。
そんな事を考えながら二人の話を聞いていた。
打ち上げは朝まで続いた。
打ち上げが終ると皆解散する。
そして僕達もバスで家に帰って眠りについた。
(4)
「冬夜君、お昼ご飯できたよ~」
愛莉に起こされて、お昼ご飯を食べる。
「ねえ、初詣行こう?」
愛莉が言う。
「どこに行きたい?」
「久しぶりに西寒田神社でいいよ」
「わかった」
愛莉と神社にお参りに行く。
西寒田神社は大きさの割には参拝客が多い。
列に並んでしばらく待つ。
愛莉は腕をしっかりと握っている
「どうしたの?」
「冬夜君が出店に走らないようにしっかりと見張ってるの」
「なるほどね」
鈴を鳴らしお参りをすると愛莉が「おみくじ引こう」と言う。
おみくじを買ってそれを結んで。交通安全のお守りを買って家に帰ると愛莉がお餅を焼いてくれた。
それを食べながら部屋でテレビを見て時間を潰す。
夜になると愛莉が夕食の支度を始める。
と、いっても雑煮を作ってあとは御節をつつくだけだけど。
愛莉は熱燗をお猪口に注いでくれた。
僕も愛莉のお猪口に注いでやる。
一口飲むと愛莉は顔が真っ赤になる。
「結構きついね」
その後片づけをして、お風呂に入ると部屋でのんびり過ごす。
「新年会終わったら部屋探そうか?」
「……うん」
なんか様子が変だ。
「どうしたの?」
「言っても怒らない?」
「怒るようなことなの?」
「わかんない」
「怒らないから言ってごらん」
「あのね……」
愛莉は話す。
新生活は楽しみなんだけど、本当に二人だけでやっていけるんだろうか?僕を支えることができるんだろうか?そんな不安を抱えているらしい。
愛莉を抱きしめる。
「愛莉は言ったよ。僕が幸せにするんじゃない。二人で幸せになるんだって。僕も同じことを愛莉に返すよ」
愛莉と支え合って二人で幸せになろう。
愛莉はにこりと笑った。
「そうだね」
その後も部屋を決めたら家具とか買わないとねとかそんな話をしていた。
「この家ともあと一月ちょいだね~」
「愛莉は遠坂家を出る時どんな気持ちだった?」
「う~ん。自然とこの家に同居してたから」
そうだったね。
長い様で短かった愛莉との同居生活。
僕達は新しい生活を始める為の準備に取り掛かろうとしている。
闇夜に光る未来、希望、夢。
それらを歌う神の月。
いたずらな恋の調べが目を覚ます。
夢が醒めるまで、今を輝き身を焦がし導かれる。
何もいらない、破れかぶれですべて忘れる愛しさを、裸のままで朝まで見つめる。
「冬夜君おはよう。朝だよ~」
愛莉に定刻に起こされる。
今日は家には僕と愛莉の二人だけ。
両親は実家に帰ってる。
愛莉の両親は海外で年を越すらしい。
今日は大晦日。
愛莉は朝から掃除だと張り切っている。
取りあえず朝食を食べると何をやったらいいか聞く。
大体毎年同じ事なんだけど。
水回り、換気扇、戸などを掃除して洗車。
愛莉は家中に掃除機をかけて通路を綺麗に拭いていく。
次いでだから庭の手入れもお願いと言われて手入れしていく。
お昼ご飯はインスタントラーメンにしてもらえた。
ちゃんと卵を入れてある。
掃除が済むと愛莉と買い物。
御節と餅としめ縄を買う。
御節はお店のを注文してあった。
どうせ食べるのは僕と愛莉だけだし。
愛莉は「お嫁さんの手作りより出来合いの方がいいの?」というので「愛莉も出来合いのを詰めてるだけだろ?」と言ったら「うぅ」と唸りながらも渋々承知した。
しめ縄を玄関に取り付ける間に愛莉は着替えて準備を始める。
