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第2章
余話:見送り
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今週の授業が終わった。馬車がサラの前から去って行く。オレンジの光に照らされながら進む馬車は、緩やかに弧を描いた道の先で木立に隠れた。
ここでサラはいつものように踵を返した。吹き抜けのあるホールを早足で横切るときヒールの高い靴を脱ぎ捨ててしまいたくなるが、さすがに十六歳ともなればそんな子どもっぽい真似はできない。
急いた気持ちのまま階段を上り、二階奥の予備の客間へ飛び込んで窓を開ける。ぬるい空気を感じながらしばらく待つと、木立の切れ目から馬車が現れた。道の先まで見通したければ、やはりこの部屋に来るのが一番だ。
窓から半ば身を乗り出しながらサラは大きく手を振る。こちらへ背を向ける馬車はそんなサラに気づくことはない。徐々に小さくなり、まるでオモチャのようになったところで大きな森の中へ消えていく。そこでようやくサラは手を止め、小さくため息を吐いて近くの椅子に腰かけた。
「……行っちゃった」
来週は授業がないので、あの馬車が中に人を乗せてモート家に来るのは再来週の赤の曜日。あと十日以上も先の話だ。
机の上にコツンと頭を乗せ、サラは呟く。
「遠いよぉ……本当は毎週でも……ううん。毎日でも、会いたいのに……」
最初に父から教師の名を聞いたとき、こんな気分になるとは予想もしなかった。
何しろサラが“エレノア・パートリッジ”と聞いて真っ先に思い出すのは、真冬の湖のように冷たい視線なのだ。
あの視線を初めて感じたのは今から十一年前の秋の日のこと。
サラがまだ「父の後継者になれる」と信じていたころの話だ。
もともと平民の中で商売をしていたサラの父・ジェフリーは、順調に業績をのばし、いつしか貴族を顧客として加えていた。しかも当の貴族の屋敷にサラを連れて行ってくれると言い出したのだ。
サラは未知の世界へ行ける興奮と一緒に、胸いっぱいの誇らしさを抱いた。「平民の父が貴族の屋敷に招かれた」という事実はもちろん、そんな大切な商売相手の元に同行できる特別感は格別のものだった。
いつも以上に着飾ったサラとジェフリーの二人を乗せ、真新しい馬車は道を進む。町を抜け、目印のようにして立つ大きな楢の前を曲がると、その先はもう敷地の中らしい。
ならば屋敷にはじきに着くだろう。きちんとしなくては、との思いでサラは背筋をピンと伸ばし、到着の時を今か今かと待った。
しかし馬車はいっこうに止まる気配を見せない。疲れて体から力が抜けてしまいそうになるのを必死に耐えていたものの、結局のところ到着までにはかなりの時間を要すことになってしまった。おかげでいざ玄関前に着いたとき、サラはもうへとへとだった。
よろけそうになる足を動かしてなんとか馬車から降り立ったサラをまず出迎えたのは、威容を誇る屋敷だ。
今まで目にした中で最も大きく、立派で、堂々としているこの建物は、『貴族』なる者が持つ長い歴史をサラに突きつけてきた。圧倒されたサラが呆然と立ち尽くすうち、自宅から持ってきた興奮も、『一代で財を成した凄腕商人の娘』という誇らしさも、あっさり吹き飛ばされてしまった。サラの心は丸裸になってしまった。
そんな状態で真っ先に感じたのが身を凍らせるほどの視線だったから、より深く、より冷たく、感じたのだと思う。
いったいどこの誰が自分にこの視線を向けているのか。
恐る恐る辺りを見回して、サラはそこに彼女を見つけた。
豊かな金の髪を陽の光に輝かせている、二つ三つ年上の娘だ。その顔はサラが今まで見たこともないほど愛らしい。
いや、本来なら愛らしいのだろうが、優美な眉も、吊り気味の大きな目も、珊瑚色の唇も、すべてが怒りを表す位置へ移動している。そしてその彼女と目が合ったとき、サラは恐怖で震えあがった。
(この人は“氷の女王”だわ!)
『見つめるだけですべての命を奪う』という“氷の女王”はお伽話の人物だ。分かっていてもサラにはそうとしか思えなかった。
紹介を受けて彼女の名がエレノア・パートリッジなのだと知ってからも、サラはしばらく「本当は“氷の女王”なのでしょう?」と疑っていた。エレノアの纏う空気はそれほど冷たかったのだ。
しかし。
凍えるような視線からサラを救ってくれた人がいた。歓迎の言葉と一緒に、陽だまりのような優しい笑顔を向けてくれた人。――サラが大好きになった人。
けれど六年前の最後の日、サラはもう二度とこの笑顔は見られないだろうと覚悟した。次に出会えたとしてもきっとエレノアと同様に冷たい視線を向けてくるに違いない、そうされるようなことを父がしたのだから諦めるしかない、と何度も自分に言い聞かせた。
パートリッジの屋敷に行っていたころも、行かなくなってからも、サラはジェフリーに連れられてあちこちの貴族の屋敷へ行った。
その父の真意が『娘を妻として迎えてもらえたのなら貴族の縁戚となれる』であり、同時に『縁戚として必要がなさそうならば最後まで利用させてもらう』なのだと気づいたのはいつだったか。
知らないとはいえ父の失礼な企みに加担していたのだと知った時には大いに衝撃を受けたし、どこかへ消えてしまいたくもなった。しかもその最初の犠牲になったのが、よりによってサラが大好きな人物の家だったのだ。
だから「『暁の王女』のことは絶対に覚えてて!」との言葉を聞いたときに「せっかく綺麗な花なんだから、『暁の王女』を嫌いにならないでね」と返した。『暁の王女』を見るたびにサラとの約束やサラを自身を思い出し、ついに花自体を嫌ってしまったら不幸だと思ったからだ。
それなのに六年ぶりに会っても、あたたかな空気は変わっていなかった。
あまりに懐かしくて、あまりに嬉しくて、それでサラは最初、屋敷の応接室に立っているのが誰なのかを思い出す余裕すらなかったほどだ。
できれば本当のことを言ってほしい。そうすればまた昔のように話ができるかもしれないのに、とは思う。
もちろんあちらにも事情はあるのだから簡単には言えないのも分かっている。それにどんな姿であれ、来てくれるだけでありがたいのだから、サラが多くを望んではいけない。
ふう、と息を吐いたところで、サラは風が肌寒くなってきたことに気がついた。見上げると空の一部は既に優しい紺色へと変わっている。
サラは立ち上がって窓の傍へ寄り、馬車が去って行ったほうに顔を向けて小さな声で言った。
「再来週に会えるのを楽しみにしてる。きっと来てね、待ってるわ……グレアム」
もう一度だけ手を振り、そうしてサラは窓を閉める。
次にこの窓を開けるのは再来週の赤の曜日の朝だ。
***
授業がある日の朝、サラはこの部屋で馬車を待って玄関に下り、夕に馬車を玄関で送ってこの部屋に来る。
これは最後の日までの習慣になるだろう。その先にある感情がどんなものになろうとも、きっと。
ここでサラはいつものように踵を返した。吹き抜けのあるホールを早足で横切るときヒールの高い靴を脱ぎ捨ててしまいたくなるが、さすがに十六歳ともなればそんな子どもっぽい真似はできない。
急いた気持ちのまま階段を上り、二階奥の予備の客間へ飛び込んで窓を開ける。ぬるい空気を感じながらしばらく待つと、木立の切れ目から馬車が現れた。道の先まで見通したければ、やはりこの部屋に来るのが一番だ。
窓から半ば身を乗り出しながらサラは大きく手を振る。こちらへ背を向ける馬車はそんなサラに気づくことはない。徐々に小さくなり、まるでオモチャのようになったところで大きな森の中へ消えていく。そこでようやくサラは手を止め、小さくため息を吐いて近くの椅子に腰かけた。
「……行っちゃった」
来週は授業がないので、あの馬車が中に人を乗せてモート家に来るのは再来週の赤の曜日。あと十日以上も先の話だ。
机の上にコツンと頭を乗せ、サラは呟く。
「遠いよぉ……本当は毎週でも……ううん。毎日でも、会いたいのに……」
最初に父から教師の名を聞いたとき、こんな気分になるとは予想もしなかった。
何しろサラが“エレノア・パートリッジ”と聞いて真っ先に思い出すのは、真冬の湖のように冷たい視線なのだ。
あの視線を初めて感じたのは今から十一年前の秋の日のこと。
サラがまだ「父の後継者になれる」と信じていたころの話だ。
もともと平民の中で商売をしていたサラの父・ジェフリーは、順調に業績をのばし、いつしか貴族を顧客として加えていた。しかも当の貴族の屋敷にサラを連れて行ってくれると言い出したのだ。
サラは未知の世界へ行ける興奮と一緒に、胸いっぱいの誇らしさを抱いた。「平民の父が貴族の屋敷に招かれた」という事実はもちろん、そんな大切な商売相手の元に同行できる特別感は格別のものだった。
