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仲良し少女の恋愛相談
昼休み。美結ちゃんの教室へと
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木曜日。昼休み。
机に伏せていた私は、教室から人が少なくなったタイミングを狙いその場を離れた。
学食に買いに行く人がそこそこいるので、あまり周りの視線を気にせずに心音の場所へ行ける。
「……行こ。心音」
けれど私はクラスでは陰の人なので、心音に話しかける時も少し緊張をした。
聞こえるか聞こえないかどうかの声で呼んだが、心音の補聴器はそれをしっかり受け取ったらしく、その場を立ち上がる。
ホワイトボードとペンを持ち、私に『では、行きましょうか』と見せてきた。
本来学校はスマホ禁止なので、今日はホワイトボードの様だ。
私のも必要かなと思ったが、私の声は普通に届くので別にいいやと。
「うん……」
呟き。
私はそそくさと教室の外へ向かった。
廊下へと出て、なんとなく透き通った空気感となり肩の荷が下りる心地となる。
教室は居心地が悪い。
それも友達がいないせいだけど。
あと、英語の時間に隣の人とペア組めとか言われるやつ。あれも嫌だ。
特に体育の時間の誰かとペア組めっていうやつ。あれは最悪だ。
心音と組めるかもだが、心音は体育を見学しているのだ。だからはそれは叶わない。
なんて訳の分からない事を頭で考える。
頭を振って、その思考を飛ばし私は心音の方を振り返った。
ボードを大事そうに抱えながら私を見る。
こんな風に、放課後を除いて学校で一緒にいるというのは地味に初めてかもしれない。
心音の綺麗な顔立ちを見ながら、それを感じた。
「…………」
……そして同時に、廊下を歩く人からの視線も集めていた。
心音は学校での人気者だ。
だから自然と私が衆目に晒されるわけで、この廊下も居心地が悪いもの感じられてしまい、またそそくさと美結ちゃんのクラスへと向かった。
※
『あの。ごめんなさい。私のせいで』
しばらく歩き、もう一年生の校舎だと言うところで私は肩を叩かれ、文字を見せられる。
一瞬なんのことかと思ったが、私がさっき嫌な顔をしてたことに対してだろう。
「気にしないでよ! 私、そういうの結構あるからさ。というか、みんなの人気者の心音に好かれているっていうのが私は嬉しい!」
正直に自分の気持ちを言う。
すると心音はもう一度確かめるかのように、
『本当ですか?』
首を傾げ、不安そうにそう問う。
心配してくれている。
その事実だけで私は嬉しかった。
「うん。ほんとほんと。だから今は、美結ちゃんの事に集中しよ!」
『分かりました。ありがとうございます』
心音の表情が元に戻ったことを確認し、私は再び前を歩き出す。
やがて一年校舎に辿り着き、一年前に自分もこの場所にいたなーと懐かしく感じながら、その場所が美結ちゃんのクラスであるEクラスという事を確認する。
「よし。ここだね」
……と言っても、中に入る勇気は出ず、一旦深呼吸。
教室の入口から不審者のように部屋を覗き、美結ちゃんがいないかを確認した。
「んーと。……パッと見はー、いない?」
学食がどこかに行っているのだろうか。
ともかく見つけることは出来なかった。
「心音、どう思う?」
教室を覗くことを中断し、心音に問う。
『誰か、このクラスの人に聞いたらどうですか? 奥から人が来てますよ』
と言われるがまま、心音がボードでさした方を見れば、三人組の女子生徒がこっちに歩んできていた。
多分だけど、Eクラスの生徒。
The陽キャって感じの見た目の子達で少し気圧されたが、相手は年下。
ゴクリと生唾を飲み込み、意を決してその人達の元へと駆け寄った。
「あの! すみません」
頭をペコペコとしながらそう呼ぶ。
キッと睨みつけられたが、私を年上だと悟ったのかその表情はほんの少しだけ和らいだ。
「なんですか?」
「えっと。今日、白河さんって学校きてる? 白河美結さん」
休んでいるならそれでいい。
風邪で休んでいるとか、クラスの人はそれくらい分かるだろう。
と、祈るような気持ちで相手の返事を待った。
「…………」
数秒の間を空けて。
三人は訝しげな表情を浮かべながら。
その後に、三人の中の一人がこう答えた。
「誰っすか。その人」
……え?
