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第3章 新選組の旗の再生と台湾出兵
第14話
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日本に帰国した土方歳三は、明治8年の正月を、屯田兵村の自宅で迎えていた。
妻と3人の子が、自分の傍にいる。
ささやかと言えばささやかだが、その幸せを、土方は噛みしめていた。
何しろ、同じ村の中には、そんなささやかな幸せさえ迎えられなかった家もあるのだ。
土方が台湾から帰還したとき、一番に驚いたのは、妻の琴が3人目の子、2人目の娘を抱いていたことだった。
琴によると、ちゃんと手紙で知らせたとのことだったが、土方自身がマラリアで倒れたり、周囲の者が相次いでマラリア等で倒れるのに対処したり、といった毎日に追われて、そんな手紙が届いたことさえ忘れていた。
琴は幾ら何でも3人目の子ができたという手紙を受け取ったことさえ、夫が忘れるなんて、と(半分芝居だったのだろうが)激怒してしまった。
そのために、長男の勇志が、
「お父ちゃん、お母ちゃん、喧嘩しないで」
と泣いてしまう有様にもなった。
帰国した土方は、屯田兵村から出征して戦病死したことにより、祖国に帰還できなかった者全員の家に赴いて、遺族を慰問した。
土方からは、中々言葉を発せられず、遺族からの質問に答えることが多かった。
あの京都での日々では、こんなことは想像もできなかったな、と土方は想わざるを得なかった。
遺族の中には、一家の大黒柱を失ったことから、離村の決断をする家もあった。
また、新たに屯田兵となる婿を迎える家もあった。
離村の決断をした家には、海兵隊と開拓使から、ささやかといえばささやかだが慰問金も出された。
土方は、その慰問金がその家の新たな生活の資金となってほしい、と痛切に願った。
土方は、この正月は、琴が作った心づくしの雑煮を味わうことができた。
海兵隊から出征した屯田兵への慰労として、米ともち米が大量に届いたのだ。
米ともち米が実際に屯田兵村に届いたとき、村では歓声が巻き起こった。
それだけ米ともち米に皆、飢えていたのだ。
何しろ、土方自身も、この村に来てからは、米を余り食べていないと言っていい。
台湾にいた時、屯田兵の面々は、米をたらふく食べられることに、歓喜の涙を流したほどだった。
一部の陸軍の兵からは、
「屯田兵は芋侍ならぬ芋兵だからな」
と陰口を叩かれる有様だったが、そんなことは気にならないほど、屯田兵の皆が米を腹いっぱい食べられることに幸せを覚えていたのだった。
土方が正月気分に浸っていると、琴が話しかけてきた。
「それにしても、新選組の名がここまでとは私は知りませんでした」
「確かにな、北海道、新選組副長、土方歳三宛だけで、手紙が届くほどとは、自分も思わなかった」
琴の言葉に、土方は嘆息した。
土方が留守の間に、元新選組の隊士等からの手紙が、大量に留守宅に届いていたのだ。
土方自身は、台湾に出征していたので、全く知らなかったのだが、あの新選組の旗騒動が新聞に載ったせいで、元新選組の隊士等に土方の消息が一度に知られたのだった。
そして、駅逓寮の職員も特別に配慮した結果、元新選組の隊士等が、土方宛に送る郵便の宛名を、単に北海道、新選組副長、土方歳三と書いてあるだけでも配達する有様だった。
「島田魁に永倉新八、斎藤一等々。あの旗で昔を思い起こしたのか、また、土方さんと一緒に刀を振るいたい、と大抵が書いて、手紙をよこしてきている。
今更、刀の時代でもないのに」
「そんなことはないでしょう。
刀を振るって戦うことはまだまだあります」
「勘弁してくれ。
俺は、今の屯田兵には、射撃と護身用の銃剣術しか、教えていないんだ。
