紋章斬りの刀伐者〜無能と蔑まれ死の淵に追い詰められてから始まる修行旅〜

覇翔 楼技斗

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五章 帝国の洗礼

百六十五話 噂の話

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「最初に異変が起こったのは今から丁度1か月前だ。あれは俺のナワバリで取り立てしてた時だったな」
「当たり前のように犯罪だな」
「あれ?それってマフィアってよりヤクz……」
「自分達はマフィアなんで犯罪なんてお手の物でやんすよ!あっ、これが今日の取り立てで回収してきた分でやんすボス!」

 理解はしていたが、しれっと違法行為をしている事を宣言するガイスにほんの少しびっくりしていると、ネルは収納から二つの袋を取り出した。

 それを受け取ったガイスが袋の中を見るので俺達も覗き込むと、そこにあるのは沢山の食べ物。より正確に言うなら残飯のような物だった。

 もう片方の袋にはそれなりの硬貨が入っていたが、全て銅貨や鉄貨ばかりで見た目以上に金額は高くないようだ。

「よし、よくやったぞネル。今夜はご馳走だ!」
「やったでやんすー!」
「これって食べ物だよね~?これが取り立てなの?」
「そうでやんす!ナワバリの店から食料と金を恫喝してるんでやんすよ!」
「そ、そっか~♪」

 取り立てに恫喝ねぇ……。ただの少年にしか見えないネルの恫喝に効果があるかどうかは別として、袋の中の物を見るに多分在庫処理に使われているっぽいな。
 一緒に集めた金は処分にかかる費用を貰ってるだけだろう。もちろん本来の費用の何分の一だろうが。

 ただ、かなり厳つく強いガイスを恐れてか、それとも本当に感謝をしているのか。残飯だけでなくちゃんと金を貰えていのならば恐怖、もしくは感謝されている可能性があるな。

「あ、でもこの前『うちにゴミなんて一切出ない!』とかふざけたこと抜かす奴がいたからぶちのめしてやったでやんすよ!ボスが!」
「あの時の泣きっ面は傑作だったな。あいつをボコボコにした後、機密事項みたいなのをばら蒔いてやったんだ。そしたら何故かそいつは捕まって今も豚小屋だ」
「「……」」

 話を聞くに、ゴミが一切出ないという普通に考えればありえない飲食店なのだろう。
 そしてその店の機密事項をばらまいたら捕まったという事は……。

 結果だけ見てみれば、ただの善人では?

 どうやらシエも俺と同じことを考えたようで、何も言えず黙ってしまった。
 それを悪行だと思っているであろう二人になんと言えばいいか分からなかったのだ。
 
「っと、話がズレたな。話を戻すぞ。取り立てする店が次で終わりって時に、舎弟の一人が慌てて俺の所に来たんだ。仲間が居なくなったってな」
「最初はどっかで酔い潰れてるんじゃねぇかって思ってたんでやんすが、三日経っても帰ってこなかったんでやんす。それ所か、仲間がもう一人居なくなったんでやんす……」
「三日も~!?それにもう一人も~!?」
「ああ、それに次は身内を脅しに使われて俺達の組から去った。そこで本格的に俺達を攻撃してる奴が居ると判断し、行動に出たんだ」
「目星もついてたでやんすからね!」

 確かに立て続けに仲間が三人も居なくなったなら何処からかの攻撃を考えるべきだろう。なんなら、そのうち一人は誰かに脅されているのだ。

 彼等とて無抵抗ではなく、失踪しないように対策を取ったり、身内を安全な場所に移動させたりしたのだろう。……意味をなさなかったようだが。

「目星が着いていたのに対処出来なかったのか?」
「ああ、腹立たしい事に策略については奴らの方が一枚上手だった。気がつけば残ったのは俺達二人だけだ」
「目星って、何処の誰の事~?憲兵とか~?」
「憲兵達は自分達にビビって手を出してこないやんす!目星ってのは、最近この街に最近現れた『我仰がこう団』とか名乗ってる窃盗集団でやんす!」

 それはビビってるってより、柄が悪いだけの善良な集団だと思われてるんじゃ……?

