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五章 帝国の洗礼
百六十二話 泥棒の少年
しおりを挟む「待て!それを返せ!」
「ひぃぃ!?許してくださいでやんすー!」
「許して欲しいならさっさと返して欲しいかな~?」
「それは無理でやんすぅ!」
俺達は器を盗んだ少年をすぐさま追いかけ、気がつけばいつも通り路地裏に迷い込んでいた。
何処かの街に入る度に路地裏に入るな……なんて思いながら、少年を追い続ける。
少年は想像以上に逃げ足が速く、路地裏の複雑な道も相まって中々捕まえられずにいた。
「くっ、上手く魔力が使えない……!」
「器を取られちゃうとねぇ~……」
魔力を操作するにあたって、紋章の存在はかなり大きい。
不可欠という訳では無いが、紋章を介することで魔力の操作がスムーズ且つ安定する。それは紋章を扱うにあたっての常識であり、紋章の器の弱点でもあった。
なので俺も上手く身体強化が出来ず、追いつくことが出来ない。
レインに走ってもらうのもいいが、街中ではあまりレインを出したくないというのが本音だ。
「あ、あれ?意外と捕まらないでやんすねぇ。これなら余裕で逃げられるでやんす!」
「……調子に、乗るな!」
「ひ、ひぃぃ!?」
俺は一瞬だけ走るのを辞め、魔力を安定して使えない代わりにとにかく足の一点に貯める。
そして跳躍するように前に踏み込み、一瞬で少年を通り越して前を遮るように立った。
「捕まえた!」
「そうはいかねぇでやんす!」
「何っ!?」
「テルくんを避けた~!?」
俺は一直線の道で少年を捕らえようとしたが、目にも止まらぬ速度で俺の腕を通り抜ける。
な、なんだ今の動き!?まるで俺の腕をすり抜けたかと思うほど減速することなく俺を回避しただと!?
この少年、只者では無い。なんて戦慄している暇は無い。俺はすぐ近くにあった物を蹴り飛ばして少年を狙う。
「あイタっ!?でやんす!?」
「今だ!捕まえろ!」
「あいあいさ~♪」
「ま、まだまだでやんすー!」
俺の蹴った物体は見事に少年に直撃。そのまま少年は地面に倒れ込む。
そして一度停止して閉まった俺よりも早く少年にたどり着いたシエが少年を捕まえようと飛びかかる。
しかし、それもまた目にも止まらぬ速度で回避された。
「う、嘘でしょ~!?今のでも捕まらないの~!?」
「今の動き、明らかにおかしい。……能力か!」
逃げている動きは確実に全力であった。なのにも関わらず逃げている時よりも明らかに素早い回避は、もはや特殊な力が働いているという方がしっくりとくる。
つまり、少年は回避に関する能力を使っているということだ。
しかしそれはどこまで行ってもそれは推測でしかない。
いつもなら能力を使って確認するが、今は紋章を奪われているため使えない。……仕方ないか。
「レイン!限界まであいつに近づけ!」
「ブルルン!」
「おっ、待ってました~♪」
「う、馬でやんすかぁ!?卑怯でやんすよォ!!」
「泥棒に卑怯だとか言われたくないね~♪」
これ以上時間も体力もかけるのは無駄だと判断し、躊躇なくレインを呼び出して本気で接近する。
段々と強く大きくなっているレインは小さい障害物等全て吹き飛ばしながら進み、突然の曲がり角もレインの能力に減速も必要ない。
障害物の影に隠れても俺が感じ取っている器の位置もレインに共有している為、隠れるというのは無意味でしか無かった。
「ひぃ、ひぃ!ど、どこまで追いかけてくるでやんすかぁ!」
「返してもらうまでだ!」
「つ、捕まるもんでやんすかぁ!」
俺は少年に限界まで近ずいた状態でレインから飛び出すように捕まえにかかる。
それと同時に、紋章の器で限界まで近ずいたことで『印見の瞳』の発動に成功する。
そして俺の目は確実に捉える。少年が能力を発動する瞬間を。
俺の手が空振りに終わろうとしたその瞬間、足に貯めておいた魔力を一気に活性化させて予測していた少年の回避方向に飛び出した。
「確保ぉ!!」
「でやべぇ!?」
「お見事~♪」
「ブルルン!」
俺はつい大きな声で叫んでしまうほど勢いよく少年を捕まえる。
少年も自分の能力に自信があったのだろう。まさか捕まるとは思ってなかったのか、まともに受け身も取れず俺に捕まり顔面から地面に突っ込んだ。
顔面を打ち付けたことです痛みに悶える少年から俺の刀を取り返し、しっかりと腰の定位置に刀を取り付ける。
今回のことはかなり深く反省しなければならないな。
戦闘中ならともかく、日常において器はほぼ無価値なので盗まれることは無いという固定概念もあり完全に油断していた。
そして器を盗まれたことによる確実な弱体化。単純に能力が使えない事もそうだが、魔力が上手く使えなかった。
これは何かしら対策をしなければならないな。
「うぅ、返せでやんすぅ……」
「いや、返せも何も俺の物だろ」
「……ぼ、ボスぅ!助けてくれでやんすぅ!!」
「ん~?ボス?」
俺が少年から刀を取り返して脳内で反省していると、痛みで半泣きになった少年がヨロヨロと俺から刀を取り返そうとすがりついてくる。
俺は軽く避けるとそのまま少年は倒れる。そして泣き叫ぶように『ボス』という人物に助けを呼んだ。
こんな路地裏ではそんな助けの声は届かないだろう。
しかし、あまりにも情けない声で助けを呼び始めるので俺が何かしら声を掛けようとしたその瞬間、頭上から嫌な予感を感じ取る。
「シエ!避けろ!」
「ふぁえ!?だ、誰~!?」
「ぼ、ボスぅ!」
「お前ら……俺の舎弟に何した!!」
突如として路地裏の空から男が飛び降りてきかと思えば、俺達に向けて怒号を向けるのであった。
♦♦♦♦♦
面白い!続きが読みたい!と思ったら是非ハートと星とフォローをよろしくお願いします!
『【短編】殺戮に嫌気が刺した死神様は、純白少女に契約を持ち掛けられる』という作品も投稿してみました。
二千文字程度なので良ければ見てみてください!
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