刀を振るって戦う、なんてことになったら、俺の腕は落ちているから、あいつらを頼らないといけないかもな」
琴の言葉に、土方は更に嘆息してしまった。
妻と3人の子が、自分の傍にいる。
ささやかと言えばささやかだが、その幸せを、土方は噛みしめていた。
何しろ、同じ村の中には、そんなささやかな幸せさえ迎えられなかった家もあるのだ。
土方が台湾から帰還したとき、一番に驚いたのは、妻の琴が3人目の子、2人目の娘を抱いていたことだった。
琴によると、ちゃんと手紙で知らせたとのことだったが、土方自身がマラリアで倒れたり、周囲の者が相次いでマラリア等で倒れるのに対処したり、といった毎日に追われて、そんな手紙が届いたことさえ忘れていた。
琴は幾ら何でも3人目の子ができたという手紙を受け取ったことさえ、夫が忘れるなんて、と(半分芝居だったのだろうが)激怒してしまった。
そのために、長男の勇志が、
「お父ちゃん、お母ちゃん、喧嘩しないで」
と泣いてしまう有様にもなった。
帰国した土方は、屯田兵村から出征して戦病死したことにより、祖国に帰還できなかった者全員の家に赴いて、遺族を慰問した。
土方からは、中々言葉を発せられず、遺族からの質問に答えることが多かった。
あの京都での日々では、こんなことは想像もできなかったな、と土方は想わざるを得なかった。
遺族の中には、一家の大黒柱を失ったことから、離村の決断をする家もあった。
また、新たに屯田兵となる婿を迎える家もあった。
離村の決断をした家には、海兵隊と開拓使から、ささやかといえばささやかだが慰問金も出された。
土方は、その慰問金がその家の新たな生活の資金となってほしい、と痛切に願った。
土方は、この正月は、琴が作った心づくしの雑煮を味わうことができた。
海兵隊から出征した屯田兵への慰労として、米ともち米が大量に届いたのだ。
米ともち米が実際に屯田兵村に届いたとき、村では歓声が巻き起こった。
それだけ米ともち米に皆、飢えていたのだ。
何しろ、土方自身も、この村に来てからは、米を余り食べていないと言っていい。
台湾にいた時、屯田兵の面々は、米をたらふく食べられることに、歓喜の涙を流したほどだった。
一部の陸軍の兵からは、
「屯田兵は芋侍ならぬ芋兵だからな」
と陰口を叩かれる有様だったが、そんなことは気にならないほど、屯田兵の皆が米を腹いっぱい食べられることに幸せを覚えていたのだった。
土方が正月気分に浸っていると、琴が話しかけてきた。
「それにしても、新選組の名がここまでとは私は知りませんでした」
「確かにな、北海道、新選組副長、土方歳三宛だけで、手紙が届くほどとは、自分も思わなかった」
琴の言葉に、土方は嘆息した。
土方が留守の間に、元新選組の隊士等からの手紙が、大量に留守宅に届いていたのだ。
土方自身は、台湾に出征していたので、全く知らなかったのだが、あの新選組の旗騒動が新聞に載ったせいで、元新選組の隊士等に土方の消息が一度に知られたのだった。
そして、駅逓寮の職員も特別に配慮した結果、元新選組の隊士等が、土方宛に送る郵便の宛名を、単に北海道、新選組副長、土方歳三と書いてあるだけでも配達する有様だった。
「島田魁に永倉新八、斎藤一等々。あの旗で昔を思い起こしたのか、また、土方さんと一緒に刀を振るいたい、と大抵が書いて、手紙をよこしてきている。
今更、刀の時代でもないのに」
「そんなことはないでしょう。
刀を振るって戦うことはまだまだあります」
「勘弁してくれ。
俺は、今の屯田兵には、射撃と護身用の銃剣術しか、教えていないんだ。
刀を振るって戦う、なんてことになったら、俺の腕は落ちているから、あいつらを頼らないといけないかもな」
琴の言葉に、土方は更に嘆息してしまった。
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