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最後の夜
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うっかり出たオリビアの言葉にふぅ、と息を吐くと
「…やっぱり聞いたのか」
「あ、」
口を押えてバツが悪そうにしているオリビアの姿を見て自嘲気味に
「…その様子だと、見えていたみたいだな」
遣り切れないという感じで言う。
「あ、あの…」
「…ああ、見てしまったのは、仕方ないから、気にするなって言っても…気にするか…」
俯くオリビアの頭を撫ぜると。
「何から話せばいいか…」
「…最初から聞きたい」
と言えば、
「最初から?うーん…そうだなぁ」
「トウゴがモテているのは知ってる…」
「…俺がモテてるねぇ…確かに群がってきてるようだが、なんでかなぁ…」
…背の高い整った精悍な顔立ちのトウゴは、自分の容姿に無頓着なのか?首を傾げている。
無自覚に暴露しているトウゴ。
そんなに?群がって…きてるのか…。
思っていた以上に、モテている事実に落ち込んでいくオリビア。
「そんなに…モテてるんだ…」
「えっ!?いや、身分からか、どこの国にも、もの好きがいるからなぁ」
更に墓穴を掘るトウゴ。
「どこの国でも…。身分だけじゃない。トウゴの容姿がいいって。トウゴの側妃になりたがってる」
「俺の容姿?側妃?なんで?俺は国王じゃないぞ?」
「トウゴは…王子だから。持てるってみんな言ってる…」
「みんなぁ?どっからそんな…。」
「…」
「そりゃあ、持てるかって言われれば、持てるけど…。俺はいらないぞ?」
呆れたようにいらないと断言する。
「…いらない?」
「そりゃあ、そうだろう。俺にはオリビアがいる。」
「!」
「婚約者がいてなんで、他に側妃がいるんだ?」
「…だって、あの女性…」
「ん?」
「わたしが育つまで側にいたいって…。満足にトウゴに答えられないって言った…」
「…全部、聞こえてたんだな…まあ、判ってはいたが…」
「…」
元から騙せるはずもなく、軍籍に身を置く男が人の気配に気づかないはずもない。
況してや子供の言い分を鵜呑みにするほど甘くはないが取りあえず、保留としてくれていたトウゴ。
「あのなぁ、オリビア、俺は、お前に惚れている。ロリコンだの幼児趣味だの、言われてはいるが」
「ロリコン?」
ロリコン…
幼児趣味…
成人男性には痛い言葉だけど…真実だよね。
「そんなこと、俺は気にしていない」
気にしろ!認めるな!誰かー。
「俺にとっちゃ、初めて見た時からオリビアだけがたった一人の女なんだ。」
子供になにを言ってるー!
「でも、大人になるまでに時間がかかる。あの人の言うように男の事情で他の人の処に行くかもしれない」
男の事情って…大人事情…オリビア。…解ってて言ってるの?
「ああ、それは大丈夫だ。俺に他の女が必要となることはない。」
「必要じゃない?」
「ああ、オリビアと逢ってから。俺は、他の女には起たない」
馬鹿か!子供に何を聞かす!
「起たない?」
あー、解ってなかった…安心した…。
「ああ、オリビアだけだ!」
こいつ…ほんとの馬鹿だ…。
「わたしだけ?それっていい事?」
いい事…確かにいいと言えばいい事なのか?
