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第1章 転生幼女は防御特化を試みる
第6話 スキル鑑定
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「リフレクション」
部屋にこもって今日もやるのは魔法の研究。
まともに使える魔法は未だ、リフレクションとバリアーのみ。
初級魔法のため無詠唱はすでに当たり前に使えるようになってきた。
どのように魔力を使えば、より良い結界が作れるかも熟知してきたので、この二つの魔法であればもう実戦で使えるレベルに到達していると思う。
一応全属性の初級魔法も使えるが、まだ実戦で使えるレベルには到達していないだろう。
と言っても、実戦で使ったことは『あの日』以来無い。
それに、外にすらほとんど出ないので実戦の機会なんてそう無いのだ。
なら私は今、なんのために魔法の研究をしているのか。
それは私でも、分からない。
けど、この二つの魔法を使う時だけ、母さんを近くに感じられる気がするのだ。
強いていうのなら、そういう理由なんだと思う。
「…………」
私はすでに七歳になっていた。
最近はずっと魔法の研究をしている。
あれ以来、父さんとはあまり会話することはなくなった。
今世こそ家族と幸せになるはずだったのに、結局こうなってしまった。
だから、神様とか、もう信じないようにしようと思う。
別にもう、今の人生では不自由していないから。
これ以上何も求めず、ただただ引きこもり生活を続けよう。
「…………」
続ける──はずだったのに。
「アリエ様。失礼いたします」
ドアの向こうからは使用人の声。
勝手に入らないでといつも言っているが、今日は事情が違う。
今日は、スキル鑑定士が家にくる予定だったのだ。
「……こんにちは。アリエ・サランです」
私は部屋に入ってきた使用人と、鑑定士に頭を下げた。
今回のスキル鑑定。正直、乗り気にはなれない。
単純に人との関わりが苦手だからだ。これも引きこもり生活の弊害なんだけど……。
「初めまして。鑑定士のミネです。よろしくお願いします、アリエさん」
丁寧な所作で名を名乗った彼女は、そのまま私を椅子に腰掛けるよう促した。
そのまま彼女は私の手をとって、鑑定を始める。
「…………」
そもそも、この世界におけるスキルとは、五歳頃の人間に目覚める可能性がある、その人の特性のようなものだ。
スキルに血の繋がりは関係なく、中にはスキルに目覚めないものだっている。
そんなスキルを見抜くための存在、それがスキル鑑定士というわけだ。
だが、スキルは鑑定士がいなくとも自分で把握できる場合も多いらしい。
少なくとも私には把握できないため、今、鑑定してもらっているわけだ。
「はい、アリエさん。鑑定が終わりました」
「あ、ありがとうございます。えと……結果は?」
「はい。まず……アリエさん。あなたはマルチスキルです」
不意に放たれた言葉に、思わず「えっ」と漏らす。
マルチスキル。それは二つ以上のスキルを同時に保有する者のことだ。
マルチスキルの者はごく僅かと本に書かれていたけど、まさか私が?
この鑑定には何も期待していなかったけど、ちょっぴり浮き足立つ。
「えっと。じゃあ、私はなんのスキルを持っていましたか?」
思わず前のめりになって問うてしまう。
だがミネさんの反応は予想に反し、少し気まずそうなものだった。
「それがですね……」とミネさんは苦笑混じりに鑑定結果を話し始める。
「一つは『盾術』。盾の適正や、防御魔法の適正が高くなるスキルです。もう一つが『魔力付与』。あまり使い道はないですが、主に人に魔力を分け与える際に使う補助スキル。そしてさらにもう一つ『魔力活性』。体内の魔力の動きを一時的に活発にすることができるスキルです」
「……なるほど。どれも基本スキル、というわけですね」
「はい……」
基本スキルは多くの人が所有するスキルのことだ。
私が事前に読んでいた本の中にどのスキルも載っている。
どれも大したことはないが、あるに越したことのないスキルたであるのは間違いない。
「それでは鑑定は以上です。これよりは私はソット様の元へ向かいますね」
「あ、はい。その。ありがとうございました」
「いえ。こちらこそ、少し残念な思いをさせてしまいましたね」
私の表情が暗いのか、心配されてしまった。
私はデフォルトでこんな表情なのだ。
だから最後に精一杯に作り笑いをしてみせた。
「あ。いや全然。大丈夫です。気にしてないですよ……!」
ミネさんは私の笑顔に安堵したか、一息を吐いて部屋を後にする。
部屋に誰もいなくなったところで、私の口からは重々しい溜息が飛び出した。
「つかれたぁ……」
振り返ればほんの一瞬の出来事だったが、私には消費するカロリーが高すぎた。
けれどまぁ無事に終わったから良しとしよう。
だが、それにしても──。
「マルチスキル、か」
少なくともこの家にマルチスキルの人間はいない。
詳しくは知らないが、もしかするとこの町にすらもいないくらいだろう。
マルチスキルとはそれほどまでに珍しいものなのだ。
そしてその人の大半は、レアスキルを授かっている。
だから、マルチスキルとレアスキルには因果関係が関係があると勝手に推測していたが、どうやらその説は私のスキルで否定されてしまったらしい。
「……はぁ」
まぁなんにせよ、マルチスキルなんて私には宝の持ち腐れだ。
むしろ基本スキル三つの方が都合がいいだろう。
私は、引きこもりができればそれで十分なんだから。
と。私がベッドに潜ろうとしたところで、再び部屋のドアがノックされた。
