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五章 帝国の洗礼
百六十四話 男の友情
しおりを挟む「だっはっは!すまなかったな!完全に俺の早とちりだった。本当に申し訳ない」
「勘違いは誰にでもあるから大丈夫だ」
「ちゃんと返してもらったし誤解も解けたからね~♪」
俺と男が戦ってから数時間後。男が目を覚まし、やっと話を聞いてくれるようになったのでちゃんとこの刀が俺の物だと説明した。
少年は勘違いを最初認めようとしなかったが、刀から紋章を浮かばせると流石に勘違いだったと悟ったようで突然下手にではじめた。
……生きる術を知っているというかなんというか。
「そうそう!勘違いはあるでやんすよねー!」
「……『ネル』?」
「ひ、ひゃい!調子に乗ってすみませんでやんす!」
少年こと『ネル』はその頭に大きめなたんこぶを作りながら自分を弁解するように話し、そして男に睨まれて謝罪する。
勘違いだったとはいえ、人の物を盗んだので男によってぶたれたのであった。
「そ、それはそうと、さっきの戦いはとっても漢らしかったでやんすね!特に最後のぶつかり合い!自分、めちゃくちゃ痺れたでやんす!」
「ああ、あれは俺も痺れた。まさか手加減された状態であそこまでやられるとはな。俺の負けだ」
「いや、最後の一撃で武器を吹き飛ばされた俺の負けだ」
「ってことは、引き分けだね~♪」
シエの言う通り今回は引き分けだ。俺は俺の意思で刀を抜かなかったし、最後に搦手も無く腕力でぶつかったのも自分の意思だ。
そんな事をするつもりは毛頭無いが、その事は負けた事に言い訳は出来ない。殺さずに勝てなかった俺の弱さが原因だ。
「それで、『ガイス』はネルのことを舎弟。ネルはボスって言っていたが、二人はどんな関係なんだ?」
「よくぞ聞いてくれましたでやんす!ボスはこの街で……いや、この国で最も巨大で強力な『マヒィア』(になる予定)のボスでやんす!そして俺はその一員なんでやんすよ!」
男こと『ガイス』という人物は戦うことでお互いを理解する明らかな直感タイプだ。
戦いで相手に勝つには相手の性格や癖を見抜く必要があるのでその技術は必然的に身に着くのだが、ガイスはそれに大きく影響されるタイプという事だ。
その技術は殆ど感覚的な物だが、剣筋や力加減、視線の動きや殺気の性質等。絶対では無いが、それなりに相手を理解する為の参考にはなる。
どうやら先程の戦いでガイスは俺の事を良い奴だと認識したようで、もう殆ど警戒はしておらずちゃんと話を聞いてくれたのだ。
「ん?今、小声で予定って……」
「へ~!ってことは、構成員もいっぱい居るってことだよね~♪何人居るの~?」
『マヒィア』とは、簡単に言えば犯罪組織のことを指し、違法な手段で違法な薬物や魔道具等を売ったりする奴らの事だ。
……にしては、ネルの窃盗に対してしっかりと怒っていたので彼等には一般的な常識とは違う何かしらの信条があるのだろう。
シエはそんなマヒィアの事に興味をそそられたのか、構成員の人数を聞く。国で一番、なんて豪語したのだ。それはそれは大量の構成員が居るのだろう。
「構成員はな……。俺のネルだけだ」
「……へ?二人だけ~?」
「それは流石に少ないな」
「そうなんでやんす。最近まではもっと居たんでやんすが、色々あったんでやんすよ……」
ガイスはあまり『負』寄りの感情を表に出さないが、ネルは面白いぐらいに全身で感情を表す。これは見栄張りでもなく本当のようだ。
拍子抜けした……という訳では無いが、流石に二人しかいないのは驚きだ。
どうやら何者かの攻撃を受け、手の打ちようも無く人が減ってマフィア存続の危機に陥ったらしい。
「身内を脅しに使われた人、金で脅された人、突然失踪した人……。その他色々な事が一気に仲間に起きたんでやんす。これは偶然とは思えないでやんすよ……」
「よせネル、それ以上はテル達には関係ない」
「いや、ここであったのも何かの縁だ。俺達にも話してくれないか?何か手伝えるかもしれない」
「そうそう~♪そこまで言って話してくれないのは意地悪だよ~?」
脅迫に失踪。最初が何人だったかは知らないが、それらによって二人になるまで減るとは確かに偶然とは思えないな。
マフィアを自称しているが、彼等が本当にただ犯罪を犯すだけの人に俺には見えない。
俺への窃盗も何か訳ありの様だったし、国からすればただの犯罪組織だろうが彼等は義理と人情に厚い人だと俺は判断して助けたいと思ったのだ。
もし間違っていたのならば、俺に人を見る目が無かっただけ。いざと言う時は俺自身が手を下せばいい。
「そうはいかねぇ。俺達はあんたらに借りがある。それすら返してねぇのに無関係なあんたらに手を借りるのは余りに都合が良すぎるぜ」
「俺達もこの街にいる以上は情報が欲しいから気にするな。それに、俺とお前はもう無関係じゃない。俺達は一度戦った『友』だろ?」
「っ!……お前ってやつは、漢の中の漢だな」
少し気取りすぎたか?なんて思ったが、どうやらガイスの心には刺さったようで感動したように目元を抑える。
そして突き出した拳を軽くぶつけ合い、俺とガイスの間に男と男の友情が生まれた。
「……なにこれ~?」
「はわわ!感動でやんすぅ!」
そんな俺達の事を見て首を傾げるシエと、目をランランと煌めかせて羨ましそうにするネル。なんとも対照的な二人だ。
この偶然な出会いは新たな友人を生み、そしてまた新たな騒動に俺達は巻き込まれていく。
きっと俺はそういう星の下に産まれたのだろう。
「よし!そこまで言うなら事の経緯を話そう。だが、聞いた後から聞かなきゃ良かったなんて弱音を吐くなよ?」
「当たり前だ。男に二言は無いからな」
そうして、ガイスの口から仲間が減った原因について語られ始めたのだった。
♦♦♦♦♦
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