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LASTSEASON
喜びも切なさも背負って
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(1)
「それでは乾杯」
西松君がグラスを挙げると宴の始まり。
今日は桐谷夫妻の披露宴に呼ばれた。
そして今2次会に来ている。
僕のテーブルには多田夫妻、翔、ちぃちゃん、水島夫妻がいる。
今日は石原夫妻は欠席。
何でも東京に用事が出来たとか。
芸能事務所USEは順調の様だ。
ALICEはデビューシングル「絶対零度の愛のスピード」は一月で50万枚の売り上げを記録し。100万ダウンロードを越え、どうして音楽番組に出てこないのかと疑問視されている。
近いうちに2ndシングル「いけない境界線」と共に1stアルバム「ALICE」をリリースするそうだ。
ライブは石原夫妻の意向で九州圏内にとどめている。
その代わり会員制のネット配信でライブ中継を行ったりしているらしい。
阿南君と仲さんはダブル主演で映画の収録が始まったらしい。
来年春に公開予定だそうだ。
色んな番組にゲスト出演している。
「どうせバレてるんだからもういいでしょ?」
と恵美さんの一声で映画の撮影が終わったら挙式するらしい。
ますたーども順調のようで出演依頼が殺到しているそうだ。
春休みの今の期間だけ特別に東京に泊まり込みで仕事をこなしているらしい。
誠も開幕戦から出場してハットトリックを決めるなどの活躍を見せている。
アウェーに泊まりで行くときは必ずカンナによる電話をするように徹底しているらしい。
「この馬鹿は今まで電話して一度足りとてホテルで大人しくしてた試しはない!」
と、神奈は言ってる。
翔とちいちゃんも張り切ってる。
取りあえずは部への昇格を目指してメンバーの確保を目指しているらしい。
今は女バスと合同で練習しているらしい。
男バスの監督は決まっているのだがまだ一度も顔を見たことがないそうだ。
大丈夫なのか?
佐は今の仕事にやっと慣れて来たらしい。バスケも今の空気に馴染んできたとか。
桜子さんはサッカー監督のライセンスを取るために準備をしてるらしい。
子供を産める環境づくりもしてるそうだ。
佐大変だな。
大変なのは酒井夫妻もそうだ。
酒井君が休日出勤をするたびに零細企業が一つ傾く。
だから最近は電話で用件を澄ませるようにしているのだが、二人でデートしている最中に電話がかかってきて晶さんが激怒。
当然のように交渉は一方的に決裂し、相手に数億円の損害を出したそうだ。
ちなみに今年度の失業率は過去最悪を記録したらしい。
倒産する企業が多く檜山先輩も大変だったらしい。
一方木元先輩はまるで現場所長のような待遇になったらしい。
今年の地元大から入社する亀梨君達は木元先輩の下につけてまとめることにしてあると聞いた。
失業率が上がれば当然生活保護の申請も増えて、渡辺君達の仕事が増えたらしい。
倒産する企業が増えれば僕達の仕事も増える。
酒井君の家には毎日のように脅迫文が届くのだとか。
問題を作った張本人・晶さんは何事もなかったかのように今二次会を楽しんでいる。
公生達高校生組も高校生活を楽しんでいるようだ。
今年は修学旅行がある。
「お客様。そろそろラストオーダーの時間です」
最後のドリンクを取りに行く。
「冬夜達三次会は行くんだろ?」
「うん、行くよ」
誠は何か話があるようだ。
「どうした?」
「いや……三次会で話す」
どうしたんだ?
「皆さん、この後はカラオケです。参加される方は……」
西松君が声かけをしている。
渡辺班は西松君と栗林君が引き継ぐことになった。
その二人なら何とかやっていけるだろう。
そう思った。
二次会には高校生組を除く皆が行くことになった。
ぞろぞろと群れをなして歩いていく。
カラオケ店につき部屋に入ると誠と瑛大に両サイドを固められる。
愛莉を見る。愛莉はカンナ達と話しているようだ。
「で、どうなんだよ?」
桐谷君が聞いてきた。
「なにが?」
「何がじゃねーよ!色々愚痴りたいことあるだろ!もうお前ら夫婦なんだし」
ああ、そういう話題か。
「それがさ……」
「それが!?」
二人に注目される。
「無いんだよね?」
「は?」
二人とも同じリアクション。
同棲生活が長かったからだろうか?
全くと言っていいほど変わりがない。
あるとすれば愛莉が隙あらばいつでも抱きついてくるくらいか?
呼び方も「冬夜さん」から変わらなかった。
「旦那様」くらいは覚悟していたのだが……。
「それ、やばくね?」
誠が言う。
「どういう意味?」
「表に出さないってことは多分相当ため込んでるぜ?」
そうなのかな?