飾り終えると僕も着替えて準備を始める。
準備が終ると家を出てバス停に向かう。
バスに乗って街に向かうと愛莉と街を散策する。
時間を潰すと1次会の店に向かう。
1次会は居酒屋。
晴斗達は相変わらず早かった。
どうせ宴が始まったら席なんてどうにでもなるので晴斗達の隣に座って話をしてた。
渡辺君達が来ると次々とやってくる。
最後に来たのは如月君と朝倉さんだった。
今日は50人を超える大所帯。
知らない人もいる。
「じゃあ、今年最後の宴会だ、皆楽しんでくれ」
渡辺君が言うと宴の始まり。
一週間後には新年会だけどね。
皆と話をしながら食べて飲んでをしていると渡辺君達から呼ばれた。
席を移動すると僕より年上の人がいた。
「冬夜、こちらが恵美さんの従姉の林田英恵さんとその夫の雄平さん。そして森重清太さんとその妻奈未さんだ」
「初めまして、片桐冬夜です」
「初めまして林田英恵です。君が片桐冬夜君ね……へえ」
英恵さんは品定めするように僕を見ている。
僕も英恵さんの目を見ていた。
「私を見て目をそらさないどころか私を見返すとは……なるほどね。噂通りの人物ね」
英恵さんはそう言って笑った。
「初めまして森重です。秘書の林田からは話を聞いてます」
森重清太さんもまた、噂通りの真っ直ぐな目をしていた。
森重さんの話に聞き入っていた。
現状の県政の在り方、市政の現状、企業と癒着した政治を変えていかなければならない。地元ならではの資源の有効活用。地元の世界に向けてのアピール。
一方で地場企業の支援、労働環境の正常化。これからの高齢化社会、障碍者が働ける地盤作り。などなど彼の理想を聞いていた。
授業で聴くような話で退屈な内容だったが彼はそれをかみ砕いて分かりやすくイメージしやすいように説明していく。
なるほど、彼の人気の秘訣はこのトーク力か。
彼は色んな居酒屋に赴いては若者に政治というものを解説し、そして自分の考えを強く訴えていた。
その努力が実って今の浮動票の獲得につながっているのだろう?
彼の政治活動のボランティアを買って出る人も少なくないという。
時間が経つのを忘れるほどの話術に引き込まれていた。
しかしいい話ばかりではない。
やはり、彼の政治活動を妨害する者がいるという。
その者の名は太陽の騎士団。
彼等の擁立する衛藤信一郎を勝たせるために、もっと言えば森重さんの立候補を止めさせるようにありとあらゆる妨害工作を企ているらしい。
彼の本来の職業であるホテルの営業妨害、娘の栞里ちゃんを誘拐しようとしたりありとあらゆる妨害工作に出るのだという。
森重さんは僕達の若い力を借りたいという。
「どうだ、冬夜?」
「片桐君、力になれないかしら?」
渡辺君と、恵美さんが聞いてきた。
僕は一息入れて答えた。
「残念ながら僕達は力になることは出来ません」
二人が落胆する。
森重さんはじっと僕を見つめる。
「私が間違っていると?」
「そうではありません、森重さんの考え方は立派だ、理想が高い。あなたが市長になればきっといい市政になるでしょう。いや、市政ではとどまらない県政、やがては国政に辿り着くでしょう」
「じゃあ、なんで断るんだ冬夜」
渡辺君が言う。
「あなたの考えは純粋だ。汚れのない澄みきったものだ。一方僕達の力はイリーガルなものだ、あなたの足かせになってしまう恐れもある」
「なるほど、君も理想を唱えるものなんだね。汚れのないクリーンな政治を」
「それを実現できるのはあなただ。その為の支援なら惜しみません。応援してますよ」
