魔法適正Fランクの落ちこぼれ魔法使い、Sランクの魔力蓄積量とスキル《魔力操作》で最強です!

沢谷 暖日

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第1章 強くてカワイイ魔法使い

第5話 才能開花

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 魔法の威力上昇の方法を授業で習ったことがある。
 それは自身の魔力を、手に注ぎ続ける方法だ。
 しかしそれは体力を多く消費するため、推奨されていない。
 教師からは『ここぞという時、以外に使うな』と言われていたくらいだ。
 けれど、私の天啓スキルが【魔力操作】ならば、体力の消費を減らせるかもしれない。いや、減らせずとも、常人よりも多くの魔力を注ぐことができるだろう。
 それに、ここぞという時があるならば、それは今だ。

「じゃあ、行ってくる」

 ドロシーさんは頷くと、ドラゴスネークの元へと駆け出した。
 申し訳ないけど、彼女には今から時間稼ぎをして貰おうと思う。
 そして風魔法で私の元へ飛ばして貰い、体勢を崩したドラゴスネークに私の魔法でズドンだ。
 以上が、ドロシーさんに囁いた私の『考え』である。

「ギシャアアアア!!」

 ドラゴスネークが咆哮を上げた。
 空気をビリビリと震わすその咆哮に、思わず身震いする。
 けれどドロシーさんは迷い無く、ドラゴスネークの死角に回った。
 学園最強の彼女は、もちろん運動神経も良い。
 うまくドラゴスネークを錯乱できているようだった。

「……よし」

 そんな彼女の様子を見ながら、私は一歩二歩と前に出る。
 さぁ始めよう、とそう思った矢先、後方から声がぶつけられた。

「え? なんでクロエがいるの?」
「なにしてんだ、あいつ!」
「危ないから戻ってこい!」

 クラスメイトの誰かと、教師の声。
 心配するようなことを言いながら誰も私の元へ来ない辺り、私の程度なんてこんなものだ。
 でも。私がそんな程度なのは、私の責任でもあるのかな。と思いながら、

「すっ──」

 軽い呼吸と共に、私は目を瞑る。
 魔力の流れを感じて、それを右手に注力する。
 私は火属性の魔力を注ぐ。注ぎ続ける。
 身体への負担は、言われていたほどに感じない。
 それでも確かに、私の右手に溜まる魔力は強大なものになっていくのが分かる。

「クロエさん! 行くよ!」

 その合図に、私は目を見開く。

「『テンペスト』!」

 風属性の中級魔法──テンペストによって、ドラゴスネークが宙を舞った。
 そしてそれは確かに、身をくねらせながら私の方へと飛んでくる。
 魔法適正 Fランクじゃ、こんな巨大な魔力を放ったって外れてしまう可能性が高い。
 だから私は、耐える。直前まで、魔力を注ぎ続ける。
 ドラゴスネークが寸前まで近付いたところで、

「『ファイヤボール』ッ!!」

 私は──。
 考えるよりも先に、大きく目を見開いた。
 私の手から放たれた魔法は、かつてのような小さな炎では無い。

 ──え?

 それは。
 太陽よりも鮮烈に赤く。
 視界を隠すほどに巨大な。
 伝わる熱気も、恐ろしいほどの。
 そんな『ファイヤボール』だった。

「ギィィャアアアア!!!!」

 炎に包まれたドラゴスネークは、身をよじらせ、やがて動きを止めた。
 後方にいた教師陣が、燃え広がる炎に慌てた様子で水魔法を放つ。
 安堵からか思わず尻餅をついてしまった私は、そのままポカンと口を開けてしまう。
 そしてまた、生徒の声が私の耳に飛び込んできた。

「え、今の、クロエがやったの?」
「おい。クロエって確か、適正 Fランクだったよな?」
「だけど魔力蓄積が Sとも言ってたし……」

 ここばっかりは、この人たちの声に同感だ。 
 Fランクの私が、ドラゴスネークを討伐した?
 目の前にそれは事実としてあるのに、どうしても疑ってしまう。
 けれど確かに、私の魔力は失われているのを感じる。
 それに、手が異常な熱を帯びている。
 じゃあ本当に、今の魔法を私が──?

「クロエさーん!」

 ドラゴスネークの影から、ドロシーさんが手を振りながらやってきた。

「凄いじゃん! 今の魔法!」

 ドロシーさんは私に視線を合わせるようにしゃがむと、嬉しそうに言ってくる。

「やっぱり、クロエさんみたいな人が夢を諦める必要ないよ!」

 その言葉に、何か温かいものが胸に広がっていくのを感じた。
 そうだ。今日私は、夢を諦めるつもりで森に出向いたんだった。
 けれどなぜか今、私は魔法で魔物を倒すことができた。

 ──なら、私は夢を目指してもいいの?

 なんて、浮かれたことを思ってしまって。
 おかしな問いが、私の口を衝いて飛び出してしまう。

「今の私、強くて可愛かった?」

 言ってから『あーやっちゃった』と思った。
 熱くなる顔を隠そうと、思わず俯いてしまう。
 でもドロシーさんは、そんな私に呆れる様子も無く。
 私の耳元で、快活な声を囁いた。

「強くてカッコよかったよ……!」

 あれ。なんだ、もっと熱くなってきたぞこれ。
 人に褒められるなんて、今まで経験なかったからかな。
 けど、なんだかもういいやって、顔を上げてドロシーさんを見る。
 無邪気な笑顔を浮かべたドロシーさんは、やっぱり可愛かった。
 可愛さじゃ彼女には敵わないよな、なんて思いつつ。

「あはは、そっか。うん……ありがと」

 私はその言葉の響きを噛み締めるように頷いた。
 強くてカッコいいってのは、私の求めるものとは少し違ったけれど。
 今ばかりは、それも悪くないのかなと思いながら。
 それでも私の中で再度、心に決めたことが一つある。

 強くてカワイイ最強の魔法使いになろう。
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