愛莉を見る。楽しそうに話をしている。
そんな愛莉を見ていると目が合ってしまった。
「誠君達ダメだよ。冬夜さんに変な事吹き込んだら」
「そんなことないよな、冬夜」
「普通に話ししてるだけだよな?」
「ああ、変な事なんて何も話してないよ」
誠と桐谷君に話を合わせる。
「じゃあ、今言っても問題ないよな?何を話してた!?」
カンナが聞いてきた。
「お、男同士の話題ってあるだろ!神奈だって聞かれたくない事くらいあるだろ?」
誠が返す。
カンナと亜依さんと愛莉はにやりと笑う。
そしてカンナが言う。
「じゃあ、こっちにこい。私達の話を聞かせたらそっちも話せるよな?」
僕達は席を移動する。
すると愛莉が言う。
「あのね、入籍してから冬夜さんがどうなった?って話してたの」
「それで愛莉はなんて答えたの?」
「前より優しくなったって答えました」
亜依さんとカンナはニヤニヤ笑ってる。
「聞いたぜ朝起きたら必ずキスしてるんだってな?」
「で、帰ったらぎゅーってハグしてるそうじゃん」
カンナと亜依さんが言う。
「そうだけど?しちゃまずかった?」
僕が聞く。
「そうじゃねーよ!もっと愛莉から愚痴を聞き出せるかと思ったらのろけ話ばっかりじゃねーか!」
「苦労してる私達っていったいなんなのよ!片桐君説明して!」
言ってることが無茶苦茶だぞ二人共。
「冬夜お前毎日そんな羨ましい生活してるのかよ!」
「何二人で幸せムード垂れ流してんだよふざけんな!」
誠と桐谷君からも言われる。
「で、お前らは何話してたんだよ?」
カンナに聞かれるとありのままを説明した。
別に聞かれてもまずくないと思ったから。
「ああ!時計を戻せるものなら戻したい!あの時力づくでもトーヤを奪っておけばよかった!」
「私も高校生に戻りたい!瑛大に告った自分を必死でやり直したい」
二人が叫ぶ。
「どうした。何事だ!?」
渡辺君が混ざって来た。
「ちょっと聞いてよ渡辺君!」
亜依さんが渡辺君に話をする。
渡辺君は笑っていた。
「そんなの入籍前からわかってたことじゃないか」
渡辺君は言う。
「中学からじゃ遅いんだよな……転校前に無理矢理唇奪っておけばよかったのか!?」
「私ももう少し真面目に彼氏選べばよかったよ!」
カンナと亜依さんが言う。
大分飲んでるな。
「そ、そんな事言うなよ神奈。俺でも傷つくぜ」
「あ、亜依も落ち着けよ……」
誠と桐谷君が言う。
「飲もう!亜依!明日は休みとった!朝まで付き合うぜ!」
「もちろんよ神奈!こんなくそ亭主掴まされた者同士徹底的に飲もう」
カンナと亜依さんが盛り上がってる。
「愛莉!お前も朝まで付き合えよ!愛莉も結婚したんだ!結婚の現実ってもんを見せつけてやる!」
「愛莉!あんた宝くじ当てたような物よ!どれだけ私達が悲惨な目にあってきたか……」
今日は女性陣が荒れてるな。
「そう言う話なら私ものるぜ!子供が欲しいって言いながら仕事で疲れたって一向に相手してくれねーんだぜ!」
美嘉さんまで加わった。
そうなると次々と加わるのが女性陣。
「片づけが出来ない!」
「料理作るだけで洗い物をしない!」
「休みの日に構ってくれない!」
次々と不満が爆発し、飛び火する。
それは未婚の女性にまで引火した。
「そういえば、長谷部君あれから一回も誘ってくれないわね」
「そ、それは仕事が忙しいし!一緒に帰ることすらできないし!地元を二人でうろつけないし」
悠木さんと長谷部さんが言ってる。
「善君は子供欲しくないの?」
「今子供作ったら間違いなく誘拐されますよ!」
酒井君の言い訳が凄いと思った。
大荒れの惨事会は朝まで続いた。
僕と愛莉は見守ることしかできなかった。
男性陣はただただ宥めるのに必死だった。
「せっかくローン組んで買った車でちょっと山上るくらいいいだろ」
「それはだめだ。渡辺班ではそう言うのはご法度なんだ」
渡辺君は美嘉さんだけでなく柚希さんや祥子さんを宥めなきゃいけない。
西松君と栗林君は?
「大体うちの病院女医が少なすぎるのよ!その女医も態度悪いくそババアばかりで!」
「こ、今度若手の研修医が入るって父さん言ってたから……」
「どうせ当直3連勤がきついって辞める腑抜けでしょ!」
深雪さんが荒れてるなんて珍しいな。
医者も大変なんだな。
「純一さん次これ歌って」
「あ、ああ。わかったよ」
北村さんはマイペースだな。
そして時間になると皆スイッチが入れ替わったかのように愚痴がぴたりとやみ解散していく。
「おつかれさま~」
一言残して。
僕も愛莉と始発のバスで帰る。
「ねえ愛莉?」
「どうかされましたか?」
「僕達が結婚してもうすぐ一月だよね?」
「あっという間でしたね」
「うん、愛莉は僕に本当に不満無いの?」
「ありませんよ」
「そうか」
ならいいんだけど。
「私の方こそ冬夜さんにご迷惑おかけしてませんか?」
「別に何も無いんだ」
だから不思議なんだ。何かあってもおかしくない気がするんだけど。
「いいじゃないですか。お互いが幸せならそれで」
「……そうだね」
バス停で降りると愛莉と二人で歩いて帰る。
家に帰ると風呂に入って愛莉を待つ。
愛莉が髪を乾かすと一緒にベッドに入る。
「でもよかったです。冬夜さんに不満が無くて」
「心配してた?」
「男の人って変わるって聞いてたから」
「僕も女性って変わると聞いていたよ」
お互いが意識してるんだな。
でも愛莉は笑う。
「でもまだまだ序の口ですよ」
「え?」
「出産したら女性は変わるそうですよ」
そう言って愛莉は笑う。
それは僕もきいた。
木元先輩もそれを恐れて中々子作りしないらしい。
もっともそんな時間もないらしいが。
「でも冬夜さんなら大丈夫ですよね?」
愛莉は言う。
「努力するよ」
「はい、お願いします。お願いついでなんですけど……」
「どうしたの?」
「いつ産みたいですか?」
なんで鶏が卵産むみたいに簡単に言うかな。
「結婚して2年はって聞いたけど」
「そんなに悠長に待ってられませんよ」
「愛莉はいつくらいがいいの?」
「早ければ式が終わったらがいいかな」
「分かった」
「じゃ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
結婚してもうすぐ一か月。
僕達の蜜月はまだ続いていた。
(2)
「うーん……」
僕は悩んでいた。
恵美も考え込んでいる。
目の前にいるのは親子。
子供はまだ小学生になったばかりくらいの子供。
履歴書を見ると今年小学校に入学するらしい。
「他の事務所には行かれたんですか?」
「はい、ですが。うちでは扱えないと言われて」
「どうして?」
「入所費や管理費がかかるとか、スカウトや紹介じゃないと受け入れられないとか」
有名どころは駄目だったらしい。
「萩原、演技力はどうなの?」
恵美が演技指導の萩原さんに聞いていた。
「悪くはないですね。あとは売込みの手腕といったところでしょうか」
親の躾はいいらしい。
現に今も黙って座っている。
あと欲しいのは子供らしさだという。
