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第1章 転生幼女は防御特化を試みる
第12話 ソット・サランの独り言
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【ソット視点】
私は、アリエのことを甘く見ていたらしい。
クランとの模擬戦で見せた戦闘技術。戦いにおける頭の使い方。どれをとっても私の一番弟子であるクランに引けをとらないものだった。
だが、アリエはそれだけでは終わらず、スキルの覚醒までしてみせたのだ。
この結果は、正直想像すらもできていなかった。
「…………」
私がアリエの戦闘の才を見出したのは、四年前。私の最愛の妻が死んだあの日。
アリエが、小さな魔竜と戦った形跡があった。燃え尽きた魔竜、使用後の魔力石等々。
その時から彼女には戦闘の才があるとは思っていたが、まさかここまでとは。
この戦闘能力を活かさない手は無いだろう。
そのために、まず。アリエには一つ仕事を依頼しよう。
先日、エレノミ領の領主であるエネーム卿から手紙が届いた。その手紙の内容を要約するとこうだ。
『リクニスの森内部にてブラックフェンリルの目撃情報が入った。サラン卿の兵士に討伐を依頼できないだろうか? こちらも兵士は送るが、こちらの戦力では心許ないだろう』
ブラックフェンリルは確かに危険な魔物だが、数匹ほどであればアリエの能力で対処できるはず。
リクニスの森は、エレノミと私が収めるサヘールの境に位置している森であるため、移動もさして苦にはなるまい。そしてアリエには護衛も数人つける予定だ。
アリエはあの日から、自己肯定感が低い。
この依頼をこなせば、彼女に自信もつくだろう。
「…………」
だが。本当に私のこの選択が正しいのかは分からない。
アリエの心労は理解している。
幼くして母を失くす辛さは、私もよく知るところだ。
だから父としては彼女が生きてさえいればそれでいい。
それでも──彼女はサラン家の令嬢なのだ。
私は彼女を立派な伯爵令嬢に育てなければならない。
彼女はサラン家の後継者となる人物なのだから。
「…………」
この選択を、今は正しいと思うしかない。
だが一つ、明確に理解できたことは──。
「マルレーナ……」
どうやら私は君と違って、良い父親にはなれそうにない。
私は、アリエのことを甘く見ていたらしい。
クランとの模擬戦で見せた戦闘技術。戦いにおける頭の使い方。どれをとっても私の一番弟子であるクランに引けをとらないものだった。
だが、アリエはそれだけでは終わらず、スキルの覚醒までしてみせたのだ。
この結果は、正直想像すらもできていなかった。
「…………」
私がアリエの戦闘の才を見出したのは、四年前。私の最愛の妻が死んだあの日。
アリエが、小さな魔竜と戦った形跡があった。燃え尽きた魔竜、使用後の魔力石等々。
その時から彼女には戦闘の才があるとは思っていたが、まさかここまでとは。
この戦闘能力を活かさない手は無いだろう。
そのために、まず。アリエには一つ仕事を依頼しよう。
先日、エレノミ領の領主であるエネーム卿から手紙が届いた。その手紙の内容を要約するとこうだ。
『リクニスの森内部にてブラックフェンリルの目撃情報が入った。サラン卿の兵士に討伐を依頼できないだろうか? こちらも兵士は送るが、こちらの戦力では心許ないだろう』
ブラックフェンリルは確かに危険な魔物だが、数匹ほどであればアリエの能力で対処できるはず。
リクニスの森は、エレノミと私が収めるサヘールの境に位置している森であるため、移動もさして苦にはなるまい。そしてアリエには護衛も数人つける予定だ。
アリエはあの日から、自己肯定感が低い。
この依頼をこなせば、彼女に自信もつくだろう。
「…………」
だが。本当に私のこの選択が正しいのかは分からない。
アリエの心労は理解している。
幼くして母を失くす辛さは、私もよく知るところだ。
だから父としては彼女が生きてさえいればそれでいい。
それでも──彼女はサラン家の令嬢なのだ。
私は彼女を立派な伯爵令嬢に育てなければならない。
彼女はサラン家の後継者となる人物なのだから。
「…………」
この選択を、今は正しいと思うしかない。
だが一つ、明確に理解できたことは──。
「マルレーナ……」
どうやら私は君と違って、良い父親にはなれそうにない。
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