優等生と劣等生

和希

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LASTSEASON

痛い愛しい愛しい居たい

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(1)

「冬夜さん、いい加減起きてくださいな。お疲れなのは分かってますが今日から合宿ですよ」

愛莉の優しい声で目を覚ます。

「今何時?」
「ちょうど8時半です」
「急いで準備しないとな」
「そう思って大体のものは車に積んでおきました」

愛莉を抱きしめる。

「ごめんね、愛莉に負担掛けてる」
「お気になさらないで。冬夜さんが稼いでくれるからこうして遊びにいけるんですから」


ゴルフコンペの後は、地獄だった。
徹夜で眠い中業務をこなしていた。
入力ミスが無いかを何度も確認した。
そんな事を繰り返したら就労時間だけが増えていく。
すると家に帰る時間が遅くなる。

「愛莉遅くなったごめんなさい」
「お帰りなさいませ。今日もお疲れ様でした。偶には一人でゆっくりされたらいいのに」

私だって息抜きしてますよと愛莉は言う。

「愛莉に甘えるから平気だよ」
「本当に困った旦那様ですね」

そう言って愛莉は笑っていた。


荷物は愛莉は積み込んだらしいので朝食を食べると愛莉が片付けてる間に仕度を急ぐ。
愛莉が仕度を始めてる間、愛莉と会話する。
愛莉の支度が済むと集合場所に辿り着く。
コンビニの駐車場は渡辺班の車で占拠していた。
割と広い駐車場のコンビニだけど渡辺班を収納するには狭すぎるようだ。
最初に来てたのは晴斗達だった。
最後に来たのは如月夫妻。
皆が集まると渡辺君が言った。

「ここから目的地の宿泊施設まではノンストップだから買い物ある奴は済ませておいてくれ」

するとぞろぞろとコンビニに入る。
レジには長蛇の列が出来る。
皆がコンビニを出ると出発になる。
今回新メンバーは桜木さんと梅本君、篠原さんと小泉君、吉野さんと大原君、小鳥遊さんと月見里君の8人。
今回の新メンバーは皆安全運転だったので問題なかった。
ただ問題は旧メンバー。
相変わらずスピードを飛ばしたがる。
木元先輩と檜山先輩、誠は安全運転だったが。
僕達は新メンバーの4台を先導する。
4台がついてこれるようにゆっくりめで走る。
あっという間に差がついた。

「みんな、全く変わってませんね。困りましたね」
「そうだね」

変わってないと言えば愛莉だ。
同棲を始めて明らかに変わった。
どうしたんだろう?無理してる?

「なあ、愛莉?」
「どうしました?」
「愛莉が変わった理由って愛莉ママの影響?無理しないでいつもの愛莉でいいんだよ?」
「冬夜さんは私の大切な人だから、冬夜さんを立ててあげたいから。そう思ったら今の言葉遣いになってしまいました。お嫌ですか?」
「ううん、ただ自然体でいいんだよ?って思っただけ」
「無理はしてないから心配しないでください」
「わかった。でもなんか置いてけぼりになった気分だな」
「どうしてですか?」
「愛莉は大人っぽくなったよ。僕は全然変わらない」
「普段の冬夜さんが好きだからそれでいいの」

そんな話をしていると目的の宿泊施設に着くとまずは荷物の搬入。
部屋は男女3部屋ずつに分かれる。
搬入が済むと女性陣は食事の支度にとりかかる。
男性陣はテーブルを拭いたりしながら話をしている。
配膳が済むと、まずは渡辺君の挨拶から入る。

「今日は皆集まってくれてありがとう。これから3日間思いっきり楽しんでくれ。まずは自己紹介から……」

渡辺君が言うと皆の自己紹介が始まる。その間に昼食をとる。
午後はいつも通り自由時間かと思いきや女性陣から注文が入る。
会議室で話があるという。
どうしたんだろう?
皆片づけを終えると会議室に入る。

