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仲良し少女の恋愛相談
美結ちゃんは何処へ?
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思考が固まった。
私の脳が錆び付いたように回らなくなった。
目の前の陽キャ女子の言ったことが意味不明だったから。
美結ちゃんの事を『誰?』と、切り捨てるかのように放たれたその言葉。
固まった私を見捨て、彼女らが入って行ったのは間違いなくEクラスで。
楓花も、確かに美結ちゃんはEクラスだと言っていたはずだ。
楓花が嘘をつくわけもない。
この情報を教えてくれた楓花の表情は確信的なものだったと思う。
それ以上の事が、私には分からない。
「──すー」
私は深呼吸をする。錆び付いた脳に、オイルを注すように。
もう一度、もう一度という風に心を落ち着かせた。
胸を膨らませてる内に、なぜか胸の上あたりに違和感を覚え。
すぐにその正体が昨日、美結ちゃんに受け取った小箱によるものだと気づく。
今日の朝、寝ぼけながら胸ポケット入れていたことを忘れていた。
「……うん。冷静になってみても、よく分からない」
クラスの人があんなことを言うのだ。
『学校に来ていない』なら普通だと思う。
だけど『誰?』と言われた。
もう。矛盾だらけだった。
その時。
私の肩がポンポンと叩かれ。
振り向く。
心音だ。
『私もなんだか訳分からなくてなってきましたけど。とりあえず、このクラスの他の人に聞いてみませんか?』
ボードに書かれたその文字を見て、私は大きく頷いた。
偏見で悪いが、さっきの人たちはなんだかガラが悪い。
とりあえず、多くの人から意見を取り入れてみよう。
そう思えた。
「よし。心音は、とりあえずここにいて。何かあったら呼ぶから」
何かあったらってなんだろうか。
んー。まぁ下級生の教室に、上級生がズカズカ立ち入るのは良くない。
しかし。心音の存在は恐らく全生徒に知られているから、そんなことはない?
……考えても無駄なことか。
『分かりました!』
丸みを帯びた機嫌の良い字を一瞥し、私は後ろの入り口から教室内へと入る。
痛い視線を浴びながら、私は教室を見回した。
さっきの感じの悪い三人組は、前の席の方でガヤガヤと話をしている。
こちらをチラと見られたが、直ぐに駄べりに集中を戻したようだ。
汚い笑い声を上げている彼女に対し、私は思わず睨みつけてしまう。
いかんいかん。
もうちょっと大人しめな感じの人いないかな。
と、再び見回すことを再開すると、教室の隅に見つけた。
お昼の明るい日差しに照らされながら本を読んでいる少女。
落ち着いたオーラがあり、『あの子だ』と思い私はその場所へ近づいた。
「えっと。ちょっといいかな?」
こういう時、どう話しかければいいのだろうか。
分からず。あらかじめ何を言うか決めていた方が良かったんじゃないかと。
思ったけれど、過ぎたことを気にしていても仕方ない。
私は目の前の、少しびっくりした様子の少女に、思考から視線を移した。
「な、何でしょうか」
少女は読んでいた本を閉じ、机の上に置いて私を見上げた。
その本のタイトルを何となく確認。夏目漱石の『文鳥』だった。
だから何って感じだけど、多分さっきのやつらと違ってちゃんとしたことを言ってくれるだろうと思った。偏見が酷すぎる……。
「急にごめんね。私、二年生なんだけどさ。このクラスの白河美結ちゃんって子知らない? 私の友達でさ」
早速聞いてみる。
が──。
「し、白河さん……。ですか。その人のことは、分かりませんね」
さっきの感じの悪い奴らと一緒のことを言われてしまった。
もう。より一層、こんがらがってしまった。
「クラスの席順が前に貼ってあります。名前も書いてあるので、そのあなたが言う人の名前を探してみてください」
少女は冷静なまま、追い打ちの一言。
「あ、ありがとう」
私は頷くことしか出来ずに、言われるがまま黒板の横の方に貼ってある、生徒の座る席が書かれた紙の場所まで歩んだ。
先の感じ悪い人たちが、私の方をまじまじと見つめていた。
その紙を見た。
訳がわからなかった。
このクラスと、聞いていた筈なのに。
楓花を過信しているだけ? 本当はこのクラスじゃない?
