願いがかないますように…

kitahara

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大人の挨拶って?

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そんな事件があり、それまでの反発や小さな諍いもが飛び散って幼いながら自覚を持って想いを新たに定めたトウゴとの最後の夜。

あれは、大人になったらしようとあの時の約束…。

なんで、いま、ご褒美だと言って満面の笑みで欲しがるのか?

まだ語りつくせない想いがあるのに?

それに大人の挨拶って?

 不満に思いながら、未だに解らない挨拶の内容。

…何をすればいいの?

 一応聞いてみよう。



 「…トウゴ」

 「ん?」

 「あのね、」

 「うん?」

 「大人の挨拶って何すればいいの?」

 「え?」

 問われた事に戸惑うトウゴの答えを首を傾げて待つ。

 「えっと、そこから?」

 「?」

 「…オリビア。成人の儀は…」

 「半月後に執り行われる予定。国にいればだけど…」

 今は船の上だから…無理ね。


 「通常なら、成人の儀から事前式を行って、俺の国で結婚式を挙げるはずだったよな…それなのにこの知識???」

 「なに?」

 成人の儀と事前式。

 結婚式を挙げる前に仮に婚姻を結びこれをもって、正式な夫婦となる事ができる儀式。

 婚約を破棄させぬために時として行われた慣習の一つ。

トウゴたっての希望で成人の儀に盛り込められた。


あの遠ーい捕らえられ、引きずり出された広間での謁見を思い出した…。



 「ええ、婚約が結ばれたままなら」

 「ああ。それなら、大丈夫だ。婚約は破棄されてない。」

 当然だとばかりに言い切るトウゴに、

 「え?されてない?」

 「俺の死は、死体なき死亡とされていた。未確認のため、婚約破棄の手続きもされていない。従って現在も婚約は有効で、今も俺たちは婚約者のままだ。」

あれだけ、ほぼ確定とされていたトウゴの死。

 「本当に?」

 「ああ」


 死亡説も確実ではなく、ほぼ死亡したかもしれないで確定じゃなかったから、婚約者のまま?…では、何故?


 「じゃあ、なんで、国は、私に新たな縁談の選定がしていたの?」

 疑問だった。

考えが呟きとして出る。

 何故?婚約者のいるオリビアに新たな縁談を進めたのか?

国の思惑など、その枠外にいるオリビアには解るはずもなく、疑問を口にした事で、答えてくれたのは。

 「…それは、機械の国の圧力からだろう」

トウゴから返ってきた。

 「機械の国の圧力?」

 圧力?

 自国の事でもないなのに、なんで、そんなことを知っているの?

 「圧力なんて、どうして?」

 「どうしてって…」

 「それに何故そんな事、トウゴが知っているの?」

 「何故ってそりゃあ…」

 機械の国の暗躍とトウゴの秘密裡での活動?から知っている。
しかし、今のところ、漏らすことはないから。

 「それは?」

トウゴは濁す。

 「もういいんだ。解決している。」

 「解決?」

まだ聞きたそうにしているオリビアに

「そんなことより、大事なのは、オリビアが、今も俺の婚約者だという事だろう」

 「そうだけれど。そんな事って…」

とても大切な事を話しているのに遮って話を終えようとするトウゴに、ごまかそうとしているように感じる。

 「…」

 「まずは、さっきも言った通り、挨拶をしよう!」

これ以上聞けなそうなので。

 「…わかった…なにをすればいいの?」

 以前ほどの背の違いはないけれど、それでも背の高いトウゴとは、頭一つ分以上差があるため、見上げていうと。

その言葉にうれしそうに笑みを浮かべたトウゴが得意げに言う。

 「まあ、全部責任をもって俺が教えてやるから。そのままじっとしていろ」

と言われたので、じっとしていると、

 視界を遮るように大きな身体がオリビアに覆い被さってきた。

 「えっ?」

 突然の抱擁に驚いて声をあげると、トウゴの手がオリビアの右頬に当てられてクイッと持ち上げると唇を合わせた。

 「ん、んん?」

 瞳を見開いたまま、トウゴの口付けを受ける。
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