Rabbit bride 2085 第6話 雨の翔太郎

まろうど

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5 翔太郎vs虎

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水田の一角に建つポンプ古屋を翔太郎が見つけたのは、トラックで探し始めて30分を過ぎた頃だった。

「こいつで間違いないだろう」

田んぼに水を入れるために、地下水を汲み上げるポンプを設置するための古屋がポンプ古屋だ。

特に変わった様子はない。

普段なら見逃してしまうかもしれない。

ポンプ古屋は、稲作地帯のあっちこっちに点在しているからだ。

翔太郎は、少し離れた場所にトラックを停めて、そのポンプ古屋に近づいた。

そして、仁王立ちになり、大きな声で言い放った。

「この地域の水田は全部、用水路から水を引き入れるんだ。

だからこの地域にポンプ古屋はない‼️」

ドクンッ。

翔太郎の言葉を聞いて、ポンプ古屋が生き物のように反応した。

ポンプ古屋は震え出し、少しずつ鵺の姿に変わっていった。

顔は猿、胴体は狸、手足は虎。
尻尾は無い。
風太郎に喰い千切られた尾は捨ててしまったのだろう。

醜い妖怪の鵺がそこにいた。

「おまえがうさぎさんを泣かした💢

そして、風太郎を殺した💢

....絶対に許さない‼️」

頭から湯気が立つほど怒りに震える翔太郎。

後ろ脚で立ち上がる鵺の身体は、4メートルを優に超える。

身長が2メートル近い翔太郎でも、さすがにタイマンを張れる大きさではない。

岩のような拳を握り締め、鵺に殴り掛かる翔太郎。

一方、うさぎは市街地の中を疾走していた。

左手に櫻野八幡宮が見えた。

この街に、古くからある八幡様だ。

そこを過ぎれば翔太郎から送られた座標に着く。

「もう少し待ってて」

うさぎの視界が一気に広がる。

稲作地帯に入ったからだ。

たくさんのお米を実らせた稲穂が、高原山の風に揺れている。

向こうで土煙が舞っている。

鵺と殴り合う翔太郎が見えた。

「翔太郎さん。
早まった事を....」

体高4メートルの鵺に対し、翔太郎は素手で挑んでいた。

しかも、互角に殴り合っている。

虎の爪をいなし、鵺の懐に飛び込む翔太郎は、狸の胴体に拳をめり込ませる。

巨大なハンマーに殴られたように、鵺の巨体がよじれる。

堪らず下がった猿の顔を、強烈なアッパーで叩き上げる。

不覚にも、天を仰いだ鵺は背中からゆっくり倒れていった。

「すごい❣️」

ボクシングならKO勝ちだ。

しかし、翔太郎が優位に見えたのはここまでだった。

ふらつき、しゃがみ込む翔太郎。

「翔太郎さん‼️」

駆け寄るうさぎ。

翔太郎は力尽きたように膝を地面に突いていた。

呼吸も荒い。
身体中から汗が吹き出している。

後ろで縛っていた髪は、解けて顔に掛かっていた。

「うさぎさん、何か水分はありますか❓

実はおれ....カッパと人間のハイブリッドなんです。

.....頭に皿がありますよね。

そこが乾くと.....力が出ないんです💦」

ゼエゼエと呼吸をしながら、やっとのことでうさぎに伝えた。

なんとなく予想はしていたけど、改めて頭の皿を見ると引いてしまったうさぎ。

「飲みかけのお茶でしたらあります....」

「それで、かまいません」

(お茶なんて持ってないじゃん💦
どうするのうさぎちゃん❓)

サポートAIの心配をよそに、セーラー服のスカートをたくし上げるうさぎ。

(きっと大丈夫です)

疲れきっ翔太郎は、両手を地面に着けて、なんとか倒れずに身体を支えている。

もう、顔を上げることすらできない翔太郎の近くにうさぎは立った。

「そのまま動かないでください❣️」

チョロチョロと音がして、翔太郎の頭に飲みかけのお茶❓....が掛けられた。

頭の皿が水分をどんどん吸収していく。

「これで全部です」

うさぎは下着を戻して後ろに下がった。

ミチミチ....

翔太郎の身体から小さな音が聞こえてくる。

(何の音❓)

ゴツゴツ...ゴン...

翔太郎の骨と筋肉が音を立てて増大していく。

「効いてきた❗️

すごい効いてきた‼️」

翔太郎の気が一気に膨れ上がる。

今まで顔に垂れていた髪が、ゆらゆらと逆立つ。

力強く立ち上がる翔太郎。

「力が湧き上がってきます‼️」

溢れ出す力に戸惑っているようだ。

翔太郎のアッパーで仰向けにひっくり返された鵺も、時を同じく立ち上がった。

「翔太郎さんは、これで無敵です💕

あんなのはぶっ飛ばしてください❣️」

翔太郎は力強く頷いた。

(kameちゃん、わたしも行くよ❣️)

(よし、行こう)

うさぎの身体が淡い光に包まれると、ピンクベージュのセーラー服がパールホワイトのウエディングドレスに変わっていった。

パールホワイトのショートのウエディングドレスは、ブライドの戦闘服だ。

目を丸くしてブライドを見つめる翔太郎。

口を閉じることも忘れているようだ。

「うさぎさんって、あのブライドなの⁉️」

不思議そうな顔をしている。

「はい、そうです。

一緒に戦いましょう💕」

ムキムキと全身の筋肉をパンプアップして喜ぶ翔太郎。

鵺の身体にも変化があった。

猿と虎と狸が分離を始めた。

身体中から複数の尾を生やした猿。

知能はあっても意地の悪そうな顔をしている。

虎の身体は炎を上げている。

この炎を使うために鵺は分離したのか❓

狸は後方に下がった。

猿をブライド、虎を翔太郎に当てるようだ。

虎が一気に間合いを詰める。

ブライドに見惚れている翔太郎は気付いていない。

「翔太郎さん‼️」

ブライドの叫びと同時に虎の爪が翔太郎を薙ぎ払.....えなかった。

何事も無く、翔太郎はブライドに見惚れていた。

(ちょっと効果がありすぎたんじゃない⁉️)

(男って単純ね❣️)

ゆっくりと虎に向き直る翔太郎。

拳を握り、吼える翔太郎。

虎も負けじと吠える。

お互いに、凄まじい気が昂ぶっていく。

虎が牙を剥いて襲いかかる。

真正面から殴り掛かる翔太郎。

大気が弾ける音がした。

吹き飛んだのは虎の方だ。

地面に叩きつけられた虎は、2転3転してやっと止まった。

翔太郎の拳を受けた虎の顔は、鼻先が頭蓋骨に深くめり込んでいた。

ボロ雑巾のように地面に横たわる虎は、もう動くことはないだろう。

虎は自分の炎で自らを焼いていた。

牙を剥いて翔太郎が笑っている。

天を仰いで、翔太郎は雄叫びを上げていた。
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