おばあちゃんのおかず。

kitahara

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おばあちゃんの畑…

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畑で野菜や果樹や花を育てていたおばあちゃん。



 畑がね、

 畑の草むしりがね、

 畑のイチゴの間引きをね、

 畑のトマトができたかねぇ…

 畑のキュウリが大きくなりすぎないうちにね、

 畑の水やりがね…あるんだよ。

いつも…いつも…そう言って、畑に出かける元気なおばあちゃんが、

倒れて、入院した。

お見舞いに行ったら、病室はもぬけの空で。

 入院した病院から勝手に外泊届を出してタクシーで帰っていた。

おばあちゃんがしていたのは、畑の草むしり…

小さなちいさくなった背を丸めて長袖を着たおばあちゃんが、山のような草を積み上げて草むしりをしていた。


おばあちゃん…


声をかけたら、


ほら、トマトがなってるから持ってかえりぃ。

キュウリは、昨日の雨で大きくなりすぎたからねぇ…半分に切って種取って塩揉みしてな。

そう言って、山盛りのトマトと形が歪なキュウリが入っている袋を笑顔で寄越す。

うん…

返事して受け取るとまた、草むしりを始める。


おばあちゃん…

一通り畑がきれいになると、満足して次の日、病院に帰っていく。


入院のたんびに、勝手に外泊を取るおばあちゃん。

入院と退院を何度か繰り返して、徐々に入院の日数が長くなって…。

それでも、畑の草むしりがね、あるんだよと言う。

気分転換に連れて行ったぶどう狩りが気に入ったおばあちゃん。

もう一度行きたいから。と頑張ってリハビリするおばあちゃん。

内臓がよくなくて…だんだん弱くなっていて。

それでも点滴をしながら歩くおばあちゃん。


そんな中、生まれたひ孫。

 誰よりもその誕生を待ち望んだおばあちゃんは、喜んで会いたがる。


まだ、小さいから病院の中には連れて入れなくて…駐車場で、待機していたら。

ひ孫見たさに輸血が終わって一時間も経っていないのに…病室を抜け出してきたおばあちゃん。

車の窓越しにひ孫をみれて嬉しそうに笑うおばあちゃん。

よく笑う子でおばあちゃんをみて、にこにこ する。

こんこは、笑顔よしさんやねぇ。

と満面の笑顔でほっぺをなでるおばあちゃん。


それが、歩いているおばあちゃんを見た最後の姿で…



徐々に元気になって、その朝まで普通だったおばあちゃん。

急変したのは、生まれて99日目。


100日目…意識のないおばあちゃんの病室に、ほんの少しだけひ孫を連れて入る。


おばあちゃん、連れてきたよ。

ねえ、おばあちゃん聞こえた…?


連れて来れなくて…ごめんね…


いままで、いっぱい いっぱい ありがとうね!




あの頃みたいに、笑顔よしさんではなくなったけれど、やさしい子に育っているよ。

下の子の面倒をよくみてくれる。

おばあちゃんは、どんな人?

って、聞かれる度に…変わってるけどハイカラで強い人だよ。って答える。



と首を傾げる我が子に。

おばあちゃんに会えばわかるのにな…と思う。







おばあちゃん…ごめんね…

おばあちゃんの畑はなくなってしまった…



壊される前のおばあちゃんの畑から、なんとか唯一持ち出せた 花の株。

なんの花なのか わからないんだけど…


移し替えた わたしの家の小さな庭の一角で 。



毎年、9月半ばになると、白いきれいな花が咲きます…











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