怪獣特殊処理班ミナモト

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第1章 神獣協会

決定的な素質

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「赤本さん!」
 赤本が声のする方を横目でちらっと見ると、それは源だった。そしてそれを見た男は、恐怖の表情を作った。
「……こんなに早く!」
 男は後ずさり始めた。源はそれを見て言った。
「待て!動くことを禁じる!」
「は、はい!承知いたしました!」
 男はその場に立膝をつくと、下を向いた。
「赤本さん!大丈夫ですか?」
 源は息を切らしながら赤本に駆け寄ってきた。手には術槍を持っている。
「俺は大丈夫だが、その、一つ聞かせてもらうが、なぜ奴がお前に従っている?」
「どうやら僕を誰か別の人物と見間違えているらしいです。その人物にあいつは相当の恐怖心を持っています」
 源はそう言うと、跪く男に体を向けた。
(ここはなるべく堅苦しい口調にしよう)
「おい、お前の名は?」
「は、ジオナ・レン・サントラと申します」
「ではジオナ、お前はどのように怪人となった」
「それは、申し上げることは……」
「できないのか?」
 源は自分のこのキャラが案外あっていることに気づいた。言葉がするする出てくる。
「私には現在使えている方がいらっしゃいまして…」
「ではその者の名前は?」
「アシュキル・バラン・リコアトル様です…」
(さっきから出てくるこの名前は何だ?怪獣にはそれぞれ名前でもあるのか?それに上下関係もある…)
「質問を変えるぞ、ジオナ。お前たちは人間を複数人誘拐しているな?」
「誘拐などでは…!あれは必要な材料集めでございます。我々に従順な兵を作るには若い人間が最も最適なのです。いつかアシュキル様が貴方におっしゃっていたではありませんか」
「それは記憶にないが……。ではやはり、お前たちが東京で連続誘拐事件を起こしているのだな?」
「……概ねその通りでございます。ですがやはり誘拐というのは些か語弊が……」
「ジオナ、最後の質問だ。お前たちの隠れ家はどこにある」
「申し訳ありません、それはいくら貴方様といえどもお答えできません」
 そういうジオナは体が震えていた。
「……どうしても話さないのか?」
「それは主従に背くことになります。そうなれば、私は死をもって贖うほかありません」
「言わなければ殺すつもりだったが……やはりそうしよう」
 源は横に移動すると、術槍をジオナの首に当てた。
「おい、源!」
 思わず赤本は源に呼びかけた。今の源は本当にこの怪人を殺しかねないと思ったからだ。
(源の奴、今確実に殺気をこの男に向けていた!どういうことだ?そんな性格じゃ…)
 ジオナは首に当てられた刃先の冷たく鋭い感触を感じた。
「お、お待ちください!アシュキル様の居場所は確かにお伝え出来ませんが、貴方様が我々の仲間に加わってくださるのであれば話は別でございます!」
「そのつもりは毛頭ない。おいジオナ、頭を上げるな。刃が真っ直ぐ通らん」
 ジオナの体の震えはさらに大きくなった。
「お聞きください!私はすでに過程変異を終えています!今すぐにでもそこの男を殺して御覧に入れましょう」
「それが今際の際の最後の言葉か?やはり道化だな」
 源は術槍を振り上げた。
「やめろ!源!俺の話を聞け!」
 赤本の叫びに、源は手を止めた。
「……赤本、さん?」
「一旦落ち着け、まるで別人だぞ、お前」
 源はそれを聞いて振り上げていた術槍を下ろした。
「すみません、赤本さん。冷静に行きます」
「ああ、そうしてくれ……」
「では改めて。ジオナ、お前はどうしても口を割らないんだな?」
「は、はい……」
「それによりお前が浄化されてもか?」
「……」
 今度は無言だった。
(これはチャンスでは?)
 源はさらに畳みかけた。
「ジオナ、お前がその場所を話せば、命は助けてやる」
「ほ、本当ですか!?」
「おい、源!」
「本当だとも、ジオナ。さあ。早く居場所を言え」
「……」
「どうした、死んでしまうぞ?」
「…………フジ」
「何だと?」
「フジでございます。その山の奥深くに我々の拠点がございます……」
(かかった!)