その紙に、『白河美結』の文字は何度見返しても見つけることができなかった。
その後。
現実的でない事に直面している今に頭を回しつつも。
心音と協力し。私がAとBクラス。心音がCとD。
そこに貼っている同じような席の紙を確認しに行った。
ABクラスには『白河美結』の名前は無かった。
CDクラスにも、無かったと心音が教えてくれた。
Aクラスの昼食中の楓花と桃杏ちゃんに「美結ちゃんってEクラ?」と昨日に引き続き聞いた。
楓花に「そりゃそうだよ! 嘘つくわけないでしょー」と言われてしまった。
「いや。いなかったんだって」私はそう返した。
「そんなわけないってば! 今は桃杏ちゃんとの時間の、また後でね!」そう言われ、しっしっと追い返されてしまった。
先生に聞こうとしたが、今日の昼休みは職員会議らしく、聞けなかった。
分からない。
美結ちゃんは、確かにここの制服を着ていて。
Eクラスに存在しているはずで。
楓花もちゃんとその存在を認知していて。
でも。Eクラスの人は『誰?』と言っていて。
美結ちゃんの名前は、席が書かれた紙には載っていなくて。
考えられる限り、様々なことを考えた。
けれど、どれもこれも現実的ではなかった。
まず、制服だけこの女子校のものを着、この学校を訪れていたという可能性だ。
自分でもバカバカしいくらい、それは有り得ないとすぐに否定をした。
次はもっとバカバカしい可能性だった。
『神隠し』とか、めっちゃ映画に影響受けた人みたいなことも考えた。
私は五月以来、九月に部室を訪れるまで美結ちゃんの姿を見なかった。
そうなのかもしれないと、そう思った。でも、そんな訳がない。
もしそうだとしたら、その物語を本にしてボロ儲けしたいところだ。
だから。本当に分からない。
心音も『何が何だかさっぱりです』とそう言った。同意見だ。
昼休みが終わる。
午後の授業は、そのことで頭がいっぱいだった。
内容は、ほとんど頭に入ってこなかった。
私の脳が錆び付いたように回らなくなった。
目の前の陽キャ女子の言ったことが意味不明だったから。
美結ちゃんの事を『誰?』と、切り捨てるかのように放たれたその言葉。
固まった私を見捨て、彼女らが入って行ったのは間違いなくEクラスで。
楓花も、確かに美結ちゃんはEクラスだと言っていたはずだ。
楓花が嘘をつくわけもない。
この情報を教えてくれた楓花の表情は確信的なものだったと思う。
それ以上の事が、私には分からない。
「──すー」
私は深呼吸をする。錆び付いた脳に、オイルを注すように。
もう一度、もう一度という風に心を落ち着かせた。
胸を膨らませてる内に、なぜか胸の上あたりに違和感を覚え。
すぐにその正体が昨日、美結ちゃんに受け取った小箱によるものだと気づく。
今日の朝、寝ぼけながら胸ポケット入れていたことを忘れていた。
「……うん。冷静になってみても、よく分からない」
クラスの人があんなことを言うのだ。
『学校に来ていない』なら普通だと思う。
だけど『誰?』と言われた。
もう。矛盾だらけだった。
その時。
私の肩がポンポンと叩かれ。
振り向く。
心音だ。
『私もなんだか訳分からなくてなってきましたけど。とりあえず、このクラスの他の人に聞いてみませんか?』
ボードに書かれたその文字を見て、私は大きく頷いた。
偏見で悪いが、さっきの人たちはなんだかガラが悪い。
とりあえず、多くの人から意見を取り入れてみよう。
そう思えた。
「よし。心音は、とりあえずここにいて。何かあったら呼ぶから」
何かあったらってなんだろうか。
んー。まぁ下級生の教室に、上級生がズカズカ立ち入るのは良くない。
しかし。心音の存在は恐らく全生徒に知られているから、そんなことはない?
