海街の人魚姫

ガイア

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12話

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「えー素敵な演奏と歌を歌ってくれたベストパートナーの2人に、フラワー山本さんと子供たちからフラワーレイと花冠をプレゼントがあります」

 え?後はナミさんにフラワーレイと花冠をプレゼントして終わりなはずじゃ。俺は動揺でベストパートナーという言葉にツッコめなかった。

「プレゼント!?嬉しい!」
 ナミさんは俺の隣で素直に感動していた。
「皆さん、前へどうぞ」

 俺がいたのとは反対側の物体裏から、子供たちが何人か赤色と青色のフラワーレイと花冠を持ってでてきた。
「ナミさん、コウタさん、素敵な演奏をありがとう」

 子供たちは笑顔でそういった。俺とナミさんはしゃがんでプレゼントを首と頭にかけてもらった。
「ありがとう!今私、みんなを抱きしめる腕があったらどれだけいいかって思うわ」
 ナミさんは、嬉し涙を流していた。

「ありがとう、皆。まさか俺までもらえるとは」
「ナミさんも、コウタさんも凄く素敵だった」
「よく似合ってるよ!」
「ベストパートナー!」

 子供たちの言葉で俺も少し涙が出そうになった。ベストパートナーって冷やかしも今は怒る気になれない。むしろ気分がいい。

「これにて、全てのイベントの終了です。夜はまだまだ屋台に花火大会、盆踊りなど楽しいことが盛りだくさんですので引き続き楽しんでいってくださいね!」

 ナミさんと舞台裏に戻ると、ナミさんのおじいちゃんが椅子に座って待っていた。

「おじいちゃん・・・」

 ナミさんがそういうのと同時に、ナミさんのおじいちゃんは飛ぶように立ち上がりナミさんを抱きしめた。
「ごめん・・・ごめんな、霞。悪かった・・・演奏、凄かったぞ。大勢の前でよく頑張ったな、ワシは音楽を続けたら、このままナミまで遠くにいってしまう気がして、怖かったんだ。ごめんな」
「おじいちゃん・・・今日は来てくれて、見に来てくれて、本当にありがとう」

 よかったね、ナミさん。俺は心の中でそういってその場を立ち去った。そして、観客席へと走った。まだ帰っていないはず!屋台の方へ流れていく人の中、奇跡的にその2人の後ろ姿を捉えた。

「あの!すみません!すみません!ナミさんのお母さん、お父さん!」

 俺は走って近づいて話しかけた。周りの人たちは俺たちの会話には気づいていないようで、各々一緒に来た人と寄り添い、屋台の方へと流れていく。
 くるりと振り返った2人は、少し驚いた様子で俺のことを見た。

「あなたは、さっきステージで歌っていた」
「阿木沼小唄です、あの、来ていただき本当に、ありがとうございます!」
 誠心誠意そういって頭を下げる。

 俺は、ナミさんにこのお祭りで演奏をするという話と、ナミさんの過去の話を聴いて、ナミさんの両親にも、今のナミさんのピアノを聴いてほしいと思った。
 だから俺は、こっちに戻ってきてから連絡をとっていなかった音楽学校にいたときの友人たちに連絡をとりまくり、なんとかナミさんのご両親にコンタクトをとることに成功したのだった。

 そして、今日のことを伝え来てもらうことになった。

「素晴らしかったよ、霞も、君も」

 ナミさんのお父さんが、そういって微笑んだ。ナミさんのお父さん、佐々波師音(さざなみしおん)さんは、東京の有名な音楽学校の理事長をやっているような方だ。そんな方からそんな風にいってもらえるとは思わなくて俺は体が震えた。

「どちらの音楽にも魂がこもっていましたね。気持ちがこもっている音楽というのは、素晴らしくないものはありません」
 ナミさんのお母さん、佐々波奏(さざなみかなで)さんは、ナミさんと似ていてすごく綺麗な人だった。一年前にピアニストを引退してピアノの先生をやっていると聞いた。

「ナミさん・・・霞さんには、会っていかないんですか」

 師音さんも、奏さんも顔を見合わせて俯いた。

「僕たちが、霞を音楽から遠ざけてしまった。だから会わない。でも、またこういう機会があればこっそり教えてほしい。俺も父さんみたいに霞のファンなんだ」
「霞の小さい頃の演奏会のビデオ、今でも見ているの。演奏会頑張ったご褒美に、家族で映画に行きたいって、霞がね。その映画、アニメとかあったのに、霞ったら『主題歌がいいから』って理由で映画を決めてね」
 奏さんは、泣きそうな顔でそういった。

「素敵なお話ですね」

 どこかで聞いたことのある言葉だった。
 俺は、いつかナミさんとご両親がまた一緒に音楽ができたら、と思う。離れていく2人の後ろ姿を眺めながら、俺は無意識に拳を握りしめていた。

「あー!コウタ!こんなところで何してるんだよ!」
 振り返ると、車いすに乗ったナミさんを囲んだ子供たちがいた。
「あれ?ナミさん浴衣変わった?」
 俺は、子供たちよりナミさんの浴衣の色が白地に青色の朝顔柄になっていることが気になった。

「はい、あの浴衣はお祭りを回るには短くて恥ずかしいので。森さんが着せてくれました」
「そ・・・」
「無視すんなよ!」
「ベストカップル!パートナー!」

 その浴衣もよく似合ってるよ、綺麗だね、という言葉は、口に出す前に子供たちにかき消された。

「うるさいなあ、ったく」
 だが、思わず笑みがこぼれていた。本当に、可愛いヤツらだ。
「花火まで、お祭りをまわろうか」

 俺たちは、ナミさんを賑やかに囲んで、灯りの並ぶ屋台の方へと歩き出した。いつもは漁師の家が多く、朝が早いため夜がしんと静まり返っているこの町も今日ばかりは笑い声が響いて皆浮かれている。
 お祭りというのは、こんなに―。

「お祭りというのは、こんなに楽しいものなのですね」

 ナミさんは、車いすの肘置きに金魚をぶらさげ、頭には花冠、顔にはプリキュアのお面をつけている。首にはおじいちゃんからもらったがま口とフラワーレイがかかっている。 完全にうはうは大王さまだった。とても楽しそうで何より。さっきたこやきを子供たちに食べさせてもらい、いちごあめを口に3つ入ればりぼり食べていたナミさんは、そのまま足で金魚を3匹すくいあげ、お面屋さんのお面を女の子たちとお揃いで買って喜んでいた。
 そんな楽しいお祭りも終わりに近づき、メインの花火大会が始まろうとしていた。
 俺たちは、絶好の花火スポットと言われて子供たちにお祭りの境内を少し上がったところに案内された。

「本当にこっちなのか?」
「こっちこっち!」

 なんだかにやにやしているように見えるのは気のせいか?案内された場所の正面にはゆるやかでそんなに距離のない階段があり、足元を照らす程度の外灯が並んでいた。
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