召喚魔王×召喚勇者 世界を滅ぼす気も救う気もない二人は共に旅に出る

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第5章 空っぽの村

先の未来は人知れず

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『貴様らの力、証明してみよ!!』

 そう高らかに宣言した骸の魔術師が、走り出したアキトとリオンの前に立ちはだかる。
 骸の魔術師は杖先を地面へと突き刺し、そこから現れたオレンジ色の魔法陣からまるで迷路のように入り組んだ土の壁を作り出し、向かって来る二人の行く手を阻んだ。

「先に行く」

「うん、気をつけて」

 リオンは土の壁による妨害を完全に無視して、転送魔法で骸の魔術師のいる地点へ直接向かう。しかし彼が姿を見せた直後、待ち構えていた幻影が大鎌を振り下ろし、強力な一撃を繰り出していた。

 (読めてんだよ、なめんな!)

 しかしその先を読んでいたリオンは、幻影の一撃を軽々とかわし、幻影の攻撃の隙を突いて斬り裂く。

「いるんだろ! まだ近くに!」

 そう叫ぶと、斬り裂いた幻影の奥から再び黒い鹿が現れ、頭を低くし自身の角を構えながら、リオンに向かって勢いよく突進を繰り出している。

 一部が杖で出来た角を向けながらスピードに乗る相手を、彼は左手に持っていた剣の鞘を二本ある角の先端へと引っかけ、左手と右肩を使って全身で受け止めた。

「クソッ、むしろ攻撃パターン増えてんな……」

 (けど、これで──)

 剣を片手で回し逆手に持ち替え、相手の胴体目掛けて剣先が向かう。とどめを刺したかと思いきや咄嗟に気づかれて避けられ、突然相手がいなくなったリオンはバランスが取れず体勢を崩してしまう。そして、その隙を逃さなかった黒い鹿は7体の骸魔術師を召喚して包囲すると同時に、彼を捕らえる為すぐさま突進を繰り出した。

 前からは尖った角、そして周りからそれぞれ異なる色の魔方陣から魔法が放たれ、誰もが絶体絶命だと思った瞬間。

「今だ──!!」

 そう叫び、間一髪のところを転送魔法を使い脱出する。走り出したままの青い瞳が敵を見失ったその直後── 


 ゴォォォオオ──!!


 と、土の壁を死角にして、突き破りながら現れた巨大な渦を巻いた禍々しい炎が、骸の魔術師たちもろとも、辺り一帯全てを呑み込んでいった。


「どおー? うまくいったー?」

 リオンからの合図を待っていたアキトは、邪魔な残りの土壁も全て焼き払うと、自身が放った炎が通り抜けた奥を覗き込みながら呼びかけてみる。

 すると、灰と煙が混ざり合う中から角の生えた細長い影が飛び出し、黒い鹿が勢いよくこちらへと向かって来ていた。

「すまん、しくじった……!」

 転送魔法で隣に現れたリオンは申し訳ないと思いながら前方に剣を構えるが、アキトはそれは違うとすぐに首を横に振る。

「君はわるくないよ、よく見て」

 そう言われリオンは相手をよく観察すると、左の角は白く光る魔力で出来ていて、徐々に近づにつれボロボロになりながら若干ふらついているのがわかり、まさか── と、思わず顔を引きつらせた。

「僕の魔法が弱かったんだ」

「……!」

 信じられないと思いつつも、前方からは魔法陣を構えた骸の魔術師が召喚され、炎、水、氷、雷、と異なる色の魔法弾を放ちながらすぐそこにまで迫って来ていた。

 アキトが禍々しい炎の壁を作り出して魔弾を相殺すると、壁に隠れたリオンはそれを利用し、迫り来る相手の前に突然現れ剣を添える。だが黒い鹿は走る勢いのまま避けられないかと思いきや、地面を踏み込んで魔法陣を描き、自身の位置だけを高くして剣を構えていた彼を飛び越えていった。

