怪獣特殊処理班ミナモト

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第1章 神獣協会

時代遅れ

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赤本は一人、大通りを走っていた。その目的地は、仙台駅前だ。青葉通りには戦車の履帯によって出来た跡が無数にできていた。そして奥からは銃声が聞こえる。

(すでに接敵しているのか…!)

 赤本の足に力が入る。

(あいつの俊敏さは完全に常軌を逸している。銃ではなく近接武器でないと…)

 赤本は先の戦闘から、開けた場所での怪人との戦いに銃火器は不利だと気付いていた。

(対怪人戦闘は全く前例がない。それは対怪獣とも、対人とも違う、その中間だからだ。それを知っているのは恐らく俺一人…!早く俺があいつを殺さないと!)

 赤本は銃声のする仙台駅中央口に到着した。

「遅かったか!」

 すでにそこには、無残に崩れ去った歩道橋と、あちこちに散らばる、隊員たちの肉片があった。その奥には、怪獣の死骸の上にあの男が立っていた。そしてそれに向かって発砲する数名の隊員たちがいた。恐らく生き残りだろう。

「おい!撃つのをやめてここから逃げろ!」

 赤本の声は隊員たちの耳には届かなかった。興奮状態にあるのだろう。

「こうなったら……上官命令だ!直ちにここから撤退せよ!」

 その言葉に隊員たちは一斉に反応した。

(よし!)

「自衛隊特殊作戦群、赤本明石二尉だ!ここは俺が担当する!」

「おお!特殊作戦群だ!」

「助かった!」

 隊員たちはすぐに大通りを引き返そうとした。その時、怪獣の死骸の上に立っていた怪人が人間のものとは思えない跳躍を見せ、その隊員たちのところに降り立とうとした。

「そうはさせるかよ!」

 赤本は素早く自動拳銃を腰から抜くと、降下する怪人に向かって二発撃ちこんだ。それらは全て頭部に命中した。怪人は空中で体勢を崩し、無様にがれきの上に落下した。

「た、助かりました!」

 すれ違いざま、隊員たちは赤本に礼を言った。赤本はというと、落下した怪人から目を離すことなく、その銃口をぴたりと落下点に向けていた。

「出てこい!怪獣野郎!」

 すると、がれきの一部が急にせりあがったかと思うとそこが吹き飛んだ。そして、男がはい出てきた。

「アカモト…!」

「そうだ!赤本だ!」

「貴様、よくもこの俺を!」

「何だ?随分と流暢にしゃべるんだな。やっと言葉を学習したか?」

「雑魚が…!」

 男はがれきの山から下りると、その場に立ち止まり、赤本を睨みつけた。赤本がつけた首の傷はすでに癒えていた。

「俺は今機嫌が悪いんだ。簡単には死なせねえぞ?アカモト」

「やってみろよ。」」今度はお前の首をはねてやる」

 気付くと男は赤本の視界から消えていた。正確には、視界の左端に瞬間的に移動した。そしてそれを赤本はぎりぎりで見逃さなかった。男がビルの壁から赤本に向かって突進しようとするその溜めをついて、銃の残弾をすべて叩き込んだ。またもや弾は男の頭部に全て命中した。

「グッ…!」

 男は一瞬よろめくと、その場に倒れこんだ。額からは血が噴き出している。

(貫通はしなかったか。だがダメージはあるらしい)

「どうした、もうリタイアか?そこの怪獣の方がお前よりよっぽど強そうだぞ?」

「あんな貧民と!一緒にするなあ!」

 男はビルの壁と道路を大きくへこませ、弾丸のようなスピードで赤本に突進した。

「死ね!」

 赤本はその突進を間一髪で避けると、すぐに術刀を抜いた。男はそのまま反対側の低層ビルに突っ込むと、それにより崩壊したビルの下敷きになったが、すぐにそこから抜け出してきた。そして赤本の持つ術刀を見ると、その場に立ち止まった。

「……なんだ?貴様、刀剣を使うのか?」

「刀剣じゃない。これは医療用器具だ。それも怪獣用だがな」

「ひ、ひひ。じゃあお前はそのどでかいメスで俺をぶっ殺す気か?」

「……お前、これを馬鹿にしているのか?」

「当たり前だ!銃ほどの威力もレンジも無い時代遅れの棒切れで、この俺は殺せねえよ!」

「試してみるか?」

「ああ、是非そうしたいね!」

 男はその場にしゃがむと、クラウチングスタートのような体勢を取った。

「最高速度で轢き殺してやる」

赤本はそれに正面から対峙した。

「一つ言っておくが、これは確かに刀剣の様にも見えるし、実際そのように使える。つまり、それに付随して剣術を組み合わせることが出来る。お前は馬鹿みたいに突進するのが好きなようだが、一つ、それにぴったりの技がある」

 赤本は術刀をまた鞘に納めると、腰を落として半身とになり、左手で鞘をしっかりと掴むと右手を柄にかけた。

「居合切りだ」

「なんだそりゃ?これまた奇抜な構えをするんだな、拍子抜けだ」

「いいから来い」

 男は体の動きを一瞬ぴたりと止めると、足に力を入れた。赤本はそれを見逃さずに全神経を研ぎ澄ました。そして、ドンっという鈍い音とともに男は赤本に向かって突進し、そして通過した。

「……てめえ」

 立ち止まった男には、左目から後頭部にかけて、一本の深い傷が出来ていた。そして赤本は、抜刀した術刀をさっと一振りすると、後ろを向いた。その額には冷や汗が浮かんでいた。

(間一髪で当てられたが、正直かなりきついな。一通りの剣術は押さえたとはいえ、それも基礎レベル。いつまでも同じ技は通用しないだろう)

「どうだ?まだこれを馬鹿にするか?」

「舐めやがって…!」

「ほら、突進してみろ。今度は首を切り落とす」

(次で確実に行動能力を失わせる!)

赤本はまたも居合の構えをとった。

「……仕方ねえ、あいつには止められてたが、これは俺のメンツにかかわる問題だ」

 男はその場に立ち上がると、深く息を吐いた。そして、急に男の目が黒く充血し始めた。

「何だ?それは」

 男は答えなかった。そして、黒い血の涙を流し始めた。

「……アカモト。俺を本気にさせたのはあの方以来だぜ」

 男はそう言って頬を伝って滴る血を拭うと、目を閉じた。

(本気だと?…まずいな、今すぐに殺さないと。何か悪い予感がする)

 赤本が男に走り出そうとした瞬間、男は目をそっと開けた。その目はすでにもとに戻っていた。

「赤本さん!」

 不意にそう声がした。赤本が横目で大通りを確認すると、そこには源がいた。
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