土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第3章 新選組の旗の再生と台湾出兵

第6話

 土方歳三は、マラリアによる高熱に襲われていた。
 そのために、その意識は幻覚と現実のはざまにいる有様だった。
 自分は、屯田兵中隊の中隊長として、台湾に赴き、マラリアに感染したのだ、と頭の片隅は分かっている。
 だが、幻覚がそれを妨げ、夢の世界へといざなっていく。

「土方中隊長がいきなり倒れました」
「何だと、そうっと担架に乗せて病院に運び込め、土方中隊長を死なせるわけにはいかん」
「はい」

 周りの人間が、そうやり取りをして、誰かが自分を担ぎ上げ、担架に乗せられ、病院に運び込まれ、着替えさせられ、布団の中に自分を連れて行っている。
 土方は、ぼうっとしながら、そう想った。
 それにしても、声が出ない。
 病院に到着すると、軍医が駆け付けて、自分を診察し始めて、薬を飲ませようとした。
 苦すぎる薬だ、頭痛がひどくなりそうだ、そう想いながら、何とか飲み終えると、土方は失神した。

 土方は、幻想の中をただよっていた。
 多摩川の土手だ、一緒に走っているのは幼なじみの、あれ、名前が出てこない。
 そして、奉公先にたどりついてみると、番頭が何が気に食わないのか、自分を怒鳴りだしたので、殴りつけて奉公先を飛び出した。
 更に走る内に、試衛館にたどりついていた。
 いつの間にか、竹刀を握っていて、試衛館の中に、自分は入り込んだ。

 次に、意識を取り戻すと。
 京の街に、自分はいた。
 自分の横にいるのは、他の新選組の仲間たちだ。
 巡回に一緒に出ることにしたのだろうか、いや、そうじゃない、近くで一杯飲もうということにしたのだ。
 久しぶりに、外で気の合う者同士で、飲む酒は本当にうまいだろう、そう自分は想った。
 だが。

 いつの間にか、周囲が戦場になっていた。
 俺の愛刀はどこだ。
 いや、銃が必要だ。
 敵が銃撃してくる以上、撃ち返さないと自分がやられる。

 次に気が付くと、終の棲家に決めた、あの屯田兵村に帰っていた。
 囲炉裏端に、琴がいて繕いものをしているのが、自分の目に入ってくる。
 今年も稲は豊作になりそうで、本当に良かった。
 自分で作った米が食べられるようになるとは、この村に住みだしたころにはとても思えなかったものだ。
 
 長男の勇志には、剣術の才能があるのだろうか?
 そろそろ10歳に近くなってきたのだ。
 自分が、剣の指導をしてもよいだろう。
 それにしても、自分に4人も子どもができるとは思わなかったな。
 あれ、待て、勇志はまだ4歳の筈だ、おかしくないか?
 これは、未来の光景なのか?

 更に土方が気が付くと、どこかの川端に、自分は立っていた。
 川向こうの花畑で、野稽古をしているのか、近藤勇局長と沖田総司が竹刀を向けあっていた。
 自分も一緒に稽古をせねばならんな。
 そう想って、土方は川を渡ろうとした。
 すると近藤局長と沖田は、自分の姿が目に入ると、慌てて自分に近づき、竹刀を振り回して、川を渡らせまいとしだした。
 なぜだ、なぜ、自分は川を渡ってはいけないんだ。
 土方は、思わず絶叫してしまった。

 土方は、自分の絶叫で目を覚ました。
 高熱のせいか、酷い寒気もするし、頭がずきずきし、吐き気もして、ひどい気分だった。
 自分が着ている病衣も汗のせいか、ぐしょぬれになっていた。
 余りにも酷い気分なので、とても、自分ひとりでは起き上がれない有様だった。

 土方は、幻想の中で見たことを思いだしていき、最後に自分が見た川のことを考えた。
 取り留めのない幻想としか、言いようが無いが、最後に自分が見たあの川、あれは三途の川ではなかったか。
 近藤局長や沖田が、自分を止めることなく、あの川を自分が渡っていたら、本当に死んでいたのではないか。
 そこまで土方が考えていると、もう出ないと思っていた汗が、大量に流れ出すのを、土方は覚えた。
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