9 / 17
嘘!? ばれた!
しおりを挟む
…トウゴにとって女はオリビア一人。
…誰も代わりがない。
大きな声ではなかったが張りのあるトウゴの声は離れた場所にいたオリビアにも聞こえ、言われた内容もはっきりと届いた…。
トウゴの女?
え?わたし?
…うそっ!?
思わず声を出しそうになってしまい、息を飲む…。
まだ、幼いながらもトウゴの告白ともとれる言葉に何とも言えない思いに捕らわれたオリビアは、その場にしゃがみこんでいまう。
足早に去っていく令嬢をトウゴは黙って見送り、辺りが静まると、疲れたようにため息をついて首に手をあて徐ろに…。
「…さて、そこにいるのは、誰だ?」
一度も振り向きもしないで、かなり離れた位置でいたオリビアへトウゴは、誰何してきた…。
「!…」
…えっ!?
「答えて貰おうか?」
なんで???
暗がりで見えてないと思っていたオリビアは、驚きのあまりパ二クって、返答ができない。。
ザサッと足音がして手前で止むと、しゃがんだアリスの目の前に大きな靴の先が見えた。
トウゴの呆れたような小さなため息が聞こえ、名前を呼ぶ。
「…オリビア」
トウゴが、傍まで来るとしゃがんだままのオリビアに再度聞いてきた。
「…何をしている?」
「あ、月を…」
オリビアの言葉で上空の輝く月を見て。
「…ああ。月を見に来たのか?…きれいだな」
うんうん、と首を縦に振って同意を示すと。
「確かにきれいだが、オリビア、何で一人で此処にいる?」
あぅ…まずい。
言葉もなく黙り込んだアリスに頭に手をのせると、
「…懲りないやつだな…」
「…」
「オリビア、一人で出歩くな。せめて侍女くらい連れて歩け」
「…なんで?此処は、離宮だからそんなの必要なんか…」
「離宮でも。誰も近づかない訳じゃない。」
言っている事は解る、けれどトウゴの責めるような口調にカチンときた。
「…さっきの女性みたいに入りこむから?」
嫌そうに言い放ったオリビアの声が辺りに響く。
…。
…。
「…なるほど。」
さっきより低い声が落ちてきた…。
「…見てたな?」
…えーと…見てたけど。顔が…なんか…?
「えーと…ちょっとだけ…」
「…ちょっと?」
うん、ちょっとじゃないけど…。
全部見たけど…なんか。
トウゴの顔が恐いから、そうしとこう。
なんとなくやばそうな?雰囲気を察知したオリビアは、事なかれを選ぶ。
うんうん、と肯くオリビアをみつめると、
「…そうか?」
さらに小刻みに頷く。
そうそう。
「ふうん?」
ふうん?
納得いかなそうに言うと、微妙な空気が流れる中、空を見上げて。
「…月はいいのか」
え、月?
「其処に、座って観るか?」
すこし先にある東屋を顎で示してオリビアを誘う。
「いいの?」
「せっかく月を観にきたんだ。俺もいる。…少しくらいいいだろう」
「ほんと!ありがとう」
喜ぶオリビアの背に手を当てて歩き出す。
オリビア…さっきあんな場面に出くわしたのに…。
いいのか?それで…。
曖昧のまま、月を観に行く…。
並んで座ると、静寂な中、二人できれいな月を観た。
「…きれい」
水面にも月が映ってユラユラと揺れている。
「…ああ、綺麗だ」
オリビアの頬を指で触れながら、綺麗だと、トウゴが呟く。
トウゴの纏う雰囲気がいつもと違って、項に触れる指がくすぐったくて、
「トウゴ?」
「なあ、オリビア」
「なに?」
「…早く大きくなれ」
「え?」
いきなりの大きくなれ発言に戸惑ったオリビアを見て、顔を背けて、
「…いや、いい。そのままで…」
トウゴのその横顔が苦しそうで、悔いるように言うので…。
「…わたしが子供だから?」
思わず、言ってしまっていた…。
…誰も代わりがない。
大きな声ではなかったが張りのあるトウゴの声は離れた場所にいたオリビアにも聞こえ、言われた内容もはっきりと届いた…。
トウゴの女?