 それにしても窃盗集団か。もしや最近噂になってる窃盗とはそいつらの仕業か?
 この二人は窃盗を基本的にしないようなので、可能性としては高いな。

「それって噂になってるやつの犯人~?」
「その通りでやんす!説得力が無いかもしれないでやんすが、自分達は盗みはしないでやんす!」
「ふ~ん。じゃあなんでテル君の刀を盗んだの~?」
「実はナワバリの店も窃盗団の被害にあったでやんすよ。話によると盗まれたのは家宝の剣で、盗人の特徴が髪色が灰色に近い色だったんでやんす……」

 なるほど。確かに髪の色が似ていて剣に近い形状の刀を持っている奴が街をほっつき歩いていたなら取り返そうと動くだろう。

 突然盗むのはやりすぎだと思うが、自称ではあるが彼らとて犯罪集団なのでそれぐらいはしても当然か。俺はそう勝手に納得し、話の続きを催促する。

「それで、その『我仰団』とやらに殴り込みにでも行ったのか?」
「結論から言えばそれは無理だったでやんす。どうやら明確な拠点とかがないみたいで、お宝を隠してるらしい場所を除けば特に定まった場所は無かったでやんす……」
「構成員を捕まえて吐かせたが、どいつも下っ端でまともに情報を持ってなかった。あいつらが何故か俺達を狙ってるのは確認できたがな」
「ってことは、最近現れたのにかなり大きな組織かもしれないね~♪」
「ああ、しかも権力者が後ろにいるかもしれない」
「えぇ!?どうしてそう思うでやんすか?」
「お前達に捕まってもいいように何の情報も与えず動かせるだけの金と人材がある。それだけである程度判断できるさ」

 もちろん絶対ではないが、そういった可能性が高いという話だ。もし仲間達との信頼関係が強い組織なら基地ぐらいあるだろうし、情報も知っているはずだ。

 まぁ、二人の尋問がへたくそでそいつらが嘘をついてるだけの可能性もあるが、流石にそこで容赦をする奴らじゃないと信じよう。
 
 もし陰謀論的な考えをするならば、その窃盗団は何かを隠蔽するためだけに作られた組織で裏ではとんでもない事をしている~……だとか。

 ……冗談、だと笑えない程度の経験をしているので何とも言えないが。

「権力者、金、人の失踪。……はっ!?やっぱりあの噂は本当だったんでやんすね!」
「……ネル、またその話か。いつまでそんな嘘っぱち信じてるんだ」
「嘘っぱちじゃないでやんすよボス!その単語がそろったなら、確実に人体実験でやんすよ!」
「人体実験~?何の話~?」
「ん?なんか聞いたことあるな、その話……」

 ネルも俺と同じようなことを想像したようでガイスに呆れたような視線を受けながら騒ぎ始める。

 ……聞いた、というより見た事がある?そういえばと俺は雑貨店で買った雑誌を思い出す。これには都市伝説のような物が描かれていたはずだ。

 雑誌を取り出してパラパラとめくると、俺はそれらしいページを見つける。そこには『異形の死体見つかる!極秘の人体実験の末路か!?』と大きく書かれていた。

「それでやんす!実際に変死体とそれが暴れている所を見た人がいるでやんす!」
「確かにそれらしいことは書いてるな。けど……」
「めっっちゃくちゃ胡散臭いね~♪」
「絶対に本当なんでやんすよー!!」

 信じてもらおうと必死なネルの声とガイスの呆れたようなため息を聞きながら、絶対にないとは断言出来ないこの噂について俺は色々と考えるのであった。


 ♦♦♦♦♦


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『【短編】殺戮に嫌気が刺した死神様は、純白少女に契約を持ち掛けられる』という作品も投稿してみました。
 二千文字程度なので良ければ見てみてください!
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