召喚魔王×召喚勇者 世界を滅ぼす気も救う気もない二人は共に旅に出る

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第3章 火山と思い出の街

森を抜けた火山の街

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 次の日には人狼も合流し、ガーゴイルはこっぴどく叱られたそう。
 二体の協力もあって、一週間が経った頃、町は少しずつ賑やかさを取り戻していった。


「もう大丈夫そうだね」

 アキトが港を見渡して呟く。

「……そうだな」

 リオンもまた、少し肩の力を抜いたように頷いた。


「じゃあ、いこっか」

 リオンを勇者として召喚した王国の軍隊が町の被害を聞き、支援に来るという情報が届いた為、二人はこの町を後にする事を決めたのだった。


「悪いな…… どうしてもアレとは関わりたくないんだ」

「うん、それがいいと思うよ」

「……絶対に、また来る」

 町の門をくぐり抜けようとしたその時、小さな声が、二人を呼び止めた。


「待って!」

 振り返ると、いつかの花を抱えた少女が立っていた。


「町を助けてくれてありがとう。これ、受け取って!」

 そう言って差し出されたのは白いガーベラのような花だった。


「ありがと」

 ふとリオンの方を見る。

「ああ、ありがとう。大事にする」

 その表情に、かつてのような嫌悪感はなく、素直な感謝の色があった。
 少女は微笑み、次の花を渡しに駆け出していく。

「よかったね」

「まあな」

 少女が次に向かった先は、顔の中心に傷を負った冒険者。
 リオンが気絶させ、アキトが勝手に槍を拝借した、あの槍使いだった。


「「あっ……!」」


 二人は慌てて駆け寄り、殴った事と槍をなくしてしまった事への謝罪をした後に、町を離れるのだった。




「槍の人、いい人でよかったー」

「……だな、こっちの状況は把握していたし、もっといい槍が手に入ったから、で許せてしまうんだ」

「ああいう人たちばっかりだったら、いいのにねー」

「本当にな」

 鬱蒼とした森の獣道を分け入りながら、二人は前に進む。

「人狼曰く、ここから一番近い町は、山の麓にあるらしい」

「山、ここからじゃ見えないけど」

「凄いよな……この、人が絶対に通れないような道」

「マップの行けない場所にいるみたい」

「それは思った」

 まるで、正攻法ではないルートを辿っているような気分になるのも束の間。
 前方から、大きな狼の魔物の群れが道を塞いだ。


「おかしいな…… あれの後だと、大したことないような気がしてくる」

「たしかに」

 こちらに気付いた群れの数匹が、唸り声を上げて襲いかかってくる。
 リオンは向かって来た魔物を切り伏せ、アキトは背後に回っていた魔物を灰にした。


「さっさと片付けるか」

「そうだね」

 
 二人は戦闘を続けるが、一方に数が減らず、ついに群れは二人を取り囲む。
 アキトとリオンは背中合わせになり、追い詰められたような状態になった。

「あー…… キリがねぇ、どうする?」

「ちょうどいいや、僕にまかせて」

 魔物の群れは、牙を剥けて一斉に襲いかかろうとする。だが──


 ──動くな──


 アキトがそう告げた瞬間、それに応えるように魔物の体がピタリと止まっていく。


「その魔法……」

「パーティーだからかな? 君が倒しても大丈夫みたい」

「……やっぱお前のスキルって、そういう仕様なんだな」

「あれ? 言ってなかったっけ? 」

「言ってはいない」

「じゃあ今言ったってことで」

 リオンは剣をしまい振り返ると、アキトは動けぬままの魔物を全て焼き払い、灰だけが残っていた。
 

「だから、次は君のことを知りたいな」

 視線に気付いたアキトが振り向き、リオンに語りかける。

「何だよ急に……」

「僕はもう話したじゃん」

 そう言って少しだけ微笑んだアキトは、急にリオンの両手を握り、お互いの前に持ってくる。


「君のこと、もっと知りたいって思うんだ」


 相変わらず表情は読めないが、まじまじと見つめる赤い瞳は、彼が如何に真剣であるかを直に訴えかけてくる。

「またお前……そうやって」

 突然の気恥ずかしさにリオンが戸惑っていると、再び同じ魔物の群れが現れ、二人を取り囲む。

「なるほど、この道を誰も通らない理由がよくわかる」

「ああ、そうだな…… さっさと抜けるぞ!」

 走り出した二人は次々と魔物をなぎ倒し、群れの中をこじ開けながら、森の中を突き進んでいった。




 森を抜け、しばらく歩いた先に広がっていたのは。

 赤々とした火山を背にした炭鉱の街。

 武器や防具、そして魔道具が軒先に並び、職人の熱気に満ちていた。


「あの二体が好きそうな街だな」

「うん、職人の街って感じだね、何か買う?」

「いや、どうだろう…… 魔力回復薬はもう買い込んだし…… それにこの剣、他のよりもやたら性能が良いんだよな」

「へぇ、そうなんだ」

「いや、お前がくれた剣だぞこれ」

「うーん…… あの二人が持たせてくれたけど、どこの剣なのかは知らないよ」

 アキトはリオンの腰に携えた剣を見る。

「大事にしてくれてるんだね」

「そりゃ、まあ……」

「作った人も喜んでるよ、きっと」

「……そうかよ」

 少し釈然としない気持ちをよそに、リオンは路地に停まっている奇妙なワゴンに目を止める。
 派手でファンシーな装飾が施されているが、人の気配はなく、看板にはこう書かれていた。


『魔将グラキエースのアイス屋さん』


「魔将…… はぁ!? 魔将!?」

 思わず声を上げたリオンに気付き、アキトも看板を見る。

「つまり、いるってことだよね、倒しとく?」

「ちょっと待て、そもそも何でこんな所に……」

 ワゴンの下から何かが顔を出す。

「アレ? お客さんダ、珍しいナ、イラッシャイ」

 そこには、逆立つ髪と、長い耳に長いまつげの垂れた瞳をした、全身が氷でできている人型の魔物がいた。

「いや、そうじゃなくて…… 俺たちは……」

「ねぇ、君がこの街を支配してる魔将なの?」

「ちょっ──おま……!!」

「ウン、そうダヨ」

 6種類のアイスが並ぶケースの奥に、右手にコーンを持ち、左手にアイスをすくう器具を持った、氷の魔物が答える。

「ボクは魔将グラキエース、コノ街の支配を任された魔将ダヨ、好きな味を選んでネ」

「じゃあ、この手前のにするよ、リオンは?」

「……その右の」

「かしこまりマシタ、チョコとバニラですネ、少々お待ちクダサイ」

 魔将はコーンに選んだアイスを乗せていく。

「ねぇリオン、この世界でも、チョコとバニラなんだね」

「…………」

「リオン?」


 (……なんだこれ?)


 あまりの情報の多さに思考が渋滞し、リオンしばらく頭を抱えるのであった。



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