え?わたし?
…うそっ!?
思わず声を出しそうになってしまい、息を飲む…。
まだ、幼いながらもトウゴの告白ともとれる言葉に何とも言えない思いに捕らわれたオリビアは、その場にしゃがみこんでいまう。
足早に去っていく令嬢をトウゴは黙って見送り、辺りが静まると、疲れたようにため息をついて首に手をあて徐ろに…。
「…さて、そこにいるのは、誰だ?」
一度も振り向きもしないで、かなり離れた位置でいたオリビアへトウゴは、誰何してきた…。
「!…」
…えっ!?
「答えて貰おうか?」
なんで???
暗がりで見えてないと思っていたオリビアは、驚きのあまりパ二クって、返答ができない。。
ザサッと足音がして手前で止むと、しゃがんだアリスの目の前に大きな靴の先が見えた。
トウゴの呆れたような小さなため息が聞こえ、名前を呼ぶ。
「…オリビア」
トウゴが、傍まで来るとしゃがんだままのオリビアに再度聞いてきた。
「…何をしている?」
「あ、月を…」
オリビアの言葉で上空の輝く月を見て。
「…ああ。月を見に来たのか?…きれいだな」
うんうん、と首を縦に振って同意を示すと。
「確かにきれいだが、オリビア、何で一人で此処にいる?」
あぅ…まずい。
言葉もなく黙り込んだアリスに頭に手をのせると、
「…懲りないやつだな…」
「…」
「オリビア、一人で出歩くな。せめて侍女くらい連れて歩け」
「…なんで?此処は、離宮だからそんなの必要なんか…」
「離宮でも。誰も近づかない訳じゃない。」
言っている事は解る、けれどトウゴの責めるような口調にカチンときた。
「…さっきの女性みたいに入りこむから?」
嫌そうに言い放ったオリビアの声が辺りに響く。
…。
…。
「…なるほど。」
さっきより低い声が落ちてきた…。
「…見てたな?」
…えーと…見てたけど。顔が…なんか…?
「えーと…ちょっとだけ…」
「…ちょっと?」
うん、ちょっとじゃないけど…。
全部見たけど…なんか。
トウゴの顔が恐いから、そうしとこう。
なんとなくやばそうな?雰囲気を察知したオリビアは、事なかれを選ぶ。
うんうん、と肯くオリビアをみつめると、
「…そうか?」
さらに小刻みに頷く。
そうそう。
「ふうん?」
ふうん?
納得いかなそうに言うと、微妙な空気が流れる中、空を見上げて。
「…月はいいのか」
え、月?
「其処に、座って観るか?」
すこし先にある東屋を顎で示してオリビアを誘う。
「いいの?」
「せっかく月を観にきたんだ。俺もいる。…少しくらいいいだろう」
「ほんと!ありがとう」
喜ぶオリビアの背に手を当てて歩き出す。
オリビア…さっきあんな場面に出くわしたのに…。
いいのか?それで…。
曖昧のまま、月を観に行く…。
並んで座ると、静寂な中、二人できれいな月を観た。
「…きれい」
水面にも月が映ってユラユラと揺れている。
「…ああ、綺麗だ」
オリビアの頬を指で触れながら、綺麗だと、トウゴが呟く。
トウゴの纏う雰囲気がいつもと違って、項に触れる指がくすぐったくて、
「トウゴ?」
「なあ、オリビア」
「なに?」
「…早く大きくなれ」
「え?」
いきなりの大きくなれ発言に戸惑ったオリビアを見て、顔を背けて、
「…いや、いい。そのままで…」
トウゴのその横顔が苦しそうで、悔いるように言うので…。
「…わたしが子供だから?」
思わず、言ってしまっていた…。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる