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コロシアリズムから脱出せよ。
プロローグ この街は、普通じゃない。
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――僕達の街、コロシアリズムには、大人がいない。
そしてこの街に住む子供達には、みな「能力」というものが存在していた。
火を使う力。
氷を使う力。
瞬間移動の力。
そしてここには、少し不思議な闘技場がある。
その闘技場は街の鍛錬エリアというところにあって、子供たちの中でも大きい14歳以上の子供だけが入ることができる、アツい子供達だけの戦いの場。のはずだった。
――――――
観客席には多くの大人が歓声を上げて無力なロイを嘲笑う。
その声は狂気に満ちていて、「思い知ったかバケモノ!これが国の力だ!」だの「なんだ、この程度かよ、期待はずれだぞ全く」だのと、まるでロイを傷つけることを楽しんでいるようだ。
「こんなの……あんまりだ!」
ロイには力がない。天才なアスくん、炎の使い手のセシル、瞬間移動能力の持ち主ラエサルのように。
――そう、彼はこの街では珍しい「無能力者」
そんなロイは今、闘技場で命を落とそうとしていた。
――痛い、痛い痛い、痛い痛い痛い!
ロイは初めて感じた。”大人”に対する恐怖を。
ロイは初めて感じた。本物の刃がどれほどの痛みをもたらすのか、争いというものがどれほどに悲痛なものなのかを。
不気味にも青く澄み渡った空は、救いの道を遥か遠くに遠ざけてしまったのか。
このことが夢であるならば、覚めてほしい。
「夢なら醒めろ、醒めろよぉ!」
痛みと残酷さによる涙で息が詰まって咳が止まらない。
ロイは剣で貫かれて紅く染まった足を手で抑え、痛みを耐えながら死を悟る。
――そうか……!やはりそうだったのか……!この街は普通じゃない。なぜここだけと、ずっと疑問だった。
ロイは観客席や兵士たちや騎士を見やり、ここがただの特殊な街じゃないと悟る。
双子の妹レイはもうすぐ目の前で殺されるところだ。
――今この街「コロシアリズム」の本当の意味を理解したって、僕に何が出来る?セシルもアスも、アルルもウルルも、みんな、みんなここで……。
血が出過ぎているようだ、体がぐったりとする。
今使えるのは脳みそだけだ。
――何かないか……?この状況を打破する可能性を考えろ!このままじゃ、街の全員が危ない!
手を血だらけの足から離して地面の土を思いっきり握る。
――無力だからって、傷ついたって、僕はこの街の、コロシアリズムのみんなの年長者、リーダーなんだ!その事実だけは変わらない!
せめて、せめて街の連中にこのことを知らせないと!この足がもげても、僕は、僕はみんなを……!
ロイは痛みに顔を歪めながら地面を這いつくばり、鍛錬エリアの外へ逃れようとする。
「逃げるな、殺すぞ。」
重く重くのしかかる恐怖、苦痛、そして、今にもロイとレイを殺さんとする兵士たちやその声。
銀の重い鎧に身を纏い、派手な飾りを被った重装歩兵や騎士たち。
この街の本当の意味は、『コロシアム』、つまり国の円型闘技場だったんだ!
「あ゛あああああァァァ!」
その事実はあまりに残酷で、16歳のロイの心に強く突き刺さる。
「頼む!頼むからレイは、レイは、レイだけは許して!殺さないで!」
ロイは声を荒くして、兵士たちを睨む。レイは今にも剣で貫かれそうだ。
――死にたくない。でも、僕はレイの兄である以上、なんとしても守らなくちゃいけないんだ……!
「僕は、僕はどうなってもいいからレイだけは殺さないで!」
血を吐きながらも叫ぶその声を聞きもしない、レイを掴んでいる騎士に近づこうとした次の瞬間――
鋼色の細長い剣が、レイの胸を一直線に貫く。血飛沫がスローモーションでロイに降り注ぎ、やがて抵抗していたレイの手は、力を落としてぶらんと肩から垂れ下がる。こんなことってアリかよ……
「嘘だろ……レイ、レイ!レイーーーーーー!」
ロイがそう叫んだ次の瞬間だった。
目の前が真っ暗で、何も見えない。
脳裏にはこの闘技場に来るまでの最近の三日間が高速の逆再生で彼の脳内を駆け巡る。
おそらく走馬灯とも違う、あらゆるセリフや、出来事。全てレイが見た景色のようだ。
廻る、廻る、廻る、廻る。
これまでに経験した記憶の断片の数々、込み上げる感情。忘れてはいけないこの街の真相も。
――ゼッタイに、ミンナで、いきノコッテヤル……!