「レース始めた奴前に出ろ!まだ懲りてないのか!?」

美嘉さんが怒っている。
女性陣の不満だったらしい。
さすがに20台近くの車がレースを始めるのは危険だ。
原因はやっぱり桐谷君だった。
一台の無関係の車が追い抜いて行ったのに腹を立てて追走したら他の皆も始めたらしい。
女性陣が激怒している。
無理もない、一歩間違えたら大惨事だ。
非難は瑛大だけじゃない。中島君や如月君にも火の粉が飛ぶ。

「冬夜からもなんか言ってやってくれないか?」

渡辺君が言う。仕方ない。僕は立ち上がった。

「狭い山道で20台以上の車が縦列してる中追い越しをかけるのはさすがに僕でも庇えないよ。何考えてるの?皆懲りたんじゃなかったの?」

僕がそう言うと、愛莉も立ち上がって言った。

「罰として追い越しかけた人は皆お昼は洗車だよ」

愛莉が言うと追い越しをかけた桐谷君、中島君、如月君、翔、は洗車をすることになった。
他の皆は外に出かけるもの、部屋で寛ぐもの、散歩をするもの、その他に分かれた。
僕はゴルフの打ちっぱなしをすることにした。
愛莉の希望だ。
僕のゴルフしてる姿を見たいらしい。
渡辺君、木元先輩、檜山先輩、酒井君もパートナーを連れて来て始めた。
皆接待ゴルフがあるらしい。
酒井君は晶さんの指導を受けながらやっていた。
それを見て思いついた。

「愛莉も打ってみる?」
「よろしいのですか?」
「ただ見てるだけじゃ詰まらないだろ?やってごらん」
「それじゃやってみようかな」

愛莉にクラブの握り方から教える。

「手や腕だけで振るんじゃなくて身体全体をしっかり回す事、ボールを打つ瞬間に頭を上げないこと、最初は腰から腰の高さくらいの高さでいいから小さなスイングでいいから真っ直ぐ飛ばす練習をする事」

愛莉の手を取り教えてやる。
愛莉は呑み込みが早い。
あっという間に真っ直ぐ遠くに飛ばせるようになった。
愛莉にはそれが爽快だったらしい。
一人で打ち始めていた。
それを眺めている。
すると、連絡が入る。

「そろそろBBQの準備を始めよう」

愛莉に伝える。
愛莉は練習を止める。

「どうだった?」
「楽しかったです。私も始めようかしら」
「また機会があったら練習しようか?」
「冬夜さんの綺麗なフォームカッコいいから、それ見てるだけでも楽しいかもしれません」

僕たちは施設に戻るとBBQの準備を始めた。

(2)

「すいません、車借りて」
「いいの、気にしないで。運転してもらってるんだし」

小鳥遊さんはそう言った。
小鳥遊さんの勧めで僕達は同棲を始めた。
その方が一緒にいる時間が増えるから。
一緒にいる時間はずっと勉強してる。
偶にテレビを一緒に観るくらい。
家事は分担してやっている。
せめて自分の生活費はとバイトもしながらだけど。
一人で黙々と勉強するよりも偶に話をしながら勉強するのは楽しい。
偶に休憩の時間に入る。
他愛のない話で花が咲く
今日は渡辺班の合宿。
皆で恵美先輩の宿泊施設で騒ぐらしい。
宿泊施設で昼食をとったあと会議室で小言があった。
先輩たちが無理な追い越しをかけたのが原因らしい。
僕達は片桐先輩のゆっくりしたペースに合わせていたので全然気づかなかったけど。
小言が終わった後、僕は部屋で読書をしていた。
すると誰かがノックする。
小鳥遊さんだった。

「こんな事じゃないかと思った。ちょっと付き合わない?」

小鳥遊さんが言うと、僕は本を閉じて小鳥遊さんと外を歩く。

「勉強もメリハリが必要。この3日間は勉強の事は忘れない?」

小鳥遊さんらしくない言葉だ。

「じゃあ、何をするの?」
「ここならお金もかからない。そして施設は広い。ゆっくり散歩するのも悪くないと思わない?」

デートのお誘いだろうか?
それから施設を散策していた。
困った、こういう時何を話していいかわからない。
でも、心配いらなかった。
彼女がリードしてくれた。
色々話題を振ってくれた。
僕はそれに応えるだけ。