机に伏せていた私は、教室から人が少なくなったタイミングを狙いその場を離れた。
学食に買いに行く人がそこそこいるので、あまり周りの視線を気にせずに心音の場所へ行ける。
「……行こ。心音」
けれど私はクラスでは陰の人なので、心音に話しかける時も少し緊張をした。
聞こえるか聞こえないかどうかの声で呼んだが、心音の補聴器はそれをしっかり受け取ったらしく、その場を立ち上がる。
ホワイトボードとペンを持ち、私に『では、行きましょうか』と見せてきた。
本来学校はスマホ禁止なので、今日はホワイトボードの様だ。
私のも必要かなと思ったが、私の声は普通に届くので別にいいやと。
「うん……」
呟き。
私はそそくさと教室の外へ向かった。
廊下へと出て、なんとなく透き通った空気感となり肩の荷が下りる心地となる。
教室は居心地が悪い。
それも友達がいないせいだけど。
あと、英語の時間に隣の人とペア組めとか言われるやつ。あれも嫌だ。
特に体育の時間の誰かとペア組めっていうやつ。あれは最悪だ。
心音と組めるかもだが、心音は体育を見学しているのだ。だからはそれは叶わない。
なんて訳の分からない事を頭で考える。
頭を振って、その思考を飛ばし私は心音の方を振り返った。
ボードを大事そうに抱えながら私を見る。
こんな風に、放課後を除いて学校で一緒にいるというのは地味に初めてかもしれない。
心音の綺麗な顔立ちを見ながら、それを感じた。
「…………」
……そして同時に、廊下を歩く人からの視線も集めていた。
心音は学校での人気者だ。
だから自然と私が衆目に晒されるわけで、この廊下も居心地が悪いもの感じられてしまい、またそそくさと美結ちゃんのクラスへと向かった。
※
『あの。ごめんなさい。私のせいで』
しばらく歩き、もう一年生の校舎だと言うところで私は肩を叩かれ、文字を見せられる。
一瞬なんのことかと思ったが、私がさっき嫌な顔をしてたことに対してだろう。
「気にしないでよ! 私、そういうの結構あるからさ。というか、みんなの人気者の心音に好かれているっていうのが私は嬉しい!」
正直に自分の気持ちを言う。
すると心音はもう一度確かめるかのように、
『本当ですか?』
首を傾げ、不安そうにそう問う。
心配してくれている。
その事実だけで私は嬉しかった。
「うん。ほんとほんと。だから今は、美結ちゃんの事に集中しよ!」
『分かりました。ありがとうございます』
心音の表情が元に戻ったことを確認し、私は再び前を歩き出す。
やがて一年校舎に辿り着き、一年前に自分もこの場所にいたなーと懐かしく感じながら、その場所が美結ちゃんのクラスであるEクラスという事を確認する。
「よし。ここだね」
……と言っても、中に入る勇気は出ず、一旦深呼吸。
教室の入口から不審者のように部屋を覗き、美結ちゃんがいないかを確認した。
「んーと。……パッと見はー、いない?」
学食がどこかに行っているのだろうか。
ともかく見つけることは出来なかった。
「心音、どう思う?」
教室を覗くことを中断し、心音に問う。
『誰か、このクラスの人に聞いたらどうですか? 奥から人が来てますよ』
と言われるがまま、心音がボードでさした方を見れば、三人組の女子生徒がこっちに歩んできていた。
多分だけど、Eクラスの生徒。
The陽キャって感じの見た目の子達で少し気圧されたが、相手は年下。
ゴクリと生唾を飲み込み、意を決してその人達の元へと駆け寄った。
「あの! すみません」
頭をペコペコとしながらそう呼ぶ。
キッと睨みつけられたが、私を年上だと悟ったのかその表情はほんの少しだけ和らいだ。
「なんですか?」
「えっと。今日、白河さんって学校きてる? 白河美結さん」
休んでいるならそれでいい。
風邪で休んでいるとか、クラスの人はそれくらい分かるだろう。
と、祈るような気持ちで相手の返事を待った。
「…………」
数秒の間を空けて。
三人は訝しげな表情を浮かべながら。
その後に、三人の中の一人がこう答えた。
「誰っすか。その人」
……え?
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