いつも以上に着飾ったサラとジェフリーの二人を乗せ、真新しい馬車は道を進む。町を抜け、目印のようにして立つ大きな楢の前を曲がると、その先はもう敷地の中らしい。
ならば屋敷にはじきに着くだろう。きちんとしなくては、との思いでサラは背筋をピンと伸ばし、到着の時を今か今かと待った。
しかし馬車はいっこうに止まる気配を見せない。疲れて体から力が抜けてしまいそうになるのを必死に耐えていたものの、結局のところ到着までにはかなりの時間を要すことになってしまった。おかげでいざ玄関前に着いたとき、サラはもうへとへとだった。
よろけそうになる足を動かしてなんとか馬車から降り立ったサラをまず出迎えたのは、威容を誇る屋敷だ。
今まで目にした中で最も大きく、立派で、堂々としているこの建物は、『貴族』なる者が持つ長い歴史をサラに突きつけてきた。圧倒されたサラが呆然と立ち尽くすうち、自宅から持ってきた興奮も、『一代で財を成した凄腕商人の娘』という誇らしさも、あっさり吹き飛ばされてしまった。サラの心は丸裸になってしまった。
そんな状態で真っ先に感じたのが身を凍らせるほどの視線だったから、より深く、より冷たく、感じたのだと思う。
いったいどこの誰が自分にこの視線を向けているのか。
恐る恐る辺りを見回して、サラはそこに彼女を見つけた。
豊かな金の髪を陽の光に輝かせている、二つ三つ年上の娘だ。その顔はサラが今まで見たこともないほど愛らしい。
いや、本来なら愛らしいのだろうが、優美な眉も、吊り気味の大きな目も、珊瑚色の唇も、すべてが怒りを表す位置へ移動している。そしてその彼女と目が合ったとき、サラは恐怖で震えあがった。
(この人は“氷の女王”だわ!)
『見つめるだけですべての命を奪う』という“氷の女王”はお伽話の人物だ。分かっていてもサラにはそうとしか思えなかった。
紹介を受けて彼女の名がエレノア・パートリッジなのだと知ってからも、サラはしばらく「本当は“氷の女王”なのでしょう?」と疑っていた。エレノアの纏う空気はそれほど冷たかったのだ。
しかし。
凍えるような視線からサラを救ってくれた人がいた。歓迎の言葉と一緒に、陽だまりのような優しい笑顔を向けてくれた人。――サラが大好きになった人。
けれど六年前の最後の日、サラはもう二度とこの笑顔は見られないだろうと覚悟した。次に出会えたとしてもきっとエレノアと同様に冷たい視線を向けてくるに違いない、そうされるようなことを父がしたのだから諦めるしかない、と何度も自分に言い聞かせた。
パートリッジの屋敷に行っていたころも、行かなくなってからも、サラはジェフリーに連れられてあちこちの貴族の屋敷へ行った。
その父の真意が『娘を妻として迎えてもらえたのなら貴族の縁戚となれる』であり、同時に『縁戚として必要がなさそうならば最後まで利用させてもらう』なのだと気づいたのはいつだったか。
知らないとはいえ父の失礼な企みに加担していたのだと知った時には大いに衝撃を受けたし、どこかへ消えてしまいたくもなった。しかもその最初の犠牲になったのが、よりによってサラが大好きな人物の家だったのだ。
だから「『暁の王女』のことは絶対に覚えてて!」との言葉を聞いたときに「せっかく綺麗な花なんだから、『暁の王女』を嫌いにならないでね」と返した。『暁の王女』を見るたびにサラとの約束やサラを自身を思い出し、ついに花自体を嫌ってしまったら不幸だと思ったからだ。
それなのに六年ぶりに会っても、あたたかな空気は変わっていなかった。
あまりに懐かしくて、あまりに嬉しくて、それでサラは最初、屋敷の応接室に立っているのが誰なのかを思い出す余裕すらなかったほどだ。
できれば本当のことを言ってほしい。そうすればまた昔のように話ができるかもしれないのに、とは思う。
もちろんあちらにも事情はあるのだから簡単には言えないのも分かっている。それにどんな姿であれ、来てくれるだけでありがたいのだから、サラが多くを望んではいけない。
ふう、と息を吐いたところで、サラは風が肌寒くなってきたことに気がついた。見上げると空の一部は既に優しい紺色へと変わっている。
サラは立ち上がって窓の傍へ寄り、馬車が去って行ったほうに顔を向けて小さな声で言った。
「再来週に会えるのを楽しみにしてる。きっと来てね、待ってるわ……グレアム」
もう一度だけ手を振り、そうしてサラは窓を閉める。
次にこの窓を開けるのは再来週の赤の曜日の朝だ。
***
授業がある日の朝、サラはこの部屋で馬車を待って玄関に下り、夕に馬車を玄関で送ってこの部屋に来る。
これは最後の日までの習慣になるだろう。その先にある感情がどんなものになろうとも、きっと。
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