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5.精神論者で支配的な人間

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この人について、ある人は「神のようだ」と答え、またある人は「悪魔のような人」とか「帝王的な人」だと答える。彼の驚異の指導力とその強引な手腕はたくさんの人々(主に学生)の支持と協力を半ば強制的に得た。だが、それは同時に幾多の不平、不満を生み出し、多くの部下にとって巨大な負荷となる反乱のできない一方通行の社会を作ってしまった。


彼の姿を客観的に見てみるとそんな面影は感じられない。至って普通の中年男性という感じだ。髪は頭頂部にかけて少し薄く(歳相応程度で、極端に薄く表面が見えているわけではない。私の個人的な見分で「薄いな、」と多少感じるくらいだ。)目は二重でパッチリと存在感のある目だ。背は結して高くなく、平均よりもある程度小さい。(こちらも極端な訳ではない。)総じて彼の容姿は「帝王」でも「悪魔」でも「神」でもない。(これはいつもジャージ姿でスポーティーな格好だからかもしれない。)


しかし、私はこの三つの例えについて完全とまでは行かなくとも十分に納得できるし、断じて間違いとは言えないと考えている。彼のリーダー性、そして指導力。更には人を育む力。こういう能力に彼以上の凄みを感じた人物は生まれてこの方一人もいない。それほど、素晴らしい面と抜群の能力を有しているのだ。


彼が室内に入ってくる時、その能力を具象化するようなオーラを伴って入ってくる。凍てつくような重圧、緊張感に部屋中全員が襲われ、誰もが息を殺す。彼が笑ったりしても多くの場合(慣れていない人は)同調して本心から爆笑する人は誰一人としていない。(突っつかれたらと恐怖があるのだ。)

そして、彼の目線もまた怖い。自身の考えを表に出さず、人々に彼が何を考えているのかを理解不能にさせるあの鋭い目線。(しかしながら、彼も気さくな面は大いにあって、ご機嫌の良いときはそんなに恐怖を覚えることは少ない。)こういったオーラ、目線によって多くの人々はストレスに捉えてしまい、彼について不満を持つのだ。
もうこれはしょうがないものと言って良いだろう。


どんなに崇高で抜群の能力を有していても、どこかで必ず非難されているのである。
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