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第3章 ~ジロー、学校へ行く?~
アリス先生の面接練習。
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ここは、魔法学校にあるアリスの私室兼研究室。
「それでは、面接の練習を始めようかの。」
机を挟んで向こう側、スーツっぽい服に眼鏡、長い髪を一つに結んだアリスがこちらに声を掛けてくる。
あの後、助手として仕事をしてみたい、というおれの言葉を聞いたアリスに善は急ぐのじゃと人を拐うがごとく街まで連れてこられ、気付いたらここに来ていた。一応学校の中なのに部外者のおれがこんなに簡単に入れていいのだろうか。
「少しだけ待つのじゃ。」
そう言われ廊下で待つ。部屋の中では、がしゃんどしゃんと音がしている。休日なのか人は誰も歩いて来ない。
「どうぞ、入るのじゃ。」
中からそう声を掛けられ、一応「失礼します。」と声を掛けてから部屋に入る。
すると部屋の中はいつかの就活の時に見たような光景が広がっていた。椅子に座るアリスはちゃっかり着替えてるし。
「ぼうっとしておらずに椅子に座るのじゃ。」
真ん中にぽつんと置かれた椅子に座るように促される。訳が分からないままその椅子に座る。
「アリス、今から何するの?」
「何じゃ、見てわからぬのか。これから面接の練習をするのじゃ。ぶっつけ本番じゃジローも心許ないじゃろ?じゃから本番でジローが緊張をせぬように練習をしてやろうというのじゃ。」
「それはわかるんだけど、それぐらい森で良くない?わざわざここに来てまで」
「わかっておらぬのう。こういうのは雰囲気が大事なんじゃよ。雰囲気がの。」
「はぁ。」
「何じゃ文句が言いたそうじゃのう。これ以上私語をするようじゃったら減点じゃぞ?」
すでに始まっている!?
「それではまず志望動機から聞こうかの。ジローくんは何故アリス先生の助手になろうと思ったのじゃ?」
なりきってる!アリスはすでに面接官になりきってる!心なしかいつもより眉毛がキリッとしてるし。
「えーと、アリス先生に誘われまして?」
「弱い!弱いのじゃジロー!そんなことでこの就職氷河期を切り抜けると思っとるのか!」
異世界にもそんな波が!?
「もっと自分をアピールするのじゃ!他の候補者との違いをもっと明確にするのじゃ!アリス先生の助手になりたい気持ちをもっと強く出すのじゃ!」
他の候補者とかいないよね?
アリス、すでに面接官という自分に酔ってるよね?
「えー、アリス先生の腕前や評判は以前から聞き及んでおり、その助手になるチャンスがあると聞き志望しました。助手になりたい気持ちは誰にも負けません。」
「確かにのう。アリス先生は美人で気立ても良くて、さらには魔法の腕も良いと評判じゃからのう。」
そこまで言ってないよ?
自分で自分を褒めてすごいニヤニヤしてるアリスは端から見ると気持ち悪い。
「では、ジローくんはアリス先生についてどう思っておるのじゃ?」
この質問は助手になるのと関係あるのだろうか。
「実際、アリス先生には何度も教えていただいていますが素晴らしい魔法使いだと思います。また、体術面でも素晴らしいものがあり、私も訓練してはいますがまだまだ追い付けそうにないと思っています。」
「て、照れるのう。」
「しかし、人間的にはそれなりに問題があると思っています。」
「減点じゃ!」
しまった。つい本音が。
「そういう余計なのはいいのじゃ。では、ユキ先生」
【ン?】
そう今回はユキとアシナも街に来ていた。その二人と言えばアリスの隣に先程から座っていた。アシナに関しては椅子の上にちょこんと座っている。その姿はいつもの堂々とした姿ではなく、半分以下の大きさになっていて見た目はまるで普通の狼、いやむしろ飼い犬と言っていいぐらいだった。あえて言おう、シベリアンハスキーであると!
ユキに関しては普通に座ると顔が出ないため、椅子の上に立ち前足を机に乗せて顔だけが机から出ていた。必死に前足を乗せてる姿は見ていても愛嬌がある。
「ユキ先生は何か質問はあるかの?」
ユキから質問?前もって打ち合わせとかしてたのかな。
【ンー、今日ノゴ飯ハ何?】
……可愛いなぁ~。この主旨を理解してない感じが堪らなく可愛いな!
