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最終話 夢ノ終了-2
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どれほど時間が経っただろうか。時計を見ると、もう1時間ほど経っていた。いつの間にか、そんなに時間が過ぎていたのか。
あれからずっと待っているが、未だに美幸たちの姿は見えない。俺が見逃していなければの話だけど。
「はあ……」
思わずため息が溢れた。このまま、タイムリミットを迎えてしまうのだろうか。美幸に話もできないまま、お別れなんてごめんだ。
でも……会える可能性は限りなくゼロに近い。
絶望が心を覆い尽くそうとしているのを必死に振り払いながら、俺はただ信じて待った。
しかし、時間は無情にも過ぎていった。
気がつけば、時刻はすでに12時過ぎ。もう戻らないと、昼からの仕事に間に合わない。頭の中に重たい鉛が入ってしまったかのように、気分が悪くなった。
最悪だ……。結局、会うことすら叶わないなんて。俺はまた、こんな気持ちを抱えたまま生きていかなくてはいけないのか。
俺は後悔の念を抱きながら、重たい足取りで空港を後にした。帰路の記憶は、全くなかった。俺はただボーッと、車窓からの景色を見ていたと思う。
『次は~○○~。○○です。ホームと電車の間が少し空いております。お降りの際はご注意ください』
俺は電車を降り、とぼとぼと歩き出した。改札を抜け、駐輪場へと向かう。自転車に股がり、ペダルに足を乗せた。
さあ、帰るか。
「………………」
最後に、もう一度だけ。
あの場所に行ってみよう。
俺はゆっくりと自転車を漕ぎ始めた。
数分後、俺は目的地に着いた。ここ最近、よくこの場所を訪れている気がする。
美幸にプロポーズされた、あの田んぼ道だ。自転車から降りて、辺りを見渡してみる。当然のように美幸の姿はない。
「やっぱり、いないか……」
俺はポケットから煙草を取り出し、マッチで火をつけた。吐き出した煙が、空に向かって飛んでいく。まるで雲みたいだ。
今日は気持ちのいいくらい快晴だった。心地よい風が、頬を撫でる。俺はゆっくりと目を閉じた。今になって思えば、俺の人生は失敗と後悔ばかりだな。
この街で美幸に再会してからも、後悔の連続だった。あの時こうしていれば、何かが変わっていたかもしれない。そんなことばかり考えてしまう。
俺はいつになったら、自分の人生に満足することができるのだろうか。果たして、そんな瞬間が訪れるのだろうか。不安でたまらない。
自分の不甲斐なさに、涙が溢れてきた。それが頬を伝った時、俺はふと誰かの気配を感じた。振り返ると、そこには目を疑う光景があった。
「美幸……?」
「…………」
どうして、美幸が? また昨日の夜と同じように、幻覚を見ているのか?
そこに立っているのは本当の美幸なのか?
俺は、素直にこの状況を喜べなかった。昨日のことがあったせいで、目の前に立っている美幸が本当に美幸なのか分からなくなってしまったからだ。昨日のあれが、幻覚だったのかすら分からない。
「美幸、なのか? 本当に?」
「……偽物だって言ったら信じる?」
その声は、間違いなく美幸のものだった。まさか、こんなところでまた会えるなんて。もうこの際、幻覚でも何でも構わないとさえ思った。俺は急いで涙を拭う。
「もう帰る時間なんじゃ……?」
「……うん。そうなんだけどね。最後に、この場所に寄ろうと思って」
「最後って。何でそんなこと言うんだよ」
「言葉の通りだよ。私、もうこの街には来ないから」
「え?」
その時、俺の心に浮かんだのは、悲しみじゃなく怒りだった。
「いい加減にしろよ」
「……どうしたの?」
「お前、情緒不安定かよ。昨日は勝手に帰ろうとするし、かと思えば俺のこと好きとか言い出すし、自分のこと失敗作とか言いやがるし」
腹の底に溜まっていたものが、全て溢れ出してきた。俺がこんなことを言える立場じゃないのはわかっている。だけど、言わずにはいられなかった。
「……待ってよ。勝手に帰ったのはその通りだけど、純……高坂くんのこと好きなんて言ってない」
「はあ? この場所で昨日会ったろ?」
「何言ってるの? 昨日はここに来てないよ」
美幸のこの反応。どうやら嘘は吐いてないみたいだ。とういうことは、昨日見た美幸は幻覚だったらしい。本当に白昼夢ってやつを見ていたのかな。じゃあ、あの時の美幸が言っていたことは……?