「分かった!」
渡辺君が立ち上がる。
「俺達は陰ながら森重さんを応援しよう!皆ちゃんと投票に行くんだぞ!」
渡辺君が言うと盛り上がった。
森重さんは僕の手を強く握る
その時だった。
パリン
外で何かが爆発する音が聞こえる。
僕は店の入り口に向かった。
紙切れが落ちている。
それを拾うと文章が書かれてあった。
手を引け、さもなくば安全は保障しない。
こっちの手は読まれているという事か。
「冬夜、どうした?」
「どうやら向こうから尻尾を出したみたいだよ」
渡辺君に紙切れを見せる。
「これは……」
美嘉さんもそれを見る。
「とーやこれは渡辺班に対する挑戦状だぞ!」
美嘉さんは言う。
状況が変わったようだ。
「恵美さん、森重さん達のSPは?」
「父さんが選りすぐりのエリートをつけている。問題ないわ」
「今日のところは帰ってもらおう。すぐに送迎の手配を」
「分かった」
恵美さんが電話している。
「すまない、君達の貴重な3か月を不意にしてしまいそうだ」
「投票日までには片を付けますよ」
「て、事は冬夜……」
「なんらかの手を打たなきゃいけないだろうね」
僕はそう答えた。
「いいじゃねーか、ここらで太陽の騎士団の息の根止めてやろうぜ!」
美嘉さんが叫ぶ。
だけど僕は言う。
「駄目だ!迂闊に手を出していい相手じゃない!」
「じゃあ、やられっぱなしでいろってのか。先手必勝だ。乗り込んで袋にしてやろうぜ!」
「それだと森重さんにもダメージが出る。それは致命傷になる」
「じゃあどうしろって言うんだトーヤ!」
「それはこれから考えるよ。とにかく軽率な行動は取らないでくれ」
カンナが言うと僕が答える。
「また、俺達危険な目にあうんですか?」
真鍋君が言う。
「それはないと思う。それについてはもうデッキは構築済みだ」
「どういう意味ですか?」
真鍋君が聞く。
「敵対組織の構成は分かっている。それをマスコミに売り飛ばす」
誘拐や人質事件なんてことになったら衛藤信一郎自身が傷を負う。
その傷が致命傷になるかは分からないが。
「それより森重さんの家族が最重要だ。絶対に守らないと」
「問題ないわ、徹底的に警護してる」
恵美さんが言う。
「君は正義感溢れる立派な大人だね。選挙が終わったらまた酒を酌み交わそう」
森重さんが言う。
そうして森重さんが帰っていった。
林田さんも帰りに着く。
「林田さんも気を付けて」
「大丈夫家族を守るくらいの鍛錬はしてるよ」
「私も昔取った杵柄ってね。心配いらないよ。片桐冬夜か……立派な大人になるね。お姉さんが保証する」
「どうも……」
「それじゃまた、子供も預けてるしね」
そう言って林田夫妻も帰っていった。
「冬夜これからどうする?」
「売られた喧嘩は買う。やられたらやり返す!それが渡辺班だろうが!」
渡辺君と美嘉さんが言う。
「みんな忘れている。今の渡辺班にはUSEと言う急所がある」
ALICEの名前を陥れるようなことは出来ない!
「私の存在が足かせになるなら私渡辺班を抜けます」
「だめだ、そんな事をしても変わらない。彼等の事だ。USEが渡辺班の活動だって事くらいすぐに嗅ぎつける」
「でしたらUSEを抜けます。借りた治療費は必ずお返しするので」
「そんなの認めない。大丈夫冬夜君はもう次の手を考えてる。これまで通りでいいんだよ。困ってる人を放っておけないグループなの」
愛莉が言う。
しかし対抗手段を見いだせずにいた。
「しけた話はこれくらいにしようぜ!これからカウントダウンライブだろ?