「俺達にはいいことだ。只、俺としては、正直辛いところだな。」
「辛い?」
「かなりな。でも待つから。オリビアが俺と結婚するまで。」
「…待っててくれるの?」
「ああ、今までも待ってるし、これからだって待つ。だから、早く大きくなれ」
「…うん」
嬉しくなって抱き着くと額にキスが落とされた。
「大きくなったら、いっぱいしような」
「いっぱい?なにを?」
「…そうだな。まずは、大人の挨拶をしようか」
「大人の挨拶?」
「ああ。とびっきりの大人の挨拶をしよう!」
月明かりの中、艶やかに笑ったトウゴの顔が目に焼き付いた。
それが、トウゴと会えた最後の夜。
「…やっぱり聞いたのか」
「あ、」
口を押えてバツが悪そうにしているオリビアの姿を見て自嘲気味に
「…その様子だと、見えていたみたいだな」
遣り切れないという感じで言う。
「あ、あの…」
「…ああ、見てしまったのは、仕方ないから、気にするなって言っても…気にするか…」
俯くオリビアの頭を撫ぜると。
「何から話せばいいか…」
「…最初から聞きたい」
と言えば、
「最初から?うーん…そうだなぁ」
「トウゴがモテているのは知ってる…」
「…俺がモテてるねぇ…確かに群がってきてるようだが、なんでかなぁ…」
…背の高い整った精悍な顔立ちのトウゴは、自分の容姿に無頓着なのか?首を傾げている。
無自覚に暴露しているトウゴ。
そんなに?群がって…きてるのか…。
思っていた以上に、モテている事実に落ち込んでいくオリビア。
「そんなに…モテてるんだ…」
「えっ!?いや、身分からか、どこの国にも、もの好きがいるからなぁ」
更に墓穴を掘るトウゴ。
「どこの国でも…。身分だけじゃない。トウゴの容姿がいいって。トウゴの側妃になりたがってる」
「俺の容姿?側妃?なんで?俺は国王じゃないぞ?」
「トウゴは…王子だから。持てるってみんな言ってる…」
「みんなぁ?どっからそんな…。」
「…」
「そりゃあ、持てるかって言われれば、持てるけど…。俺はいらないぞ?」
呆れたようにいらないと断言する。
「…いらない?」
「そりゃあ、そうだろう。俺にはオリビアがいる。」
「!」
「婚約者がいてなんで、他に側妃がいるんだ?」
「…だって、あの女性…」
「ん?」
「わたしが育つまで側にいたいって…。満足にトウゴに答えられないって言った…」
「…全部、聞こえてたんだな…まあ、判ってはいたが…」
「…」
元から騙せるはずもなく、軍籍に身を置く男が人の気配に気づかないはずもない。
況してや子供の言い分を鵜呑みにするほど甘くはないが取りあえず、保留としてくれていたトウゴ。
「あのなぁ、オリビア、俺は、お前に惚れている。ロリコンだの幼児趣味だの、言われてはいるが」
「ロリコン?」
ロリコン…
幼児趣味…
成人男性には痛い言葉だけど…真実だよね。
「そんなこと、俺は気にしていない」
気にしろ!認めるな!誰かー。
「俺にとっちゃ、初めて見た時からオリビアだけがたった一人の女なんだ。」
子供になにを言ってるー!
「でも、大人になるまでに時間がかかる。あの人の言うように男の事情で他の人の処に行くかもしれない」
男の事情って…大人事情…オリビア。…解ってて言ってるの?
「ああ、それは大丈夫だ。俺に他の女が必要となることはない。」
「必要じゃない?」
「ああ、オリビアと逢ってから。俺は、他の女には起たない」
馬鹿か!子供に何を聞かす!
「起たない?」
あー、解ってなかった…安心した…。
「ああ、オリビアだけだ!」
こいつ…ほんとの馬鹿だ…。
「わたしだけ?それっていい事?」
いい事…確かにいいと言えばいい事なのか?
「俺達にはいいことだ。只、俺としては、正直辛いところだな。」
「辛い?」
「かなりな。でも待つから。オリビアが俺と結婚するまで。」
「…待っててくれるの?」
「ああ、今までも待ってるし、これからだって待つ。だから、早く大きくなれ」
「…うん」
嬉しくなって抱き着くと額にキスが落とされた。
「大きくなったら、いっぱいしような」
「いっぱい?なにを?」
「…そうだな。まずは、大人の挨拶をしようか」
「大人の挨拶?」
「ああ。とびっきりの大人の挨拶をしよう!」
月明かりの中、艶やかに笑ったトウゴの顔が目に焼き付いた。
それが、トウゴと会えた最後の夜。
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