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第3章
思い出の中の
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空は青いし、日差しはぬくもりを届けてくれる。
だけど湖を渡る風は秋という季節に見合う冷たさだったから、僕は少しばかり身を震わせた。頭上の葉がさわさわと小さく揺れて、その音に混じってサラの小さな声が耳に届く。
「本当は、王宮になんて、行きたくない。社交界なんて、どうでもいい。貴族との、婚約だって、したくなんて……」
幻を見る瞳をするサラは、自分が言葉を発した瞬間に僕が浮かべた表情にはきっと気づかなかっただろう。
それは僕にとっては「良かった」と思えることだった。瞳に力が戻ったサラが息を飲み、眉尻を下げ、僕の方へ顔を向けるまでの間には、ちゃんと取り繕った表情を浮かべることができてたからね。
「ごめんなさい。私が貴族としてうまく振舞えるよう努力してくださってるエレノア様に、変なことを言ってしまいました」
「いいえ」
微笑む僕は首を横に振る。
僕は、僕の行動を否定するようなサラの言葉に、嫌な思いを抱いたりなんてしない。サラがどう思っているのかという気持ちは、サラのものだもの。
ただしサラが「貴族とは婚約したくない」って考えていた事実を知ったことだけは悲しかった。
僕はサラが好きだ。この気持ちを抱いたのは僕がまだ子どもの頃で、将来のこととか、結婚とか、そんなややこしいことを考えながら好きになったわけじゃない。でも……。
「サラさんは、平民のままでいたかったとお考えですのね」
僕が言うと、うなずきかけて動きを止めたサラは少し考える素振りをみせたあと、眉尻を下げたまま小さく笑う。
「はい、と答えてしまったら嘘になります」
どういうことだろう。
僕が小首をかしげて見つめると、サラは深く息を吐いてまた湖の方へ顔を向ける。
「私が今まで“貴族になる夢”を見なかったのかっていうと違うんです。私も、貴族になりたいって……ううん、違うな。私の生まれが貴族だったらよかったのに、って思ったことはあります。そうすれば……」
サラの口元が緩み、頬が赤く色づいた。
「……そうすれば、好きな人のお嫁さんになれたかもしれないのに」
かちゃん、と硬質な音がした。
僕の手から落ちたお皿とフォークが地面にぶつかった音だ。
「あ、ああ、わたくしったら。うっかりしましたわ」
「ドレスは汚れてませんか?」
「平気ですわ。お皿も……割れてませんわね。良かった」
取り分けてもらった料理は食べ終えていたから辺りを汚すことはない。高価そうなお皿にもヒビひとつ入っていなかった。ちゃんと確認した僕がお皿とフォークを差し出すと、サラは取り分け用のカトラリーを片手に微笑む。
「ごめんなさい。つまらない話をしていたせいで、お皿が空になっていたことに気付きませんでしたね。エレノア様のお腹に余裕がおありでしたら、もっと料理をお取りしますが、いかがです?」
「ぜひお願いしたいですわ。どのお料理もとっても美味しいのですもの」
「嬉しいです!」
サラは本当に嬉しそうだったから、僕も嬉しい。お皿の上には再び色とりどりの料理が登場して、僕の口と手は再び忙しく動き始める。更にもう一回おかわりもしたから、バスケットの中はからっぽになった。
「こんなに喜んでいただけるなんて、思い切って作って来て良かったです!」
「わたくしこそ、サラさんのおかげでとても幸せな時間を過ごせましたわ。せめて片付けくらいお手伝いさせてくださいな」
「平気です。気になさらないで」
にっこり笑うサラに押し切られた僕は、布の上に座ったままサラが片付け終わるのを待つことになった。
サラの料理は確かに美味しかった。
でも正直な話をすると、後半は味なんてちっとも分からなかった。僕の頭の中で、頬を赤らめたサラが何度も何度も言っていたせいだ。
『そうすれば、好きな人のお嫁さんになれたかもしれないのに』
って。
好きな人のお嫁さん……。
話の流れからすると貴族だよね。お嫁さんになりたいくらいの好きな人が貴族にいたってことなの、サラ?
それは、いつ好きになったの? 好きな相手っていうのは、誰、なの……?
聞きたいけど聞けない僕が同じ質問を頭の中でひたすら繰り返していたとき、
「ららららーららー、らららららーららー」
サラが小さな声で歌い始めたから、僕は思わず肩を震わせた。
この曲を僕は知ってる。
いや、有名なワルツの曲だから知っている人はとても多いし、サラが知っていたって何もおかしくない。だけど僕が思わずドキッとしてしまうのは、この曲が昔の思い出に繋がるからなんだ。
子どものころ、僕とサラはいろんな遊びをした。その中の一つが『二人きりの舞踏会』。
これは外じゃないとできなかった遊びだ。ジェフリーが来るときのパートリッジ本邸はいつも空気が沈んでて、楽しく踊れるような雰囲気じゃなかったからね。
僕とサラは晴れた空の下で向かい合って、お辞儀をして、互いの手を取って踊った。
踊りかたは最初に僕が教えたし、曲も最初のうちは僕が歌った。やがてサラも曲を覚えてからは、二人で一緒に歌うようになったんだ。
芝生の上で開催される舞踏会はなかなか大変だったよ。思うように動けなくて足を踏んだり踏まれたりしたし、たまに石につまづいて転んだりもした。でも思いがけないトラブルがあったって、サラとならいつだって笑いあえたんだ。
今のサラが歌っているのはそのときの曲。
これは偶然なんだろうか。
それとも……?
「ワルツですわね」
ドキドキしながらも平静を装って僕が聞くと、片付けの手を止めたサラはニコリと笑う。
「はい。晴れて気持ちがいいときには歌いたくなっちゃうんです。子どものころの大事な思い出につながる曲ですから」
「大事な、思い出に……」
“エレノア”がモート邸に通い出してから三か月と少し。僕とサラのあいだで“グレアム”の話題が出たことは一度もない。もしもグレアムに関する話題が出たら僕がうまく取り繕えるのかどうか不安だったのもあるし、思い出話をきっかけに“エレノア”がグレアムだと気づかれたら困るっていうのもある。だけどもしかしたら一番の理由は、サラがグレアムのことをどう思っているのかを聞くのが怖かったせいかもしれない。
状況が変わってしまった今、サラが“グレアム”のことを好きでいてほしいとは思わない。だけど“グレアム”と遊んだことを覚えていて、楽しかった思い出にしてくれてたら嬉しいなとは願っていたんだ。
そして今、サラはあのころ一緒に遊んだ曲のことを「大事な思い出につながる」って言ってくれた。
……僕の願望にすぎないかもしれない。
でも頭の中で響く声が、さっきよりも大きくなった。
『そうすれば、好きな人のお嫁さんになれたかもしれないのに』
っていう、サラの声が。
だけど湖を渡る風は秋という季節に見合う冷たさだったから、僕は少しばかり身を震わせた。頭上の葉がさわさわと小さく揺れて、その音に混じってサラの小さな声が耳に届く。
「本当は、王宮になんて、行きたくない。社交界なんて、どうでもいい。貴族との、婚約だって、したくなんて……」
幻を見る瞳をするサラは、自分が言葉を発した瞬間に僕が浮かべた表情にはきっと気づかなかっただろう。
それは僕にとっては「良かった」と思えることだった。瞳に力が戻ったサラが息を飲み、眉尻を下げ、僕の方へ顔を向けるまでの間には、ちゃんと取り繕った表情を浮かべることができてたからね。
「ごめんなさい。私が貴族としてうまく振舞えるよう努力してくださってるエレノア様に、変なことを言ってしまいました」
「いいえ」
微笑む僕は首を横に振る。
僕は、僕の行動を否定するようなサラの言葉に、嫌な思いを抱いたりなんてしない。サラがどう思っているのかという気持ちは、サラのものだもの。
ただしサラが「貴族とは婚約したくない」って考えていた事実を知ったことだけは悲しかった。
僕はサラが好きだ。この気持ちを抱いたのは僕がまだ子どもの頃で、将来のこととか、結婚とか、そんなややこしいことを考えながら好きになったわけじゃない。でも……。
「サラさんは、平民のままでいたかったとお考えですのね」
僕が言うと、うなずきかけて動きを止めたサラは少し考える素振りをみせたあと、眉尻を下げたまま小さく笑う。
「はい、と答えてしまったら嘘になります」
どういうことだろう。
僕が小首をかしげて見つめると、サラは深く息を吐いてまた湖の方へ顔を向ける。
「私が今まで“貴族になる夢”を見なかったのかっていうと違うんです。私も、貴族になりたいって……ううん、違うな。私の生まれが貴族だったらよかったのに、って思ったことはあります。そうすれば……」
サラの口元が緩み、頬が赤く色づいた。
「……そうすれば、好きな人のお嫁さんになれたかもしれないのに」
かちゃん、と硬質な音がした。