カンナが言う。
もうそんな時間か。
「冬夜、実は動けないでいるんじゃないのか?」
渡辺君が言う。
「まあね、でも警備はついてる。彼等が的を僕達に絞ってくれるなら倍返しで良い。ただ……」
「ただ?」
「人質がだめなら次の手段を打ってくる、そんな予感がするんだ」
その手段は分からずにいた。
何事も無ければいい。
「そろそろラストオーダーの時間です」
店員が言う。
僕達は店を出る。
「まだ予定まで時間があるな」
渡辺君が言う。
「河岸を変えて飲みなおすってのは?」
ぽかっ
「冬夜君は飲み為すじゃなくて食べなおすの間違いでしょ!」
愛莉に嘘は通用しない。
「まあ、もう二時間くらいどこか店を探そうか?」
「私の店がある」
渡辺君が言うとカンナが言う。
カンナは電話している。
空いてるらしい。
カンナのお母さんの店に行くことにした。
(2)
「冬夜君はロックでいいんだよね」
愛莉が酒を注いでくれる。
特に予約はしてなかったけど渡辺班がほぼ占拠していた。
カンナはおばさんの手伝いをしてる。
「冬夜も来年早々新居探しか?」
渡辺君が聞いてきた。
「そうだね、新年会が開けたら探そうと思う」
僕はそう答えた。
「そうか……大変だと思うが頑張れ」
渡辺君はそう言って酒をあおる。
「渡辺君も苦労した?」
「まあな、夫婦とはいえ今まで違う生活を送ってきた二人が一緒に過ごすんだ。生活習慣とか違いがあるからな」
遠坂さんとお前はそれがないか。と渡辺君は笑った。
「冬夜気をつけろよ!女って一緒に暮らすと急にガミガミやかましくなるからな!」
桐谷君は良い加減周囲に気を付けた方がいい。
「誰が急にやかましくなるんだ」
「そりゃ女房に決まってるだろ!って……亜依」
「この二人はこれから新しい生活を始めるんだ!余計な事を吹き込むんじゃない!片桐君も気にしちゃだめだからね!」
だから言わんこっちゃない。
「渡辺君は美嘉さんに不満とか持ったことない?」
愛莉が聞いていた。
「あるよ。けどそういうのも受け止めてやる度量が両方に必要だと俺は思ってる」
嫁の不満くらい黙って受け止めてやれ。渡辺君はそう言う。
嫁の不満か。
「正志は優しいぞ!家事もしてくれるし、休日が合えば遊びに連れて行ってくれるし」
美嘉さんが渡辺君のグラスに酒を注ぎながら言う。
「片桐君はどんな物件がお望みなの?うちで扱ってる物件紹介してあげるけど」
晶さんが言った。
「うちの近くで、2LDKってくらいかな?あと駐車場2台分」
「片桐君なら家買った方が早いんじゃない?」
恵美さんが言う。
「うちの親の家を将来リフォームしようと思ってるから」
「なるほどね、2LDKなのは愛莉ちゃんの希望?」
「うん、結婚したらすぐ子供作るんだ~」
そんな鶏が玉子産むみたいに言われても……。
「どうして実家の近くなの?」
「結構便利なんだ。愛莉も運転できるから買い物は行けるし、青い鳥も近いから愛莉の気晴らしになるだろうし。バスも通ってるし」
「結構愛莉ちゃんの事気遣ってるのね?」
愛莉の生活環境をがらりと変えるのは不安だ。愛莉に余計なストレス抱えさせる。
そんな感じで僕達の新生活の話題を中心に二次会は盛り上がった。
「そろそろ時間だ。行こうか」
渡辺君が言うと皆ライブハウスへと移動した。
(3)
石原君の芸能事務所の地下にあるライブハウス。
30分前に解放された。
50人程度なら悠々と入る大きな会場。
最前列に並ぶ男性陣。
後で飽きれてみてる女性陣。
僕と愛莉と渡辺夫妻と石原夫妻と酒井夫妻、公生と奈留は中間くらいでドリンクを飲みながらゆったりとしていた。
5分前になるとALICEが入ってきて、MCを始める。
阻止て1分前になると、カウントダウンが始まる。
3,2,1……。
「皆ハッピーニューイヤー!」
彼女の掛け声とともにライブが始まる。
