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第1話 夢見心地-4
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「おはよう、高坂くん」
「あ、おはようございます。中崎さん」
店の男性更衣室の扉を開けると、先に出勤していた店長がいた。中崎 健人さん。39歳男性で既婚者。更衣室に置いてあるパイプ椅子に腰掛け、何やら書類とにらめっこしている。
中崎さんの左手の薬指には、趣味の悪……奇抜な結婚指輪がはめられている。結婚指輪なのに、ドクロがモチーフっていうのはどうなんだ?
「高坂くん、今日D勤だよね?」
「はい。そのはずです」
自分のロッカーの前で着替えを始めているところで、再度中崎さんから声をかけられた。D勤というのは、朝の9時から夕方5時くらいまでの勤務のこと。もちろん日によって時間は前後するけど、遅くとも18時には退勤できることが多い。
「悪いんだけどさ、今日21時まで入ってくれない? ちょっと人足りてなくて」
「誰か風邪でも引いたんですか?」
「神田だよ。あのバカ、体調管理は徹底しろって散々注意してやったのに」
「なるほど。たしかにバカっすね」
神田、というのは今年入ってきたばかりの新人だ。神田 結子。22歳女性で独身。4年生大学を卒業したばかりで、あまり社会というものを経験してきてないタイプの人間だ。
神田のやつ、入社して数週間で風邪引くとかあり得ないだろ。なんで俺が残業するハメになってんだ。
と心のなかでぼやくが、俺も一応社会人だ。
「いいですよ。どうせ暇なんで」
「本当? ありがとう高坂くん。助かるよ」
「神田には、店長から厳しく言っておいてください」
「おう」
全く、今日はついてない。本当は今すぐにでも家に帰って寝たいが、自分だって体調を崩す時はある。その辺は、もちつもたれずだと思っている。
あー。働きたくない。
「なあ高坂くん」
「はい、なんです?」
店の制服に着替え終えたところで、再び中崎さんに声をかけられた。
「高坂くんは、いい人いないのか?」
「……中崎さん、またその話ですか」
この質問は、本当に数えきれないほどされた。そして、ここからさらに……
「結婚はいいぞ~。結婚は人生の墓場だって言うやつもいるけど、俺に言わせりゃそれはただのひがみだね。もしくは、結婚相手を間違えたやつだ」
と、ここまでが一連の流れ。中崎さんはいわゆる、愛妻家というやつらしい。それが悪いとは思わないが、あいにく俺は結婚に興味はない。……いや、持っちゃいけないだろ、俺は。
「そのうち捕まえてきますよ」
「高坂くん、そんなこといってるうちは難しいぞ。この時代には古くさいかもしれんが、お見合いっていう手段もあるんだ。お前がその気なら、俺が……」
「その時はお願いします。じゃ、俺厨房入りますんで」
「おい、まだ話は……!」
話を強引に止める形で、俺は更衣室を出て扉を閉めた。あのまま延々と話を聞いていては、本当にお見合いをさせられるハメになる。それはごめんだ。
気持ちを切り替えて、厨房へと向かった。
「あ、おはようございます。中崎さん」
店の男性更衣室の扉を開けると、先に出勤していた店長がいた。中崎 健人さん。39歳男性で既婚者。更衣室に置いてあるパイプ椅子に腰掛け、何やら書類とにらめっこしている。
中崎さんの左手の薬指には、趣味の悪……奇抜な結婚指輪がはめられている。結婚指輪なのに、ドクロがモチーフっていうのはどうなんだ?
「高坂くん、今日D勤だよね?」
「はい。そのはずです」
自分のロッカーの前で着替えを始めているところで、再度中崎さんから声をかけられた。D勤というのは、朝の9時から夕方5時くらいまでの勤務のこと。もちろん日によって時間は前後するけど、遅くとも18時には退勤できることが多い。
「悪いんだけどさ、今日21時まで入ってくれない? ちょっと人足りてなくて」
「誰か風邪でも引いたんですか?」
「神田だよ。あのバカ、体調管理は徹底しろって散々注意してやったのに」
「なるほど。たしかにバカっすね」
神田、というのは今年入ってきたばかりの新人だ。神田 結子。22歳女性で独身。4年生大学を卒業したばかりで、あまり社会というものを経験してきてないタイプの人間だ。
神田のやつ、入社して数週間で風邪引くとかあり得ないだろ。なんで俺が残業するハメになってんだ。
と心のなかでぼやくが、俺も一応社会人だ。
「いいですよ。どうせ暇なんで」
「本当? ありがとう高坂くん。助かるよ」
「神田には、店長から厳しく言っておいてください」
「おう」
全く、今日はついてない。本当は今すぐにでも家に帰って寝たいが、自分だって体調を崩す時はある。その辺は、もちつもたれずだと思っている。
あー。働きたくない。
「なあ高坂くん」
「はい、なんです?」
店の制服に着替え終えたところで、再び中崎さんに声をかけられた。
「高坂くんは、いい人いないのか?」
「……中崎さん、またその話ですか」
この質問は、本当に数えきれないほどされた。そして、ここからさらに……
「結婚はいいぞ~。結婚は人生の墓場だって言うやつもいるけど、俺に言わせりゃそれはただのひがみだね。もしくは、結婚相手を間違えたやつだ」
と、ここまでが一連の流れ。中崎さんはいわゆる、愛妻家というやつらしい。それが悪いとは思わないが、あいにく俺は結婚に興味はない。……いや、持っちゃいけないだろ、俺は。
「そのうち捕まえてきますよ」
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「その時はお願いします。じゃ、俺厨房入りますんで」
「おい、まだ話は……!」
話を強引に止める形で、俺は更衣室を出て扉を閉めた。あのまま延々と話を聞いていては、本当にお見合いをさせられるハメになる。それはごめんだ。
気持ちを切り替えて、厨房へと向かった。
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