僕の手から落ちたお皿とフォークが地面にぶつかった音だ。
「あ、ああ、わたくしったら。うっかりしましたわ」
「ドレスは汚れてませんか?」
「平気ですわ。お皿も……割れてませんわね。良かった」
取り分けてもらった料理は食べ終えていたから辺りを汚すことはない。高価そうなお皿にもヒビひとつ入っていなかった。ちゃんと確認した僕がお皿とフォークを差し出すと、サラは取り分け用のカトラリーを片手に微笑む。
「ごめんなさい。つまらない話をしていたせいで、お皿が空になっていたことに気付きませんでしたね。エレノア様のお腹に余裕がおありでしたら、もっと料理をお取りしますが、いかがです?」
「ぜひお願いしたいですわ。どのお料理もとっても美味しいのですもの」
「嬉しいです!」
サラは本当に嬉しそうだったから、僕も嬉しい。お皿の上には再び色とりどりの料理が登場して、僕の口と手は再び忙しく動き始める。更にもう一回おかわりもしたから、バスケットの中はからっぽになった。
「こんなに喜んでいただけるなんて、思い切って作って来て良かったです!」
「わたくしこそ、サラさんのおかげでとても幸せな時間を過ごせましたわ。せめて片付けくらいお手伝いさせてくださいな」
「平気です。気になさらないで」
にっこり笑うサラに押し切られた僕は、布の上に座ったままサラが片付け終わるのを待つことになった。
サラの料理は確かに美味しかった。
でも正直な話をすると、後半は味なんてちっとも分からなかった。僕の頭の中で、頬を赤らめたサラが何度も何度も言っていたせいだ。
『そうすれば、好きな人のお嫁さんになれたかもしれないのに』
って。
好きな人のお嫁さん……。
話の流れからすると貴族だよね。お嫁さんになりたいくらいの好きな人が貴族にいたってことなの、サラ?
それは、いつ好きになったの? 好きな相手っていうのは、誰、なの……?
聞きたいけど聞けない僕が同じ質問を頭の中でひたすら繰り返していたとき、
「ららららーららー、らららららーららー」
サラが小さな声で歌い始めたから、僕は思わず肩を震わせた。
この曲を僕は知ってる。
いや、有名なワルツの曲だから知っている人はとても多いし、サラが知っていたって何もおかしくない。だけど僕が思わずドキッとしてしまうのは、この曲が昔の思い出に繋がるからなんだ。
子どものころ、僕とサラはいろんな遊びをした。その中の一つが『二人きりの舞踏会』。
これは外じゃないとできなかった遊びだ。ジェフリーが来るときのパートリッジ本邸はいつも空気が沈んでて、楽しく踊れるような雰囲気じゃなかったからね。
僕とサラは晴れた空の下で向かい合って、お辞儀をして、互いの手を取って踊った。
踊りかたは最初に僕が教えたし、曲も最初のうちは僕が歌った。やがてサラも曲を覚えてからは、二人で一緒に歌うようになったんだ。
芝生の上で開催される舞踏会はなかなか大変だったよ。思うように動けなくて足を踏んだり踏まれたりしたし、たまに石につまづいて転んだりもした。でも思いがけないトラブルがあったって、サラとならいつだって笑いあえたんだ。
今のサラが歌っているのはそのときの曲。
これは偶然なんだろうか。
それとも……?
「ワルツですわね」
ドキドキしながらも平静を装って僕が聞くと、片付けの手を止めたサラはニコリと笑う。
「はい。晴れて気持ちがいいときには歌いたくなっちゃうんです。子どものころの大事な思い出につながる曲ですから」
「大事な、思い出に……」
“エレノア”がモート邸に通い出してから三か月と少し。僕とサラのあいだで“グレアム”の話題が出たことは一度もない。もしもグレアムに関する話題が出たら僕がうまく取り繕えるのかどうか不安だったのもあるし、思い出話をきっかけに“エレノア”がグレアムだと気づかれたら困るっていうのもある。だけどもしかしたら一番の理由は、サラがグレアムのことをどう思っているのかを聞くのが怖かったせいかもしれない。
状況が変わってしまった今、サラが“グレアム”のことを好きでいてほしいとは思わない。だけど“グレアム”と遊んだことを覚えていて、楽しかった思い出にしてくれてたら嬉しいなとは願っていたんだ。
そして今、サラはあのころ一緒に遊んだ曲のことを「大事な思い出につながる」って言ってくれた。
……僕の願望にすぎないかもしれない。
でも頭の中で響く声が、さっきよりも大きくなった。
『そうすれば、好きな人のお嫁さんになれたかもしれないのに』
っていう、サラの声が。
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