結婚とは案外悪いもんじゃない

あまんちゅ

文字の大きさ
29 / 37

第7話 浮生若夢-5

しおりを挟む
ーーーーー
ーーーーーーー
ーーーーーーーーー

私は、本当に馬鹿だ。全てが中途半端。昔から何も変わっていない。考えもなしに突っ走って、空回りして。

純平と別れてから、私は気がつくとこの場所に足を運んでいた。人生最大の過ちを犯してしまった、この田んぼ道。周りには街灯もなく、真っ暗な闇が広がっている。


「…………はぁ」

ため息を溢さずにはいられない。それくらい私は、私自身に呆れていた。面と向かって向き合うことに耐えきれず、逃げ出してしまった臆病者に。

純平からの告白、素直に嬉しかった。私なんかには勿体ないと思った。でも、私はそれに応えることはできない。もしあの時、私が純平に告白した時に言ってくれていたら……。


ううん、純平は悪くない。悪いのは私だ。私がこんなんだから、上手くいかないんだ。

地元に旅行なんて、止めておけばよかった。あのまま大人しくしていれば、純平も私のことなんか忘れていたかもしれないのに。わざわざ顔を見にお店まで行ってしまうなんて。

リサーチのために旅行雑誌を見ていた時、あのお店が載っていた。そこに純平が写っていたのを見てしまったのが運の尽き。


会いたい。その思いに抗うことができなかった。

顔を見れれば満足。それ以上は関わらないようにしようと思っていた。でも、純平に『覚えてる?』って言われたとき、嬉しいと感じてしまった。それはつまり、私のことを覚えていてくれたということだから。

関わってはいけないと、中途半端なことをしてはいけないと分かっていたのに。今日もまた純平と会ってしまった。
……楽しかったなあ。久しぶりに、楽しいって思った。

もし今日、純平があんなことを聞いてこなかったら、あのまま楽しく話していたのかな。
思えば、私の人生は過ちばかりだった。
あの時こうしていれば、こうしていなければ。そんな思いが渦巻いている。

生まれてきたことが間違いだったのかと思うくらい。こんなことを考えるなんて、育ててくれた両親に悪いよね。それは分かってる。だけど、だけど……。


「…………」

ふと、夜空を見上げる。夜の空は、なんで昼より高く見えるんだろう。星ひとつない悲しそうな空を見て、そんなことを思った。

私はその時、自分が泣いていることに気がついた。だけど、それを拭う気にはなれなかった。


……もし、純平が私を見つけてくれたら。その時は、もう一度向き合ってみようかな。ダメかな、そんな独りよがりな考え。ううん、そんなことないよね。

でも、純平がこの場所に来なかったら……。そうなったら、それはそれでいいのかもしれない。その方が、純平は幸せだよね。うん。そうだよね。


「あ、綺麗……」

何もなかった空に、満天の星が見えた。それは、今までで一番綺麗な景色だ。純平とこの空を見たい。



純平に、会いたいよ。

私はひとり、そんな身勝手なことを願った。どうかこの願いが、神様に届きますように。そんな思いを込めて、私は夜空に向かって手を伸ばした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

幼馴染の許嫁

山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

友達婚~5年もあいつに片想い~

日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は 同僚の大樹に5年も片想いしている 5年前にした 「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」 梨衣は今30歳 その約束を大樹は覚えているのか

処理中です...