「あなたに出会わなければこんな気分一生知らなかった」
「どんな気分」
「とても楽しい気分。私中学高校と勉強だけだったから」

僕と一緒だ。

「月見里君は今どんな気分?」
「ちょっと戸惑ってる。僕も勉強だけだったから。必死だった」
「あなたに欠けてるもの教えてあげようか?」
「え?」
「この数週間一緒に過ごして分かったことがある」
「それは何?」
「ゆとりよ、あなたいつも緊張で体が強張ってる。そんなんじゃ気が休まるときないでしょ?」

初めての同棲だもん。無理ないよ。

「せめて私の前でくらい素のあなたを見せて。私がそんなに怖い?」
「そんなことは無いけど」

どうしたらいいのかな?

「私も彼氏を作ったことが無いから人の事言えないけど……どうしたらいいのかな?」

小鳥遊さんも悩んでいる。

「他の皆も真似てみようか?形から入るのも手かもしれない……そうね、つばめ。今度から私の事つばめって呼んで」
「つばめ……じゃあ、僕も秋空……あきらでいいよ」
「わかった」

そう言って彼女は微笑んだ。
その時スマホにメッセージが入る。

「そろそろもどろっか?」
「うん」

僕達は宿泊施設に戻った。

(3)

永遠の車でドライブに出ていた。
彼の運転はよく言えばとても丁寧だった。
悪く言えばとても退屈。
渋滞に入ると私の方がイライラしてきた。
永遠は気にすることなく私に話しかけてくる。

「祥子ちゃんは人の車でドライブするの初めて?」

永遠が聞いてきた。

「そうだよ」
「デートの時はいつもどこに行ってた?」

え?

「祥子ちゃん程可愛いんだもん。彼氏が全くいなかったって事はないでしょ」
「そうだな。恋人って意味だったら一人だけいた」
「一人だけ?」
「そうだ、一人だけだ」

恋人と呼べる存在、私が恋に堕ちたのは一人だけ。

「どうして好きになったの?」
「永遠と一緒だよ。押しが強くてな。ひたむきな姿勢にいつしか恋に落ちてた」
「へえ、その人とどこに行ったの?」
「彼の家」
「え?」

永遠は驚いていた。
無理もない初めてのデートが彼の家。永遠でなくても驚くだろう。

「続き聞きたいか?」

永遠に聞いていた。
どうしてそんな事を聞いたのか分からない。
誰かに聞いて欲しい。永遠になら話していいかもしれない。

「聞いて欲しいなら聞くよ……でも無理強いはしないよ」
「わかった。彼の告白を受けてから、彼が家に招待してくれるって言ってな。彼もお前と同じくらいカッコよくてな……」

そして、事に至った。恋人なら当たり前なんだろう?そう思っていた。私は浮かれていた。初めての恋に淡い希望を抱いていた。あの日までは。
だけど彼の態度が豹変した。メッセージを送っても電話をしても繋がらない。私は不安になってある日屋上に呼び出した。

「どうしたの?最近冷たいよ」
「そんな事無いよ、ただ……」

ただ何?

「重いんだよ」

え?

「もっと軽いノリの女だと思ってた。毎日電話してきたり。しつこいっていうかさ。面倒臭いんだよ」

面倒くさい?

