アイニコガレテ散リヌルヲ

水波練

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プロローグ2 トムラウモノ

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『こちら司令部、零術隊先鋭隊203、聞こえているか。ヨミツカイが現れた。迎撃準備をせよ!繰り返す。迎撃準備をせよ!』
「こちら203。敵の数を教えてください。」
『2メートル級がおよそ20。距離1000。指揮はこちらから…』
「必要ありません。」
『……そうか。なら頼むぜ、怪物の王ゴースト
 
 
 薄暗い茂みにざわめく森。見張りの小屋から少し敵襲の予感がしたもので、少し外出していたところだ。今日は一段と月に雲がかかった残念な天候で、敵の予感はそんな彼の気持ちをも少し曇らせた。奴らヨミツカイの気配は彼のすぐ近くまで迫ってくる。
 彼は重い鉄の銃口をゆっくりと歩を進める奴らヨミツカイの来る方向に向けると、誰もいない森からその姿を月明かりの真下へと現した。

《プログラム零砲、異常なし。起動。非零術使はただちに避難してください。》

 冷たい風にため息を一つ。彼は息を止めて武器を起動させる。

《認証、先鋭隊203間道碇まどういかり適正値、異常なし。》


 普通の人間よりも大きい半透明の怪物はまるで”あの世”からの遣い者の様な雰囲気を漂わせており、その見た目から「黄泉使ヨミツカイ」と言われている。


「フンッ、怪物の王ゴーストね。俺はその怪物とやらを狩っている側だというのに、皮肉な話だ。」

 
 彼はそう呟きながら少し微笑した。
 ガサガサ……ガサガサ……
 月明かりが薄れ、遠くに咲き誇る金木犀キンモクセイの香りさえ感じられる様な不気味さは、飾り気のない平和な夜に確かに奴らの襲来を歓迎している様であった。
 戦場に長くいると、音は敵襲の一番の証拠だということが一番よく分かる。
 もうすぐ、くる。

 ――零式砲アクティベート。


 シャァァァァァ……!
 
 次の瞬間、彼の弾は打たれていた。森から少し抜けたその開けた場所で、半透明の怪物は大きな爆発音を立てて蒸発していった。


 キュルルルルル……!シャァァァァァァァァ!

 静かに独特な叫び声を上げながら、怪物はあっと言う間に彼を包囲していた。


「今回は、これだけか。」


 彼はそう呟くと、目の前にいる怪物に向かって突進する勢いで近づくと、すぐに体を翻して焦点に銃口を合わせる。
 パァン、パァン

「これで3。」

 パァン、パァン、パァン、パァン
 彼は銃を撃ちながら周りの木から怪物の体を上から踏みつけ、体を翻しながらポケットからもう一つの零式銃を取り出して両手で確実に一体ずつ撃って行く。
 
 キュルルルルルル……シャァァァァァ!シャァァァァァ!


 怪物ヨミツカイはそんな叫び声と同時に体から霊玉を無秩序にばら撒き、彼の周りで爆発した。
 しかし彼はそんな攻撃をのらりくらりと避けながら地面に確認された全ての黄泉使ヨミツカイがいることを確認すると、小声で術の詠唱を始めた。


「眠れぬ黄泉の使徒たちよ。安らかに散れ。散華!」


 彼は飛んできた霊玉全てを彼の周りに収め、やがて閉じた目をゆっくりと上げながら再び手を合わせると、それを再び怪物ヨミツカイへと飛ばした。


 霊玉はやがて全ての黄泉使ヨミツカイの目の前で爆発し、立ち上る煙には、もう黄泉使の叫び声は聞こえなくなっていた。


(眠れ、永遠に。)

 
 ――通信先、司令官
「こちら203。作戦終了致しました。今から帰還致します。」
『ご苦労だった、203、間道碇。ゆっくり休むといい。』
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