今回の曲目は12曲。
途中MCを挟みながら2時間ちょっとのライブ。
皆が熱狂していた。
今回はラブソングやバラードも混ざっている。
そして最後の歌を歌うと「ありがとう」と言ってステージを下りる有栖。
アンコールの声が聞こえる。
ALICEは再びステージに上がりアンコール曲2曲を歌う。
深く礼をするとステージを下りて行った。
ライブハウスを出ると有栖さんと秋吉君を待つ。
二人が出て来ると、渡辺君が「打ち上げはカラオケだな」と言う。
もっとも他に選択肢がない時間帯だけど。
カラオケでは皆盛り上がっていた。
僕たちは聞き専にまわっていたけど。
有栖さんもさすがに疲れていたらしい。
一緒に話をして休んでいた。
「大丈夫?」
僕が有栖さんにきいていた。
「はい、大丈夫です。テンション上がっちゃって」
「明後日には本番です。明日はゆっくり休んで」
「明日は圭太さんが初詣に連れて行ってくれるんじゃないの?」
「……どこに行きたいですか?」
二人は仲良く話をしている。
「明後日の本番って?」
「日曜日が初ライブなんです。週末しかライブできないけど」
春休みになったら九州各地でライブをするらしい。
彼女なら九州どころか国内、いや、国外へと飛び出す日が来るだろう。
彼女の足かせにならないように渡辺班も慎重に行動する必要がある。
そんな事を考えながら二人の話を聞いていた。
打ち上げは朝まで続いた。
打ち上げが終ると皆解散する。
そして僕達もバスで家に帰って眠りについた。
(4)
「冬夜君、お昼ご飯できたよ~」
愛莉に起こされて、お昼ご飯を食べる。
「ねえ、初詣行こう?」
愛莉が言う。
「どこに行きたい?」
「久しぶりに西寒田神社でいいよ」
「わかった」
愛莉と神社にお参りに行く。
西寒田神社は大きさの割には参拝客が多い。
列に並んでしばらく待つ。
愛莉は腕をしっかりと握っている
「どうしたの?」
「冬夜君が出店に走らないようにしっかりと見張ってるの」
「なるほどね」
鈴を鳴らしお参りをすると愛莉が「おみくじ引こう」と言う。
おみくじを買ってそれを結んで。交通安全のお守りを買って家に帰ると愛莉がお餅を焼いてくれた。
それを食べながら部屋でテレビを見て時間を潰す。
夜になると愛莉が夕食の支度を始める。
と、いっても雑煮を作ってあとは御節をつつくだけだけど。
愛莉は熱燗をお猪口に注いでくれた。
僕も愛莉のお猪口に注いでやる。
一口飲むと愛莉は顔が真っ赤になる。
「結構きついね」
その後片づけをして、お風呂に入ると部屋でのんびり過ごす。
「新年会終わったら部屋探そうか?」
「……うん」
なんか様子が変だ。
「どうしたの?」
「言っても怒らない?」
「怒るようなことなの?」
「わかんない」
「怒らないから言ってごらん」
「あのね……」
愛莉は話す。
新生活は楽しみなんだけど、本当に二人だけでやっていけるんだろうか?僕を支えることができるんだろうか?そんな不安を抱えているらしい。
愛莉を抱きしめる。
「愛莉は言ったよ。僕が幸せにするんじゃない。二人で幸せになるんだって。僕も同じことを愛莉に返すよ」
愛莉と支え合って二人で幸せになろう。
愛莉はにこりと笑った。
「そうだね」
その後も部屋を決めたら家具とか買わないとねとかそんな話をしていた。
「この家ともあと一月ちょいだね~」
「愛莉は遠坂家を出る時どんな気持ちだった?」
「う~ん。自然とこの家に同居してたから」
そうだったね。
長い様で短かった愛莉との同居生活。
僕達は新しい生活を始める為の準備に取り掛かろうとしている。
闇夜に光る未来、希望、夢。
それらを歌う神の月。
いたずらな恋の調べが目を覚ます。
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