「あ、芳樹こんなとこにいたの?」

派手な髪形の子が来た。

「ああ、ごめん。ごめん。そろそろ帰ろうか?じゃあ、祥子そう言う事で」
「何がそう言う事なの?」
「だから重いっていうんだよ。察しろよ。こいつ俺の今カノ。ここまで言えば分かるだろ?」

頭の中は真っ白だった。
ただ目からこぼれる一滴の涙。

「じゃ、そう言う事で。案外ちょろいから軽い女だと思ったんだけど。まあ、楽しかったし、そっちもいい経験したからいいだろ?じゃあな」

私の恋はたった一日で終わっていた。
それから私は男性を拒むようになった。
みんな私の体目当てなんだって思うようになった。
自然と拒絶していた。


永遠は私の話を黙って聞いていた

「俺も同じだと思ってる?」

永遠は一言そう聞いてきた。

「ああ、最初はそう思っていた」

男なんてみんな同じだろう。

「だよなあ、初めてがそれじゃ。そう思うのも悪くない。辛かったんだな」

それから永遠はずっと黙って運転していた。
車は展望台についていた。
景色が取れも綺麗だった。

「虹ってさ雨が降ったあとにかかるもんだよね?」

永遠が話し出した。

「祥子ちゃんの心もとても脆くて今はひび割れている。振り出した雨に濡れて、祥子ちゃんは立ち止まってしまった」

そうだな、私の心はあの日から立ち止まったままかもしれない。

「でもいつか誰よりも高く空へと近づく時がくる。輝きを集め光を求める。燃え尽きても構わない。すべては真実とともにある」

私の心に虹がかかる時が来るというのか?

「祥子ちゃんの事は分かった。それでも俺は思う。祥子ちゃんの事を。季節が流れていても目を閉じていつも見てた風景のように。俺が何度目でも雨を止めてあげる」
「……それって私に何度も雨を降らせるつもりか?」
「あ!?そ、そうじゃなくて。傷つくことを恐れるなっていうかさ。祥子ちゃんの心に雨が降りっぱなしってことは無い。何度も降るかもしれないけどいつかは止むんだぜ」

永遠の気持ちがどれだけ本気なのか分からない。
でも永遠の口から出る言葉は私の凍てついた心を溶かしてく。
もう一度だけ信じてみるか?

「祥子ちゃん?」
「いい加減その呼び方やめろ!気持ち悪い」
「ごめん。馴れ馴れしかったかな?そんなに怒らないでよ。ひょっとして機嫌悪い?」

こいつにかけてみよう、もう一度夜明けを見よう。
愛という言葉が憂いによく似てるって気づいた時夜が明けた。
青が争うほどの静けさに満ちてた、私の右側に永遠は滑り込んできた。

「祥子でいいよ」

私が言うと、永遠は笑みを浮かべる。

「そろそろ帰ろうか。祥子」
「そうだな」

私は助手席に座る。
永遠が運転席に座る。
私が決意して最初の一歩を走り出した。

(4)

私達は4人でドライブしていた。
香澄と大原君は盛り上がっていた。
私と小泉君は後部座席で黙って話を聞いていた。
小泉君は何も言わない。
来るときも一言も喋らなかった。
2人にさせられないと4人で来たけど私達の存在は邪魔なんじゃないだろうか?
この空気はまずい。
そう思っていたのは小泉君も一緒だったようだ。

「今日はお洒落なんですね。凄い似合ってます」

小泉君が言った。

「美月はいつもだよ。オフの時は人並みにお洒落する。てか今さらそんなこと聞くの」

その言い方はどうかと思うよ香澄。
ほら、彼がまた委縮してしまった。
彼からボールを渡された。私かボールを返球してみよう。

「小泉君はどんな格好の女性が好きなの?」

小泉君は何も言わない。あまり女性の服装に興味が無いのだろうか?

「すいません、最近の流行りとか全然知らなくて」
「流行りとか関係ないって、こういう子がかわいいとかってないの?」
「……スカートよりはパンツスタイルの方が好きです。かっこいい感じっていうのかな?」

