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一歩一歩を大切にしてね。
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六月も半分が過ぎたよく晴れた日の午後。私は教室に皆を集め宣言した。その宣言にタイラント。リケイ。シースンは呆気に取られていた。
「······春の感謝祭? 娘。それは一体なんだ?」
タイラントは椅子に座りながら私に質問する。この金髪魔族は疑問に思った事を直ぐに知ろうとする。本当に知的好奇心があり余っている魔族だ。
「私の村は毎年四月になると、春を迎えられた事を感謝するお祭りをするの」
魔族は人間と違って風流を嗜んだり祝祭を開く文化が無いと言う。でも。だからこそタイラント達に知って欲しかった。
人間の。私の村でのお祭りを。
「まだギリギリ春だし、是非皆に人間の文化に触れて欲しいの。そうする事で、相互理解が深まると思わない?」
私はこの城で、春の感謝祭を開く事を提案した。タイラントは私の話に興味津々で二つ返事で快諾してくれた。
けど、リケイとシースンは浮かない顔をしていた。私がサーンズ大臣に狙われている時に、祭りなど開催している場合では無いと思っているのだろう。
サーンズ大臣の事はタイラントに伏せてあった。ザンカルの負傷も、私との訓練時に起きた事故として報告してある。
お祭りの開催は三日後と決まった。そうと決まれば私は祭の準備のために奔走した。
カーゼルさんとシャンフさんに頼み、お祭りの料理を依頼する。国王の了承は得られていたので、二人は快く引き受けてくれた。
勿論当日は私も手伝う予定だ。そしてネフィト執事長を通して、カラミィ達メイドにもお祭りの協力をお願いした。
ネフィトさんやカラミィ達も協力を確約してくれた。忙しい準備の合間を縫って私はザンカルを見舞った。
驚異的な回復力を見せたザンカルは、ベットの上で退屈そうにしていた。私はザンカルにお祭りの事を話した。
「ほう? 祭りか。よく分からんが酒を飲んで暴れればいいのか?」
いや、暴れるのは止めてねザンカル。負傷者が続出してしまうから。ザンカルは笑顔でお祭りの参加を約束してくれた。
私はお祭りの準備に忙殺され、あっという間に祭りの前日になった。その日の夜、私はタイラントに呼び出されシースンに警護されながら執務室に入った。
シースンは部屋の外で待機していると笑顔で私に言い残してくれた。タイラントは机の上で、明日読み上げる原稿分と睨めっこしていた。
その様子を見た私はくすりと笑ってしまった。こコイツ。こう言う所は本当に真面目よね。
「おお娘。明日の挨拶文を見てくれ。何故、我々の文化に無い催しの挨拶だ。勝手が分からぬ」
私はタイラントの背後から原稿分を覗いたが、魔族の文字を人間の私が読めるはずもなかった。
「うん。悪く無いんじゃないかしら?」
私の悪戯心に火がついた。タイラントが明日、どんな挨拶をするのか。それは当日のお楽しみにしよう。
「娘。祭りをするにしても少し性急過ぎたのでは無いか? 明日にする必要があったのか?」
「思い立ったが吉日。楽しい事は早いに越した事が無いでしょう?」
私は当日の準備で明日は早起きだ。タイラントにそう言って執務室から退室しようとした。
「待て娘。ここ最近のお前は何か変だ。何かあったのか?」
後ろからのタイラントの言葉に、私の身体は一瞬固まった。私はタイラントに背を向けたまま、平静を装い普通の声色で返答する。
「あの無感情で無表情な国王様が変わったわね。女の子の繊細な心が分かるようになったの?」
私の軽口に、タイラントは少し困ったような声を出す。
「······分かりはしない。ただ、そう感じただけだ」
「ならまだ修行不足ね。千里の道も一歩から。タイラント。貴方はその一歩一歩を大切にしてね」
私はそう言い終えると執務室を出た。部屋の外で待っていてくれシースンは、優しく私の頭を撫でてくれた。
その途端に私は涙が溢れてきた。シースンに付き添われ、私は何とか両足を動かす。明日。お祭りが終わったら私はこの城を出る。
それが、私とサーンズ大臣との間で交わした約束だった。私はもう絶対に誰も傷付かせない。それがタイラントの為になると私は信じていた。