――――――――
「ロイ、おはよ。馬鹿ね、寝坊よ。」
次の瞬間、ロイは自分の部屋のベッドの上にいた。そこにはもちろん、起こしに来たレイも……
そしてこの街に住む子供達には、みな「能力」というものが存在していた。
火を使う力。
氷を使う力。
瞬間移動の力。
そしてここには、少し不思議な闘技場がある。
その闘技場は街の鍛錬エリアというところにあって、子供たちの中でも大きい14歳以上の子供だけが入ることができる、アツい子供達だけの戦いの場。のはずだった。
――――――
観客席には多くの大人が歓声を上げて無力なロイを嘲笑う。
その声は狂気に満ちていて、「思い知ったかバケモノ!これが国の力だ!」だの「なんだ、この程度かよ、期待はずれだぞ全く」だのと、まるでロイを傷つけることを楽しんでいるようだ。
「こんなの……あんまりだ!」
ロイには力がない。天才なアスくん、炎の使い手のセシル、瞬間移動能力の持ち主ラエサルのように。
――そう、彼はこの街では珍しい「無能力者」
そんなロイは今、闘技場で命を落とそうとしていた。
――痛い、痛い痛い、痛い痛い痛い!
ロイは初めて感じた。”大人”に対する恐怖を。
ロイは初めて感じた。本物の刃がどれほどの痛みをもたらすのか、争いというものがどれほどに悲痛なものなのかを。
不気味にも青く澄み渡った空は、救いの道を遥か遠くに遠ざけてしまったのか。
このことが夢であるならば、覚めてほしい。
「夢なら醒めろ、醒めろよぉ!」
痛みと残酷さによる涙で息が詰まって咳が止まらない。
ロイは剣で貫かれて紅く染まった足を手で抑え、痛みを耐えながら死を悟る。
――そうか……!やはりそうだったのか……!この街は普通じゃない。なぜここだけと、ずっと疑問だった。
ロイは観客席や兵士たちや騎士を見やり、ここがただの特殊な街じゃないと悟る。
双子の妹レイはもうすぐ目の前で殺されるところだ。
――今この街「コロシアリズム」の本当の意味を理解したって、僕に何が出来る?セシルもアスも、アルルもウルルも、みんな、みんなここで……。
血が出過ぎているようだ、体がぐったりとする。
今使えるのは脳みそだけだ。
――何かないか……?この状況を打破する可能性を考えろ!このままじゃ、街の全員が危ない!
手を血だらけの足から離して地面の土を思いっきり握る。
――無力だからって、傷ついたって、僕はこの街の、コロシアリズムのみんなの年長者、リーダーなんだ!その事実だけは変わらない!
せめて、せめて街の連中にこのことを知らせないと!この足がもげても、僕は、僕はみんなを……!
ロイは痛みに顔を歪めながら地面を這いつくばり、鍛錬エリアの外へ逃れようとする。
「逃げるな、殺すぞ。」
重く重くのしかかる恐怖、苦痛、そして、今にもロイとレイを殺さんとする兵士たちやその声。
銀の重い鎧に身を纏い、派手な飾りを被った重装歩兵や騎士たち。
この街の本当の意味は、『コロシアム』、つまり国の円型闘技場だったんだ!
「あ゛あああああァァァ!」
その事実はあまりに残酷で、16歳のロイの心に強く突き刺さる。
「頼む!頼むからレイは、レイは、レイだけは許して!殺さないで!」
ロイは声を荒くして、兵士たちを睨む。レイは今にも剣で貫かれそうだ。
――死にたくない。でも、僕はレイの兄である以上、なんとしても守らなくちゃいけないんだ……!
「僕は、僕はどうなってもいいからレイだけは殺さないで!」
血を吐きながらも叫ぶその声を聞きもしない、レイを掴んでいる騎士に近づこうとした次の瞬間――
鋼色の細長い剣が、レイの胸を一直線に貫く。血飛沫がスローモーションでロイに降り注ぎ、やがて抵抗していたレイの手は、力を落としてぶらんと肩から垂れ下がる。こんなことってアリかよ……
「嘘だろ……レイ、レイ!レイーーーーーー!」
ロイがそう叫んだ次の瞬間だった。
目の前が真っ暗で、何も見えない。
脳裏にはこの闘技場に来るまでの最近の三日間が高速の逆再生で彼の脳内を駆け巡る。
おそらく走馬灯とも違う、あらゆるセリフや、出来事。全てレイが見た景色のようだ。
廻る、廻る、廻る、廻る。
これまでに経験した記憶の断片の数々、込み上げる感情。忘れてはいけないこの街の真相も。
――ゼッタイに、ミンナで、いきノコッテヤル……!
――――――――
「ロイ、おはよ。馬鹿ね、寝坊よ。」
次の瞬間、ロイは自分の部屋のベッドの上にいた。そこにはもちろん、起こしに来たレイも……
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