なるほど。

「じゃあ趣味とかはないの?」

大原君が聞いていた。

「一人でドライブに行ったり登山かな。あと釣りとか」
「登山て結構ハードじゃないですか?」
「そうですね、でも登り切った時の爽快感はたまらないですよ」

意外な趣味だった。

「地味な趣味ですいません」

彼はすぐに謝る。悪い癖だと思う。

「旅行とか興味ないですか?」

私が聞いてみた。

「ありますよ、色んな山とか登ってみたいし」

そうじゃなくてさ。

「観光とかそう言うのには興味ないの!?」

業を煮やした香澄が聞いていた。

「無い事は無いですけど、一緒に行く人いないしドライブの延長線で一人旅してるし」

それならいける。

「大原君、夏休みはスケジュールどうなってるの?」
「県外に遠征ですね。ALICEについて行くことになります。あとは地元のテレビ局に売り込みとか」

私達は学生だから休みの間に少しでも仕事を取りたいと大原君は言う。
それなら問題ない。

「小泉君、一緒に行かない?各地の美味しい物食べたり」
「いいんですか?」
「馬鹿ね、付き人のあんたが同行しなくてどうするの?」

香澄が言う。

「そうでした」

ドライブから戻ると、男性陣はBBQの準備。女性陣は食材の準備。

「香澄ありがとうね」
「それはいいんだけどさ。あんた本気で小泉君と付き合うつもり?こう言っちゃ悪いけどなんか頼りないよ?」
「それなら問題ないわ。あの頼りない精神を叩き直すために合宿はあるんだから」

社長の奥さんが言った。

「そうだ、新入りの男はまず根性を鍛えなおす!渡辺班の通過儀礼だ」

美嘉さんが言う。
何をするつもりなんだろう?

(5)

「皆飲み物もったか~」

渡辺君が聞いていた。

「じゃあ、一日目だ。まだ新人と交流を持ってない人はガンガン押してやれ。乾杯」

渡辺君が言うと宴が始まった。
僕は愛莉が取ってきた食べ物を食べながら飲み物を飲む。

「冬夜、楽しんでるか?」

誠が来た。

「まあね、誠は新婚生活どう?」
「ラブラブの生活だぜ!……って言いたいけどやっぱりすれ違いの生活がな」

誠はJリーグの試合が、神奈はデパートの仕事が、休みも生活時間も合わないらしい。

「お前たちはどうなんだよ?」

誠が聞いてきた。

「最近残業が増えて来てね。愛莉に構ってやれてない」

やっぱり月末は忙しかった。

「そいつは問題だな。今からそんなんだと遠坂さんもストレスたまるだろ」

誠が言う。
それなんだよな。どうにかしてストレスを解消してやりたいんだけど。

「ガツンと言ってやればいいんだよ!冬夜は優しすぎだ!男には男の事情があるっていうんだ!」
「瑛大の言う通りだ!男は仕事をして稼いでくるって言う大切な役割があるんだ。嫁の相手ばっかりしてられるか!」

桐谷君と中島君が来た。
新しいコンビの誕生だな。誠は危険を察して逃げて行った。
僕は大丈夫。すでに横に愛莉がいるし。
愛莉はニコニコ笑ってる。

「桐谷君と中島君はどうなの?不満解消してあげれてる?」
「冬夜に言われてちゃんと世話してるよ。手のかかるったらありゃしない!」
「冬夜が羨ましいぜ。文句ひとつ言わない嫁さんが俺も欲しいよ」

この流れはまずい。
愛莉も察したらしい。

「でも二人共今はちゃんと家事分担してるんだよね」

愛莉が聞く。

「やらないと五月蠅いからな。仕方なくやってるよ」
「そんなに忙しいなら辞めてしまえば良いのにな。俺が稼いでやってんだから」
「それは言えてるな。わざわざ働かなくてもいいくらいの稼ぎはしてやってるつもりだぞ!」

誠が戻って来た。
誠……学習したんじゃなかったのか?

