1 / 37
プロローグ
しおりを挟む「ねえねえ、芸能人の◯◯と◯◯電撃結婚ですって! いやまあ意外な組み合わせよねえ!」
「ふーん」
リビングのソファーでスマホをいじっている俺に、母さんが話しかけてきた。母さんはこの手の話に敏感だ。
「はあ。あんたも大人になったら早く結婚しなさいよね。後で後でしてたら、あっというまにお爺ちゃんになってあの世へgoよ」
「はいはい」
ここまではいつもの流れ。何回この話をされたことか。大体、母さんだってシングルマザーじゃないか。
若くして結婚して俺を産んだみたいだけど、すぐに離婚してるんじゃ俺に早く結婚しろなんて言う権利ないでしょ。
と反論したいところだが、そんなことをすれば余計話が長引くだけなのでやめておく。
「さて、そろそろお母さんお仕事いくわ。純平、学校行く前に洗い物だけやっといてね」
「はあ!?」
「してなかったら晩御飯抜きね。んじゃ、よろしく!」
強引に仕事を押し付けて、母さんは仕事へと向かった。くそ、ニュース見てる暇があるなら洗い物ぐらいやっていけってんだ。
よし、そろそろ俺も行くか。
洗い物を済ませた俺は、制服に着替え、鞄を手に取った。
家の玄関を出ると、いつもの場所にいつもの女が立っていた。
「おはよう純平! 今日はいつもより遅いね」
この女は高坂 美幸。俺の幼なじみだ。別に頼んでいるわけじゃないが、学校があるときは毎朝一緒に登校している。周りから、ふたりは付き合ってるの? と聞かれることも多いが、それはない。
「おはよう。お前こそ、今日寝癖凄いな」
「え!? 嘘でしょ!??」
「ああ、嘘」
「貴様……!」
「女子が貴様とか使ってんじゃねぇよ。もっと女子力を磨け女子力を」
「純平には言われたくない!」
文句を垂れる美幸を置いて、俺は一足先に学校へ向かって歩き出す。こんなことをして遅刻してはあとあと面倒くさい。俺だけでも遅刻を免れるのだ。
「ちょっとまちなさーい!!」
置いていかれていることに気づいた美幸が、走って俺のあとを追いかけてくる。全く、朝から賑やかな奴だ。
「ねえねえ純平」
「なんだ?」
体力のない美幸は、ほんの少しの距離を全力ダッシュしただけで少し呼吸が乱れていた。その事を隠そうと平然な顔をしているがバレバレだ。
「あんたってさ、結婚についてどう思ってる?」
「なんじゃそりゃ。美幸も朝から芸能ニュース見てた口か?」
「いやそうじゃなくて。割と真剣に聞いてる」
「真剣にって言われてもな……」
俺はまだ高校生3年生な訳で。しかも今は4月。高校卒業するまであと1年もあるような若造が、結婚なんて考えたこともないわ。
「……うちの親のことは知ってるべ?」
「うん」
まあ幼なじみだからな。うちの両親が離婚してることは美幸は知っている。
「まあ正直、それが影響してるのか、あんまりいいイメージはないな。なーんかお金自由に使えなさそうだし? こう、窮屈!! って感じがするかもな」
「ふーん。純平って結構頭固いのね」
「誰が石頭じゃ」
「物理的にじゃなくて、考え方が極端って話をしてるの!」
「お、おう」
割と真剣に質問しているだけあって、俺の冗談は通じないらしい。いやでも、正直結婚に対するイメージなんてそんなもんだし。
「ほら、結婚は人生の墓場って言葉もあるじゃん? なんかネットとかテレビ見てても結婚に対して否定的な意見多いじゃん?」
「ああもう、そうじゃなくて!」
俺は美幸に胸ぐらを掴まれた。自分より背の低い女子に胸ぐらを掴まれるという人生初の状況に思考停止している俺に、美幸がさらに言葉を投げかける。
「純平は! どう! 結婚!」
「なんだその言葉の区切り方は」
「どう!」
「いやだから、さっきも言ったけどあんまり……ぐおっ!」
しゃべっている途中に、俺を掴んでいた美幸の手にさらに力が入った。やばい、死ぬやつだこれ。
「だから、私と結婚するのはどうって聞いてるの!!!」
「…………」
「………………あ」
「……へ?」
途端に俺への胸ぐら掴み攻撃の手が緩まり、美幸は地面にぺたんと座り込んだ。二人とも本当に思考が停止した。
正直、この後のことは記憶にない。この日どうやって学校に行ったのか。夕飯なに食べたのか。
ただ、この時の美幸の発言をきっかけに、俺たちの関係は激変したのだ。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染の許嫁
山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる