私の名は杉山源吾。津軽藩で家老を務めていますが、公言出来ません。何故なら私の父が石田三成だからです。

俣彦

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殿……

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 小浜は律令時代から京に向け輸送された物資が集まる要港であると同時に、奈良や京へ海産物を運ぶ御食の国としても栄えた町。

「石田様。お待ちしておりました。」
石田重成「国境から助けていただきありがとうございました。」
「しかしここも既に徳川の影響下にあります。ここよりも……。」
石田重成「船に乗った方が……。」
「はい。安全では無いかと。」
石田重成「わかりました。」
「もし何かありましたら、すぐ出航する事が出来るよう漕ぎ手の者共も乗せておきます。」
石田重成「ありがとうございます。」

津山甚内(娘は石田重成の乳母)「大坂城に居た時の事を考えますと……。」
石田重成「前田様。津軽様に助けていただけました。これも偏に……。」

 父石田三成のおかげ。

石田重成「仮に津軽様が我らを裏切る可能性もある。しかしこれもまた定め。その時は素直に応じるとする。」
津山甚内「しかし立派な町でありますな。」
石田重成「町もそうでありますが、ここから見える船の数と掲げられている旗印……。」
津山甚内「これだけの方々がまとまれば、徳川とのいくさを引っ繰り返す事が出来るかも知れませんね。」
石田重成「玄以様に一喝されて終わりでありますが。しかし……ゆっくり散策出来たら……。」
津山甚内「仕方ありません。立場が立場であります故。」
石田重成「景色だけでも目に焼き付けておくとするか……。」
津山甚内「左様に御座います。」
石田重成「ん!?」
津山甚内「如何為されましたか?」
石田重成「あそこに見えるのは……。」
津山甚内「どちらになりますでしょうか?」
石田重成「あそこなのであるが……。私は何か幻を見ているのであろうか?」
津山甚内「どれどれ……。私の目にも見えています。ただ幻である可能性もあります。」
石田重成「確かめに行きたいのではあるが……。」
津山甚内「ここを出るのは危険であります。」
石田重成「館の方に……。」
津山甚内「仮にそうでありました場合、津軽が敵なのか味方なのかわかっていません。騒ぎとなってしまう恐れがあります。」
石田重成「……だな。」
津山甚内「私でありましたら、問題無いのでは無いかと?」
石田重成「危険である事に変わりが無いぞ。」
津山甚内「私を知る者は居ませんし、ここは数多の国々から人が集まっています。余所者である事を理由に疑われる恐れはありません。」
石田重成「……わかりました。無理はしてはなりませんぞ。」

 ひとり船を降り、気になる人物の下へ向かう津山甚内。そこへ……。

「おっ!津山では無いか!!其方は確か大坂に。」
津山甚内「はい。重成様もここに逃れています。」
「重成もか!」
津山甚内「はい。しかし殿。」
「どうした?」

 ……目立ち過ぎであります。
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