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45 伝える勇気(ルディアス視点)
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結局──あの日は、ユリアに泣かれてしまい離婚を決行することができなかった。
強制的に離婚することも可能だから、やろうと思えばいつでもできるのだが……彼女の同意を得ずに手続きを勝手に済ますわけにもいかず、気まずさが残っただけで終わってしまった。
どうして彼女はただの友人である俺を、そこまで大事に思ってくれるのだろう。
ゲーム内で散々、失礼なことをしてきた上にリアルでも手を出しかけたのに……。
あれ以来、ユリアとは一言も話していない。
彼女は俺と顔を合わせると、悲しそうな顔をして逃げるように何処かへ走って行ってしまう。
そんな状態が続いたまま、一週間が経過した。
いい加減この状況を何とかしないといけないと思いつつも、どうしたらいいかわからない……ただ、時間だけが過ぎてしまう。
リゲルの街の聖堂にやって来た俺は、その荘厳な外観を眺めながら深い溜め息をついた。
「この聖堂で結婚式を挙げたんだよな……」
ユリアとの結婚式を挙げた時のことを振り返り、思わず感傷に浸る。
あの頃は──指輪を交換して、愛を誓い合って、ギルメンに祝福されて……幸せな未来を思い描いていたのに。
……どうしてこうなってしまったんだろう。
再び溜め息を漏らした俺は、そのまま建物の横の方に移動した。
……最近は、彼女との思い出の場所ばかり巡るようになってしまった。
どの場所も、忘れ難い大切な思い出が残っている。
──ここで、シオンと話しているところを見られたんだよな。
そんなことを考えながら、建物の壁に手をつく。
今考えると、迂闊だった。でも、まさかこんな所に彼女が来るなんて思わなかったからな……。
──そして、ユリアがあの木の後ろに隠れているところを、俺が見つけた。
木の近くまで歩いてきた俺は、その幹に背を預け目を瞑った。
あんなにばればれなのに、隠れたつもりでいたんだろうか。
あの時、相当慌てていたのか、長い銀髪がちらちらと見え隠れしていたんだよな。
……まあ、そんな少し間の抜けた部分も可愛くて好きなんだが。
ふと、何か大きな音がしたことに気付いた俺は空を見上げた。
「花火……?」
何の前触れもなく、突然、空高く打ち上がった花火。
それに驚いていると、壮大な音と共に続けてもう一発、満開の花火が咲いた。
夏ならわかるが、何故このゲームの運営はこんな季節外れに花火なんか打ち上げているのだろうか……?
そんな疑問を抱きながら、俺は聖堂の入り口の方まで歩いてきた。
「あら、ルディ……?」
何の用事で来たのかわからないが、聖堂に入ろうとしていたリノとばったり会った。
「リノ……? 何でこんなところにいるんだ?」
「今、やってるクエストの関係でちょっとね。この聖堂にいる司祭のNPCと話さないといけないから……」
「ああ、そういうことか。……ところで、この騒々しい花火は何なんだ? 何かのイベントか?」
「あら、知らなかったの? 今日はこのゲームの五周年記念日だから、花火を打ち上げるって公式サイトのお知らせに書いてあったじゃない」
「そうだったのか……最近、そんなことまでチェックしてなかったな」
「ええ。そう言えば……ルディのところのギルメンさんが『最近、うちのマスターが元気なくて……』と心配しているようだったけど……何かあったのかしら?」
「それは……」
また聞かれてしまった。さて、どう答えようか。
「ユリアさんも、何だか落ち込んでいる様子だったし……。私は、貴方たち二人の間に何かあったんじゃないかって思っていたのだけど。……違うかしら?」
俺は彼女の質問に答えることができずに、黙り込む。
鋭いな……流石、元相方なだけある。悩み事の内容まではわからないだろうが。
「その様子だと、私の読みは当たっているみたいだけど……簡単に話せるようなことじゃないみたいね。……ねえ、ルディ。ユリアさんと何があったのか知らないけど──彼女は貴方が考えている以上に、貴方のことを『大切な存在』だと思っているわよ」
「…………」
「ルディだって、そうよね? 彼女のことを大切に思っている……。だからこそ、気持ちがすれ違ってしまったんじゃないかしら?」
「すれ違う……?」
俺は彼女のためを思って身を引いた。それは、間違いだったのか……?
「ルディが今、一番彼女に『伝えたいこと』は何? それを伝えた上でこうなってしまったのなら、仕方ないけれど……。私には、そうは思えない。それを言わなかったがために、こうなってしまったように思えるのよ」
俺が今、一番ユリア……いや、夏陽に伝えたいことは──
「今からでも遅くないわ。だから、ほら……ユリアさんに伝えに行って!」
リノはそう言うと、背後に回り俺の背中をポンッと両手で押した。
押された勢いで思わず何歩か歩いてしまい、彼女との距離が少し開く。
「リノ……?」
「正直、元嫁としては複雑だけど……貴方たち、とってもお似合いだと思うわよ!」
戸惑いながら振り返った俺に向かって、リノはそう叫んだ。
「ありがとう……実は、俺もそう思っていたところなんだ!」
リノの方に向き直りそう叫び返すと、彼女は安心したように微笑んだ。
「ユリアさんなら今頃、広場で花火を見物しているはずよ! さっき、ちょうどそこで会ったから」
「ああ、わかった! 誰かと一緒なのか?」
「えーと、確かアレクくんと──」
「……わかった。探しに行ってみる! ありがとう、リノ!」
今、アレクと一緒にいるのか……でも、もうそんなことは気にしない。だって、俺は──
「──あと、ハサネさんも一緒だったかしら。って……ルディ!?」
俺は、リノの言葉を最後まで聞き終わらないうちに走り出していた。と言うよりも、足が勝手に動いていた。
やはり、花火に見入って立ち止まっているプレイヤーが多いようだ。そんな中──時折すれ違う通行人の目には、街中を忙しなく走っている自分がさぞ異様に映ったに違いない。
広場に着いた俺は、周りを見渡した。予想通り、多くのプレイヤーが花火を見物しようとひしめき合っている。
走っている最中、ユリアを個人ボイスチャットで呼び出してみたが、応答してくれなかった。
だから、もう直接話しかけるくらいしか手段がない。この中から彼らを探し出すのは大変だが……やるしかないな。
俺は人混みを掻き分けながら、必死に彼女を探した。迷惑そうに睨まれたりもしたが、その度に謝りながらも何とか進んでいく。
広場の中央を通って隅の方まで歩いてくると、幾らかプレイヤーが少ない場所に出た。少ないと言っても、それなりに人はいるのだが……中央よりはごった返していないので、まだ動きやすい。
そこで、もう一度周りを見渡してみた。すると、少し先の方に、ベンチに座っているユリアとアレクの姿を見つけた。
俺はそのまま迷うことなく、真っ直ぐと彼らのいる方向に歩いていく。
やがてユリアが俺の存在に気付いたのか、驚いたような表情でこちらを見た。
「ルディアス……?」
ユリアは、目を見開いて俺を見つめている。俺はベンチのそばまで行かず、彼らとある程度の距離を保ったまま立ち止まった。
「ユリアッ!」
「え……? え……? なんでここにいるんですか……? ていうか、どうしたんですか……?」
俺は、名前を叫ばれて動揺している彼女を真っ直ぐと見据える。
……もう、迷わない。俺は彼女のことが好きだ。彼女に好きな人がいても構わない。この気持ちを伝えたい。
だから──
「俺は、お前が好きだ! アバターではなく……お前自身のことが好きだっ!」
「!?」
突然、声高に愛を叫びだした俺に、ユリアどころか周囲のプレイヤーたちの視線が一気に集まった。
だが、ここまで来たらもう後に引くわけにはいかない。俺は、周りの視線なんかお構いなしにそのまま言葉を重ねる。
「俺は、これまでお前に対して色々と失礼な態度を取ってきた! だから、本来なら……こんなことを言う資格すらないかも知れない! お前に好きな相手がいることもわかってる! 迷惑をかけてしまうのが嫌で、一度は身を引こうとした! でも……それでも……好きなんだっ! どうしようもないくらいに……お前を愛してるんだっ!!」
上手く伝わらないかも知れない。引かれるかも知れない。
だけど……今、彼女に対して抱いている正直な気持ちを力の限り叫んだ。
「…………」
「ユリア! 俺はっ……!」
「まったく……本当に、困った人ですね……。いつか、とんでもないことをやらかすんじゃないかって思ってましたけど……ついにやらかしましたか」
彼女の言うことはもっともだ。個人ボイスチャットに応答してくれないからといって、公衆の面前で……しかも、ゲーム内で大胆な告白をする男なんてきっと俺くらいだろう。
周りのプレイヤーたちは最早、花火の見物どころではなくなった様子で、俺たちのやり取りを興味深そうに眺めている。
「でも──嬉しいです。涙が出るくらいに……!」
そう言って立ち上がったユリアの瞳には、じわりと涙が滲んでいた。
そして……一週間前とは違う感情で流れたであろうその涙は、彼女の頬をゆっくりと伝っていく。
周囲のプレイヤーの視線が俺とユリアに注がれる中、大輪の花を咲かせるが如く大きな花火が打ち上がった。
それは、まるで俺たちの心が通じ合った瞬間を祝福してくれているようだった。
強制的に離婚することも可能だから、やろうと思えばいつでもできるのだが……彼女の同意を得ずに手続きを勝手に済ますわけにもいかず、気まずさが残っただけで終わってしまった。
どうして彼女はただの友人である俺を、そこまで大事に思ってくれるのだろう。
ゲーム内で散々、失礼なことをしてきた上にリアルでも手を出しかけたのに……。
あれ以来、ユリアとは一言も話していない。
彼女は俺と顔を合わせると、悲しそうな顔をして逃げるように何処かへ走って行ってしまう。
そんな状態が続いたまま、一週間が経過した。
いい加減この状況を何とかしないといけないと思いつつも、どうしたらいいかわからない……ただ、時間だけが過ぎてしまう。
リゲルの街の聖堂にやって来た俺は、その荘厳な外観を眺めながら深い溜め息をついた。
「この聖堂で結婚式を挙げたんだよな……」
ユリアとの結婚式を挙げた時のことを振り返り、思わず感傷に浸る。
あの頃は──指輪を交換して、愛を誓い合って、ギルメンに祝福されて……幸せな未来を思い描いていたのに。
……どうしてこうなってしまったんだろう。
再び溜め息を漏らした俺は、そのまま建物の横の方に移動した。
……最近は、彼女との思い出の場所ばかり巡るようになってしまった。
どの場所も、忘れ難い大切な思い出が残っている。
──ここで、シオンと話しているところを見られたんだよな。
そんなことを考えながら、建物の壁に手をつく。
今考えると、迂闊だった。でも、まさかこんな所に彼女が来るなんて思わなかったからな……。
──そして、ユリアがあの木の後ろに隠れているところを、俺が見つけた。
木の近くまで歩いてきた俺は、その幹に背を預け目を瞑った。
あんなにばればれなのに、隠れたつもりでいたんだろうか。
あの時、相当慌てていたのか、長い銀髪がちらちらと見え隠れしていたんだよな。
……まあ、そんな少し間の抜けた部分も可愛くて好きなんだが。
ふと、何か大きな音がしたことに気付いた俺は空を見上げた。
「花火……?」
何の前触れもなく、突然、空高く打ち上がった花火。
それに驚いていると、壮大な音と共に続けてもう一発、満開の花火が咲いた。
夏ならわかるが、何故このゲームの運営はこんな季節外れに花火なんか打ち上げているのだろうか……?
そんな疑問を抱きながら、俺は聖堂の入り口の方まで歩いてきた。
「あら、ルディ……?」
何の用事で来たのかわからないが、聖堂に入ろうとしていたリノとばったり会った。
「リノ……? 何でこんなところにいるんだ?」
「今、やってるクエストの関係でちょっとね。この聖堂にいる司祭のNPCと話さないといけないから……」
「ああ、そういうことか。……ところで、この騒々しい花火は何なんだ? 何かのイベントか?」
「あら、知らなかったの? 今日はこのゲームの五周年記念日だから、花火を打ち上げるって公式サイトのお知らせに書いてあったじゃない」
「そうだったのか……最近、そんなことまでチェックしてなかったな」
「ええ。そう言えば……ルディのところのギルメンさんが『最近、うちのマスターが元気なくて……』と心配しているようだったけど……何かあったのかしら?」
「それは……」
また聞かれてしまった。さて、どう答えようか。
「ユリアさんも、何だか落ち込んでいる様子だったし……。私は、貴方たち二人の間に何かあったんじゃないかって思っていたのだけど。……違うかしら?」
俺は彼女の質問に答えることができずに、黙り込む。
鋭いな……流石、元相方なだけある。悩み事の内容まではわからないだろうが。
「その様子だと、私の読みは当たっているみたいだけど……簡単に話せるようなことじゃないみたいね。……ねえ、ルディ。ユリアさんと何があったのか知らないけど──彼女は貴方が考えている以上に、貴方のことを『大切な存在』だと思っているわよ」
「…………」
「ルディだって、そうよね? 彼女のことを大切に思っている……。だからこそ、気持ちがすれ違ってしまったんじゃないかしら?」
「すれ違う……?」
俺は彼女のためを思って身を引いた。それは、間違いだったのか……?