「今日はせっかく街に来たので屋台で何か買って食べれたらなと思っています。」
【ン!】
その言葉にユキはとても満足そうだ。足早に学校まで来たから何も食べてないんだよな。前回来たときも屋台とかまともに回ってないから今回は街を見て回りたいと思っている。ユキやアシナも一緒だからたくさん買ってあげたいと思う。ちなみにお金はまだ持っていないのでアリスに奢ってもらう気満々である。返済は出世払いで!
「ごほん。ではアシナ先生は何かあるかの?」
「むっ、私か?」
アリスは流れを変えようとアシナに話を振った。ユキよりはマシな質問が出来ると思ったのだろうか。
「私は屋台にあった肉串を所望する!」
さすがアシナ!
一切ぶれない食い意地!
これにはさすがのアリスも開いた口が塞がらない!
「ごほんごほん。では面接を終わろうと思うが最後に何か言いたいことはあるかの?」
昔もあったなー。面接の最後に何か聞かれるの。おれは言いたい事とか言わなきゃいけないこととかよくわかんなかったけど、とりあえず「御社の~」とかなんか言っていたはずだ。
「助手としてアリス先生の力になり、またアリス先生から少しでも多く学びたいと思っていますのでぜひよろしくお願いします。」
「むー、若干弱い気もするがまぁいいじゃろう。明日からもその意気で頑張るのじゃぞ。」
面接が終わったらしい。知り合いのアリスですらこんなに疲れるのに知らない人だとやばいだろうな。
「実際の面接っていつしてくれるの?」
「それなら校長に話をしたら明日して下さるとのことじゃった。」
「明日!随分早いね。」
校長先生のレスポンス半端ないな!
「校長は気さくな方じゃからそんなに緊張せんでもよいぞ。実際には面接なんてもんは無く、軽く話してジローの実力を確認する方が主じゃの。講師として雇うのじゃったらそういったこともしたのじゃろうが助手としてならそんなもんじゃろ。必要なのは学よりも力じゃからな。」
ん?
「面接が無い?じゃあ今やってた練習は何の意味があったの?」
「これか?これはただわしがやりたかっただけじゃ。」
……そんなことだろうと思ったよ!!
「それでは、面接の練習を始めようかの。」
机を挟んで向こう側、スーツっぽい服に眼鏡、長い髪を一つに結んだアリスがこちらに声を掛けてくる。
あの後、助手として仕事をしてみたい、というおれの言葉を聞いたアリスに善は急ぐのじゃと人を拐うがごとく街まで連れてこられ、気付いたらここに来ていた。一応学校の中なのに部外者のおれがこんなに簡単に入れていいのだろうか。
「少しだけ待つのじゃ。」
そう言われ廊下で待つ。部屋の中では、がしゃんどしゃんと音がしている。休日なのか人は誰も歩いて来ない。
「どうぞ、入るのじゃ。」
中からそう声を掛けられ、一応「失礼します。」と声を掛けてから部屋に入る。
すると部屋の中はいつかの就活の時に見たような光景が広がっていた。椅子に座るアリスはちゃっかり着替えてるし。
「ぼうっとしておらずに椅子に座るのじゃ。」
真ん中にぽつんと置かれた椅子に座るように促される。訳が分からないままその椅子に座る。
「アリス、今から何するの?」
「何じゃ、見てわからぬのか。これから面接の練習をするのじゃ。ぶっつけ本番じゃジローも心許ないじゃろ?じゃから本番でジローが緊張をせぬように練習をしてやろうというのじゃ。」
「それはわかるんだけど、それぐらい森で良くない?わざわざここに来てまで」
「わかっておらぬのう。こういうのは雰囲気が大事なんじゃよ。雰囲気がの。」
「はぁ。」
「何じゃ文句が言いたそうじゃのう。これ以上私語をするようじゃったら減点じゃぞ?」
すでに始まっている!?
「それではまず志望動機から聞こうかの。ジローくんは何故アリス先生の助手になろうと思ったのじゃ?」
なりきってる!アリスはすでに面接官になりきってる!心なしかいつもより眉毛がキリッとしてるし。
「えーと、アリス先生に誘われまして?」
「弱い!弱いのじゃジロー!そんなことでこの就職氷河期を切り抜けると思っとるのか!」
異世界にもそんな波が!?
