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第3章 新選組の旗の再生と台湾出兵
第5話
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「土方中隊長、中隊全部で今日は遂に10名が今朝やられました。これまでと合わせると現在、戦闘可能な中隊員は140名を切りました。最早、全滅と言われても仕方のないレベルです」
「分かった。できる限りのことはしてくれ」
「はい」
土方歳三は、内心の動揺を押し隠しつつ、現在の屯田兵中隊の状況について、報告してきた最先任(といっても屯田兵中隊でのことなので、第一以下の順に並んでいるだけだだが)の小隊長に、そう指示した。
最先任といっても、第1小隊隊長と第2小隊隊長は、既に病臥し、確か第3小隊隊長のはずだ。
俺が倒れるのと小隊長全員が病臥するのと、どちらが先だろうか。
普段ならあり得ない、と自分から笑い飛ばす冗談だが、冗談では済まないレベルになりつつある。
台湾出兵が実働する数年前、宮古島の島民が、牡丹社の部族に多数殺された旨の連絡が東京に、更に海兵隊の幹部の下に届いたとき、荒井郁之助や大鳥圭介らは、海兵隊士官を集めて、早速、海兵隊単独での台湾出兵の作戦研究をしていた。
あくまでも台湾の部族討伐を行う可能性が高いので、実戦で行われることを想定して、問題点を徹底的に洗い出そうか、というレベルではあった。
だが、海兵隊単独で行われるという前提で研究した段階で、台湾の地獄ともいうべき現状が明らかになった。
台湾は、マラリア等の疫病の巣窟だったのだ。
実際に、米国が海兵隊で似たようなことを試みた際にも、米国海兵隊員の多数がマラリアに倒れた、という情報が海兵隊幹部の手に入った際に、海兵隊は遂に実際に台湾出兵を行うことを事実上断念し、海軍省にもその旨を伝えていたのだった。
だから、西郷従道らが台湾出兵を呼号しだしたときにも、荒井や大鳥は消極的態度を示して、更に現役海兵隊員の犠牲を少しでも少なくしようと画策したのだった。
古屋佐久左衛門や滝川充太郎らも、台湾出兵の作戦研究に加わったり、参加しないまでも、その時の結果について、詳細を聞いたりしていたので、荒井や大鳥の行動に積極的に賛同しこそすれ、反対どころか消極的賛同といった態度はとらなかった。
その結果、土方が屯田兵を率いて、長崎で海兵隊に合流した後、古屋や滝川らから、台湾での疫病対策を土方が聞かされたときには、そういった経緯を全く知らない土方にしてみれば、荒井や大鳥は発狂したのではないか、と土方自身が内心で疑うレベルにまで、海兵隊の疫病対策は講じられていたのだった。
古屋の実弟、高松凌雲を、臨時に海軍軍医大尉に任官させて、台湾派遣の海兵隊の軍医部長に任じて、軍医が高松を含めて12名(それも全員が蘭方の経験医だ)、衛生兵だけでも30名以上という大規模な軍医部を、台湾派遣の海兵隊は、同行させていた。
薬についても、台湾に赴く1200名余りの海兵隊員全員が、10日にわたって服用できるだけの大量のマラリア特効薬キニーネを準備するとともに、それ以外の薬剤(消毒薬や熱さまし、ただ漢方薬も混じってはいた)も準備し
ていた。
だが、実際に、海兵隊が台湾に到着し、駐屯してみると、それらの準備をあざ笑うかのごとく、マラリアは海兵隊に対して、猛威を振るい始めていった。
そして。
最先任の小隊長の報告を聞き終えた土方は、状況が悪化して行くことについて、思わず頭を抱えた。
だが、次の瞬間、土方は、自分自身がふらついていることにも気づいた。
まさか、自分がマラリアにり患したのか、と自問自答する間もなく、自分の気が遠くなってくる。
「土方中隊長」