私はこの城で過ごす最後の夜を迎えるために、重い気持ちと足取りで部屋に歩いて行った。
「······春の感謝祭? 娘。それは一体なんだ?」
タイラントは椅子に座りながら私に質問する。この金髪魔族は疑問に思った事を直ぐに知ろうとする。本当に知的好奇心があり余っている魔族だ。
「私の村は毎年四月になると、春を迎えられた事を感謝するお祭りをするの」
魔族は人間と違って風流を嗜んだり祝祭を開く文化が無いと言う。でも。だからこそタイラント達に知って欲しかった。
人間の。私の村でのお祭りを。
「まだギリギリ春だし、是非皆に人間の文化に触れて欲しいの。そうする事で、相互理解が深まると思わない?」
私はこの城で、春の感謝祭を開く事を提案した。タイラントは私の話に興味津々で二つ返事で快諾してくれた。
けど、リケイとシースンは浮かない顔をしていた。私がサーンズ大臣に狙われている時に、祭りなど開催している場合では無いと思っているのだろう。
サーンズ大臣の事はタイラントに伏せてあった。ザンカルの負傷も、私との訓練時に起きた事故として報告してある。
お祭りの開催は三日後と決まった。そうと決まれば私は祭の準備のために奔走した。
カーゼルさんとシャンフさんに頼み、お祭りの料理を依頼する。国王の了承は得られていたので、二人は快く引き受けてくれた。
勿論当日は私も手伝う予定だ。そしてネフィト執事長を通して、カラミィ達メイドにもお祭りの協力をお願いした。
ネフィトさんやカラミィ達も協力を確約してくれた。忙しい準備の合間を縫って私はザンカルを見舞った。
驚異的な回復力を見せたザンカルは、ベットの上で退屈そうにしていた。私はザンカルにお祭りの事を話した。
「ほう? 祭りか。よく分からんが酒を飲んで暴れればいいのか?」
いや、暴れるのは止めてねザンカル。負傷者が続出してしまうから。ザンカルは笑顔でお祭りの参加を約束してくれた。
私はお祭りの準備に忙殺され、あっという間に祭りの前日になった。その日の夜、私はタイラントに呼び出されシースンに警護されながら執務室に入った。
シースンは部屋の外で待機していると笑顔で私に言い残してくれた。タイラントは机の上で、明日読み上げる原稿分と睨めっこしていた。
その様子を見た私はくすりと笑ってしまった。こコイツ。こう言う所は本当に真面目よね。
「おお娘。明日の挨拶文を見てくれ。何故、我々の文化に無い催しの挨拶だ。勝手が分からぬ」
私はタイラントの背後から原稿分を覗いたが、魔族の文字を人間の私が読めるはずもなかった。
「うん。悪く無いんじゃないかしら?」
私の悪戯心に火がついた。タイラントが明日、どんな挨拶をするのか。それは当日のお楽しみにしよう。
「娘。祭りをするにしても少し性急過ぎたのでは無いか? 明日にする必要があったのか?」
「思い立ったが吉日。楽しい事は早いに越した事が無いでしょう?」
私は当日の準備で明日は早起きだ。タイラントにそう言って執務室から退室しようとした。
「待て娘。ここ最近のお前は何か変だ。何かあったのか?」
後ろからのタイラントの言葉に、私の身体は一瞬固まった。私はタイラントに背を向けたまま、平静を装い普通の声色で返答する。
「あの無感情で無表情な国王様が変わったわね。女の子の繊細な心が分かるようになったの?」
私の軽口に、タイラントは少し困ったような声を出す。
「······分かりはしない。ただ、そう感じただけだ」
「ならまだ修行不足ね。千里の道も一歩から。タイラント。貴方はその一歩一歩を大切にしてね」
私はそう言い終えると執務室を出た。部屋の外で待っていてくれシースンは、優しく私の頭を撫でてくれた。
その途端に私は涙が溢れてきた。シースンに付き添われ、私は何とか両足を動かす。明日。お祭りが終わったら私はこの城を出る。
それが、私とサーンズ大臣との間で交わした約束だった。私はもう絶対に誰も傷付かせない。それがタイラントの為になると私は信じていた。
私はこの城で過ごす最後の夜を迎えるために、重い気持ちと足取りで部屋に歩いて行った。
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