目の前に座っている女の子・烏丸こころちゃんを見る。
まだ6歳だというのに野望あふれる目をしている。
実力は未知数。
それは僕達の事務所も同じ。
今のところ上手くいってる。
ここは冒険に出るべきか。
「こころちゃんはどうして子役になろうと思ったの?」
僕はこころちゃんに質問していた。
「お芝居に憧れたから」
「厳しい世界だとおもうけどやっていけそう?」
「頑張ります!」
覚悟はあるようだ。
「恵美、萩原さんは東京にずっといるんだよね?」
「そうね、阿南君達も拠点を東京に移してるし」
「僕は勝負に出ても良いと思うんだけど、恵美はどう思う?」
「いいんじゃない。社長はあなたよ。あなたに従うわ」
僕はお母さんに話をした。
「うちはタレントは4組しかいない小さな事務所です。大きなプロダクションに比べたら正直仕事を取れるかも難しい」
お母さんは肩を落とす。
「ですから当社としては賭けに近い。大きなプロダクションに入ったほうが安全だと思います」
しかしこころちゃんの表情に賭けよう。
「入会費はいりません。こころちゃんに投資します。ただし月々のレッスン料は頂きます」
あとの説明は営業の成原さんにまかせる。
成原さんが契約内容について説明する。
本人の意思確認もする。
ずっと芸能界でやっていく覚悟があるのか等だ。
マネージャーも準備することにした。
そこまで投資して採算がとれるかは分からないが、萩原さんの目を信頼しよう。
親の同意を得てその場で契約書を交わす。
労働条件等もきちんと整理する。
普通子役の交通費等は自己負担だが、マネージャーも準備している事だし経費はこちらで負担する。
ギャラは月給制にした。
一通りの説明と契約が終ると烏丸親子は帰っていった。
そのあと、成原さんと萩原さんを通じて今後の戦略を立てる。
成原さんはとにかく売込みをかけてオーディションに参加させる。
あとは萩原さんの演技指導次第。
素直な子の様だ。
きっとうまくいくだろう。
その後阿南君たちと食事をして近況を聞く。
公私ともに上手く言ってるらしい。
中村さんからも説明がされる。
東京に進出して成功だったようだ。
夕食を終えるとホテルに泊まって翌朝帰ることにした。
「USEも大きくなっていくわね」
恵美が言う。
「僕はどっちの仕事に専念したらいいんだい?」
「どっちもよ?」
「え?」
「ETCは将来あなたの会社になるのよ?」
恵美はそう言って笑った。
僕は多忙な日を迎えることになりそうだ。
「仕事もいいけど、軌道に乗ってきたんだしそろそろ子どもの事も考えてよね?」
「……帰ってから考えるよ」
二つの会社と育児。
大変な未来が待っていた。
(3)
「じゃあ、僕一度家に帰ります」
「ああ、場所はわかってるな?」
「去年と同じ店ですよね?」
「ああ、遅れるなよ」
「はい、じゃあお先に失礼します」
そう言って会社を出ると愛莉に電話する。
「愛莉、今から帰るから準備して待ってて」
「はい、わかりました。気を付けて帰ってきてくださいね」
電話を終えると僕は家に帰る。
4月。
花見の時期だ。
と、いってもまたフグ料理屋だけど。
「お祝いもまだだし、折角だから奥さんつれておいで」
社長がそう言うと皆伴侶を連れてくることになった。
家に帰ると愛莉が仕度をして待っている。
愛莉を連れてバスに乗ると街へ行って繁華街の外れにある料亭にいった。
みんな揃っている。
「遅れました。すいません。バスが無くて」
「主人がいつもお世話になってます」
「いや、こちらこそ。片桐君はよく働いてくれてるよ。1年でもう1線で働いてるなんて珍しいくらいだ」
社長が言う。
愛莉は皆に酌をして挨拶して回る。
「良い嫁さんもらったな!」
達彦先輩が言う。
「冬夜の将来は安泰だな。あとは子供を作るくらいか」
郡山先輩が言う。
その後皆で盛り上がった。
僕はふぐを一生懸命食べてた。
愛莉は皆と会話している。
そうして一次会を終えると二次会にいく。
「悪い、俺子供の面倒みなきゃいけないから」
達彦先輩がそう言って帰っていった。
「あいつも暫く大変だろうな」
郡山先輩が言う。
3歳くらいまでは手がかかるらしい。
愛莉は真剣に聞いていた。
「お前たちは二次会くるだろ?」
郡山先輩が言う。
「愛莉大丈夫?」
「はい」
愛莉たちは女性陣で盛り上がっているようだ。
スマホの連絡先も交換したらしい。
僕は郡山先輩と社長の激励を受けてた。
「上原を見てたら分かると思うが、ここからが大変だぞ。ちゃんと育児も手伝ってやらないと」
「達彦がいいお手本になる。しっかり見とけ」
社長と郡山先輩が言う。
沢尻さんも「しっかりな」と言ってくれた。
バーで一杯飲むと二次会は終わり。
その後解散する。
折角だから愛莉ともう一軒バーによって飲んで帰る。
お風呂に入ると愛莉がお茶漬けを用意してくれた。
「きっとお腹空いてると思って」
それを食べてる間に愛莉は風呂に入る。
愛莉は風呂に入った後それを片付けて、寝室に行く。
家計簿をつけ終えた頃には時計は0時を回っていた。
「そろそろ寝ましょうか?」
「そうだね」
愛莉とベッドに入る。
「ねえ冬夜さん」
「どうした?」
「私今日冬夜さんの妻としてちゃんとやれたでしょうか?」
「皆出来た嫁さんだなと褒めてくれてたよ」
「それはよかったです」
愛莉は喜んでる。
「二日連続で飲み会大丈夫ですか?」
明日は渡辺班の花見だ。
「なんとかなるよ」
「飲み過ぎに注意してくださいね」
「ああ、わかってる」
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」
愛莉は静かになった。
結婚してからあっという間に春になった。
そしてまた新しい年度になる。
(4)
「それじゃ皆さん乾杯!」
西松君が言うと宴の始まり。
僕と、中島君と桐谷君と誠が一緒になってる。
この3人と一緒にいるとろくな事が無いんだが。
桐谷君はETCの営業を任せられてるらしい。
営業といっても客を取ってくる仕事じゃない。
自社製品を売り込んでくる客先の対応だ。
と、言っても相手は社長とか銀行の社員とかお偉いさんばかり。
てんてこまいの一週間だったらしい。
それでも詐欺商法よりはましだと張り切っている。
誠は相変わらずの活躍を見せている。
誠が言う天才クラスのフォワードは海外クラブに所属してるのでJ1ではトップクラスに位置するらしい。
現に得点王争いに加わっている。
アウェーで泊まり込みになると夜遊びをするのは相変わらずらしい。
カンナの悩みの種だそうだ。
中島君は相変わらず公務員としての責務を重く感じているけどそこは穂乃果さんが支えてくれてるらしい。
中島君は当然のように夜遊びはしない。
公務員と言えば渡辺君達は4月にはいって担当する人が替わる為引継ぎ業務が大変なんだとか。
咲さんもETCの事務職で働きだした。
ETCと言えば石原君は2年目にして代表取締役としての仕事を覚え始めたらしい。
USEといい大丈夫なんだろうか?