「やることやってんだから車の運転くらいでガタガタ言ってんじゃねえってもんだ」
「こちとら一日中気を使って気が休まる暇もねーっての?同棲なんてするもんじゃねーぜ」

まずい、そろそろ止めないと。
渡辺君も気づいたらしい。

「お、お前たちそろそろ飲むのは止めた方がいいんじゃないか?」

渡辺君が止めに入る。

「止めるな!渡辺君!俺達だって愚痴や不満を言う場所があってもいいはずだ!」
「今夜は無礼講だ!ガンガン行こうぜ!」
「冬夜も混ざれ!お前だって遠坂さんに言いたい事あるだろ?」

僕に話を振るな。

「僕は無いよ。遅くなってもちゃんと待っていてくれるし。仕事の愚痴も聞いてくれるしちゃんと朝も見送ってくれるし」
「そんなの最初のうちだって!そのうち化けの皮がはがれるって。うちの嫁見たら分かるだろ!」
「瑛大の言う通り!女性は最初はネコ被ってるもんだ!」
「そのうち床に寝転がってるだけで蹴飛ばされるんだぜ」
「冬夜さんはそんなことしないよ」

愛莉が抗議する。

「冬夜さんは黙っていてもやらなくていい事までやってくれる。仕事の愚痴って言うより悩み相談って感じだし。私の為に尽くしてくれる。そんな冬夜さんに不満なんて私は無い」
「それは冬夜と遠坂さんから言えるんだよ」
「誠の言う通り!亜依なんて口を開けば愚痴ばかりだぜ!」
「瑛大の言う事分かる穂乃果も最近愚痴が増えてきた!」
「まあ、遠坂さんは専業主婦だからな。理解できないかもしれないな」

渡辺君までいいだした。
僕は愛莉を連れて逃げ出したい。
だが、愛莉は機嫌が悪い様だ。

「愛莉ハンバーグ食べたい。取りに行こう?」
「冬夜さんは私に不満があるの?」
「あるわけないだろ?さっきも言った通り文句を言ったら罰があたるよ」
「それは遠坂さんは家にいるからだよ!」
「そうともかぎらないぜ?花菜も不満が多いんだ。構ってくれないって。俺だって疲れてるのに」

木元先輩まで混ざりだした。

「それは木元先輩が悪いんじゃないですか?冬夜さんは構ってくれるよ」
「冬夜だってそのうち変わるよ。まだ試用期間じゃないか」
「冬夜さんは休日は疲れてるのに私の相手してくれる。とても優しくしてくれる」
「愛莉ハンバーグ。もういいだろ?そのくらいにしとこう?」
「そうですね、あとは自分のお嫁さんに不満を言ってください。冬夜さんを変な事にまきこまないで」
「待て冬夜!俺はお前に人生の先輩としてアドバイスをだな!」

僕達はそんな言葉を後にハンバーグを取りにいった。
その場から逃げ出したかった。
この後待ち受けてる修羅場が迫っていたから。

「ほう、アドバイスか、私にもしてくれないか?自分の旦那のあしらい方で困ってるんだ」
「仕事が嫌なら辞めろか、随分と言いたい放題言ってくれるじゃないか?」
「女性は家にいるのが当たり前だとか随分古い考えをおもちのようですね?」
「休みの日に私を放ってバスケに行く余裕はあるのに随分勝手な言い分ですね」

カンナと亜依さんと穂乃果さんと花菜さんが言う。

誠達は振り返ると作り笑いをする。

「あはは……」

4人は作り笑いをする。
その後4人の女性の怒声が聞こえてきたけど気にしないで食べ物にありつく。

「冬夜さん食べ過ぎは駄目ですよ。それと肉は私焼いてあげますので、冬夜さんすぐ生で食べるから」
「ありがとう、でも愛莉も食べなよ」
「ちゃんと食べてますよ」
「ならいいけど」
「お前たちも災難だな」

渡辺君が言う。
美嘉さんが調理してるから渡辺君は難を逃れたらしい。

「渡辺君も不満があるの?」
「前にも言ったが美嘉は片づけを知らないんだ」

渡辺君がそう言って笑う。

「冬夜さんは本当に不満が無いの?」
「愛莉に心配かけっぱなしで申し訳ないと思ってるくらいだよ」
「ならいいんですが」
「最後の肉焼けたぞー」
「そろそろお開きにするか?」

美嘉さんが言うと渡辺君が言う。
そのあと渡辺君と僕とで4人を宥めながら片づけを始めた。
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