「もっと自分をアピールするのじゃ!他の候補者との違いをもっと明確にするのじゃ!アリス先生の助手になりたい気持ちをもっと強く出すのじゃ!」
他の候補者とかいないよね?
アリス、すでに面接官という自分に酔ってるよね?
「えー、アリス先生の腕前や評判は以前から聞き及んでおり、その助手になるチャンスがあると聞き志望しました。助手になりたい気持ちは誰にも負けません。」
「確かにのう。アリス先生は美人で気立ても良くて、さらには魔法の腕も良いと評判じゃからのう。」
そこまで言ってないよ?
自分で自分を褒めてすごいニヤニヤしてるアリスは端から見ると気持ち悪い。
「では、ジローくんはアリス先生についてどう思っておるのじゃ?」
この質問は助手になるのと関係あるのだろうか。
「実際、アリス先生には何度も教えていただいていますが素晴らしい魔法使いだと思います。また、体術面でも素晴らしいものがあり、私も訓練してはいますがまだまだ追い付けそうにないと思っています。」
「て、照れるのう。」
「しかし、人間的にはそれなりに問題があると思っています。」
「減点じゃ!」
しまった。つい本音が。
「そういう余計なのはいいのじゃ。では、ユキ先生」
【ン?】
そう今回はユキとアシナも街に来ていた。その二人と言えばアリスの隣に先程から座っていた。アシナに関しては椅子の上にちょこんと座っている。その姿はいつもの堂々とした姿ではなく、半分以下の大きさになっていて見た目はまるで普通の狼、いやむしろ飼い犬と言っていいぐらいだった。あえて言おう、シベリアンハスキーであると!
ユキに関しては普通に座ると顔が出ないため、椅子の上に立ち前足を机に乗せて顔だけが机から出ていた。必死に前足を乗せてる姿は見ていても愛嬌がある。
「ユキ先生は何か質問はあるかの?」
ユキから質問?前もって打ち合わせとかしてたのかな。
【ンー、今日ノゴ飯ハ何?】
……可愛いなぁ~。この主旨を理解してない感じが堪らなく可愛いな!
「今日はせっかく街に来たので屋台で何か買って食べれたらなと思っています。」
【ン!】
その言葉にユキはとても満足そうだ。足早に学校まで来たから何も食べてないんだよな。前回来たときも屋台とかまともに回ってないから今回は街を見て回りたいと思っている。ユキやアシナも一緒だからたくさん買ってあげたいと思う。ちなみにお金はまだ持っていないのでアリスに奢ってもらう気満々である。返済は出世払いで!
「ごほん。ではアシナ先生は何かあるかの?」
「むっ、私か?」
アリスは流れを変えようとアシナに話を振った。ユキよりはマシな質問が出来ると思ったのだろうか。
「私は屋台にあった肉串を所望する!」
さすがアシナ!
一切ぶれない食い意地!
これにはさすがのアリスも開いた口が塞がらない!
「ごほんごほん。では面接を終わろうと思うが最後に何か言いたいことはあるかの?」
昔もあったなー。面接の最後に何か聞かれるの。おれは言いたい事とか言わなきゃいけないこととかよくわかんなかったけど、とりあえず「御社の~」とかなんか言っていたはずだ。
「助手としてアリス先生の力になり、またアリス先生から少しでも多く学びたいと思っていますのでぜひよろしくお願いします。」
「むー、若干弱い気もするがまぁいいじゃろう。明日からもその意気で頑張るのじゃぞ。」
面接が終わったらしい。知り合いのアリスですらこんなに疲れるのに知らない人だとやばいだろうな。
「実際の面接っていつしてくれるの?」
「それなら校長に話をしたら明日して下さるとのことじゃった。」
「明日!随分早いね。」
校長先生のレスポンス半端ないな!
「校長は気さくな方じゃからそんなに緊張せんでもよいぞ。実際には面接なんてもんは無く、軽く話してジローの実力を確認する方が主じゃの。講師として雇うのじゃったらそういったこともしたのじゃろうが助手としてならそんなもんじゃろ。必要なのは学よりも力じゃからな。」
ん?
「面接が無い?じゃあ今やってた練習は何の意味があったの?」
「これか?これはただわしがやりたかっただけじゃ。」
……そんなことだろうと思ったよ!!
応援ありがとうございます!
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