USEといえば新人が加入したらしい。烏丸こころちゃん。今年小学1年生の子役。
やる気と演技力と礼儀正しさで現場にも受けが良く仕事が順調に入ってるそうだ。
ALICEももう歌姫としての立ち位置を獲得した。
CDの売り上げもダウンロード数も新人ではありえないほど好調なんだとか。
春休みの間に一度だけ音楽番組に出演した。
ますたーども地元と東京の行き来が大変だという。
阿南君達も4月からのドラマに抜擢されてる。
USEはさらなる事業拡大を狙っている。
もちろんそれを良く思っていない芸能事務所もいるようだ。
色んな嫌がらせを受けているが、江口家の報復は過激なようで二度目の嫌がらせはほとんどないらしい。
晶さんの家の建設会社に入った面々は木元先輩の下で働いてる。
現場監督とはいえ新人。
業務は過酷なんだそうだ。
神奈や亜依さん穂乃果さんも仕事に慣れたようで元気に仕事してる。
酒井君は更なる局面に入ってるらしい。
「子供が欲しい」
晶さんの言葉は周りを凍り付かせる。
酒井君の苦労もそうだけど、晶さんが育児を始めれば、さらに晶さんの機嫌を窺わなければならない。
晶さんの気分一つで会社が傾く。
社長よりも力がありそうだ。
美嘉さんは実力をつけている。
檜山先輩から独立してはどうか?と打診されていると聞いた。
しかし美嘉さんはまだ早いと断った。
理由は子供が欲しいから。
子供がある程度育ったら独立を考えるそうだ。
そんな皆の朗報を聞きながら宴は進んでいた。
「西松!今年の新人はどうするんだ!?」
カンナが言う。
「まだ前期始まってないんですよ。ちょっと待ってくださいよ」
西松君が言う。
「ノルマは最低一組だからな!調教しがいのあるやつを連れてこい!」
美嘉さんが言う。
「まあまあ、俺達は余計な口出しをするのはよそう。大学生は西松君達に任せてるんだ」
渡辺君が言う。
「冬夜、新婚生活は順調か?」
誠が聞いてきた。
「ああ、お陰様で。何事もなく順調に暮らしてるよ」
愛莉からも苦情はない。
相変わらず甘えて来るけど。
「どうしたらそうなるんだ?」
桐谷君が聞いてきた。
「それは僕より桐谷君達の方が分かってると思うけど?」
「分からねーから聞いてるんだよ!」
桐谷君が立ち上がる。
皆が何事かと桐谷君を見る。
「分かったから取りあえず座れ」
誠が宥める。
「誠、お前も不思議に思わないのか?この二人どう考えてもおかしいぜ!」
「そうだな……」
誠は何か思う事があるようだ。
「中学生の時から二人を見て来たけどやっぱり積み重ねなんだろうな?大学に入るまでは二人とも喧嘩ばっかりだったぜ」
「そうなのか?」
「ああ、あの頃から比べると冬夜も愛莉さんも変わったよ。お互いを思いやるようになってる」
誠が語る。
そんな変わった気がしないけどな。
「もちろん変わらない事もあるぜ」
「なんだよそれ」
桐谷君が聞いてた
「2人ともずっとお互いを好きでいること。昔は好きだから不安だった。だから喧嘩する。今はお互いが好きなんだと分かり合えてるから信じられるんだ」
誠は今日はやけに雄弁だな。
「そこまで分かっていて何でお前は昔から変わらないんだ?」
カンナが言う。
「皆が皆冬夜達なわけないだろ?晴斗達やちぃみたいにやッと恋愛感情に気付いた者だっているんだ。それに……」
それに?
「俺だって昔から神奈を見てる。神奈を好きでいる。だから高校が離れ離れになっても今までやってこれたんだろ?」
「……確かにな」
今日の誠は何か違うぞ。
「もう恋に落ちたって時期はサヨナラなんだ。途切れない悲しみの果てに辿り着いたから俺達だって結婚したんだろ?」
サヨナラ恋か……。
白い溜息はいつのまにか空に消えて。
見上げれば桜はピンクの蕾をつける。
僕達は巡り巡ってく。
喜びも切なさも背負って春を待っている。
今この一瞬を抱きしめよう。
僕らはここにいる。
「なんかいまいち盛り上がりに欠けるな!もっとパーッとやろうぜ!」
美嘉さんが言う。
「やっぱり冬夜達の新婚生活か?」
渡辺君が言うと亜依さんとカンナが言う。
「それは止めてくれ。私達が虚しくなるだけだ」
二人が言うと大笑いしていた。
(5)
「冬夜さん、起きてくださいな。朝ですよ」
「おはよう愛莉」
愛莉と朝の挨拶を交わす。
「朝食の仕度してきますね」
愛莉はキッチンに向かう。
窓を見る。今日もいい天気だ。
夢心地の朝一番に、差し込んだ光。
もうみんな別々の道を歩んでる。まだ心の準備が出来てないけど時間は待ってくれない。
深すぎて、直接心に触れられない。
桜が手を振る君の肩に。
恋心よさようなら。
1人きりの吐息が紡ぐメッセージ。
恋心にさようならを告げる声は君に聞こえるかな?
空っぽなこの広い世界に、語りだす瞳はあのままで僕を見つめそっと微笑む。
なんでそんなにしっかり立っていられるのだろうか?
縮まらない何かを僕らは知っているのだろうか?
桜よ、何処までも舞い散る君の声に愛おしきこの空へと息が紡ぐメッセージ。
途切れない悲しみの果てはどこ?
桜よ、涙は全部忘れて。
これから恋に落ちるけど君に届きますか?
