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届きそうで届かない
しおりを挟む翌日からも変わらず廊下でアレンに会うたびに話しかけた。私を壁に叩きつけた事に負い目があるのか、その日から私が近寄っても逃げなくなったけど、顔色は相変わらず悪いし、会話に対するほとんど返答はない。
けどついに先日、こんな出来事があった。
「お兄様、おはようございます!今日もいい天気ですね!」
「…お、はよう」
蚊の鳴くような声。だけど、簡単な挨拶くらいは返してくれるようになったんだから、すごい進歩だと思うの。今までガンスルーだったんだから。
「お兄様。その本は……」
アレンが手に持っている本に視線が奪われる。とても難しそうな本だ。分厚いし、表紙も革で作られているし、とても私なんかじゃ理解出来ない内容なんだろう。
「とても難しそうな本をお読みなるんですね。凄いです」
「えっ?」
思った事をそのまま素直に口に出すと、アレンは目を丸くして私を見つめる。
「テ、ティアだってこれくらいの本読めるでしょ……?」
「私じゃ読めませんよ!?だから、こんなに難しそうな本を簡単に読めてしまうお兄様が羨ましいです」
「羨ま…しい…?ティアが……僕を……?」
心の底から驚いてるみたいで何度も何度もその言葉を口にしては息を吐く。なんでそんなに驚くんだろう、お兄ちゃんの方が妹より出来るものが多いのは当たり前だと思うんだけど。……っとそういえば、アレンの説明に『妹の方が優秀でそれに引け目を感じてる』って書いてあったっけ。それを言ったら、こんな本読める時点で中身17歳の私は11歳のアレン君に完全に劣ってるわけだけども。
「そ、そう…なんだ……」
そう言って俯くアレンの頬はちょっぴり赤く染まっていた。
あ、可愛い。ちょっと今ショタの扉が開けそうだった気がする。
そんなほっこり出来事がありつつも、やっぱり基本的には私の一方通行。それでも、毎日ミクロ単位で距離が縮まってる。……気がする。
そんな訳で、今日はもっと仲良くなろうと庭に咲いていたお花を頂いてきたのです。名付けて、『お花プレゼントで好感度上げちゃおう大作戦』!さてお兄様の部屋は……
「ちょっと聞いた?お嬢様、今日は庭の花を引きちぎったらしいわよ」
「ええっ!?そんな、なんて酷いことを……。庭師の方が折角丹精込めて育てたというのに……」
廊下の曲がり角から複数の足跡と話し声が近づいてくる。あぁ、またか。そう思いながらも流石に自分の陰口を叩いている人達と対面するのは気が引けて、急いで柱の陰に身を隠す。
たまに廊下を歩いてると私の陰口で盛り上がってる侍女達と会うのよね。そういう時はこうやって柱とか角の死角とかに隠れてやり過ごしてるんだけど。まぁ、気持ちのいいものでは無いよね。
「最近は大人しくしていると思ったのに……やっぱり心の無い人形姫には人の痛みなんてわからないのよね」
「なんでもずっとアレン坊っちゃまにご執心だとか。……坊っちゃまも可哀想です。またお嬢様に拷問なんてされていたらどうしましょう」
「えっ……」
思わず声を上げてしまい、慌てて口元を手で塞ぐ。
「あら?今声がしませんでしたか?」
「そう?私には聞こえなかったけど」
「そうですか?お嬢様に聞かれていたらと思うと身震いしてしまうけど……」
「その時は私達全員拷問どころじゃ済まないわね。きっと」
あらかた悪口を話し終えた侍女達は既に別の話題で盛り上がりながら廊下の角を曲がっていった。
それよりも、さっきの話。ティアが拷問していた?
……お兄様に?周りの人達に?
そういえば転生した当日に屋敷の散策をした時、一部屋だけ名称も持たず鍵のかかっていた部屋があった。もしかして、あそこが拷問部屋的な役割を持ったものだったのだろうか。
「……ははっ」
そりゃ、誰だって嫌うわ。ティアを。
こんな話を聴いた後でのこのこアレンの元へ行けるわけもなく、足取り重く自分の部屋へと引き返した。
その日は結局一歩も部屋の外へ出なかった。
夕食の時間になって私が出てこないものだから、侍女がご飯を部屋に運んできてくれた。けど、その運んできたくれた侍女の怯えた顔を見てまた落ち込む。
折角アレンへと摘んだ花は机の上ですっかり萎れてしまっていた。
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