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五章 帝国の洗礼
百六十三話 心の慢心
しおりを挟む「お前ら……俺の舎弟に何した!!」
突如として上空から降ってきたガタイのいい男は俺達に向けてそう叫んだ。
舎弟……ということは、この少年は男の部下か?ならばこの二人は窃盗団とかそういう類いだろうか。
ボスと呼ばれた男は怒りに満ちた顔で俺達を睨みつける。
「は~?仕掛けて来たのはそっちの子……」
「うるせぇ!お前らの言い分なんざ聴きたくねぇ!」
「ぼ、ボスぅ……。あ、あの刀……でやんす」
「あぁ?……まさかお前ら、俺の舎弟に手を挙げただけじゃなく物まで盗んだのか?!絶対許さねぇ!」
問答無用とばかりに男は俺達に襲いかかってくる。どうやらこちらの言葉に聞く耳すら無いようだ。
俺は一瞬の逡巡の後、会えて鞘から抜いてない状態の刀で男の拳を受け止める。何となくだが、彼等から悪意を感じ取れなかったのだ。
案の定、男はその腕の太さに比例するような呆れた腕力を持っており、俺を壁まで軽く吹き飛ばす。
そうなることを予想していた俺は受身を取りつつ、空中で取り出した紐で鞘と刀を括り付ける。これで抜けないはずだ。
「ボスのパンチの威力を完全にいなしたでやんすか?!」
「これは俺の刀だ。そいつがコレを奪ったから取り返しただけだ」
「嘘をつくな!俺の舎弟が無意味に盗む訳ねぇだろ!」
やはり俺の言葉に耳を貸さず、俺達が完全に悪として認識している。そして同時に、仲間である少年のことを信じているようだ。
この手のタイプは一度信じ込むとそれが正しいと疑わない。その代わり、正面から叩きのめせば話を聞くはずだ。
「何がなんでも話を聞かないつもりなら、無理やり聞かせてやる!」
「やってみろ!俺は負けねぇぞ!」
俺は鞘に入ったままの刀を構え、男の拳とぶつかり合う。
男の拳は殴ることに特化した籠手をしており、鈍器として使えそうなソレの一撃は腕ごと持っていかれそうになる。
だが、俺とて何人もの馬鹿力と戦ってきた。だから筋力以上の力を生み出す技も身につけてるし、圧倒的に筋力差がある人への対処法も身につけている!
「オラァ!」
「……シッ!」
「拳を逸らしたでやんす!?」
「行け~♪」
男の攻撃は腕力任せの一撃。まるで喧嘩で身につけたようなパンチで、狙いもバカ正直に顔面を狙っていた。
正面からぶつかれば俺が力負ける可能性もある。ならば男の攻撃を逸らして隙を作り、そこに一撃を入れてやるだけだ!
刀で男の腕を叩き上げ、隙ができた腹を本気で叩く。
抜刀して居ないとはいえ、常人なら肋骨は折れて簡単に意識を失う程度の威力はある。……にも関わらず、男はなんのダメージも受けなかったように反撃を繰り出す。
「フンッ!」
「ぐぅ!?」
「ボスはそんな攻撃じゃ怯まないでやんすよぉ!」
何故か自慢げな少年の声が聞きながら、かろうじて間に合わせた防御を貫通した反撃で俺は吹き飛ばされる。
なんだ?確実にダメージは入った手応えは感じた筈なのに、男には一切の動揺も怯みも無かった。
何か能力か魔道具でダメージを肩代わりした?いや、それにしては魔力を感じなかった。
器を失っていた時ならいざ知らず、戦っている最中の俺が気づかないはずが無い。
だとしたら……単純に根性で耐えた?
「まだまだ行くぞぉ!」
「っ!これならどうだ!」
俺は能力を発動して鞘に入ったままで紋章の能力を発動する。切るのでは無く叩きつける……叩き砕くイメージ!
即興ではあったが、イメージ通りの効果を持った能力が発動した感覚を掴む。これでダメージが入れば能力なのは確定だ。
……しかし幸か不幸か、俺の攻撃はまたも男を気絶どころか怯ませることすらできずに終わり、男の反撃を許してしまう。
「……効かん!」
「なっ!……いりょ、くが!?」
「て、テル君!大丈夫~?!」
しかも何故か男の攻撃の威力が明らかに跳ね上がっており、不意打ち気味な威力の上昇に反応しきれず勢いよく壁に背を打ちけてしまう。
攻撃で怯まなかったのは能力じゃなかった。だが、この威力の上昇は確実に能力……!
「そう、これこそがボスの能力でやんす!ダメージを受ければ受けるほど攻撃力が高まるでやんすよ!」
「おい!勝手に能力をバラすなよ!」
「はっ!?すいませんでやんす!」
「……はは、なるほど」
俺を騙す為のブラフ……には見えない。そんな頭が回るならそもそもこんな喧嘩地味だ戦いを吹っ掛けられないと思う。
それにしても、俺の能力にまた新たな疑問が生まれた。確実に能力を無効化するための技を使ったのに、男の攻撃力はそれに関係なく上昇したのだ。
蓄積系の能力は俺の能力じゃどうにもならない?それとも単に切ってないから効果が弱い?もしくは初期化までには至らなかっただけ?
これは詳しい検証が必要だ。
「……慢心だな。相手がそこらのゴロツキだと思って、本気で戦わなかった俺の落ち度」
「くたばれ!」
「行っけぇでやんす!ボスゥ!」
だから今身体中は痛くて、今にもトドメを刺されそうで。そもそも刀を盗まれたのなんて言い訳のできないぐらいよ油断だ。
全く、俺は今まで何を学んできたのか。自分で自分に呆れる。
俺は体の痛みを無視し、もう見切った速度の拳を完璧に避けて腕と足と腹と首を叩き折るつもりでぶっ叩く。
「ッ!?」
「……は、はえ?なんでやんすか今の……」
「も~、テル君ったら。本気を出すのが遅いよ~♪」
「すまん、シエ。今から全力で行くぞ!」
「舐めんなぁ!」
確実な勝利を確信していたのだろう状態で、まさか即死級の攻撃を喰らうなんて思ってもなかっただろう。流石に男も俺の攻撃に怯む。
お互い、油断禁物だな。
俺は反撃に重きに置いた戦い方を一気に変え、攻めと速度に重点を置いた戦い方をする。
攻撃で怯みや回避を誘えないなら、倒れるまで攻撃を叩き込むまで!
「やっちゃえテル君~♪」
「ボスゥ!頑張れでやんすぅ!」
俺が全力で動けば、この男では俺の速度には追いつけない。何とか目では追えているようだが、防御は完全には間に合っていない。
いや、そもそもこの男は防御をしようとすらしていない。それは男の能力もあるだろうが、何より際立つのは男のその圧倒的な耐久力。
顔面を叩いてもバランスを崩すように膝裏を叩いても顔色一つ変えず呻き声も上げない。俺の事だけを一身に狙い、一撃を食らわせるためだけに動く。
それが彼の最大の強みであり、最大の武器なのだろう。
「どっちが先に倒れるか、根性比べだ!」
「……いいぜ、やろうじゃねぇか!」
男の攻撃の回避以外は常に攻撃を当て続け、例え男が一切の反応を示さずとも攻撃を当て続ける。
本当にダメージが通っているのか心配になるが、攻撃を当て続けるとそれに比例して攻撃の威力が上がっていく。
回避してもその風圧だけで吹き飛ばされそうになり、まともに喰らえば即死であろう一撃が真横を通り過ぎるという精神的なダメージが俺の体力を持っていく。
「負けるかァァ!!」
「はぁぁ!!」
1歩間違えれば一瞬で勝敗の着く戦い。着実に男へのダメージが増え、俺の体力も削られていく。
そうしてお互いに限界が近くなった時、俺は敢えて距離を取り最後の一撃に全てを賭ける姿勢をとる。
そんな俺の思いを察したのだろう。男も拳に魔力を貯め、一撃に全てを乗せる構えを取った。
一瞬の静寂。直後に行われるお互い最大の一撃のぶつかり合いは……俺は刀を吹き飛ばざれ、男は肉体の限界で倒れるという、引き分けに近い状態で終わるのであった。
♦♦♦♦♦
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