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5 翔太郎vs虎
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水田の一角に建つポンプ古屋を翔太郎が見つけたのは、トラックで探し始めて30分を過ぎた頃だった。
「こいつで間違いないだろう」
田んぼに水を入れるために、地下水を汲み上げるポンプを設置するための古屋がポンプ古屋だ。
特に変わった様子はない。
普段なら見逃してしまうかもしれない。
ポンプ古屋は、稲作地帯のあっちこっちに点在しているからだ。
翔太郎は、少し離れた場所にトラックを停めて、そのポンプ古屋に近づいた。
そして、仁王立ちになり、大きな声で言い放った。
「この地域の水田は全部、用水路から水を引き入れるんだ。
だからこの地域にポンプ古屋はない‼️」
ドクンッ。
翔太郎の言葉を聞いて、ポンプ古屋が生き物のように反応した。
ポンプ古屋は震え出し、少しずつ鵺の姿に変わっていった。
顔は猿、胴体は狸、手足は虎。
尻尾は無い。
風太郎に喰い千切られた尾は捨ててしまったのだろう。
醜い妖怪の鵺がそこにいた。
「おまえがうさぎさんを泣かした💢
そして、風太郎を殺した💢
....絶対に許さない‼️」
頭から湯気が立つほど怒りに震える翔太郎。
後ろ脚で立ち上がる鵺の身体は、4メートルを優に超える。
身長が2メートル近い翔太郎でも、さすがにタイマンを張れる大きさではない。
岩のような拳を握り締め、鵺に殴り掛かる翔太郎。
一方、うさぎは市街地の中を疾走していた。
左手に櫻野八幡宮が見えた。
この街に、古くからある八幡様だ。
そこを過ぎれば翔太郎から送られた座標に着く。
「もう少し待ってて」
うさぎの視界が一気に広がる。
稲作地帯に入ったからだ。
たくさんのお米を実らせた稲穂が、高原山の風に揺れている。
向こうで土煙が舞っている。
鵺と殴り合う翔太郎が見えた。
「翔太郎さん。
早まった事を....」
体高4メートルの鵺に対し、翔太郎は素手で挑んでいた。
しかも、互角に殴り合っている。
虎の爪をいなし、鵺の懐に飛び込む翔太郎は、狸の胴体に拳をめり込ませる。
巨大なハンマーに殴られたように、鵺の巨体がよじれる。
堪らず下がった猿の顔を、強烈なアッパーで叩き上げる。
不覚にも、天を仰いだ鵺は背中からゆっくり倒れていった。
「すごい❣️」
ボクシングならKO勝ちだ。
しかし、翔太郎が優位に見えたのはここまでだった。
ふらつき、しゃがみ込む翔太郎。
「翔太郎さん‼️」
駆け寄るうさぎ。
翔太郎は力尽きたように膝を地面に突いていた。
呼吸も荒い。
身体中から汗が吹き出している。
後ろで縛っていた髪は、解けて顔に掛かっていた。
「うさぎさん、何か水分はありますか❓
実はおれ....カッパと人間のハイブリッドなんです。
.....頭に皿がありますよね。
そこが乾くと.....力が出ないんです💦」
ゼエゼエと呼吸をしながら、やっとのことでうさぎに伝えた。
なんとなく予想はしていたけど、改めて頭の皿を見ると引いてしまったうさぎ。
「飲みかけのお茶でしたらあります....」
「それで、かまいません」
(お茶なんて持ってないじゃん💦
どうするのうさぎちゃん❓)
サポートAIの心配をよそに、セーラー服のスカートをたくし上げるうさぎ。
(きっと大丈夫です)
疲れきっ翔太郎は、両手を地面に着けて、なんとか倒れずに身体を支えている。
もう、顔を上げることすらできない翔太郎の近くにうさぎは立った。
「そのまま動かないでください❣️」
チョロチョロと音がして、翔太郎の頭に飲みかけのお茶❓....が掛けられた。
頭の皿が水分をどんどん吸収していく。
「これで全部です」
うさぎは下着を戻して後ろに下がった。
ミチミチ....
翔太郎の身体から小さな音が聞こえてくる。
(何の音❓)
ゴツゴツ...ゴン...
