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第3章 そこにいるのは不穏な影
第25話 天啓《スキル》『魔力付与』
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魔力を相手に伝えながら『魔力操作』も兼ねている。
そんな天啓なんて、何かあっただろうか?
気になることは沢山あった。だが、今は考えている場合でもない。
「ドロシー。魔力、溜まりそう?」
「う、うん。でもクロエ、これって……?」
「私もよく分かんない。……ただ。ここからどうにかできる? お願い」
「……うん。分かった! よーし、離れててクロエ」
ドロシーが言う。同時に、ドラゴスネークも体勢を整えていた。
鋭い眼光をこちらに飛ばしてくるそいつに、ドロシーは手をかざす。
そして、そいつに動く隙を与えないまま──。
「『アイスランス』」
放たれる氷の槍。
先のよりも大きく見えるそれは、容赦無しにドラゴスネークを貫く。
「ギャアアアアアア!!」
わずか一瞬だった。
ドラゴスネークは地面に倒れ、絶命する。
ドロシーは次の戦闘に備えるように、辺りを見回す。
が、流石に三体目のドラゴスネークの登場はなさそうだった。
「ふぅ」と、ドロシーはホッとしたように息を吐くと、くるりと私を向いて、
「よかったぁ。ほんと、一時はどうなることかと……」
「……いやほんと、ありがとうドロシー。やっぱり、ドロシーは強いね」
それに可愛い。羨ましいな、と思った。
「そんなことないよ! クロエがいなかったら、ダメだったと思うし……。それにしても、さっきのはなんだったの? もしかして『魔力付与』?」
「魔力付与? それも天啓?」
初めて耳にする天啓だった。
相変わらず私には知識が無いなと苦笑する。
「そう! さっきクロエがやったみたいに、自身の魔力を相手に付与することできるの」
「なるほど。……ん? でも天啓は二つ以上授かることはないんだよね?」
「そうなの、だから不思議だなって。私も『魔力操作』と『魔力付与』が同時にできる天啓なんて聞いたことないし……」
ドロシーは顎に手を添えて唸る。
そんなドロシーに私はパッと浮かんだ考えを口にした。
「もしかしたら、私の本当の両親が凄い人なのかも」
「あー! それはあるかも。けどクロエの両親って、アテがないんだよね?」
「そう。物心ついた時には、サニスの町で養って貰っていたって感じだから……」
「じゃあ本当に凄い人だったのかもね? ……ま! お話は後にして、とりあえずツノを回収して森を出よっか。また魔物が来ても怖いしね」
ドロシーは腰につけた布袋から素材回収用なナイフを取り出す。
二つの死体からささっとツノを剥ぎ取る様は、まるで本業さながらだった。
そういえば学園の授業でも、剥ぎ取りは教わった気がする。
やっぱり、私と違って優秀だな、ドロシーは。
※
森を出た私たちは、そのまま帰路に就いた。
またこの距離を歩くのかぁ、と。憂鬱な気分で王都を目指していると。
ドロシーはやはり私の天啓のことが気になるらしく、
「ねぇクロエ。もう一度、手を繋いでみてくれない?」
立ち止まり、そんなことを若干緊張した様子で言ってきた。
私は特に何も考えず、差し出された手を握る。
そして氷属性の魔力をその手に注ぎ込んだ。
やはり、私の中の魔力が失われていくのを感じる。
「どう?」
「…………」
問うてみたが、反応は無い。
魔力の流れを感じているのだろうか?
どこかぼーっとしているような気もするけど……。
そう思い「ドロシー?」と首を傾げると、彼女はハッとしたような声を出した。
「……あ! うん! 流れてきてる!」
「どんな感じがする?」
「……あったかい」
「あったかい?」
「あ、いや!」
あったかい……って、私の手が、だろうか。
まさか氷の魔力が、なんてことはないだろうし。
と、意識してみると確かに、手汗を掻いていた。
これじゃ申し訳ない。
「ごめんごめん」
と、私は繋いだ手をパッと離した。
だが途端にドロシーは不満げにほっぺを膨らませる。
「そういうことじゃないのに……」
「えっ。あ、まぁ確かに、熱いってわけじゃ無いのか」
「そういうことでもない……」
「あれ?」
「ちょっと急に話を変えるんですけど──」
焦る私を、ドロシーはジトーっとした目つきで見上げて、
「クロエって、その……恋愛ってしたことある?」
「本当に急すぎるね」
何も脈絡のない話題転換に笑いそうになりながらも、一応真面目に考えてみる。
「まぁ……無い、かな。というか仲の良い人すら今までいなかったんだよ?」
「なるほどね。……分かった。うん、分かったよ」
「何が分かったの?」
「クロエの性格が」
え、と声を漏らす。
「私の?」
「うん」
頷くと、ドロシーは歩みを再開させた。
結局、私がどんな性格かは教えてくれなかった。
「ねぇクロエ、もう一回」
と、ドロシーは手を握ってきた。
魔力を注ぎながら『魔力付与』は、確かに凄い能力だなと思った。
でも、結局それじゃあ、他人頼りの戦いになりそうなのが、少し歯痒くもある。
私は私自身の力で、強くなれるのだろうか。
今の私は、最強とは程遠い気がした。
「ドロシー。ちょっと」
手汗を掻いて、手を離そうとすると、強く握ってきて離せない。
どこか満足げなドロシーを横目に、まぁいいか、と私は力を緩めた。
途中、王都の方から警鐘が聞こえた。また魔王軍が攻めてきたのだろう。
もう既に、魔王軍に対する危機感は覚えなくなっていた。
そんな天啓なんて、何かあっただろうか?