そこから聞こえたのは、使用人の声──。
「アリエ様。ソット様がお呼びです」
引きこもりキャンセル。
部屋にこもって今日もやるのは魔法の研究。
まともに使える魔法は未だ、リフレクションとバリアーのみ。
初級魔法のため無詠唱はすでに当たり前に使えるようになってきた。
どのように魔力を使えば、より良い結界が作れるかも熟知してきたので、この二つの魔法であればもう実戦で使えるレベルに到達していると思う。
一応全属性の初級魔法も使えるが、まだ実戦で使えるレベルには到達していないだろう。
と言っても、実戦で使ったことは『あの日』以来無い。
それに、外にすらほとんど出ないので実戦の機会なんてそう無いのだ。
なら私は今、なんのために魔法の研究をしているのか。
それは私でも、分からない。
けど、この二つの魔法を使う時だけ、母さんを近くに感じられる気がするのだ。
強いていうのなら、そういう理由なんだと思う。
「…………」
私はすでに七歳になっていた。
最近はずっと魔法の研究をしている。
あれ以来、父さんとはあまり会話することはなくなった。
今世こそ家族と幸せになるはずだったのに、結局こうなってしまった。
だから、神様とか、もう信じないようにしようと思う。
別にもう、今の人生では不自由していないから。
これ以上何も求めず、ただただ引きこもり生活を続けよう。
「…………」
続ける──はずだったのに。
「アリエ様。失礼いたします」
ドアの向こうからは使用人の声。
勝手に入らないでといつも言っているが、今日は事情が違う。
今日は、スキル鑑定士が家にくる予定だったのだ。
「……こんにちは。アリエ・サランです」
私は部屋に入ってきた使用人と、鑑定士に頭を下げた。
今回のスキル鑑定。正直、乗り気にはなれない。
単純に人との関わりが苦手だからだ。これも引きこもり生活の弊害なんだけど……。
「初めまして。鑑定士のミネです。よろしくお願いします、アリエさん」
丁寧な所作で名を名乗った彼女は、そのまま私を椅子に腰掛けるよう促した。
そのまま彼女は私の手をとって、鑑定を始める。
「…………」
そもそも、この世界におけるスキルとは、五歳頃の人間に目覚める可能性がある、その人の特性のようなものだ。
スキルに血の繋がりは関係なく、中にはスキルに目覚めないものだっている。
そんなスキルを見抜くための存在、それがスキル鑑定士というわけだ。
だが、スキルは鑑定士がいなくとも自分で把握できる場合も多いらしい。
少なくとも私には把握できないため、今、鑑定してもらっているわけだ。
「はい、アリエさん。鑑定が終わりました」
「あ、ありがとうございます。えと……結果は?」
「はい。まず……アリエさん。あなたはマルチスキルです」
不意に放たれた言葉に、思わず「えっ」と漏らす。
マルチスキル。それは二つ以上のスキルを同時に保有する者のことだ。
マルチスキルの者はごく僅かと本に書かれていたけど、まさか私が?
この鑑定には何も期待していなかったけど、ちょっぴり浮き足立つ。
「えっと。じゃあ、私はなんのスキルを持っていましたか?」
思わず前のめりになって問うてしまう。
だがミネさんの反応は予想に反し、少し気まずそうなものだった。
「それがですね……」とミネさんは苦笑混じりに鑑定結果を話し始める。
「一つは『盾術』。盾の適正や、防御魔法の適正が高くなるスキルです。もう一つが『魔力付与』。あまり使い道はないですが、主に人に魔力を分け与える際に使う補助スキル。そしてさらにもう一つ『魔力活性』。体内の魔力の動きを一時的に活発にすることができるスキルです」
「……なるほど。どれも基本スキル、というわけですね」
「はい……」
基本スキルは多くの人が所有するスキルのことだ。
私が事前に読んでいた本の中にどのスキルも載っている。
どれも大したことはないが、あるに越したことのないスキルたであるのは間違いない。
「それでは鑑定は以上です。これよりは私はソット様の元へ向かいますね」
「あ、はい。その。ありがとうございました」
「いえ。こちらこそ、少し残念な思いをさせてしまいましたね」
私の表情が暗いのか、心配されてしまった。
私はデフォルトでこんな表情なのだ。
だから最後に精一杯に作り笑いをしてみせた。
「あ。いや全然。大丈夫です。気にしてないですよ……!」
ミネさんは私の笑顔に安堵したか、一息を吐いて部屋を後にする。
部屋に誰もいなくなったところで、私の口からは重々しい溜息が飛び出した。
「つかれたぁ……」
振り返ればほんの一瞬の出来事だったが、私には消費するカロリーが高すぎた。
けれどまぁ無事に終わったから良しとしよう。
だが、それにしても──。
「マルチスキル、か」
少なくともこの家にマルチスキルの人間はいない。
詳しくは知らないが、もしかするとこの町にすらもいないくらいだろう。
マルチスキルとはそれほどまでに珍しいものなのだ。
そしてその人の大半は、レアスキルを授かっている。
だから、マルチスキルとレアスキルには因果関係が関係があると勝手に推測していたが、どうやらその説は私のスキルで否定されてしまったらしい。
「……はぁ」
まぁなんにせよ、マルチスキルなんて私には宝の持ち腐れだ。
むしろ基本スキル三つの方が都合がいいだろう。
私は、引きこもりができればそれで十分なんだから。
と。私がベッドに潜ろうとしたところで、再び部屋のドアがノックされた。
そこから聞こえたのは、使用人の声──。
「アリエ様。ソット様がお呼びです」
引きこもりキャンセル。
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