翔太郎の骨と筋肉が音を立てて増大していく。
「効いてきた❗️
すごい効いてきた‼️」
翔太郎の気が一気に膨れ上がる。
今まで顔に垂れていた髪が、ゆらゆらと逆立つ。
力強く立ち上がる翔太郎。
「力が湧き上がってきます‼️」
溢れ出す力に戸惑っているようだ。
翔太郎のアッパーで仰向けにひっくり返された鵺も、時を同じく立ち上がった。
「翔太郎さんは、これで無敵です💕
あんなのはぶっ飛ばしてください❣️」
翔太郎は力強く頷いた。
(kameちゃん、わたしも行くよ❣️)
(よし、行こう)
うさぎの身体が淡い光に包まれると、ピンクベージュのセーラー服がパールホワイトのウエディングドレスに変わっていった。
パールホワイトのショートのウエディングドレスは、ブライドの戦闘服だ。
目を丸くしてブライドを見つめる翔太郎。
口を閉じることも忘れているようだ。
「うさぎさんって、あのブライドなの⁉️」
不思議そうな顔をしている。
「はい、そうです。
一緒に戦いましょう💕」
ムキムキと全身の筋肉をパンプアップして喜ぶ翔太郎。
鵺の身体にも変化があった。
猿と虎と狸が分離を始めた。
身体中から複数の尾を生やした猿。
知能はあっても意地の悪そうな顔をしている。
虎の身体は炎を上げている。
この炎を使うために鵺は分離したのか❓
狸は後方に下がった。
猿をブライド、虎を翔太郎に当てるようだ。
虎が一気に間合いを詰める。
ブライドに見惚れている翔太郎は気付いていない。
「翔太郎さん‼️」
ブライドの叫びと同時に虎の爪が翔太郎を薙ぎ払.....えなかった。
何事も無く、翔太郎はブライドに見惚れていた。
(ちょっと効果がありすぎたんじゃない⁉️)
(男って単純ね❣️)
ゆっくりと虎に向き直る翔太郎。
拳を握り、吼える翔太郎。
虎も負けじと吠える。
お互いに、凄まじい気が昂ぶっていく。
虎が牙を剥いて襲いかかる。
真正面から殴り掛かる翔太郎。
大気が弾ける音がした。
吹き飛んだのは虎の方だ。
地面に叩きつけられた虎は、2転3転してやっと止まった。
翔太郎の拳を受けた虎の顔は、鼻先が頭蓋骨に深くめり込んでいた。
ボロ雑巾のように地面に横たわる虎は、もう動くことはないだろう。
虎は自分の炎で自らを焼いていた。
牙を剥いて翔太郎が笑っている。
天を仰いで、翔太郎は雄叫びを上げていた。
「こいつで間違いないだろう」
田んぼに水を入れるために、地下水を汲み上げるポンプを設置するための古屋がポンプ古屋だ。
特に変わった様子はない。
普段なら見逃してしまうかもしれない。
ポンプ古屋は、稲作地帯のあっちこっちに点在しているからだ。
翔太郎は、少し離れた場所にトラックを停めて、そのポンプ古屋に近づいた。
そして、仁王立ちになり、大きな声で言い放った。
「この地域の水田は全部、用水路から水を引き入れるんだ。
だからこの地域にポンプ古屋はない‼️」
ドクンッ。
翔太郎の言葉を聞いて、ポンプ古屋が生き物のように反応した。
ポンプ古屋は震え出し、少しずつ鵺の姿に変わっていった。
顔は猿、胴体は狸、手足は虎。
尻尾は無い。
風太郎に喰い千切られた尾は捨ててしまったのだろう。
醜い妖怪の鵺がそこにいた。
「おまえがうさぎさんを泣かした💢
そして、風太郎を殺した💢
....絶対に許さない‼️」
頭から湯気が立つほど怒りに震える翔太郎。
後ろ脚で立ち上がる鵺の身体は、4メートルを優に超える。
身長が2メートル近い翔太郎でも、さすがにタイマンを張れる大きさではない。
岩のような拳を握り締め、鵺に殴り掛かる翔太郎。
一方、うさぎは市街地の中を疾走していた。
左手に櫻野八幡宮が見えた。
この街に、古くからある八幡様だ。
そこを過ぎれば翔太郎から送られた座標に着く。
「もう少し待ってて」
うさぎの視界が一気に広がる。
稲作地帯に入ったからだ。
たくさんのお米を実らせた稲穂が、高原山の風に揺れている。
向こうで土煙が舞っている。
鵺と殴り合う翔太郎が見えた。
「翔太郎さん。
早まった事を....」
体高4メートルの鵺に対し、翔太郎は素手で挑んでいた。
しかも、互角に殴り合っている。
虎の爪をいなし、鵺の懐に飛び込む翔太郎は、狸の胴体に拳をめり込ませる。