気になることは沢山あった。だが、今は考えている場合でもない。
「ドロシー。魔力、溜まりそう?」
「う、うん。でもクロエ、これって……?」
「私もよく分かんない。……ただ。ここからどうにかできる? お願い」
「……うん。分かった! よーし、離れててクロエ」
ドロシーが言う。同時に、ドラゴスネークも体勢を整えていた。
鋭い眼光をこちらに飛ばしてくるそいつに、ドロシーは手をかざす。
そして、そいつに動く隙を与えないまま──。
「『アイスランス』」
放たれる氷の槍。
先のよりも大きく見えるそれは、容赦無しにドラゴスネークを貫く。
「ギャアアアアアア!!」
わずか一瞬だった。
ドラゴスネークは地面に倒れ、絶命する。
ドロシーは次の戦闘に備えるように、辺りを見回す。
が、流石に三体目のドラゴスネークの登場はなさそうだった。
「ふぅ」と、ドロシーはホッとしたように息を吐くと、くるりと私を向いて、
「よかったぁ。ほんと、一時はどうなることかと……」
「……いやほんと、ありがとうドロシー。やっぱり、ドロシーは強いね」
それに可愛い。羨ましいな、と思った。
「そんなことないよ! クロエがいなかったら、ダメだったと思うし……。それにしても、さっきのはなんだったの? もしかして『魔力付与』?」
「魔力付与? それも天啓?」
初めて耳にする天啓だった。
相変わらず私には知識が無いなと苦笑する。
「そう! さっきクロエがやったみたいに、自身の魔力を相手に付与することできるの」
「なるほど。……ん? でも天啓は二つ以上授かることはないんだよね?」
「そうなの、だから不思議だなって。私も『魔力操作』と『魔力付与』が同時にできる天啓なんて聞いたことないし……」
ドロシーは顎に手を添えて唸る。
そんなドロシーに私はパッと浮かんだ考えを口にした。
「もしかしたら、私の本当の両親が凄い人なのかも」
「あー! それはあるかも。けどクロエの両親って、アテがないんだよね?」
「そう。物心ついた時には、サニスの町で養って貰っていたって感じだから……」
「じゃあ本当に凄い人だったのかもね? ……ま! お話は後にして、とりあえずツノを回収して森を出よっか。また魔物が来ても怖いしね」
ドロシーは腰につけた布袋から素材回収用なナイフを取り出す。
二つの死体からささっとツノを剥ぎ取る様は、まるで本業さながらだった。
そういえば学園の授業でも、剥ぎ取りは教わった気がする。
やっぱり、私と違って優秀だな、ドロシーは。
※
森を出た私たちは、そのまま帰路に就いた。
またこの距離を歩くのかぁ、と。憂鬱な気分で王都を目指していると。
ドロシーはやはり私の天啓のことが気になるらしく、
「ねぇクロエ。もう一度、手を繋いでみてくれない?」
立ち止まり、そんなことを若干緊張した様子で言ってきた。
私は特に何も考えず、差し出された手を握る。
そして氷属性の魔力をその手に注ぎ込んだ。
やはり、私の中の魔力が失われていくのを感じる。
「どう?」
「…………」
問うてみたが、反応は無い。
魔力の流れを感じているのだろうか?
どこかぼーっとしているような気もするけど……。
そう思い「ドロシー?」と首を傾げると、彼女はハッとしたような声を出した。
「……あ! うん! 流れてきてる!」
「どんな感じがする?」
「……あったかい」
「あったかい?」
「あ、いや!」
あったかい……って、私の手が、だろうか。
まさか氷の魔力が、なんてことはないだろうし。
と、意識してみると確かに、手汗を掻いていた。
これじゃ申し訳ない。
「ごめんごめん」
と、私は繋いだ手をパッと離した。
だが途端にドロシーは不満げにほっぺを膨らませる。
「そういうことじゃないのに……」
「えっ。あ、まぁ確かに、熱いってわけじゃ無いのか」
「そういうことでもない……」
「あれ?」
「ちょっと急に話を変えるんですけど──」
焦る私を、ドロシーはジトーっとした目つきで見上げて、
「クロエって、その……恋愛ってしたことある?」
「本当に急すぎるね」
何も脈絡のない話題転換に笑いそうになりながらも、一応真面目に考えてみる。
「まぁ……無い、かな。というか仲の良い人すら今までいなかったんだよ?」
「なるほどね。……分かった。うん、分かったよ」
「何が分かったの?」
「クロエの性格が」
え、と声を漏らす。
「私の?」
「うん」
頷くと、ドロシーは歩みを再開させた。
結局、私がどんな性格かは教えてくれなかった。
「ねぇクロエ、もう一回」
と、ドロシーは手を握ってきた。
魔力を注ぎながら『魔力付与』は、確かに凄い能力だなと思った。
でも、結局それじゃあ、他人頼りの戦いになりそうなのが、少し歯痒くもある。
私は私自身の力で、強くなれるのだろうか。
今の私は、最強とは程遠い気がした。
「ドロシー。ちょっと」
手汗を掻いて、手を離そうとすると、強く握ってきて離せない。
どこか満足げなドロシーを横目に、まぁいいか、と私は力を緩めた。
途中、王都の方から警鐘が聞こえた。また魔王軍が攻めてきたのだろう。
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