仕度をして朝食を取ると愛莉と話をしながら時間を過ごす。
短い様で長い一時。
そして出勤する。
「行ってらっしゃい、お気をつけて」
「行ってきます」
笑顔で見送る愛莉に応えて家を出る。
恋にサヨナラを告げてこれから愛に落ちる。
その声は届くだろうか。
また新しい一日が始まる。
皆それぞれ別々の道を歩みだす。
心の準備なんて待ってくれない。
僕達はそれぞれの道を歩き続ける。
「それでは乾杯」
西松君がグラスを挙げると宴の始まり。
今日は桐谷夫妻の披露宴に呼ばれた。
そして今2次会に来ている。
僕のテーブルには多田夫妻、翔、ちぃちゃん、水島夫妻がいる。
今日は石原夫妻は欠席。
何でも東京に用事が出来たとか。
芸能事務所USEは順調の様だ。
ALICEはデビューシングル「絶対零度の愛のスピード」は一月で50万枚の売り上げを記録し。100万ダウンロードを越え、どうして音楽番組に出てこないのかと疑問視されている。
近いうちに2ndシングル「いけない境界線」と共に1stアルバム「ALICE」をリリースするそうだ。
ライブは石原夫妻の意向で九州圏内にとどめている。
その代わり会員制のネット配信でライブ中継を行ったりしているらしい。
阿南君と仲さんはダブル主演で映画の収録が始まったらしい。
来年春に公開予定だそうだ。
色んな番組にゲスト出演している。
「どうせバレてるんだからもういいでしょ?」
と恵美さんの一声で映画の撮影が終わったら挙式するらしい。
ますたーども順調のようで出演依頼が殺到しているそうだ。
春休みの今の期間だけ特別に東京に泊まり込みで仕事をこなしているらしい。
誠も開幕戦から出場してハットトリックを決めるなどの活躍を見せている。
アウェーに泊まりで行くときは必ずカンナによる電話をするように徹底しているらしい。
「この馬鹿は今まで電話して一度足りとてホテルで大人しくしてた試しはない!」
と、神奈は言ってる。
翔とちいちゃんも張り切ってる。
取りあえずは部への昇格を目指してメンバーの確保を目指しているらしい。
今は女バスと合同で練習しているらしい。
男バスの監督は決まっているのだがまだ一度も顔を見たことがないそうだ。
大丈夫なのか?
佐は今の仕事にやっと慣れて来たらしい。バスケも今の空気に馴染んできたとか。
桜子さんはサッカー監督のライセンスを取るために準備をしてるらしい。
子供を産める環境づくりもしてるそうだ。
佐大変だな。
大変なのは酒井夫妻もそうだ。
酒井君が休日出勤をするたびに零細企業が一つ傾く。
だから最近は電話で用件を澄ませるようにしているのだが、二人でデートしている最中に電話がかかってきて晶さんが激怒。
当然のように交渉は一方的に決裂し、相手に数億円の損害を出したそうだ。
ちなみに今年度の失業率は過去最悪を記録したらしい。
倒産する企業が多く檜山先輩も大変だったらしい。
一方木元先輩はまるで現場所長のような待遇になったらしい。
今年の地元大から入社する亀梨君達は木元先輩の下につけてまとめることにしてあると聞いた。
失業率が上がれば当然生活保護の申請も増えて、渡辺君達の仕事が増えたらしい。
倒産する企業が増えれば僕達の仕事も増える。
酒井君の家には毎日のように脅迫文が届くのだとか。
問題を作った張本人・晶さんは何事もなかったかのように今二次会を楽しんでいる。
公生達高校生組も高校生活を楽しんでいるようだ。
今年は修学旅行がある。
「お客様。そろそろラストオーダーの時間です」
最後のドリンクを取りに行く。
「冬夜達三次会は行くんだろ?」
「うん、行くよ」
誠は何か話があるようだ。
「どうした?」
「いや……三次会で話す」
どうしたんだ?
「皆さん、この後はカラオケです。参加される方は……」
西松君が声かけをしている。
渡辺班は西松君と栗林君が引き継ぐことになった。
その二人なら何とかやっていけるだろう。
そう思った。
二次会には高校生組を除く皆が行くことになった。
ぞろぞろと群れをなして歩いていく。
カラオケ店につき部屋に入ると誠と瑛大に両サイドを固められる。
愛莉を見る。愛莉はカンナ達と話しているようだ。
「で、どうなんだよ?」
桐谷君が聞いてきた。
「なにが?」
「何がじゃねーよ!色々愚痴りたいことあるだろ!もうお前ら夫婦なんだし」
ああ、そういう話題か。
「それがさ……」
「それが!?」
二人に注目される。
「無いんだよね?」
「は?」
二人とも同じリアクション。
同棲生活が長かったからだろうか?
全くと言っていいほど変わりがない。
あるとすれば愛莉が隙あらばいつでも抱きついてくるくらいか?
呼び方も「冬夜さん」から変わらなかった。
「旦那様」くらいは覚悟していたのだが……。
「それ、やばくね?」
誠が言う。
「どういう意味?」
「表に出さないってことは多分相当ため込んでるぜ?」
そうなのかな?