 源は赤本に目配せをすると、赤本はそれを読み取り、手に持っていた術刀をジオナに振り下ろした。そしてその両腕を切り飛ばした。
「な、なにを!」
「命は助けると言ったはずだが?」
 そして今度は倒れこんだジオナの両足を切り落とした。その断面からは勢いよく黒い血が噴き出している。
「ぐああああ!てめえら!俺を!騙しやがったな!」
「馬鹿が、これくらい予想できただろうがよ」
 赤本はそう吐き捨てると、無線で本部に連絡した。ジオナはというと、過程変異による驚異的な再生能力により、すぐに四肢の断面はふさがった。だが、そこから新たな腕や足が生えてくることは無かった。
「源、隊員たちを呼んでくれ。こいつを拘束する」
「俺はもうこれ以上は言わねえぞ!せいぜい尋問でもなんでもしてみやがれ!絶対に抜け出してお前らの四肢をもいでやる!」
「もう黙っとけ、怪獣野郎。四肢をもがれてんのはお前だろうがよ。何の皮肉だ?」
「クソがあああ!」
「源、こいつの口を塞ぐガムテープも頼む」
「了解です」
 源は無線で本部に連絡すると、本部のある方に走っていった。赤本はそれを見届けると、ジオナの前に座り込んだ。
「さて、怪獣」
「ジオナだ!」
「ではジオナ、お前は俺のことを知ってたな。何故だ?」
「はあ?そりゃ、この体から記憶を見たからだよ」
「何?お前、人の記憶を……」
「まあ乗っ取った奴だけだがな。いや、まてよ?……おいおい、俺いいこと思いついちまったよ」
不意にジオナの顔から恐怖が消えた。
「いいこと?お前の手足ならくっつけてやらないぞ?」
「そうじゃねえ!お前、随分こいつに入れ込んでいたよな?」
 ジオナはそう言ってぐにゃりと笑った。こいつとは、黒澤のことだろうか。
「……それで?」
「俺が浄化されないよう便宜をしてくれよ。そうしたら、こいつが死に際にお前に対してどう思ったか教えてやる」
「そんなことで俺が乗ると思うか?」
「ああ、思うね。だってお前、あからさまに動揺してやがる。ひひ、血も涙もないみたいな振りをして、随分と繊細なんだなあ。それにこいつは気付いていたのか、それが分かるのは俺だけ。ひひひ、一旦落ち着けよ、殺気が増してるぜ?」
(こいつ、どこまでクズなんだ……!)
「……口を塞ぐんじゃなくて、喉を潰した方が早かったか」
「いいぜ、やってみろよ。俺は確信したぜ?お前に俺は殺せないし、お前は俺を殺させない」
 赤本は立ち上がると、壁に立てかけてあった術刀を手に取り、ジオナの頭に勢いよく振り下ろした。その刃先は、ジオナの頭部に触れる直前でぴたりと止まった。
「チッ…!」
「ひひ、やっぱりそうだ。お前はたった一度の殺人を引きずってやがる。それは何故か?こいつがお前の友人だからか。それとも本当は殺さなくてもよかったからか?どれも違う、お前が弱いからだよ、アカモト。お前には戦士としての決定的な素質がねえ。なのに中途半端な肉体能力にひっぱられてずるずるここまで来ちまった。だからこいつは死んだんだ」
「……黙れ」
「黙らせたきゃ喉を潰せ。お前もついさっき言ってたじゃねえか。なぜすぐにそれをしない?そんなに俺の話が聞きたかった…」
 赤本は今度は刃先をジオナの喉に深々と突き刺した。ジオナの口からは黒い血が流れ出し、その傷口からはひゅーひゅーと音が出ている。
「お前とは今後一切関わらない。そのまま苦しめ」
 赤本の言葉とは裏腹に、ジオナはにやにやと笑っていた。赤本は思わず目を逸らした。するとどこからか低いエンジン音が聞こえてきた。
「赤本副班長!」
 後ろから声がした。赤本が振り返ると、数台の装甲車と、その機関銃席からこちらに合図を送る隊員の姿があった。車は赤本の目の前で止まると、そこから数名の重装備で身を固めた隊員が出てきた。その手には分厚い盾とさすまたを持っている。
「赤本副班長ですね?そこの男は、、」
「ああ、例の怪人だ。見ての通り無力化してあるから、あとはそちらでどうにかしてくれ」
「り、了解しました……」
 隊員たちはジオナの異常な姿を見てたじろいでいた。赤本はその場から離れると、源に連絡した。
「源、今どこにいる」
「今本部テントをでたところです。それと、ここにいる間に東京から僕たちに連絡が来ていたみたいで、」
「誰からだ?」
「それが…伊地知一佐からです」
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