「ルディが今、一番彼女に『伝えたいこと』は何? それを伝えた上でこうなってしまったのなら、仕方ないけれど……。私には、そうは思えない。それを言わなかったがために、こうなってしまったように思えるのよ」
俺が今、一番ユリア……いや、夏陽に伝えたいことは──
「今からでも遅くないわ。だから、ほら……ユリアさんに伝えに行って!」
リノはそう言うと、背後に回り俺の背中をポンッと両手で押した。
押された勢いで思わず何歩か歩いてしまい、彼女との距離が少し開く。
「リノ……?」
「正直、元嫁としては複雑だけど……貴方たち、とってもお似合いだと思うわよ!」
戸惑いながら振り返った俺に向かって、リノはそう叫んだ。
「ありがとう……実は、俺もそう思っていたところなんだ!」
リノの方に向き直りそう叫び返すと、彼女は安心したように微笑んだ。
「ユリアさんなら今頃、広場で花火を見物しているはずよ! さっき、ちょうどそこで会ったから」
「ああ、わかった! 誰かと一緒なのか?」
「えーと、確かアレクくんと──」
「……わかった。探しに行ってみる! ありがとう、リノ!」
今、アレクと一緒にいるのか……でも、もうそんなことは気にしない。だって、俺は──
「──あと、ハサネさんも一緒だったかしら。って……ルディ!?」
俺は、リノの言葉を最後まで聞き終わらないうちに走り出していた。と言うよりも、足が勝手に動いていた。
やはり、花火に見入って立ち止まっているプレイヤーが多いようだ。そんな中──時折すれ違う通行人の目には、街中を忙しなく走っている自分がさぞ異様に映ったに違いない。
広場に着いた俺は、周りを見渡した。予想通り、多くのプレイヤーが花火を見物しようとひしめき合っている。
走っている最中、ユリアを個人ボイスチャットで呼び出してみたが、応答してくれなかった。
だから、もう直接話しかけるくらいしか手段がない。この中から彼らを探し出すのは大変だが……やるしかないな。
俺は人混みを掻き分けながら、必死に彼女を探した。迷惑そうに睨まれたりもしたが、その度に謝りながらも何とか進んでいく。
広場の中央を通って隅の方まで歩いてくると、幾らかプレイヤーが少ない場所に出た。少ないと言っても、それなりに人はいるのだが……中央よりはごった返していないので、まだ動きやすい。
そこで、もう一度周りを見渡してみた。すると、少し先の方に、ベンチに座っているユリアとアレクの姿を見つけた。
俺はそのまま迷うことなく、真っ直ぐと彼らのいる方向に歩いていく。
やがてユリアが俺の存在に気付いたのか、驚いたような表情でこちらを見た。
「ルディアス……?」
ユリアは、目を見開いて俺を見つめている。俺はベンチのそばまで行かず、彼らとある程度の距離を保ったまま立ち止まった。
「ユリアッ!」
「え……? え……? なんでここにいるんですか……? ていうか、どうしたんですか……?」
俺は、名前を叫ばれて動揺している彼女を真っ直ぐと見据える。
……もう、迷わない。俺は彼女のことが好きだ。彼女に好きな人がいても構わない。この気持ちを伝えたい。
だから──
「俺は、お前が好きだ! アバターではなく……お前自身のことが好きだっ!」
「!?」
突然、声高に愛を叫びだした俺に、ユリアどころか周囲のプレイヤーたちの視線が一気に集まった。
だが、ここまで来たらもう後に引くわけにはいかない。俺は、周りの視線なんかお構いなしにそのまま言葉を重ねる。
「俺は、これまでお前に対して色々と失礼な態度を取ってきた! だから、本来なら……こんなことを言う資格すらないかも知れない! お前に好きな相手がいることもわかってる! 迷惑をかけてしまうのが嫌で、一度は身を引こうとした! でも……それでも……好きなんだっ! どうしようもないくらいに……お前を愛してるんだっ!!」
上手く伝わらないかも知れない。引かれるかも知れない。
だけど……今、彼女に対して抱いている正直な気持ちを力の限り叫んだ。
「…………」
「ユリア! 俺はっ……!」
「まったく……本当に、困った人ですね……。いつか、とんでもないことをやらかすんじゃないかって思ってましたけど……ついにやらかしましたか」
彼女の言うことはもっともだ。個人ボイスチャットに応答してくれないからといって、公衆の面前で……しかも、ゲーム内で大胆な告白をする男なんてきっと俺くらいだろう。
周りのプレイヤーたちは最早、花火の見物どころではなくなった様子で、俺たちのやり取りを興味深そうに眺めている。
「でも──嬉しいです。涙が出るくらいに……!」
そう言って立ち上がったユリアの瞳には、じわりと涙が滲んでいた。
そして……一週間前とは違う感情で流れたであろうその涙は、彼女の頬をゆっくりと伝っていく。
周囲のプレイヤーの視線が俺とユリアに注がれる中、大輪の花を咲かせるが如く大きな花火が打ち上がった。
それは、まるで俺たちの心が通じ合った瞬間を祝福してくれているようだった。
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