あれからずっと待っているが、未だに美幸たちの姿は見えない。俺が見逃していなければの話だけど。
「はあ……」
思わずため息が溢れた。このまま、タイムリミットを迎えてしまうのだろうか。美幸に話もできないまま、お別れなんてごめんだ。
でも……会える可能性は限りなくゼロに近い。
絶望が心を覆い尽くそうとしているのを必死に振り払いながら、俺はただ信じて待った。
しかし、時間は無情にも過ぎていった。
気がつけば、時刻はすでに12時過ぎ。もう戻らないと、昼からの仕事に間に合わない。頭の中に重たい鉛が入ってしまったかのように、気分が悪くなった。
最悪だ……。結局、会うことすら叶わないなんて。俺はまた、こんな気持ちを抱えたまま生きていかなくてはいけないのか。
俺は後悔の念を抱きながら、重たい足取りで空港を後にした。帰路の記憶は、全くなかった。俺はただボーッと、車窓からの景色を見ていたと思う。
『次は~○○~。○○です。ホームと電車の間が少し空いております。お降りの際はご注意ください』
俺は電車を降り、とぼとぼと歩き出した。改札を抜け、駐輪場へと向かう。自転車に股がり、ペダルに足を乗せた。
さあ、帰るか。
「………………」
最後に、もう一度だけ。
あの場所に行ってみよう。
俺はゆっくりと自転車を漕ぎ始めた。
数分後、俺は目的地に着いた。ここ最近、よくこの場所を訪れている気がする。
美幸にプロポーズされた、あの田んぼ道だ。自転車から降りて、辺りを見渡してみる。当然のように美幸の姿はない。
「やっぱり、いないか……」
俺はポケットから煙草を取り出し、マッチで火をつけた。吐き出した煙が、空に向かって飛んでいく。まるで雲みたいだ。
今日は気持ちのいいくらい快晴だった。心地よい風が、頬を撫でる。俺はゆっくりと目を閉じた。今になって思えば、俺の人生は失敗と後悔ばかりだな。
この街で美幸に再会してからも、後悔の連続だった。あの時こうしていれば、何かが変わっていたかもしれない。そんなことばかり考えてしまう。
俺はいつになったら、自分の人生に満足することができるのだろうか。果たして、そんな瞬間が訪れるのだろうか。不安でたまらない。
自分の不甲斐なさに、涙が溢れてきた。それが頬を伝った時、俺はふと誰かの気配を感じた。振り返ると、そこには目を疑う光景があった。
「美幸……?」
「…………」
どうして、美幸が? また昨日の夜と同じように、幻覚を見ているのか?
そこに立っているのは本当の美幸なのか?
俺は、素直にこの状況を喜べなかった。昨日のことがあったせいで、目の前に立っている美幸が本当に美幸なのか分からなくなってしまったからだ。昨日のあれが、幻覚だったのかすら分からない。
「美幸、なのか? 本当に?」
「……偽物だって言ったら信じる?」
その声は、間違いなく美幸のものだった。まさか、こんなところでまた会えるなんて。もうこの際、幻覚でも何でも構わないとさえ思った。俺は急いで涙を拭う。
「もう帰る時間なんじゃ……?」
「……うん。そうなんだけどね。最後に、この場所に寄ろうと思って」
「最後って。何でそんなこと言うんだよ」
「言葉の通りだよ。私、もうこの街には来ないから」
「え?」
その時、俺の心に浮かんだのは、悲しみじゃなく怒りだった。
「いい加減にしろよ」
「……どうしたの?」
「お前、情緒不安定かよ。昨日は勝手に帰ろうとするし、かと思えば俺のこと好きとか言い出すし、自分のこと失敗作とか言いやがるし」
腹の底に溜まっていたものが、全て溢れ出してきた。俺がこんなことを言える立場じゃないのはわかっている。だけど、言わずにはいられなかった。
「……待ってよ。勝手に帰ったのはその通りだけど、純……高坂くんのこと好きなんて言ってない」
「はあ? この場所で昨日会ったろ?」
「何言ってるの? 昨日はここに来てないよ」
美幸のこの反応。どうやら嘘は吐いてないみたいだ。とういうことは、昨日見た美幸は幻覚だったらしい。本当に白昼夢ってやつを見ていたのかな。じゃあ、あの時の美幸が言っていたことは……?
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