愛莉を見る。楽しそうに話をしている。
そんな愛莉を見ていると目が合ってしまった。
「誠君達ダメだよ。冬夜さんに変な事吹き込んだら」
「そんなことないよな、冬夜」
「普通に話ししてるだけだよな?」
「ああ、変な事なんて何も話してないよ」
誠と桐谷君に話を合わせる。
「じゃあ、今言っても問題ないよな?何を話してた!?」
カンナが聞いてきた。
「お、男同士の話題ってあるだろ!神奈だって聞かれたくない事くらいあるだろ?」
誠が返す。
カンナと亜依さんと愛莉はにやりと笑う。
そしてカンナが言う。
「じゃあ、こっちにこい。私達の話を聞かせたらそっちも話せるよな?」
僕達は席を移動する。
すると愛莉が言う。
「あのね、入籍してから冬夜さんがどうなった?って話してたの」
「それで愛莉はなんて答えたの?」
「前より優しくなったって答えました」
亜依さんとカンナはニヤニヤ笑ってる。
「聞いたぜ朝起きたら必ずキスしてるんだってな?」
「で、帰ったらぎゅーってハグしてるそうじゃん」
カンナと亜依さんが言う。
「そうだけど?しちゃまずかった?」
僕が聞く。
「そうじゃねーよ!もっと愛莉から愚痴を聞き出せるかと思ったらのろけ話ばっかりじゃねーか!」
「苦労してる私達っていったいなんなのよ!片桐君説明して!」
言ってることが無茶苦茶だぞ二人共。
「冬夜お前毎日そんな羨ましい生活してるのかよ!」
「何二人で幸せムード垂れ流してんだよふざけんな!」
誠と桐谷君からも言われる。
「で、お前らは何話してたんだよ?」
カンナに聞かれるとありのままを説明した。
別に聞かれてもまずくないと思ったから。
「ああ!時計を戻せるものなら戻したい!あの時力づくでもトーヤを奪っておけばよかった!」
「私も高校生に戻りたい!瑛大に告った自分を必死でやり直したい」
二人が叫ぶ。
「どうした。何事だ!?」
渡辺君が混ざって来た。
「ちょっと聞いてよ渡辺君!」
亜依さんが渡辺君に話をする。
渡辺君は笑っていた。
「そんなの入籍前からわかってたことじゃないか」
渡辺君は言う。
「中学からじゃ遅いんだよな……転校前に無理矢理唇奪っておけばよかったのか!?」
「私ももう少し真面目に彼氏選べばよかったよ!」
カンナと亜依さんが言う。
大分飲んでるな。
「そ、そんな事言うなよ神奈。俺でも傷つくぜ」
「あ、亜依も落ち着けよ……」
誠と桐谷君が言う。
「飲もう!亜依!明日は休みとった!朝まで付き合うぜ!」
「もちろんよ神奈!こんなくそ亭主掴まされた者同士徹底的に飲もう」
カンナと亜依さんが盛り上がってる。
「愛莉!お前も朝まで付き合えよ!愛莉も結婚したんだ!結婚の現実ってもんを見せつけてやる!」
「愛莉!あんた宝くじ当てたような物よ!どれだけ私達が悲惨な目にあってきたか……」
今日は女性陣が荒れてるな。
「そう言う話なら私ものるぜ!子供が欲しいって言いながら仕事で疲れたって一向に相手してくれねーんだぜ!」
美嘉さんまで加わった。
そうなると次々と加わるのが女性陣。
「片づけが出来ない!」
「料理作るだけで洗い物をしない!」
「休みの日に構ってくれない!」
次々と不満が爆発し、飛び火する。
それは未婚の女性にまで引火した。
「そういえば、長谷部君あれから一回も誘ってくれないわね」
「そ、それは仕事が忙しいし!一緒に帰ることすらできないし!地元を二人でうろつけないし」
悠木さんと長谷部さんが言ってる。
「善君は子供欲しくないの?」
「今子供作ったら間違いなく誘拐されますよ!」
酒井君の言い訳が凄いと思った。
大荒れの惨事会は朝まで続いた。
僕と愛莉は見守ることしかできなかった。
男性陣はただただ宥めるのに必死だった。
「せっかくローン組んで買った車でちょっと山上るくらいいいだろ」
「それはだめだ。渡辺班ではそう言うのはご法度なんだ」
渡辺君は美嘉さんだけでなく柚希さんや祥子さんを宥めなきゃいけない。
西松君と栗林君は?
「大体うちの病院女医が少なすぎるのよ!その女医も態度悪いくそババアばかりで!」
「こ、今度若手の研修医が入るって父さん言ってたから……」
「どうせ当直3連勤がきついって辞める腑抜けでしょ!」
深雪さんが荒れてるなんて珍しいな。
医者も大変なんだな。
「純一さん次これ歌って」
「あ、ああ。わかったよ」
北村さんはマイペースだな。
そして時間になると皆スイッチが入れ替わったかのように愚痴がぴたりとやみ解散していく。
「おつかれさま~」
一言残して。
僕も愛莉と始発のバスで帰る。
「ねえ愛莉?」
「どうかされましたか?」
「僕達が結婚してもうすぐ一月だよね?」
「あっという間でしたね」
「うん、愛莉は僕に本当に不満無いの?」
「ありませんよ」
「そうか」
ならいいんだけど。
「私の方こそ冬夜さんにご迷惑おかけしてませんか?」
「別に何も無いんだ」
だから不思議なんだ。何かあってもおかしくない気がするんだけど。
「いいじゃないですか。お互いが幸せならそれで」
「……そうだね」
バス停で降りると愛莉と二人で歩いて帰る。
家に帰ると風呂に入って愛莉を待つ。
愛莉が髪を乾かすと一緒にベッドに入る。
「でもよかったです。冬夜さんに不満が無くて」
「心配してた?」
「男の人って変わるって聞いてたから」
「僕も女性って変わると聞いていたよ」
お互いが意識してるんだな。
でも愛莉は笑う。
「でもまだまだ序の口ですよ」
「え?」
「出産したら女性は変わるそうですよ」
そう言って愛莉は笑う。
それは僕もきいた。
木元先輩もそれを恐れて中々子作りしないらしい。
もっともそんな時間もないらしいが。
「でも冬夜さんなら大丈夫ですよね?」
愛莉は言う。
「努力するよ」
「はい、お願いします。お願いついでなんですけど……」
「どうしたの?」
「いつ産みたいですか?」
なんで鶏が卵産むみたいに簡単に言うかな。
「結婚して2年はって聞いたけど」
「そんなに悠長に待ってられませんよ」
「愛莉はいつくらいがいいの?」
「早ければ式が終わったらがいいかな」
「分かった」
「じゃ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
結婚してもうすぐ一か月。
僕達の蜜月はまだ続いていた。
(2)
「うーん……」
僕は悩んでいた。
恵美も考え込んでいる。
目の前にいるのは親子。
子供はまだ小学生になったばかりくらいの子供。
履歴書を見ると今年小学校に入学するらしい。
「他の事務所には行かれたんですか?」
「はい、ですが。うちでは扱えないと言われて」
「どうして?」
「入所費や管理費がかかるとか、スカウトや紹介じゃないと受け入れられないとか」
有名どころは駄目だったらしい。
「萩原、演技力はどうなの?」
恵美が演技指導の萩原さんに聞いていた。
「悪くはないですね。あとは売込みの手腕といったところでしょうか」
親の躾はいいらしい。
現に今も黙って座っている。
あと欲しいのは子供らしさだという。