……考えても無駄なことか。
『分かりました!』
丸みを帯びた機嫌の良い字を一瞥し、私は後ろの入り口から教室内へと入る。
痛い視線を浴びながら、私は教室を見回した。
さっきの感じの悪い三人組は、前の席の方でガヤガヤと話をしている。
こちらをチラと見られたが、直ぐに駄べりに集中を戻したようだ。
汚い笑い声を上げている彼女に対し、私は思わず睨みつけてしまう。
いかんいかん。
もうちょっと大人しめな感じの人いないかな。
と、再び見回すことを再開すると、教室の隅に見つけた。
お昼の明るい日差しに照らされながら本を読んでいる少女。
落ち着いたオーラがあり、『あの子だ』と思い私はその場所へ近づいた。
「えっと。ちょっといいかな?」
こういう時、どう話しかければいいのだろうか。
分からず。あらかじめ何を言うか決めていた方が良かったんじゃないかと。
思ったけれど、過ぎたことを気にしていても仕方ない。
私は目の前の、少しびっくりした様子の少女に、思考から視線を移した。
「な、何でしょうか」
少女は読んでいた本を閉じ、机の上に置いて私を見上げた。
その本のタイトルを何となく確認。夏目漱石の『文鳥』だった。
だから何って感じだけど、多分さっきのやつらと違ってちゃんとしたことを言ってくれるだろうと思った。偏見が酷すぎる……。
「急にごめんね。私、二年生なんだけどさ。このクラスの白河美結ちゃんって子知らない? 私の友達でさ」
早速聞いてみる。
が──。
「し、白河さん……。ですか。その人のことは、分かりませんね」
さっきの感じの悪い奴らと一緒のことを言われてしまった。
もう。より一層、こんがらがってしまった。
「クラスの席順が前に貼ってあります。名前も書いてあるので、そのあなたが言う人の名前を探してみてください」
少女は冷静なまま、追い打ちの一言。
「あ、ありがとう」
私は頷くことしか出来ずに、言われるがまま黒板の横の方に貼ってある、生徒の座る席が書かれた紙の場所まで歩んだ。
先の感じ悪い人たちが、私の方をまじまじと見つめていた。
その紙を見た。
訳がわからなかった。
このクラスと、聞いていた筈なのに。
楓花を過信しているだけ? 本当はこのクラスじゃない?
その紙に、『白河美結』の文字は何度見返しても見つけることができなかった。
その後。
現実的でない事に直面している今に頭を回しつつも。
心音と協力し。私がAとBクラス。心音がCとD。
そこに貼っている同じような席の紙を確認しに行った。
ABクラスには『白河美結』の名前は無かった。
CDクラスにも、無かったと心音が教えてくれた。
Aクラスの昼食中の楓花と桃杏ちゃんに「美結ちゃんってEクラ?」と昨日に引き続き聞いた。
楓花に「そりゃそうだよ! 嘘つくわけないでしょー」と言われてしまった。
「いや。いなかったんだって」私はそう返した。
「そんなわけないってば! 今は桃杏ちゃんとの時間の、また後でね!」そう言われ、しっしっと追い返されてしまった。
先生に聞こうとしたが、今日の昼休みは職員会議らしく、聞けなかった。
分からない。
美結ちゃんは、確かにここの制服を着ていて。
Eクラスに存在しているはずで。
楓花もちゃんとその存在を認知していて。
でも。Eクラスの人は『誰?』と言っていて。
美結ちゃんの名前は、席が書かれた紙には載っていなくて。
考えられる限り、様々なことを考えた。
けれど、どれもこれも現実的ではなかった。
まず、制服だけこの女子校のものを着、この学校を訪れていたという可能性だ。
自分でもバカバカしいくらい、それは有り得ないとすぐに否定をした。
次はもっとバカバカしい可能性だった。
『神隠し』とか、めっちゃ映画に影響受けた人みたいなことも考えた。
私は五月以来、九月に部室を訪れるまで美結ちゃんの姿を見なかった。
そうなのかもしれないと、そう思った。でも、そんな訳がない。
もしそうだとしたら、その物語を本にしてボロ儲けしたいところだ。
だから。本当に分からない。
心音も『何が何だかさっぱりです』とそう言った。同意見だ。
昼休みが終わる。
午後の授業は、そのことで頭がいっぱいだった。
内容は、ほとんど頭に入ってこなかった。
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