女神と共に、相談を!

沢谷 暖日

文字の大きさ
41 / 82
仲良し少女の恋愛相談

昼休み。美結ちゃんの教室へと

しおりを挟む
 木曜日。昼休み。
 机に伏せていた私は、教室から人が少なくなったタイミングを狙いその場を離れた。
 学食に買いに行く人がそこそこいるので、あまり周りの視線を気にせずに心音の場所へ行ける。

「……行こ。心音」

 けれど私はクラスでは陰の人なので、心音に話しかける時も少し緊張をした。
 聞こえるか聞こえないかどうかの声で呼んだが、心音の補聴器はそれをしっかり受け取ったらしく、その場を立ち上がる。
 ホワイトボードとペンを持ち、私に『では、行きましょうか』と見せてきた。
 本来学校はスマホ禁止なので、今日はホワイトボードの様だ。
 私のも必要かなと思ったが、私の声は普通に届くので別にいいやと。

「うん……」

 呟き。
 私はそそくさと教室の外へ向かった。
 廊下へと出て、なんとなく透き通った空気感となり肩の荷が下りる心地となる。

 教室は居心地が悪い。
 それも友達がいないせいだけど。
 あと、英語の時間に隣の人とペア組めとか言われるやつ。あれも嫌だ。
 特に体育の時間の誰かとペア組めっていうやつ。あれは最悪だ。
 心音と組めるかもだが、心音は体育を見学しているのだ。だからはそれは叶わない。

 なんて訳の分からない事を頭で考える。
 頭を振って、その思考を飛ばし私は心音の方を振り返った。

 ボードを大事そうに抱えながら私を見る。
 こんな風に、放課後を除いて学校で一緒にいるというのは地味に初めてかもしれない。
 心音の綺麗な顔立ちを見ながら、それを感じた。

「…………」

 ……そして同時に、廊下を歩く人からの視線も集めていた。
 心音は学校での人気者だ。
 だから自然と私が衆目に晒されるわけで、この廊下も居心地が悪いもの感じられてしまい、またそそくさと美結ちゃんのクラスへと向かった。


     ※


『あの。ごめんなさい。私のせいで』

 しばらく歩き、もう一年生の校舎だと言うところで私は肩を叩かれ、文字を見せられる。
 一瞬なんのことかと思ったが、私がさっき嫌な顔をしてたことに対してだろう。

「気にしないでよ! 私、そういうの結構あるからさ。というか、みんなの人気者の心音に好かれているっていうのが私は嬉しい!」

 正直に自分の気持ちを言う。
 すると心音はもう一度確かめるかのように、

『本当ですか?』

 首を傾げ、不安そうにそう問う。

 心配してくれている。
 その事実だけで私は嬉しかった。

「うん。ほんとほんと。だから今は、美結ちゃんの事に集中しよ!」
『分かりました。ありがとうございます』

 心音の表情が元に戻ったことを確認し、私は再び前を歩き出す。

 やがて一年校舎に辿り着き、一年前に自分もこの場所にいたなーと懐かしく感じながら、その場所が美結ちゃんのクラスであるEクラスという事を確認する。

「よし。ここだね」

 ……と言っても、中に入る勇気は出ず、一旦深呼吸。
 教室の入口から不審者のように部屋を覗き、美結ちゃんがいないかを確認した。

「んーと。……パッと見はー、いない?」

 学食がどこかに行っているのだろうか。
 ともかく見つけることは出来なかった。

「心音、どう思う?」

 教室を覗くことを中断し、心音に問う。

『誰か、このクラスの人に聞いたらどうですか? 奥から人が来てますよ』

 と言われるがまま、心音がボードでさした方を見れば、三人組の女子生徒がこっちに歩んできていた。
 多分だけど、Eクラスの生徒。
 The陽キャって感じの見た目の子達で少し気圧けおされたが、相手は年下。
 ゴクリと生唾を飲み込み、意を決してその人達の元へと駆け寄った。

「あの! すみません」

 頭をペコペコとしながらそう呼ぶ。
 キッと睨みつけられたが、私を年上だと悟ったのかその表情はほんの少しだけ和らいだ。

「なんですか?」
「えっと。今日、白河さんって学校きてる? 白河美結さん」

 休んでいるならそれでいい。
 風邪で休んでいるとか、クラスの人はそれくらい分かるだろう。
 と、祈るような気持ちで相手の返事を待った。

「…………」

 数秒の間を空けて。
 三人は訝しげな表情を浮かべながら。
 その後に、三人の中の一人がこう答えた。

「誰っすか。その人」

 ……え?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

AV研は今日もハレンチ

楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo? AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて―― 薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...