巨大なハンマーに殴られたように、鵺の巨体がよじれる。
堪らず下がった猿の顔を、強烈なアッパーで叩き上げる。
不覚にも、天を仰いだ鵺は背中からゆっくり倒れていった。
「すごい❣️」
ボクシングならKO勝ちだ。
しかし、翔太郎が優位に見えたのはここまでだった。
ふらつき、しゃがみ込む翔太郎。
「翔太郎さん‼️」
駆け寄るうさぎ。
翔太郎は力尽きたように膝を地面に突いていた。
呼吸も荒い。
身体中から汗が吹き出している。
後ろで縛っていた髪は、解けて顔に掛かっていた。
「うさぎさん、何か水分はありますか❓
実はおれ....カッパと人間のハイブリッドなんです。
.....頭に皿がありますよね。
そこが乾くと.....力が出ないんです💦」
ゼエゼエと呼吸をしながら、やっとのことでうさぎに伝えた。
なんとなく予想はしていたけど、改めて頭の皿を見ると引いてしまったうさぎ。
「飲みかけのお茶でしたらあります....」
「それで、かまいません」
(お茶なんて持ってないじゃん💦
どうするのうさぎちゃん❓)
サポートAIの心配をよそに、セーラー服のスカートをたくし上げるうさぎ。
(きっと大丈夫です)
疲れきっ翔太郎は、両手を地面に着けて、なんとか倒れずに身体を支えている。
もう、顔を上げることすらできない翔太郎の近くにうさぎは立った。
「そのまま動かないでください❣️」
チョロチョロと音がして、翔太郎の頭に飲みかけのお茶❓....が掛けられた。
頭の皿が水分をどんどん吸収していく。
「これで全部です」
うさぎは下着を戻して後ろに下がった。
ミチミチ....
翔太郎の身体から小さな音が聞こえてくる。
(何の音❓)
ゴツゴツ...ゴン...
翔太郎の骨と筋肉が音を立てて増大していく。
「効いてきた❗️
すごい効いてきた‼️」
翔太郎の気が一気に膨れ上がる。
今まで顔に垂れていた髪が、ゆらゆらと逆立つ。
力強く立ち上がる翔太郎。
「力が湧き上がってきます‼️」
溢れ出す力に戸惑っているようだ。
翔太郎のアッパーで仰向けにひっくり返された鵺も、時を同じく立ち上がった。
「翔太郎さんは、これで無敵です💕
あんなのはぶっ飛ばしてください❣️」
翔太郎は力強く頷いた。
(kameちゃん、わたしも行くよ❣️)
(よし、行こう)
うさぎの身体が淡い光に包まれると、ピンクベージュのセーラー服がパールホワイトのウエディングドレスに変わっていった。
パールホワイトのショートのウエディングドレスは、ブライドの戦闘服だ。
目を丸くしてブライドを見つめる翔太郎。
口を閉じることも忘れているようだ。
「うさぎさんって、あのブライドなの⁉️」
不思議そうな顔をしている。
「はい、そうです。
一緒に戦いましょう💕」
ムキムキと全身の筋肉をパンプアップして喜ぶ翔太郎。
鵺の身体にも変化があった。
猿と虎と狸が分離を始めた。
身体中から複数の尾を生やした猿。
知能はあっても意地の悪そうな顔をしている。
虎の身体は炎を上げている。
この炎を使うために鵺は分離したのか❓
狸は後方に下がった。
猿をブライド、虎を翔太郎に当てるようだ。
虎が一気に間合いを詰める。
ブライドに見惚れている翔太郎は気付いていない。
「翔太郎さん‼️」
ブライドの叫びと同時に虎の爪が翔太郎を薙ぎ払.....えなかった。
何事も無く、翔太郎はブライドに見惚れていた。
(ちょっと効果がありすぎたんじゃない⁉️)
(男って単純ね❣️)
ゆっくりと虎に向き直る翔太郎。
拳を握り、吼える翔太郎。
虎も負けじと吠える。
お互いに、凄まじい気が昂ぶっていく。
虎が牙を剥いて襲いかかる。
真正面から殴り掛かる翔太郎。
大気が弾ける音がした。
吹き飛んだのは虎の方だ。
地面に叩きつけられた虎は、2転3転してやっと止まった。
翔太郎の拳を受けた虎の顔は、鼻先が頭蓋骨に深くめり込んでいた。
ボロ雑巾のように地面に横たわる虎は、もう動くことはないだろう。
虎は自分の炎で自らを焼いていた。
牙を剥いて翔太郎が笑っている。
天を仰いで、翔太郎は雄叫びを上げていた。
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