「そっち行ったぞ!」

 リオンの掛け声に従い、アキトは空中にいる敵目掛けて鋭い炎の魔弾を放つが、向こうは蹄に4つの緑色の魔法陣を描き、空を駆けるようにいくつもの魔弾を避けていく。

「リオーン、まかせていいー?」

 アキトは空中を跳ぶように駆ける相手に苦戦する中、自分を囲うように6体の骸の魔術師が召喚されるも手が離せず困っていたところ、駆けつけたリオンは、骸の魔術師たちが同時に魔法陣を構えた直後、横に剣を向け走って転移を繰り返し円を描きながら、まるで全ての攻撃が一度に行われたかのように幻影を消滅させた。

「これでいいか──?」

「うん、ありがとー これで……」

 そしてアキトは掲げている右手を空中にいる本体へ狙いを定め──

「おわりにするね」

 勢いよく放たれた炎の魔弾が相手の反射速度を上回り、反応出来ない相手の胴体を見事に貫通してみせた。


「やったか!? ……あっ」

 リオンがまだ気を抜いてはいけないと思った矢先、魔弾が当たった胴体から全身が黒い影となり、宙へと消え去っていく。

 ((幻影──!))

 そして、離れた茂みに隠れていた本体は二人が消えていく幻影に気を取られている隙を突き、近くにいたリオンの背後を狙って既に突進と魔法陣が仕掛けられていた。

「うしろだよ、リオン──!」

 すぐに魔力探知を行ったアキトがいち早く気づいて声を上げ、その言葉を信じたリオンは振り返ることなく咄嗟に転送魔法で彼の元へと転移した。

「あっぶな! フリじゃねぇっての!!」

「うん、わかってるよ。それに……」

 二人は走る勢いが段々衰えていくのを目にしながら、そしてアキトは相手の魔力反応が薄くなっていくのを見て確信する。

「ホントに、おわりだから」

 黒い鹿はふらつきながらも二人の目の前まで辿り着いた後、やがて力尽きて倒れ──

『見事』

 という言葉を最後に、杖の一部分を残しながら光となって消えていった。



「……終わったのか?」

「うん、おつかれさま」

「良かった……」

 ようやく気を緩めることができたリオンは、剣をしまった途端、隣にいたアキトに抱きつくような形でもたれかかり、少し驚く彼を気にすることなく肩に顔を埋めた。

「リオン……?」

「わりぃ、何か気ぃ抜けた」

「そっか…… いっぱいがんばったもんね」

 もたれかかるリオンが倒れないよう、アキトは疲れきった彼を両腕で包み込み、優しく支える。

 (……あったかいな)

 その時リオンは、彼のくれるぬくもりが、自分が抱える未来への不安をじんわり溶かしていくのを確かに感じた。

 (魔王がどうとか知ったことか、俺は今、こいつの傍にいたい。なんて……)

 自分にしては欲張り過ぎだと思いながらも、リオンは支えてくれているアキトとその背中に両手を伸ばしてしまう。自分が両手に力を込めると、彼も応えて強く支えてくれたことが堪らなく嬉しかった。



 しばらく経った後、二人は黒い鹿が残していった角の一部だったヒビ割れた杖の中から何かを見つけ、しゃがみながらその中を覗き込んだ。

「ねぇ、これって……」

「何か、入ってるのか?」

 割れた杖の一部分を調べてみると、中には青い宝石がぶら下がったペンダントが入っていて、二人はますます首をかしげる。

「魔石装置……なのかな?」

「わっかんねぇけど、どうやら装備品みてぇだな」

「リオン、着けてみる?」

「こえーよ、まずは専門家に相談だ」

 謎のペンダントは一旦アキトが預かり、二人はおそらくこの手の分野に詳しいであろう魔物二体のいるテントへと向かうため、どうやって来たのかわからない森の道を必死に戻って行くのだった。



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