目の前に座っている女の子・烏丸こころちゃんを見る。
まだ6歳だというのに野望あふれる目をしている。
実力は未知数。
それは僕達の事務所も同じ。
今のところ上手くいってる。
ここは冒険に出るべきか。
「こころちゃんはどうして子役になろうと思ったの?」
僕はこころちゃんに質問していた。
「お芝居に憧れたから」
「厳しい世界だとおもうけどやっていけそう?」
「頑張ります!」
覚悟はあるようだ。
「恵美、萩原さんは東京にずっといるんだよね?」
「そうね、阿南君達も拠点を東京に移してるし」
「僕は勝負に出ても良いと思うんだけど、恵美はどう思う?」
「いいんじゃない。社長はあなたよ。あなたに従うわ」
僕はお母さんに話をした。
「うちはタレントは4組しかいない小さな事務所です。大きなプロダクションに比べたら正直仕事を取れるかも難しい」
お母さんは肩を落とす。
「ですから当社としては賭けに近い。大きなプロダクションに入ったほうが安全だと思います」
しかしこころちゃんの表情に賭けよう。
「入会費はいりません。こころちゃんに投資します。ただし月々のレッスン料は頂きます」
あとの説明は営業の成原さんにまかせる。
成原さんが契約内容について説明する。
本人の意思確認もする。
ずっと芸能界でやっていく覚悟があるのか等だ。
マネージャーも準備することにした。
そこまで投資して採算がとれるかは分からないが、萩原さんの目を信頼しよう。
親の同意を得てその場で契約書を交わす。
労働条件等もきちんと整理する。
普通子役の交通費等は自己負担だが、マネージャーも準備している事だし経費はこちらで負担する。
ギャラは月給制にした。
一通りの説明と契約が終ると烏丸親子は帰っていった。
そのあと、成原さんと萩原さんを通じて今後の戦略を立てる。
成原さんはとにかく売込みをかけてオーディションに参加させる。
あとは萩原さんの演技指導次第。
素直な子の様だ。
きっとうまくいくだろう。
その後阿南君たちと食事をして近況を聞く。
公私ともに上手く言ってるらしい。
中村さんからも説明がされる。
東京に進出して成功だったようだ。
夕食を終えるとホテルに泊まって翌朝帰ることにした。
「USEも大きくなっていくわね」
恵美が言う。
「僕はどっちの仕事に専念したらいいんだい?」
「どっちもよ?」
「え?」
「ETCは将来あなたの会社になるのよ?」
恵美はそう言って笑った。
僕は多忙な日を迎えることになりそうだ。
「仕事もいいけど、軌道に乗ってきたんだしそろそろ子どもの事も考えてよね?」
「……帰ってから考えるよ」
二つの会社と育児。
大変な未来が待っていた。
(3)
「じゃあ、僕一度家に帰ります」
「ああ、場所はわかってるな?」
「去年と同じ店ですよね?」
「ああ、遅れるなよ」
「はい、じゃあお先に失礼します」
そう言って会社を出ると愛莉に電話する。
「愛莉、今から帰るから準備して待ってて」
「はい、わかりました。気を付けて帰ってきてくださいね」
電話を終えると僕は家に帰る。
4月。
花見の時期だ。
と、いってもまたフグ料理屋だけど。
「お祝いもまだだし、折角だから奥さんつれておいで」
社長がそう言うと皆伴侶を連れてくることになった。
家に帰ると愛莉が仕度をして待っている。
愛莉を連れてバスに乗ると街へ行って繁華街の外れにある料亭にいった。
みんな揃っている。
「遅れました。すいません。バスが無くて」
「主人がいつもお世話になってます」
「いや、こちらこそ。片桐君はよく働いてくれてるよ。1年でもう1線で働いてるなんて珍しいくらいだ」
社長が言う。
愛莉は皆に酌をして挨拶して回る。
「良い嫁さんもらったな!」
達彦先輩が言う。
「冬夜の将来は安泰だな。あとは子供を作るくらいか」
郡山先輩が言う。
その後皆で盛り上がった。
僕はふぐを一生懸命食べてた。
愛莉は皆と会話している。
そうして一次会を終えると二次会にいく。
「悪い、俺子供の面倒みなきゃいけないから」
達彦先輩がそう言って帰っていった。
「あいつも暫く大変だろうな」
郡山先輩が言う。
3歳くらいまでは手がかかるらしい。
愛莉は真剣に聞いていた。
「お前たちは二次会くるだろ?」
郡山先輩が言う。
「愛莉大丈夫?」
「はい」
愛莉たちは女性陣で盛り上がっているようだ。
スマホの連絡先も交換したらしい。
僕は郡山先輩と社長の激励を受けてた。
「上原を見てたら分かると思うが、ここからが大変だぞ。ちゃんと育児も手伝ってやらないと」
「達彦がいいお手本になる。しっかり見とけ」
社長と郡山先輩が言う。
沢尻さんも「しっかりな」と言ってくれた。
バーで一杯飲むと二次会は終わり。
その後解散する。
折角だから愛莉ともう一軒バーによって飲んで帰る。
お風呂に入ると愛莉がお茶漬けを用意してくれた。
「きっとお腹空いてると思って」
それを食べてる間に愛莉は風呂に入る。
愛莉は風呂に入った後それを片付けて、寝室に行く。
家計簿をつけ終えた頃には時計は0時を回っていた。
「そろそろ寝ましょうか?」
「そうだね」
愛莉とベッドに入る。
「ねえ冬夜さん」
「どうした?」
「私今日冬夜さんの妻としてちゃんとやれたでしょうか?」
「皆出来た嫁さんだなと褒めてくれてたよ」
「それはよかったです」
愛莉は喜んでる。
「二日連続で飲み会大丈夫ですか?」
明日は渡辺班の花見だ。
「なんとかなるよ」
「飲み過ぎに注意してくださいね」
「ああ、わかってる」
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」
愛莉は静かになった。
結婚してからあっという間に春になった。
そしてまた新しい年度になる。
(4)
「それじゃ皆さん乾杯!」
西松君が言うと宴の始まり。
僕と、中島君と桐谷君と誠が一緒になってる。
この3人と一緒にいるとろくな事が無いんだが。
桐谷君はETCの営業を任せられてるらしい。
営業といっても客を取ってくる仕事じゃない。
自社製品を売り込んでくる客先の対応だ。
と、言っても相手は社長とか銀行の社員とかお偉いさんばかり。
てんてこまいの一週間だったらしい。
それでも詐欺商法よりはましだと張り切っている。
誠は相変わらずの活躍を見せている。
誠が言う天才クラスのフォワードは海外クラブに所属してるのでJ1ではトップクラスに位置するらしい。
現に得点王争いに加わっている。
アウェーで泊まり込みになると夜遊びをするのは相変わらずらしい。
カンナの悩みの種だそうだ。
中島君は相変わらず公務員としての責務を重く感じているけどそこは穂乃果さんが支えてくれてるらしい。
中島君は当然のように夜遊びはしない。
公務員と言えば渡辺君達は4月にはいって担当する人が替わる為引継ぎ業務が大変なんだとか。
咲さんもETCの事務職で働きだした。
ETCと言えば石原君は2年目にして代表取締役としての仕事を覚え始めたらしい。
USEといい大丈夫なんだろうか?