部下の誰かが絶叫しているのが、自分に聞こえてくる。
「大丈夫だ、心配するな」
と声を出そうとしたはずなのに、自分の声が出ない。
そして、土方は失神した。
「分かった。できる限りのことはしてくれ」
「はい」
土方歳三は、内心の動揺を押し隠しつつ、現在の屯田兵中隊の状況について、報告してきた最先任(といっても屯田兵中隊でのことなので、第一以下の順に並んでいるだけだだが)の小隊長に、そう指示した。
最先任といっても、第1小隊隊長と第2小隊隊長は、既に病臥し、確か第3小隊隊長のはずだ。
俺が倒れるのと小隊長全員が病臥するのと、どちらが先だろうか。
普段ならあり得ない、と自分から笑い飛ばす冗談だが、冗談では済まないレベルになりつつある。
台湾出兵が実働する数年前、宮古島の島民が、牡丹社の部族に多数殺された旨の連絡が東京に、更に海兵隊の幹部の下に届いたとき、荒井郁之助や大鳥圭介らは、海兵隊士官を集めて、早速、海兵隊単独での台湾出兵の作戦研究をしていた。
あくまでも台湾の部族討伐を行う可能性が高いので、実戦で行われることを想定して、問題点を徹底的に洗い出そうか、というレベルではあった。
だが、海兵隊単独で行われるという前提で研究した段階で、台湾の地獄ともいうべき現状が明らかになった。
台湾は、マラリア等の疫病の巣窟だったのだ。
実際に、米国が海兵隊で似たようなことを試みた際にも、米国海兵隊員の多数がマラリアに倒れた、という情報が海兵隊幹部の手に入った際に、海兵隊は遂に実際に台湾出兵を行うことを事実上断念し、海軍省にもその旨を伝えていたのだった。
だから、西郷従道らが台湾出兵を呼号しだしたときにも、荒井や大鳥は消極的態度を示して、更に現役海兵隊員の犠牲を少しでも少なくしようと画策したのだった。
古屋佐久左衛門や滝川充太郎らも、台湾出兵の作戦研究に加わったり、参加しないまでも、その時の結果について、詳細を聞いたりしていたので、荒井や大鳥の行動に積極的に賛同しこそすれ、反対どころか消極的賛同といった態度はとらなかった。
その結果、土方が屯田兵を率いて、長崎で海兵隊に合流した後、古屋や滝川らから、台湾での疫病対策を土方が聞かされたときには、そういった経緯を全く知らない土方にしてみれば、荒井や大鳥は発狂したのではないか、と土方自身が内心で疑うレベルにまで、海兵隊の疫病対策は講じられていたのだった。
古屋の実弟、高松凌雲を、臨時に海軍軍医大尉に任官させて、台湾派遣の海兵隊の軍医部長に任じて、軍医が高松を含めて12名(それも全員が蘭方の経験医だ)、衛生兵だけでも30名以上という大規模な軍医部を、台湾派遣の海兵隊は、同行させていた。
薬についても、台湾に赴く1200名余りの海兵隊員全員が、10日にわたって服用できるだけの大量のマラリア特効薬キニーネを準備するとともに、それ以外の薬剤(消毒薬や熱さまし、ただ漢方薬も混じってはいた)も準備し
ていた。
だが、実際に、海兵隊が台湾に到着し、駐屯してみると、それらの準備をあざ笑うかのごとく、マラリアは海兵隊に対して、猛威を振るい始めていった。
そして。
最先任の小隊長の報告を聞き終えた土方は、状況が悪化して行くことについて、思わず頭を抱えた。
だが、次の瞬間、土方は、自分自身がふらついていることにも気づいた。
まさか、自分がマラリアにり患したのか、と自問自答する間もなく、自分の気が遠くなってくる。
「土方中隊長」
部下の誰かが絶叫しているのが、自分に聞こえてくる。
「大丈夫だ、心配するな」
と声を出そうとしたはずなのに、自分の声が出ない。
そして、土方は失神した。
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