USEといえば新人が加入したらしい。烏丸こころちゃん。今年小学1年生の子役。
やる気と演技力と礼儀正しさで現場にも受けが良く仕事が順調に入ってるそうだ。
ALICEももう歌姫としての立ち位置を獲得した。
CDの売り上げもダウンロード数も新人ではありえないほど好調なんだとか。
春休みの間に一度だけ音楽番組に出演した。
ますたーども地元と東京の行き来が大変だという。
阿南君達も4月からのドラマに抜擢されてる。
USEはさらなる事業拡大を狙っている。
もちろんそれを良く思っていない芸能事務所もいるようだ。
色んな嫌がらせを受けているが、江口家の報復は過激なようで二度目の嫌がらせはほとんどないらしい。
晶さんの家の建設会社に入った面々は木元先輩の下で働いてる。
現場監督とはいえ新人。
業務は過酷なんだそうだ。
神奈や亜依さん穂乃果さんも仕事に慣れたようで元気に仕事してる。
酒井君は更なる局面に入ってるらしい。
「子供が欲しい」
晶さんの言葉は周りを凍り付かせる。
酒井君の苦労もそうだけど、晶さんが育児を始めれば、さらに晶さんの機嫌を窺わなければならない。
晶さんの気分一つで会社が傾く。
社長よりも力がありそうだ。
美嘉さんは実力をつけている。
檜山先輩から独立してはどうか?と打診されていると聞いた。
しかし美嘉さんはまだ早いと断った。
理由は子供が欲しいから。
子供がある程度育ったら独立を考えるそうだ。
そんな皆の朗報を聞きながら宴は進んでいた。
「西松!今年の新人はどうするんだ!?」
カンナが言う。
「まだ前期始まってないんですよ。ちょっと待ってくださいよ」
西松君が言う。
「ノルマは最低一組だからな!調教しがいのあるやつを連れてこい!」
美嘉さんが言う。
「まあまあ、俺達は余計な口出しをするのはよそう。大学生は西松君達に任せてるんだ」
渡辺君が言う。
「冬夜、新婚生活は順調か?」
誠が聞いてきた。
「ああ、お陰様で。何事もなく順調に暮らしてるよ」
愛莉からも苦情はない。
相変わらず甘えて来るけど。
「どうしたらそうなるんだ?」
桐谷君が聞いてきた。
「それは僕より桐谷君達の方が分かってると思うけど?」
「分からねーから聞いてるんだよ!」
桐谷君が立ち上がる。
皆が何事かと桐谷君を見る。
「分かったから取りあえず座れ」
誠が宥める。
「誠、お前も不思議に思わないのか?この二人どう考えてもおかしいぜ!」
「そうだな……」
誠は何か思う事があるようだ。
「中学生の時から二人を見て来たけどやっぱり積み重ねなんだろうな?大学に入るまでは二人とも喧嘩ばっかりだったぜ」
「そうなのか?」
「ああ、あの頃から比べると冬夜も愛莉さんも変わったよ。お互いを思いやるようになってる」
誠が語る。
そんな変わった気がしないけどな。
「もちろん変わらない事もあるぜ」
「なんだよそれ」
桐谷君が聞いてた
「2人ともずっとお互いを好きでいること。昔は好きだから不安だった。だから喧嘩する。今はお互いが好きなんだと分かり合えてるから信じられるんだ」
誠は今日はやけに雄弁だな。
「そこまで分かっていて何でお前は昔から変わらないんだ?」
カンナが言う。
「皆が皆冬夜達なわけないだろ?晴斗達やちぃみたいにやッと恋愛感情に気付いた者だっているんだ。それに……」
それに?
「俺だって昔から神奈を見てる。神奈を好きでいる。だから高校が離れ離れになっても今までやってこれたんだろ?」
「……確かにな」
今日の誠は何か違うぞ。
「もう恋に落ちたって時期はサヨナラなんだ。途切れない悲しみの果てに辿り着いたから俺達だって結婚したんだろ?」
サヨナラ恋か……。
白い溜息はいつのまにか空に消えて。
見上げれば桜はピンクの蕾をつける。
僕達は巡り巡ってく。
喜びも切なさも背負って春を待っている。
今この一瞬を抱きしめよう。
僕らはここにいる。
「なんかいまいち盛り上がりに欠けるな!もっとパーッとやろうぜ!」
美嘉さんが言う。
「やっぱり冬夜達の新婚生活か?」
渡辺君が言うと亜依さんとカンナが言う。
「それは止めてくれ。私達が虚しくなるだけだ」
二人が言うと大笑いしていた。
(5)
「冬夜さん、起きてくださいな。朝ですよ」
「おはよう愛莉」
愛莉と朝の挨拶を交わす。
「朝食の仕度してきますね」
愛莉はキッチンに向かう。
窓を見る。今日もいい天気だ。
夢心地の朝一番に、差し込んだ光。
もうみんな別々の道を歩んでる。まだ心の準備が出来てないけど時間は待ってくれない。
深すぎて、直接心に触れられない。
桜が手を振る君の肩に。
恋心よさようなら。
1人きりの吐息が紡ぐメッセージ。
恋心にさようならを告げる声は君に聞こえるかな?
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なんでそんなにしっかり立っていられるのだろうか?
縮まらない何かを僕らは知っているのだろうか?
桜よ、何処までも舞い散る君の声に愛おしきこの空へと息が紡ぐメッセージ。
途切れない悲しみの果てはどこ?
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これから恋に落ちるけど君に届きますか?
仕度をして朝食を取ると愛莉と話をしながら時間を過ごす。
短い様で長い一時。
そして出勤する。
「行ってらっしゃい、お気をつけて」
「行ってきます」
笑顔で見送る愛莉に応えて家を出る。
恋にサヨナラを告げてこれから愛に落ちる。
その声は届くだろうか。
また新しい一日が始まる。
皆それぞれ別々の道を歩みだす。
心の準備なんて待ってくれない。
僕達はそれぞれの道を歩き続ける。
0
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